MMA
インタビュー

【PANCRASE】JTTを離れたエリーが日本に帯同したルタリーブリの黒帯“未知強”ガブリエル・レーベン「僕はガチのJ-MMAファン。14年間の鍛錬を経て、すべての武器は僕の手の中にある」

2025/04/25 22:04
 2025年4月27日(日)東京・立川ステージガーデンで開催される『PANCRASE 353』(U-NEXT配信)にフランスから風変わりなキャリアを持つファイターが初参戦する。 ▼ウェルター級 5分3Rガブリエル・レーベン(X-Road/初参戦)武者孝大郎(マスタージャパン東京) 【写真】フランスで練習するUFCの軍神ブノワ・サン=デニと。(C)gabriel_levan  JTTでコーチをしていたエリー・ケーリッシュがPANCRASEに紹介したガブリエル・レーベンは、ルタリーブリの“レジェンド”ホベルト・レイタオンの黒帯。桜庭和志vs.ヴァンダレイ・シウバに衝撃を受けて、日本総合格闘技の虜となり、MMAが禁止されていた当時のフランスでグラウンド打撃無しの“パンクラス”ルールを戦っていた。  そこから14年。世界中を旅して、UFC強豪のブノワ・サン・デニや、DREAMやBellator参戦のカール・アモーゾらと練習を積み、36歳にして満を持して初のフルMMAに臨むという。レーベンは本当に“未知強”なのか。このネット時代に、まだ世界も知らない青い目のバキが、PANCRASEでヴェールを脱ぐ。 ルタリーブリはトップから攻める ──格闘技のバックボーンを教えてください。 「自分のルーツはノーギ・グラップリングなのですが、柔術のほかに、ルタリーブリのバックボーンがあります」 ──そうなんですね、ルタリーブリといえば、ウゴ・デゥアルチやマルコ・フアス、日本ではちょうど同時期に来日したアレッシャンドリ・フランカ・ノゲイラですとか……。 「ペケーニョ!」 ──やはりご存じですね。習っていたのは? 「僕の先生の名前は、ホベルト・ルタオンと言います」 ──ホベルト・ルタオン……日本で言うホベルト・レイタオンですね! ルタリーブリのレジェンドの。 「はい。ホベルト・レイタオンからルタリーブリを習い、黒帯です。バックボーンの話に戻すと、幼少期に遡ると、6、7歳ぐらいから柔道や空手を習っていて、13歳から14歳くらいの時にMMAと出会ったような感じですね。『PRIDE.13』の桜庭和志vs.ヴァンダレイ・シウバがきっかけです。あの試合、自分にとって初めて見るグラウンドでの蹴り技が許されたルールに、衝撃を受けたんです。“え? これはリアルなの?”って信じられないと同時にすごく魅了されたんです。それがMMAの初期衝動のようなものでした。そこからサバットやボクシング、合気道など様々な格闘技をやってみてから、いわゆるMMAとはルールセットが異なるフランスのPancraseという総合格闘技を経験しました」 ──公表されているプロMMAの記録を見ましたが、この時期はフランスでMMAは認可されていなかった頃にあたりますか。 「その通りで、公式プロMMA戦績として残してもらっていますが、グラウンドでの打撃が禁止されたルールなので、実は少し違います。だから正直言ってしまうと自分自身としては、アマチュア戦績のようなつもりでいます。プロ団体の記録ではありますが」 ──その後14年間、試合をしていません。 「ひたすら鍛錬をして、武道家としての追求をしていた、というところでしょうか。アメリカからタイ、日本もですけど、世界中を旅して、たくさんのファイターたちと交流しましたし、いろんなメガジムにも行きましたし、グラップリングの大会などに出ていましたけれど、自分自身の成長のためにです。というのも実戦をやってみて、素直に自分のレベルは低いって感じたんです。それでも、マインドセットにおいてはとても強固なものを持っている自負はありました。  だからとにかく練習を積むことによって、技術を高めることが必要でした。“もっと上手くなりたい”と思っていました。ただ、そうやって、“これも学ばなくてはいけない、あれも習得しなくてはいけない”と鍛錬に余念がないことによって、自分が戦うための実力はまだ伴っていないのでは? という疑念にも繋がってしまって。それで今回このタイミングに来てやっと、自分の強いマインドセットに、技術や実力が追いついてきて、ファイターとして戦える状態になったというふうに実感しているんです」 【写真】右のレーベンの隣りは現KSWライト級王者のサラディン・パナス。5月10日のKSW106で防衛戦を迎える。