2019年5月17日にシンガポール・インドアスタジアムで行われた『ONE:Enter the Dragon』。
優勝賞金100万ドル(約1億950万円)のキックボクシング世界トーナメントが同大会より開幕。その絶対的な優勝候補ペトロシアンが1回戦に登場した。ペトロシアンは2009年と2010年のK-1 WORLD MAXでミドル級世界トーナメントを制し、世界にその名を轟かせてから、10年にわたって世界最高峰に君臨してきた。
1回戦の相手ペットモラコットはタイのビッグマッチ常連の超一流選手として活躍し、ルンピニースタジアムではミニフライ級王座とスーパーフェザー級王座に就いた。2015年4月には初来日し、梅野源治の挑戦を退けている。ONEでは3月に健太と対戦し、勝利を収めて健在ぶりを発揮。
試合は1Rにパンチで圧倒されたペットモラコットが2Rから首相撲&ヒザ蹴りを多用。これでペトロシアンのペースが乱れ、どんどん前へ出て組み付いてヒザを蹴るペットモラコットにペトロシアンは消耗し、判定2-1でペットモラコットが優勝候補本命のペトロシアンを破る大波乱を起こした。
しかし22日、ONEのチャトリ・シットヨートンCEOは自身のSNSにて「ONEチャンピオンシップはペトロシアンとペットモラコットの間で物議をかもしている試合の公式レビューをシンガポールで行いました。すべての当事者に公平を期して、ONE競技委員会は試合を“ノーコンテスト”として正式に宣言しました。審判は違法なクリンチ行為を適切に管理していなかったため、試合中に複数の違反が発生した。優勝者が100万米ドルのONE Featherweight Kickboxing World Grand Prixの準決勝に進出する再試合があります」と、レフェリーが首相撲の反則を全く取っていなかったとし、試合はノーコンテストに変更されたと発表。
両者は近いうちに再戦を行い、その勝者がトーナメント準決勝に駒を進めることになった。
ONEキックボクシングルールは相手をつかんでの攻撃が3秒以内と決められている。ペットモラコットは確かに首相撲からのヒザ蹴りを多用していたが、3秒経過のたびにレフェリーがブレイクに入り、ペットモラコットもそれに応じていた。ペットモラコットの戦い方を「テクニック」と見るか「パンチ、蹴りの攻防から逃げている」と見るか、難しいところだ。
ファンの間でも「ペットモラコットはルールに則っていた」「いや、あれは攻撃するための首相撲ではなく逃げるための首相撲だからレフェリーはイエローカードを出すべきだった」などの論争が発表の後も続いている。