MMA
インタビュー

【RIZIN】クレベル・コイケが「体重落とせない」「怪我で試合キャンセル」発言の真相、斎藤裕と朝倉未来、日本マットへの想い、そして世界について語る

2021/10/19 19:10
 2021年6月13日『RIZIN.28』東京ドーム大会で、朝倉未来(トライフォース赤坂)を三角絞めで極めて一本勝ちしたクレベル・コイケ(ボンサイ柔術)がインタビューに応じた。  2020年大晦日にカイル・アグォン、2021年3月に摩嶋一整、6月に朝倉未来と、わずか半年で3人の強豪をいずれもフィニッシュしての勝利で、フェザー級王者の斎藤裕(パラエストラ小岩)とのタイトルマッチ目前かと思われたクレベルだが、9月30日の会見後に、RIZINの榊原信行CEOは、現在「クレベルと契約が無い」こと、「クレベルが体重を落とせず10月24日の試合を受けなかった」こと、「『11月7日だったら体重を落として受ける』と返答があったものの、怪我により試合を断った」と明かした。  その後、クレベルはマネージメントを通じて、「私自身、この試合をずっと待ち望んできました。大一番を迎える中、足の怪我により立ち技のトレーニングが全く出来ず、試合をキャンセルする事は苦渋の決断でとても悲しい気持ちでした」と、左足首負傷の写真とともに、声明を発表。練習中の怪我が原因で、大晦日前の試合を受けられなかったことを発表している。  望んでいた王者とのタイトルマッチは、10.24 横浜大会でなぜ実現しなかったのか。本誌では、クレベルのマネージメント山田重孝氏とともに、クレベル本人に取材を行った。 クレベルは濃厚接触者として、隔離生活をしていた ――2021年6月13日の東京ドームでの朝倉未来戦以降、クレベル・コイケ選手の次戦が決まっていません。RIZIN側の説明では「現在、クレベルと契約が無い」こと、「クレベルが体重を落とせず10月24日の試合を受けなかった」こと、さらに、「『11月7日だったら体重を落として受ける』と返答があったものの、怪我により試合を断った」とされています。この経緯について、今回はクレベル選手本人とマネジメントの山田重孝氏にお話をうかがいます。まず現在、RIZINとは契約が切れている状況でしょうか。 山田 その部分は最初に私がお話した方がいいでしょう。契約が切れたというよりは、クレベルの場合は1試合毎の契約だったんです。朝倉未来戦が急に決まったこともあり、複数試合契約の話もいただいたんですが、とても折り合うものではなかったから、今回も1試合の契約となりました。その代わり、他の団体等からオファーが来てもお断りするようにしますと。その際に、「大晦日にカイル・アグォン選手、3月に摩嶋一整選手に一本勝ちしているので、6月に朝倉未来選手に勝ったら、次は年末にタイトルマッチですよね」という話をしたんです。その際にRIZIN側からも「決定ではないですけど、そういう流れになるでしょうね」という電話のやりとりがありました。クレベルとしてもそこに賭けてやってきたわけです。 ――口頭で言っていたと。その後、契約が無いなか「10月、11月大会で斎藤裕選手とタイトルマッチで」というオファーが来たということでしょうか。 山田 10月、11月大会の前に、7月12日の時点で9月19日に予定されていた神戸大会のオファーをもらっています。でも次は12月という話になっていたから、クレベルは別の仕事を入れてしまっていた。何より連戦で疲れているから休ませたいし、本人も休みたいと。だから9月は「難しいです、お断りします」と返しました。その後、「9月19日が新型コロナウイルスの影響で流れそうなので、10月23日にタイトルマッチで」と言われたんです。それも前述の理由でお断りしました。  その後、8月下旬にRIZIN側と電話で話している頃、クレベルの近親者にコロナの陽性反応が出て、クレベル自身は陰性だったんですが、濃厚接触者になってしまいました。9月4日に、座間の私のやってる道場アラバンカ柔術アカデミーで榊原(信行)代表と笹原(圭一・広報事業)部長とお話をして、このときは10月24日に日付が変わっていましたが、大会出場を求められ、そこでも「クレベルが濃厚接触者になっており、道場も封鎖されている。隔離されて練習もできない状況なので体重も落とせない」と伝えました。それが「体重が落ちない」という言葉だけがマスコミに伝わっているのだと思います。 ――いまは誰がどこでコロナに感染してもおかしくない状況です。何ら責められることはありませんし、濃厚接触者が隔離期間を守ることは重要です。そして道場もいったんクローズしていたと。 山田 体重もそうですが、せめてタイトルマッチにはベストコンディションで臨ませてあげたいです。