その隣りはUFCのサンデニ。 ──何か仕事をしながら練習していたということですよね? 「この体を見てお分かりかもしれないのですが(照れ笑い)、実際フィットネスにもすごく傾倒していたから、2012年から始めたソーシャルメディアで、ちょっとしたフィットネス・インフルエンサーになったというのがありまして……」 ──なんと! じゃあ我々が思っている以上にフランスでは有名人ということですね? 「ちょっとです、ホントにちょっと(照)」(※インスタのフォロー数は8.9万人) エリー(日本語で)ちょっと有名! ──エリーコーチとは古くからの知り合いだったのでしょうか。馴れ初めを教えてください。 エリー 僕は朝倉海vs.元谷友貴のために初めて来日したんですけど、『RIZIN CONFESSIONS』に出演する僕をガブリエルが観て、英語のアクセントがフランス語圏の人間だと気づいて、僕にコンタクトしてきたっていう(笑)。日本のMMAが大好きらしくて、僕のやっていることに対して興味を持ってくれて、それで繋がったんです。 ──なんと母国ではなく日本でのキャリアを通じての出会いなのですね。ミットを持つようになったのも最近ということだと思いますが、ガブリエルの強さはどういうところですか? エリー ご覧の通り、このマスキュランな体格から繰り出されるパワーはすごいですね。そしてこう見えてバランスがとてもよくて、これだけ大きな体格をしていても動きが非常にスムーズなんです。だからすごくうまく出力してそのパワーを発揮できるんです。シンプルにいうと、敏捷性とパワーがミックスされたファイターという感じです。 ──エリーが前進して、ガブリエル選手がバックステップしてのミット打ちもスムーズでした。 エリー この人はいろんなことを学ぶ興味や関心が強いタイプの選手なので、前に出るボクシングもできるし、おっしゃるようなバックステップも駆使できる。そこに組んでレスリングできるというのが加わってとてもMMAとして完成度が高いですね。 「エリーからかなりアドバイスをもらい、ゲームプランも準備できていますし、練習もそれに合わせたことをいろいろとしました。 エリーコーチがフランスに戻ってきた時に私の家に泊まって、合宿のような形で練習に付き合ってもらいました」 ──そういったなかで、バックボーンのルタリーブリが活きていると思う部分は? 「グラウンドワークとして、異なるスタイルができるということですかね。とりわけ僕のルタリーブリのコーチは、レスリングに意識が向いていたのもあって、僕自身トップポジションを好み、背中をつけてグラウンドで仕掛けるというのは好まないんです。これがMMAにとってはとても有効ですよね。MMAの場合トップを取ればパウンドを落とせるのが強みになりますし」 ──ノーギだということもMMAに結びつけやすいですね。 「そうです。非常に親和性が高い。やっぱりギの技術は襟を掴むであるとか、それを活かしているものが多いので、ノーギの寝技のほうが近しいですよね」 ──そんなガブリエル選手が満を持して今、日本で試合を決意したのは? 「僕はガチのJ-MMAファンで、桜庭和志を発見したことがMMAとの出会いで、彼はずっとアイドルだったし、今でもそうです。ミノワマンとか高田延彦にいつか会ってみたいって思いながらずっと観てきて、もちろん山本KIDもヒーローですし。川尻達也とか石田光洋みたいな、茨城のT-BLOOD勢が好きだし、ほんとうに、日本のMMA界からレジェンドと言えるファイターがたくさん生まれていますよね。PRIDEだけじゃなくて色んな団体を見ていたんです。修斗からZST、それに戦極、K-1だって見ていました」 エリー(聞いていてたまらず日本語で)ほんとうに“日本格闘技オタク”!!(笑) 「はい(笑)。そのなかで、PANCRASEといったらシャムロック兄弟にバス・ルッテンといったレジェンドがその礎を築いてきた歴史ある団体。今はリングではなくてケージですし、ルール的にも掌底もなくレガースもなく変更されているから、そういう自分の憧れと、実際に日本で戦う機会があるとしたらという考えとが合わさったときに、一番最初に脳裏に浮かんだのがPANCRASEでした。2019年に日本の大阪に来たときに『DEEP&PANCRASE』大阪大会を生で観戦したんです。あれを見て(息を吐いて)“OK…”“俺はいつかここの大会に出たい”って思ったんです。あと僕にとってはあのキング・オブ・パンクラスのベルトはすごくスペシャルな感じがしますね」 [nextpage] 新しい地での出会いは進化につながる ──前田吉朗vs.