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【Bellator】ヒョードル、ヘビー級2位のジョンソンを106秒KOで引退撤回も「スピードを失っていないことに感謝。今のところキャリアを終えるつもりはない」

2021/10/24 08:10
 2021年10月24日(日)にロシア・モスクワの VTBアリーナにて『Bellator 269』が開催された。  メインイベントでは、2年ぶりの復帰戦にして、母国でのラストマッチに臨む元PRIDEヘビー級王者のエメリヤーエンコ・ヒョードル(ロシア)が、現Bellatorヘビー級ランキング2位のティム・ジョンソン(米国)と対戦。1R 1分46秒、ヒョードルが衝撃のKO勝ちでロシアのファンを総立ちにさせた。 ▼ヘビー級 5分3R○エメリヤーエンコ・ヒョードル(ロシア)[1R 1分46秒 KO] ※右フック×ティム・ジョンソン(米国)  前日計量では、105.91kgのヒョードルに対し、ジョンソンは119.74kgとヘビー級リミット(120.2kg)に近い体重で計量をパス。約14kg差がある一回り大きな体躯を披露していた。  MMA39勝6敗1NC、引退ロードでの試合にレジェンドマッチではなく現役トップランカーを指名した45歳のヒョードルは、2021年1月に新型コロナウイルス感染で専門病院に入院したが完治。2016年6月の「EFN 50: Emelianenko vs. Maldonado」から5年ぶりに、母国ロシアでの最後に試合に臨む。  前戦は、2019年12月にRIZINと共催したBellator JAPANでは「日本ラストマッチ」として、クイントン・“ランペイジ”・ジャクソン(米国)を1R TKOで下しているが、互いに精彩を欠く動きだった。今回の試合に向け、「やるべきことは全てやった。準備は万端」と調整に自信を見せている。  対する36歳のティモシー・ジョンソンは、MMA15勝7敗。UFCでも4勝3敗と勝ち越しているサウスポー構えの強豪だ。2018年10月からBellatorに参戦し、2020年には当時MMA8戦無敗だったエリートレスラーのタイレル・フォーチュンを1R、左ストレートからの右フックでKO。  続けてヒョードルにKO勝ちしているマット・ミトリオンをぶちかましからのパウンドで1R TKO。さらに、5年間負け無しだったシ-ク・コンゴにもスプリット判定で勝利しリヴェンジを果たすなど3戦3勝と快進撃を見せた。しかし、2021年6月25日の「Bellator 261」でヒョードル軍団で元RIZINファイターのワレンティン・モルダフスキーに5Rの激闘の末、判定で敗れ、ヘビー級暫定王座を逃している。  米国ミネソタ州立大学ムーアヘッド校時代にはNCAAディビジョン2でオールアメリカンに2度選出されているレスリングベースのジョンソンは、強い抑え込み&パウンドを誇る。今回の試合に向け、「ヒョードルは戦士だ。あの右オーバーハンドとアッパーは危険だが、私は彼をKOするつもりだ。ロシアで15分間戦って判定に持ち込みたくない」と、アウェーでのKO決着を予告した。  試合は、先に入場のジョンソンはハルク・ホーガンと同じ『リアル・アメリカン』に乗って花道を進み、ケージイン。対するヒョードルは、“ラストエンペラー”のコールとともにロシアの入場曲とともに十字を切ってからケージの中に足を踏み入れた。  身長183cmのヒョードルに対し、ジョンソンは191cmで8cm大きく、体重は前日の時点で14kg差も、リーチではヒョードルが193cmインチに対し、ジョンソンは198cmで、わずか5cmジョンソンが長い形だ。サークルケージの中で両拳を合わせた両者。  1R、ゴングに中央に歩み寄り、オーソドックス構えのヒョードルは左前手を、サウスポー構えのジョンソンは右前手を出して拳を合わせた。じりじりと詰めるヒョードルの左手を右前手で制して牽制するジョンソンは左ストレートを狙う。いったんバックステップで大きく離れるヒョードル。  いきなりの右を伸ばしてステップインするヒョードルに、右フックを狙うジョンソンも空振り。続く右のダブルをかわすヒョードル。いったん間を置き、今度は左から頭を下げて中に入ると、そこにジョンソンも左を狙うが、ヒョードルはかわして右を振るが、ここはジョンソンが離れる。  序盤からアグレッシブなヒョードル。いなすように左ローを軽く打つジョンソン。仕切り直しからまたも右ストレートをのど元に打つヒョードル。そのまま詰めると左から大きな右! かわすジョンソンは左で差して組むと、右アッパーをダーティーボクシングで打ち込む。