何より、最初から年末ということでスケジュールを組んでいましたから、その前に「やる・やらない」の話はしていない。7月12日の最初のオファーの時点でお断りしているんです。だから「3カ月前からオファーしている」と報道されましたが、その時点で明確にお断りしていました。 ――それがもし大晦日だったら受けていましたか。 山田 もちろん受けていました。約束どおりですから。 ――しかし、榊原CEOはクレベル側から「『11月7日だったら体重を落として受ける』と返答があった」と言っています。 山田 9月4日に、コロナのこともあり10月24日大会をお断りした際に、「どうしてもなんとかならないか」と言われ……2週間あれば何とか隔離生活からの出来なかった練習と身体の立て直しもできる、そこから追い込み練習が出来ればと思い、お互いの落とし所と考え、「11月半ばか、その手前であれば可能です。そこであれば私が責任を持って約束します」と答えました。その後、9月14日の昼に「11月7日に会場が取れる」と連絡が来ました。そこでクレベルに連絡したところ、昼は確認が取れなくて夕方に連絡が取れたら、「怪我をした」と。 【写真】左足関節外側靭帯を損傷したクレベルは(写真左)、1カ月の安静・加療が必要とされており、現在(写真右)は改善傾向にあるという。 ――11月7日の会場が決まった日に、連絡をしたらクレベルが怪我をしていたことが分かったと。 山田 そうです。それで「診断書を出してください」と言われ、診断書を提出しました。そうしたらRIZINから「ウチの主治医で診断書を」と言われて。町医者と言われましたが、その病院は整形外科も内科も脳神経外科もある国に認められた病院で、そのドクターに診断してもらったのだから、「そこまで言うのなら先生同士でお話ししてもらってください」と伝えました。その頃、クレベルは9月19日の大会に出場するヒロ(ヤマニハ)の練習に付きっ切りでしたから、移動も難しい。それでRIZINのドクターの方と、今回クレベルを診断したドクターの方で、話し合っていただいています。その後、10月24日横浜大会の会見があり、「怪我以前にクレベルの体重が落ちないから試合キャンセル」という話になっていました。 ――なるほど。そこには、最初に年末タイトルマッチの前提があったこと、コロナでの体重の問題があったことは語られていないということですね。では、クレベル選手自身は2021年の半年で3試合を戦って、次戦をいつ頃にしたいと考えていましたか。 クレベル(通訳を通じて)朝倉未来選手に勝った後は、やっぱり年末という話だったので、大体その方向に向いていました。半年で3試合を戦って、タイトルマッチに辿り着いた。そこまでに怪我もあったし、応援してくれるファンのためにももう100パーセントの状態で斎藤チャンプと戦いたい。朝倉選手との試合は向こうから指名があったし、決まったときは結構、急でした。受けるしかないと思いましたが、年末のタイトルマッチは100パーセントの状態で行きたい。今まで言われた通りに試合も全部受けてきた。急でも受けたし、朝倉選手が一番強い。突然でも受けた目的はベルトのためでした。もしコロナと怪我が無ければ、11月でも受けることになるのかなとも考えていました。それで、やる以上はタイトルマッチだから、中途半端で戦いたくない。もうコンディションが一番大事でした。 [nextpage] 体重のことを言われて、みんなたぶん嘘つきと思ったかもしれないけれど──(クレベル) ――いま山田さんから朝倉戦後、クレベル選手はコロナの影響で隔離生活となり、道場も閉鎖されたと聞きました。コロナの濃厚接触者になったのは、ジムでの練習でしょうか。 クレベル ……妻と3人の子供のうち、2人に陽性反応が出たんです。日常生活であれだけ気を付けていても、かかっていた。僕もPCR検査を何回か受けたけど陰性だった。でも家族に陽性反応が出て、練習は出来ないです……。 ――それは……一緒に暮らわけですからどうすることも出来なかったと思います。国内の感染者の累計は170万人を超えています。繰り返しますが、コロナはいつ誰がかかってもおかしくないですし、責められることではありません。 クレベル その時の体重のことで、みんながたぶん“嘘つき”と思ったかもしれないけど、ほんとうに、練習が出来なかった。その後で怪我をしたことは、斎藤選手に対しても、榊原さんにも、何よりファンの方々にも申し訳ないという気持ちです。ただ、いろいろなものが重なって、練習ができなければ体重が落ちない。そういうことでした。榊原さんも悪くない。今まで自分たちからは発表してなかったのは、妻や子供のこともあったし、喧嘩をしたくないから……。 山田 奥さんと子供のことでもあったから、発信してきませんでした。でも今回は本人が公開してもいいというなら……。 