ペイヨングサック、川原波輝vs.潤鎮魂歌などが行われた大会でした。それでタクミ選手と大阪で練習などもした写真があるのですね。今回のPANCRASEにはエリーさんが紹介したということですか? エリー そうです。僕自身はトミー矢野を通じて繋がったんですけど。ガブリエルが継続参戦できるように話しています。 ──敏腕マネージャーですね。ではベルトも狙っていきたいですね。 「100%、欲しいです。ウェルター級のランキングに入ること。その後、ベルトを取りに行くことが目標です」 ──いよいよPANCRASEに参戦となって、対戦相手の武者選手は、空道・柔道ベースの選手です。 「MMA空手出身で、しっかりグラウンドワークもできる選手だと感じました。26歳と競技者、選手として成熟していくところでフィジカルも強い印象がありますし、あと気持ちが強いだろうなと思っています。彼の試合を見ていて、試合開始から終わりまで常に前に出て、決して諦めないという、果敢に狙いに行く姿勢を見ました。そういう選手と対戦できるというのは自分にとってとてもよい機会だなと思っています」 ──ガブリエル選手としては、ここまで鍛錬したMMAとしての引き出しは多いでしょうか。 「そうですね、僕をTapologyの戦績だけで見たらしょぼいけれど、ずっとたくさんの練習をしてきて、そのなかでUFCファイターのブノワ・サン・デニのようなすごい選手ともやってきています。日本のDREAMにもBellatorにも出ていたカール・アモーゾも練習仲間ですし。彼はCage Warriorsのベルトを獲りましたね。ほかにもそういう素晴らしい選手たちとたくさんの経験を積んできました。だから、おっしゃるような“引き出し”はかなり多く持っていると思います」 ──来日してから、日本のジムで日本の選手と練習していますか? その印象も含めて教えてください。 「階級的に、日本人のなかでも大きい選手と練習する必要があって、GENで何人かと練習しています。内藤由良や林源平、ストラッサー起一、それからPFLファイターの菊入正行であるとか。日本の選手たちは素晴らしいと思いました。それで、GENでは大きい選手と練習できるけどケージがないので、三上ヘンリー大智の紹介でケージのあるEX FIGHTにも行って、こちらではより実戦を意識した練習ができている感じです。ヘンリーとはフランスで試合をしたときに出会って友人なんです」 ──帯同しているエリーコーチは、朝倉海との出会いをきっかけにあなたが大好きだという日本のMMAの世界で、腰を据えてジムのヘッドコーチを務めました。その彼の経験について、見聞きしたり本人と触れ合うなかでどう感じましたか? 「エリーが日本で取り組んできたことを一言で言えば、大冒険ですよね。いろんな人に出会って、いろなシチュエーションでいろんな感情がわいたでしょうし、いい時もあれば悪い時もあったでしょうからね。その経験をすべてひっくりめて、彼はコーチとして日本という地に、ひとりの名コーチとしてその名を間違いなく刻んだわけですから、とてもとても、めちゃくちゃ尊敬してます」 エリー ありがとう (C)gabriel_levan ──あなたのように、たくさんの国で、いろんな格闘技に、さまざまなビッグネームのファイターとも拳を交えて触れてきた選手から見て、やはり日本の選手にとって外国で経験を積むようなことは重要だと思いますか? 「そうですね。ひとつのところで練習を積むことでもちろん技術を身につけることはできるようになるのですが、練習の仕方もそれぞれ、所変われば違います。僕にとって格闘技をするということは、発見をすること。人との出会いであって、それはその人のもつ格闘技の体系であったり、マインドセットも含めての、出会いなんですね。ファイターにとって新しい地での出会いは進化につながると思います。新しいトレーニングパートナーと、新しいメソッドのもとに肌を合わせることは大事なので、もし踏みとどまっている選手が日本に多いのだとするならば、いろんなところに行ってみてほしいなと思いますね」 ──日曜日の試合に向けて、日本のファンにメッセージを。 「強いメンタルと力強い試合をします。ファンも私も熱狂するような試合をしますので期待してください。KO、サブミッション、すべての武器は僕の手の中にあるので、試合を見て楽しんでください。レッツゴー!」
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