それを右フックで剥がすヒョードル。  間合いを取り直した両者。ヒョードルは左のダブルで前に。それを右アッパーで迎撃を狙うジョンソン。今度はジョンソンから左で入り、右フック狙い。ヒョードルは右にサークリングしてかわすと、大きな左アッパーは空を斬る。ジョンソンも左から右で押し返すと、下がりながらヒョードルは左フックも浅い。  詰めるジョンソンは右を振るが、そこにカウンターの右を当てたヒョードルは、左から右の高速ラッシュ! その2連打をもらったジョンソンは後方にもんどりうってダウン! ヒョードルは勝利を確信したか、ゆっくり歩み寄ろうとするが、大の字のジョンソンに、すぐにレフェリーが間に入った。  1R 1分46秒、最後は右フックによるKO劇に、場内は総立ち。ジョンソンは頭を押さえたまま立てず。  試合後、ヒョードルはケージ内でのインタビューに、大きく息を吸い込んでから、「皆さんのサポートに感謝します。特にロシア人ファイターたちが、いい戦いを見せて皆さんもハッピーでしょう。神のご加護を」と挨拶した。  近年は後進の育成にも力を注いでおり、1週間前の17日には同じチームのワジム・ネムコフがキムラロックでBellatorライトヘビー級WGP準決勝&王座防衛に勝利したばかり。この日も、アナトリー・トコフ、キリル・シデルニコフ、ウスマン・ヌルマゴメドフら後輩たちが勝利を収めた。  ヒョードルは「今夜チームの皆も勝利し、ここからまた新たなチャンピオンが生まれるでしょう。ここロシアで大きなイベントが出来て成功させた意味は大きくハッピーです」と、笑みを浮かべながら語った。  また、試合後の会見では、英語で「とても気分がいいです」と語ると、「2年が過ぎました。すべてが私たちの考えていた通りになって良かったです」と、2019年12月の日本大会での勝利から、再び相手をKO出来たことに安堵の表情を浮かべた。  続けて「観客を幸せにした、という事実にとても満足しているし、私たちのキャリアやBellatorのイベントを追いかけてくれるファンに、このような大きな喜びを届けられたことが嬉しいです」と、2019年1月のライアン・ベイダー戦での35秒 KO負けからの完全復活を果たした姿を母国のファンの前で披露できたことを喜んだ。  母国でのラストマッチは、“皇帝”ヒョードルにとってもプレッシャーはあったようだ。 「アメリカでのパフォーマンスは、私にとってとても簡単です。これほど大きな注目を浴びることはありませんし、あるいは注目を浴びても、すべてのイベントは厳密に計画されています。ここロシアでは、家でのキャンプや試合の準備は、メディアやジャーナリストなどの監視下で行われました。それでも今回の勝利は、この場所、国(ロシア)、年齢を考慮しても、私のキャリアの中で最も重要な勝利の一つだと思います。そして強敵であるティム・ジョンソンの力を考えれば、これは私のキャリアの中で最も重要な勝利のひとつだと思います」と、引退ロードのなかで、再びキャリアのハイライトとなる試合が出来たとした。  次の試合が引退試合と言われているヒョードルだが、ランキング2位のジョンソンを倒したいま、まさかの王座挑戦も視野に入って来た。王者は2年9カ月前に敗れたライアン・ベイダーで、1位は愛弟子のワレンティン・モルダフスキーで、モルダフスキーは6月にジョンソンに判定勝ちの内容だった。  MMA40勝目を挙げた45歳のヒョードルは「私はまだこのスポーツを続けていて、スピードを失っていないことに感謝しています」と語ると、「もしチャンピオンシップが組まれたら?」の問いに、「“もしも”の質問に答えるのは難しいですね。ただ、今のところ自分のキャリアを終えるつもりはないと言いたいです。スコット・コーカー(Bellator代表)や家族と話し合ってみます」と、静かに語った。 [nextpage] ハビブの従兄弟ウスマン・ヌルマゴメドフが14戦無敗に! ▼ヘビー級 5分3R○サイド・ソウマ(米国)8勝2敗[3R 3分08秒 TKO] ※指の負傷×ヴィタリ・ミナコフ(ロシア)22勝2敗 ▼160ポンド 5分3R○ウスマン・ヌルマゴメドフ(ロシア)14勝無敗[1R 4分06秒 リアネイキドチョーク]パトリック・ピエティラ(フィンランド)11勝9敗 ▼ミドル級 5分3R○アナトリー・トコフ(ロシア)30勝3敗[判定2-1] ※29-28×2, 28-29×シェラフ・ダヴラトムラドフ(タジキスンタン)18勝4敗1分
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