キックボクシング
インタビュー

【ONE】ブルース・リーの『水になれ』という言葉のように――孫子の『兵法』もスタイルに取り入れるチュー・ジェンリャン=12・3秋元皓貴と対戦

2021/12/02 17:12
 2021年12月3日(金)シンガポール・インドアスタジアムにて「ONE: WINTER WARRIORS」が開催される。  日本時間の午後9時30分から、ONE SUPPER APPおよびABEMA格闘チャンネルで中継される同大会では、第4試合に日本から秋元皓貴(Evolve)が参戦。ONE初参戦のチュー・ジェンリャン(中国)と対戦する。  ジェンリャンは中国の国家ムエタイチームの一員として活躍。2013年中国ムエタイ選手権-75kg級で金メダルを獲得し、同年にプロデビュー。2014年WLF-65kg級インターコンチネンタル王者、2014年S-1“皇后杯”王者、2015年S-1“泰皇杯”王者、2016年WLF -67kg級世界カンフー王者、2017年GOH世界フェザー級王者、2019年ISKAスーパーフェザー級世界王者などに就いている中国のトップキックボクサーだ。日本にも2017年7月に『Krush』に来日し、小宮由紀博から判定勝ちを収めているほか、2018年1月には長島☆自演乙☆雄一郎にもTKO勝ちしている。  ディラン・サルバドール、ケム・シッソーンピーノン、イリアス・ブライド、ジョムトーン・チュワタナ、モサブ・アムラーニ、サゲッダーオ・ペットパヤタイといった世界に名を知られる強豪たちからも勝利を収めており、2016年8月にモロッコにてフランス人選手に敗れて以降は18連勝中。中国国内だけで試合をしているわけではなく、ポルトガルやブラジル、スイス、タイ、アメリカ、ニュージーランドなどにも遠征して勝利している。戦績は53勝(23KO)7敗。31歳のチューは英国ラフバラ大学でスポーツマーケティングの修士号を取得するため、約2年試合から遠ざかっていたが、今回、ONEで復帰となる。  ジェンリャンのインタビューが主催者を通じて届いた。 いつも前に出て攻め続け、絶対に後ろに退かない ――中国には秀れたファイターがたくさんいますが、あなたはさらに飛び抜けていますね。ご自身が“中国のスター”と言われる理由は何だと思いますか。 「みんなそれぞれ違いますよね。僕だけではなくて。ただ、自分が中国のファンや多くのファンから注目してもらえているのは、リングの中で勝つために独特なことをしているからだと思います。他の選手と比べて普通でないことをしています」 ――あなたがONEチャンピオンシップと契約したことが発表された時、多くの人が反応していました。ONEチャンピオンシップを新たな戦いの場として選んだ理由を教えてください。 「ONEチャンピオンシップは信用できる、素晴らしい団体です。世界に自分の名を知らせることのできる場所。そして最も重要なのは、自分や多くのトップファイターたちからリスペクトされている団体であるということです。だからONEチャンピオンシップを選びました」 ――“Tank”(戦車)というニックネームの由来は何ですか。 「ファンの方に名付けられたと思います。誰が最初に言ったのかは定かではないのですが、キャリアの初めの頃の自分のファイトスタイルを表すものだったと思います。今は、当時のスタイルからはかけ離れているので、このニックネームは少し違うかなと。とはいえ、他のニックネームはないですからね。だから、今も “Tank”のニックネームを継続して使っています。いつも前に出て攻め続け、絶対に後ろに退かない。そんな感じです」 ――世界には、まだあなたのことを詳しく知らないファンがいると思います。キックボクサーであるご自身を説明するとどんなファイターでしょうか。 「僕のリングでのファイトスタイルは、どんな試合においても安定した戦略があること。これを強調したいです。ここ何年も、同じスタイル、同じ戦略で戦ってきたことはないです。自分はそれぞれの試合で、違う戦略、違うマインドセット、違うプランを使っています。ブルース・リーの『水になれ』という言葉のように。それが僕のゴールであり、僕が進むべきところに導いてくれるものです。これが色々なファイトスタイルに適応するための究極の方法で、水のように流動的で常に同じものではありません」 [nextpage] 僕にとって相手はリング上のただの目的であり、私はその目的を倒すために努力するだけ ――学業とトレーニング、どうバランスをとっていたのでしょうか。 「これはとても良い質問ですね。複数のことをバランスを取ってうまくやっていくのは難しいことです。誰しもが日常生活、仕事、家族関係など人生において重要な要素をどうやって両立させるのか。