キックボクシング
インタビュー

【ONE-RISE】那須川天心ラストマッチの指名を受けたロッタン独占インタビュー「あの試合で僕の心は一度、折られた。だから、彼を倒したい」

2021/11/23 20:11
 2022年4月2日(土)東京・国立代々木競技場第一体育館『Cygames presents RISE_ELDRD 2022~Tenshin Nasukawa Final Match~』にて、キックボクシングのファイナルマッチに臨む那須川天心(TARGET/Cygames)が、対戦相手にロッタン・ジットムアンノン(タイ)を希望したことについて、ロッタンが23日、ONE Championshipを通じて、本誌のインタビューに答えた。  実現すれば、2018年以来の再戦となる那須川との試合について、ロッタンは「お互いの団体次第」としながらも、「僕自身の答えは『YES』だ」と返答。さらに、階級はフライ級を希望、ムエタイとキックボクシングのミックスルールでの対戦を提案した。 僕と戦いたい?『YES』だ  2021年11月14日の『RISE WORLD SERIES 2021 OSAKA』のリング上で那須川は、「僕の希望としてはロッタンともう1回やりたいと思っています。いろいろな契約とかあると思いますが、最後にふさわしい試合をしてキックボクシングの最後を飾りたいと思います」と、2018年6月17日にRISEで対戦したロッタンと再戦で決着をつけたいと希望した。  その言葉を受けて、23日にロッタンは本誌に「テンシン・ナスカワ(那須川天心)がボクシング転向前に僕との対戦を望んでいることは、とても嬉しいよ。彼に負けた日から長い間、再戦を待っていた。心の中に引っかかるものがずっとあった。あの試合を1日たりとも忘れたことはない。僕は準備ができているし、彼のキックボクシング最後の試合に向けて、僕と戦いたいと提案されたことに対して、『YES』と答えるよ。世界中のファンが僕とテンシンの再戦を見たいだろう。そして、僕たちもお互いに再戦したいと願っている。」と、自身も再戦を望んでいると答えた。  その上で、「あとは、お互いの団体次第だと思うし、団体間の話し合いがスムーズなもので、お互いにとってフェアなものになることを願っているよ」と、ONE ChampionshipとRISEの話し合い次第で実現が可能だとした。 フライ級(61.2キロ)でテンシンと戦いたい  ネックになるのは、それぞれの契約と体重とルールだ。  那須川とロッタンは2018年に57.15kg契約で対戦しているが、その後、ロッタンはONEフライ級(61.2kg)での試合が続いている。一方の那須川は、2020年大晦日のRIZINでのクマンドーイ・ペットジャルーンウィット戦こそ57kgで戦ったものの、直近の2試合、志朗、鈴木真彦との試合では、適正体重であるバンタム級の55kg契約で判定勝ちしている。  15日の会見でRISEの伊藤隆代表は「(ロッタン参戦は)ONEサイドと話をしないといけないですし、一番の問題は体重です。実現するために前向きに動きますが、契約体重を調整しないといけないのでその部分がネックになるかと思います」と語っている。  契約体重について、ロッタンは、「あれから、彼の体重がどの程度変わっているのかは分からないけど、いま僕はONEムエタイ世界王者として、通常はフライ級(61.2キロ)で戦っている。なので、61~62キロで合意できるならいいね。とはいえ、(対戦を実現するなら)双方が合意できるように議論する必要があるだろう」と、自身の階級での対戦を望む。 ムエタイルールの方がいいけど、ミックスルールでもいい  ルールは、RISEルールかムエタイルールか。  2018年の初対決では「RISE世界フェザー級(-57.15kg)王座決定戦」として、RISEルール(パンチ、キック、ヒザ蹴りが可能で「相手に組んだ状態で行うヒザ蹴りは1発のみOK」。反則はヒジ打ち、投げ、クリンチ)で戦った両者だが、再戦でロッタンは、なんと“ミックスルール”を提案する。 「僕はムエタイが得意だから、もちろんムエタイルールの方がいい。テンシンがヒジを怖がってムエタイを受け入れないのは分かっている。キックボクシングルールを希望するだろうね。互いにフェアなものにするために、ムエタイとキックボクシングのミックスルールとかもいいんじゃないかと思っている」と、ムエタイルールを希望しながらも、折衷案もあると語る。  それは、5Rをムエタイルールとキックルール、モデファイドルールに分けて戦う、ミックスルールでの戦いだ。 「5ラウンドで、ムエタイルールで1と3ラウンド、キックボクシングルールで2と4ラウンド、そして、最終ラウンドはキックボクシングルールに加えて、クリンチとヒザあり、ヒジは無しのルールでどうだろう。ルールについては、もっと議論できるだろう。  ただ、ひとつ言いたいことは『フェアになるように』戦いたい。僕はシンプルな人間だから。