相手がやりたいことが決まっていて対策しやすい
サトシは強力な柔術の軸を持っている分、その戦い方は寝技に持ち込む動きに特化している。そこに、隙があると矢地陣営は見ている。
「十分、対策も弱点も見つけられていますし、どういう風に攻めるのか、それを試合でどこまで出来るのか、相手も対策をしてくるので、その反応との出し合い、戦い合いになるのかなと思います。
(サトシは)寝技に特化している分、逆に対策はしやすくて、俺が相手だろうが誰が相手だろうが、相手がやりたいことは決まっているので、その勝ちパターンにハマらないように、ということかな。
弱点? 圧倒的にひとつあるのと、やっぱりああやって勝ってきているんで幻想が凄いですけど、全然、穴はあるし、戦えないことはないなと思います。要所要所で強いですけど、対策は出来て、掴みどころの無かったものが、チームで考えてだいぶ形になってきています」と自信をのぞかせる。
ロータス世田谷で行われるプロ練習にも引き続き参加し、寝技師・青木真也からもアドバイスを受けている。動画では、青木から三角絞めの対処を確認する姿が映し出されている。青木とボンサイ柔術は、2006年3月の「PRO JIU-JITSU X Grand Prix 2006」で、青木がサトシの兄マスコス・ソウザにポイント2-0で勝利した縁もある。
極められない自信を問われた矢地は、「もちろん得意技に対処することを重点的にやってきました。極められない自信は……やってみないと分からないですけど、極められないように全力を尽くしますし、そのための練習をやってきていますし、極められないで勝ち切る、というイメージは出来ています」と、関節技・絞めの防御のみならず、相手に極めさせず、ジリ貧に追い込んで「勝ち切る」パターンも想定済みだ。
勝負のポイントは「相手の心を折る」こと。
「そこに尽きると思います。相手の勝ちパターンにハマらずに、相手の嫌なところ──相手が“おかしいな、おかしいな”と思う回数を増やせれば、おのずと勝ちは僕の方に転がってくると思うので、そこですね」
3年ぶりの大晦日参戦。2019年は12月29日にさいたまスーパーアリーナで上迫博仁を相手に逆転のサッカーボールキックを決めた。
「大晦日……誰もが憧れる舞台、嬉しいですよね。勝ってどんどんステップアップしていきたい。やっぱり対外国人に限らず、強い選手と戦って、自分が苦手とされるような選手と戦って勝って、自分の価値とRIZINの価値を高めていきたいです」
好きな言葉は「全力疾走」だという。「常に全力で何事も」をモットーに、“お祭り男”から「キャラを作らない、素でいる」自分となり、懸命に自身をアップデートしてきた。
2021年の漢字を問われ「新」の一文字をあげた矢地。「新しい環境になって、新しいトレーナー、新しいチームメイト、最後に新チャンピオンっていうことで」──“シン・ヤッチくん”は王者として2022年を迎えることが出来るか。