僕は目前の大きなチャレンジを克服するためには、別の課題を行うことが必要だと考えています。だから、精神的な学びと肉体的な学びというように、2つの課題を並べて、それぞれのプレッシャーや不安を最小限にするようにシフトしたり、切り替えたりしています。そうすることで、自分の状態のバランスを取りながら、仕事もベストな状態で行うことができると思います」 ――秋元皓貴選手が「長く試合をしていないと復帰戦は緊張するもの」と述べていましたが、そのことについて何か言いたいことはありますか。「まず、彼のことを褒めたいですね。なぜなら、その通り、僕は緊張しているからです。正直に言って、緊張しています。皆さんにお伝えしなければならないのですが、僕はどの試合でも緊張していますし、すべての試合で不安を感じています。これまでのすべての試合で、ストレスやプレッシャーを感じてきました。ですが緊張、不安、ストレス、プレッシャーは誰もが持つ正常な感情だと思います。それらの感情を恐れる必要はありません。ただ、その感情と共存し、理解する必要があります。恐れずに、その感情と親しくなればいいのです。これらの感情を感じているということは、準備ができている証であり、自分が今やっていることに関心があるということなのです。僕が緊張していると思うなら、僕は準備ができているということです」 ――ファイターとしての秋元皓貴選手についてはどう思いますか。 「彼のことは少し調べましたが、あまり気にしないようにしています。僕は相手を意識しすぎないことを信条としていますからね。僕にとって、対戦相手はリング上の相手でしかありません。僕は常にこの相手を尊重しています。彼が人間でないという意味ではありませんよ。僕にとって相手はリング上のただの目的であり、私はその目的を倒すために努力するだけです。ですから、感情的な考えはありません。一方で、彼はスマートで戦略を備えている非常に競争力のあるファイターだと思います」 ――自身の有利な点は何だと思いますか。何があなたをより優れたファイターにしているのでしょうか。「世界中のトップファイターと戦ってきた経験が豊富だと思います。僕は彼よりも年上なので、より成熟しているかもしれません。すべての物事には2つの側面があると思います。自分が年上だと思えば、より円熟していて物事を包括的に捉えることができる熟練のファイターの良い点を思い浮かべることができます。それが僕が持っている利点です。中国では多くの技術書を読みましたが、特に孫子の『兵法』が役立ちました。中国外の図書館で借りられるような本ではないです。僕たちの文化の一部であり、それが僕たちを際立たせてくれます。それは僕の特徴でもあります。僕は、これらのすべての考え方や戦略を、リング上での自分のスタイルに活かそうとしています」 ――秋元皓貴選手はバンタム級3位コンテンダーです。彼を倒せば、ご自身がONEで最高のファイターの一人であることを証明できると思いますか。彼を乗り越えれば、タイトルショットに値すると思いますか。「彼を倒すことができれば、僕が非常に競争力のあるファイターであることを皆さんに示すことができると思います。まず彼に勝ってから、タイトル戦を行う資格があるとも思っています。僕はただ、チャンスを得るために自分を限界まで高めようと努力しています。当然ながら僕が勝つと信じています。この試合後、タイトル戦まであとどのくらいなのか見てみましょう」 ――秋元皓貴選手はあなたに対して、どのような戦法を取ってくると思いますか。「正直なところ、分かりません。僕から距離を取って、ローキックといつものような意表を突くハイキックを可能な限り使ってくると思います。前回の彼の試合を分析した限り、彼はポイントを取って勝とうとするでしょう。それが僕のプランに対する私の考えです」 ――孫子の『兵法』を読んだと述べていましたが、そのような本は、ファイターとしてリングやサークルケージの中で、あるいは人生において全般的に役立ちますか。 「その通りです。これらの本から学んだ戦略は、すべて僕の助けになっています。例えば、キャリア初期は、そのような戦略や考え方を理解することができませんでした。ですが年を重ねるごとに発見が増え、少しずつ理解できるようになってきました。もっと早く読んでおけばよかったと感じることもありますが、過去を悔やんでも仕方ありません。だからこそ、できるだけ多くの本を読んで、考えをより鮮明にするようにしています。身体的な行動はすべて心によってコントロールされています。心を制御することが身体をコントロールするための第一歩です」 ――この試合の予想を教えてください。 「一刻も早く彼をノックアウトできるように全力を尽くします。KO勝利を目指します」
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