とにかく彼との再戦が実現してほしいし、ファンにとっても前回の試合の疑問をクリアにできる興味深い機会になると思うよ」 [nextpage] 控室に戻るまで泣き止まなかった。でも戻ったら──  キック40戦無敗の那須川について、ロッタンは「進化している」と評する。 「彼は僕との対戦以降、とても成長・進化していると思う。彼の武器はよりアグレッシブに、有効的になっている。ボクシングルールでも試合をして、タイにもトレーニングで来ていたよね。そして、彼のムエタイスキルを向上させるようなタイ人のコーチからも、日本で指導を受けている。  以前の彼のスタイルは出入りするものだったことを覚えているけど、今はよりアタックしていくし、打ち合っているように思う。立ち方や打撃の応酬などを見ると、進化していると感じるよ。前よりパワフルに良いファイターになっているね。だから決して甘く見たりはできないよ」  初戦から3年半を経ても、那須川との試合は忘れられない、という。「判定結果を聞いて、涙が止まらなかった」──その思いを、ロッタンは一気に語り始めた。 「僕は彼に勝てると思うし、負ける可能性だってある。でもそれは気にしていない。ノックアウトを狙いに行くしし、彼もそうするだろう。前回の結果が僕の頭にずっと引っかかっていて、早くそれを払拭したいんだ。  僕はファイターで、これは僕のキャリアの一つだ。このスポーツは面白いよね。見て学んだり、やって学んだり……興味深いアートのようなものだ。僕は彼との試合で日本に行った。タイを代表して、彼のホームタウンで戦った。彼らは日本に行く費用を払ってくれて、僕は万全の準備をした。出来ることは全部した。それまで経験したことのなかった寒い国での減量も、ね。体重を落とすために爪すらも噛んだ。それくらい簡単なものではなかったんだ。  当時、僕は日本では誰にも知られていない、無名のタイ人ファイターだった。でもテンシンは本当のスターで、そんなことは気にもしなかったけど、ただ試合をしたくて自分の可能性を見せつけるために日本へ行ったんだ。  5ラウンドを終えて、引き分けの結果が出た。その時、ちょっと疑問を抱いたことを覚えているよ。だって、3ラウンド、4ラウンドは天心がしゃがんだり、ガードする事しか出来なくなるまで僕はかなり攻めたから。  そして延長の6ラウンド目まで行った。彼より僕の方が打っていたと思うから、結果のコールを聞いた時は涙が流れてきた。僕は控室に戻るまで泣き止まなかった。ただ、嬉しいことに控室にいた日本のファイターたちは、僕が部屋に戻った時に、拍手で迎えてくれたんだ。日本でもこうして支持してくれる人がいると知って気が楽になったことを覚えている。  僕はこのファイトスポーツを愛しているし、自分のキャリアも好きだ。全身全霊をかけて戦う。その上で何を大事にしたいかと言ったら、フェアで公平なものを見せたいということ。僕たちファイターはそれを支えないといけないし、真のスポーツにしないといけない。真に良いファイターを支持してもらうためにも、フェアでなくてはいけない。それがスポーツだ」(ロッタン) 彼を倒すさ。あの試合結果で僕の心は折られた  那須川もまた、あのときの悔しさを、キックボクサーであるうちに背を向けずにけりをつけたいと考えている。  初戦の試合直後、那須川は、「3Rに初めて怖くなりました。いくら打っても倒れないので、どうしたらいいのか分からなくなりました。左手を痛めたのも3Rだったので“左を打てないで勝てるのか”と思いました。最後まで気合いで立っていた感じです。ロッタンとはまたいつか、やることになるんじゃないかなと思います」と、悔し涙とともに再戦について語っていた。  果たして、那須川は“キックボクシング卒業マッチ”で自身が望むロッタンとの試合を実現できるか。ロッタンの次戦は、もうひとつの“ミックスルール”(※3分4R制で、1R&3Rがムエタイルール、2Rと4RはMMAルール)である、ONEでのデメトリアス・ジョンソン(DJ)との試合が予定されている。その「ONE X」での試合は、当初予定されていた12月5日から「2022年初頭」に延期が発表された。  ロッタンは、2022年初頭に、DJ戦、那須川戦と2つのビッグマッチに向かうことになるか。 「DJとの試合が延期になったけど、練習は続けている。ポジティブに捉えているよ。実際、僕のグラウンドゲームのスキルを向上させるためにもっと練習が出来るから、僕にとっては良いことだ。この試合が終わっても、可能であればMMAの練習はしたいと思っているよ」と、新たな挑戦を語る。  もう一つはリヴェンジだ。 「同時に、もう一回だけでいいから、テンシンと戦いたい。5ラウンド全て自分が勝つし、彼が6ラウンド、7ラウンドを要求しても結果は変わらない。彼を倒すさ。あの試合結果で僕の心は一度、折られた。だから、彼を倒したい」。
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