クレベル 最後に一番問題になったのは、やっぱり怪我なんです。怪我が無ければ11月の試合に間に合わせることが出来ました。 ――足の怪我はどのような状況で起きたのですか。 クレベル 柔術のトレーニング中でした。バックを取って足を組んだときに相手の足でダブルロックされてアンクルロックになった。これまでも何回もそのポジションに入られたことはあるけど、怪我になったことはない。もう本当にたまたまタイミングだけ。事故としか言いようがない。 ――全治はどのくらいと診断されましたか。 クレベル 1カ月。1週間か10日くらいで治ればと思ったけど、みるみるうちに足が黒ずんでパンパンに腫れた。靭帯を損傷していました。固定して歩けるようになったけど、軸足を痛めたから蹴りの練習は出来ない。ステップを踏む打撃、サンドバッグ、柔術……ハードな練習が出来ない。歩けても体重を落とすために走るのはやっぱり痛かった。すごい痛かった。サンドバッグを蹴ることは無理でした。 ――怪我をしてしまったとき、どう感じましたか。 クレベル 今回はタイトルマッチまであと一歩だったから、本当にすごいショックでした。とてもリスクがある試合で、大事な試合で、万が一負けた場合でも、後から怪我をしていました、とは言いたくないし、後悔したくない。これまでMMAだけでも34試合して、減量が出来なかったのは1回だけ。日本じゃなくて、KSWのときに。 ──あのときは、ポーランドまでの渡航に24時間かかり、マイナス3度で雪も降っているなか、現地に行く前に聞かされていたホテルにバスタブが無かったことなどもありました。 クレベル お風呂で水抜き出来ると聞いていたのが出来なかった。あれは辛かった。でも、いつもKSWでは、自分を狙う“ライオン”ばかりと戦ってきた。日本では、お風呂もあっていろいろ出来る。体重もいつもクリアしてるし、自分が減量できないことは、足を使えないこと。走れない身体で練習も出来ていなくては試合が出来ないです。 [nextpage] 会場で走っている姿をRIZINスタッフが見た? ――クレベル選手が会場で走っている姿をRIZINスタッフが見た、と。 クレベル 足は固定しているから、ファンとかに呼ばれて小走りに駆け寄ったのはあります。たぶん選手ならよく分かると思うけど、数メートル走るのは走れるけど、MMAの試合をするためには強くステップを踏んで蹴って、テイクダウンするためにも踏み込まないといけない。ハードな練習を何時間も続けてやるのは無理。榊原さんが走っていたと聞いてそう言うのも分かります。かなり無理してでも出る試合もあると思います。でも、僕のような選手は、タイトルマッチで負けたら終わり。 ――選手によって契約内容が異なるかと思います。試合数と契約期間、どこの国での独占契約なのか。また、RIZINとしか交渉できない独占交渉期間、またはその後に始まるマッチング期間(他団体と交渉してもOKだが、入ってきたオファーはこれまでの団体に知らせて、それにマッチングできる権利をこれまでの団体が持つ)、チャンピオンになればチャンピオンクローズとしての拘束も発生するでしょう。 山田 選手によっては、この試合に勝った場合という条項があります。何月までの契約、または他の団体からオファーが来た場合はそれと同等、もしくはそれ以上の契約内容で、どちらを優先するか、とか。朝倉未来戦のときは時間もないし、本人は試合に集中したいだろうから、今回は1試合、勝ったら次に何年間契約というのも交渉に応じますと伝えていました。 クレベル(日本語で)自分が一番言いたいのは、本当にファンの人たち、ご迷惑をかけて本当にごめんなさい。コンディションもちょっとずつ戻ってきて、もしまたぜひ機会があれば戦う姿を見せたいです。足のコンディションが100パーセントであれば、いつでも体重を落として、試合出来ます。私は絶対出来ます。これまで試合を逃げたことないし、やっとタイトルマッチに──自分の夢なのに、私は絶対逃げません。  私は最初にRIZINに入ったときから考えはひとつ。日本の中で育ってきて、日本の中のRIZINでチャンピオンになりたいという思いは変わりません。それはまだ私の夢です。KSWからもほかからも声をかけてもらいました。いまもいろいろ話はありますけど、海外に行くときは日本の旗を持って行っているし、日本でチャンピオンになるのは私の夢、それが私の中にあります。日本のファンや生徒たちにそれを見せたい。いま契約が無いけど、日本で4試合連続で一本勝ちして、その機会を得ることはそんなにおかしいことではないんじゃないのかなと思います。 山田 でも彼はファイターだから、戦う場所が必要です。「やらせる」とか、「やらせない」とかじゃなくて、他からオファーが来れば、当然そこも選択肢の一つになると私は思います。 ──主催者がファイターより上ということもなく、主催者がファイターを選ぶように、ファイターも戦う場所を選ぶことは当然だと思いますし、日本での4連勝後、クレベル選手を取り巻く環境が大きく変わったのも事実だと思います。そこに慢心は無かったですか。 クレベル 朝倉選手に勝った後、いろいろな新しいことが起き始めた。YouTubeも初心者としていろいろあるけど、流れとしては年末だろうという話があって、それに向けて心構えをしていたのは間違いないです。ただ、私は3試合連続で戦って、心も身体も、もうヤバいというのは感じてた。それでタイトルマッチを待ってたら、天国から地獄に戻った感じ。1年の中で。それをいま私は考えています。もしこの怪我のまま斎藤選手と戦ったら、怪我のことは試合前に言えない。それで負けたら、朝倉に勝ったのもたまたま運が良かっただけと言われると思う。怪我は試合に負けた理由にならない。 ――3試合とそれに向かう日々で消耗するのも分かります。1回抜かないと気持ちが持たなかったのも。クレベル選手はいま31歳。もう一度、海外に挑戦するとしたら最後のチャンスになるとも思います。KSWで王座を争ったマテウス・ガムロがUFCに移籍して戦っている試合も見ていますか。UFC初戦で敗れた後は、オクタゴンで2連勝しています。 クレベル もちろん、毎回ガムロの試合は見ています。4月にホルツマンをKOして、7月にジェレミー・スティーブンスをキムラで極めた。私は5R、彼と戦って倒れてない。彼はUFCで、今後のスーパースターになるだろうってみんな言ってるし、ガムロを見て、私も負けられないと思っています。今までこういうことは言わなかったけど、UFCの66kg、61kgのチャンピオンと練習を私はやったことあります。いい練習ができたと私の中で思ってます。 ――タイガー・ムエタイとプーケット・ファイトクラブでも練習していますね。ということは、フェザー級王者のアレクサンダー・ヴォルカノフスキーとバンタム級前王者のピョートル・ヤンと肌を合わせていると。 クレベル タイでヴォルカノフスキーともヤンとも練習しました。1回だけじゃない、毎日、何十回も試合形式でやった。もちろん練習は練習だけど、タイの練習の仕方は知っているでしょ? 私も心のなかでトップを目指せると思っています。日本にもいろいろな強いレベルの選手はいるけど、外で戦うのは、ライオンたちと戦うということ。いまの日本のトップの選手たちがヨーロッパでどこまで戦えるか、トップを目指すのはたぶん難しいと思う。 ――だからこそ、クレベル選手がRIZINで戦うなら勝たなくてはいけない。いまのチャンピオンの斎藤裕選手の強さについては、どう思っていますか。 クレベル 斎藤選手を過小評価する選手もいるけど、私は違う。チャンピオンになっているということには理由がある。彼はちゃんと全部出来る。私は斎藤選手は強い人、と思っています。打撃も出来る、下(ガードポジション)も出来る、立つのも上手い。 ――全部出来るがゆえに、クレベル選手にとっては相性が悪い相手でしょうか。 クレベル いや、朝倉選手が一番相性良くなかった。アサクラは本当にストライカーで危ない人。この間の試合も(萩原を)打撃で倒せた、やろうと思えばね。けど、朝倉選手はテイクダウン・グラップリングと、いつもと違うことをやったから、あの試合は萩原とレベルが違う。ただトレーニングしただけじゃないの(笑)。サイトウももちろん強い。特別に思っています。斎藤vs.朝倉を観たとき、会場で見たときは、斎藤が勝ったと思いました。けど、ビデオで何回も見返した後は、朝倉が勝ったと思いました。でも見て。(カイル・)アグォン選手、摩嶋(一整)選手、朝倉(未来)選手……私は全部一本勝ちです。そこが違います。 【写真】東京ドーム大会のメインで朝倉未来戦を控えていながら、サトシの勝利に思わず控え室から飛び出してリング上に祝福に駆けつけたクレベルとセコンドのマルキーニョス。 ――次戦をどのくらいに戦いたいですか。 クレベル 私はやっぱりファイターです。コンディションが100パーセントで機会があれば、ファイターだから試合を受けていきます。いまサトシがライト級チャンピオン、ヒロもバンタム級チャンピオンと戦った。私も初心と変わらずに、日本でチャンピオンベルトを見せたい人がいっぱいいます。ほんとうに心温かいファンのみんなが熱をくれる。サトシのように私も次でベルトを獲っていきたい。コンディションを整えられれば、私はどこでも、誰とでも戦います。 【関連記事】デカセギからRIZINへ~サトシとクレベル、日系ブラジル人とボンサイ柔術と日本の絆
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