2021年10月29日(金)東京・後楽園ホール『KNOCK OUT 2021 vol.5』にて、8勝(7KO)無敗の龍聖(TRY HARD GYM)とKNOCK OUT-BLACKフェザー級王座決定戦3分3R延長1Rを争う銀次(Next 零)のインタビューが主催者を通じて届いた。
銀次は福岡在住の選手で、九州プロキック・フェザー級王者、TENKAICHI同級王者、大和57.5kg王者の三冠王。戦績は16勝(7KO)3敗3分。5月のKNOCK OUTに初参戦し、小笠原裕典と延長戦の末に引き分けた。9月の九州プロキックボクシングでは、過去2度勝利を収めている栗秋祥梧と3度目の対決を行い、2R1分40秒で右ボディブローによるKO勝ち。リング上からKNOCK OUTタイトルマッチをアピールし、今回実現に漕ぎ着けた。
倒せるなら倒してみろって感じです
──今回のインタビューにあたって、画像をお送りいただきましたが、銀次選手が手に持っているポスターは……。
「ああ、いつも応援してくれてる仲間が作ってくれたんですよ。事務局が作ったポスターを見て、『こんなポスターがあるか! 銀次も頑張ってるのに!』って激怒して、速攻で作ってくれました。九州の人間は気が短いんで、行動も早いんです」
──そうですか。いやしかし、選手が勝手にポスターを作るというのは前代未聞ですね。運営的にはどうなのか……。あのポスターを最初に見た時、銀次選手は率直にどう思ったんですか?
「正直、衝撃を受けたというか予想外でしたね。でも見てるうちに怒りが込み上げてきて…気付いたらポスターをビリビリに破ってしまってました」
──龍聖選手とは同じ立場で王座決定戦に出場するわけで、穏やかではないですよね。
「そうっすね、ただ、結局残るのは結果じゃないですか。倒すことには変わりないんで、全然いいっすよ。上等です。でも僕以上に周りが怒ってて、『なめてるな、何だあのポスターは!』って言われるし、みんな龍聖選手が嫌いなんで、『アイツをぶっ倒してくれ!』って声をたくさんもらってます。ビッグマウスなところが、前から気に入らなかったみたいなので。まあ僕は、相手がいい人だろうがどんな人だろうが、倒すのに変わりはないですから。周りにも『いつも通り倒しますから』って言ってます」
──龍聖選手は厄介な人たちを敵に回したかもしれないですね。
「確かに、自分の地元の福岡県飯塚市は福岡の中でもけっこう気が荒いところなんで、試合当日はその殺気が龍聖選手にも届くと思いますね」
──ビッグマウスと言えば、カード発表会見でもいろいろとやりとりがありました。会見での印象はどうでしたか?
「いや、別にオーラもなかったし、デカいなとも感じなくて、普通の人っていうか……本当に何とも思わなかったですね。身長も、もうちょっとデカいかなと思ったんですけど、あんまり自分と変わらなくて。あと何か落ち着きがないなって感じました。まだ若いからかもしれないですけど」
──会見で闘志は湧かなかったですか?
「いや、やっぱり目の前にベルトもあって、さらにそのベルトが欲しくなりました」
──龍聖選手はそのベルトを自分で肩にかけたり、銀次選手のことを「魚みたいな顔」と評したりと、挑発的な部分もありましたが。
「別に、自分からしたら『あんまり言われなかったなあ』って感じでした。もっとガンガン言ってくるのかと思ってたら意外と何も言わなくて」
──実際、試合がだいぶ近づいてきましたが、実際無敗でほとんどがKOという相手に対して、どう戦うんでしょうか。
「あれだけ倒してるんで、破壊力とか攻撃力はたぶんあるんだろうなと思いますけど、自分はまだ一回もダウンしたこともないし、KO負けもないんで、自分が倒れる気は全くないです。倒せるなら倒してみろって感じですよね」
──自分が倒れるとこは想像つかない?
「そうっすね、自分でもイメージ湧かないですね。逆に倒すイメージはもうできてますよ。もうずっと頭の中でイメージして戦ってるんで、早くそれを現実にしたいです」
──今回のポスターを見ても、龍聖選手はいろいろ期待もされてると思います。だからいろんな意味で、ここで勝ったら大変なことになりますよね。
「ネットとかSNSとかでも、みんな龍聖が勝って年末とか、もっと名のある選手とやってほしいみたいな感じで言われてますけど、そんな全てをひっくり返してやりたいです。全てを変えてやります。主催者側も龍聖選手を推していきたいんだろうとは思いますけど、そうはさせんぞっていう感じですかね」
もっと九州の格闘技の熱も上げていきたい
──この王座決定戦への出場について、事実上、決め手になったのが9月5日、福岡での栗秋祥梧戦(2ラウンドKO勝ち)ですよね。
「はい。あそこでいい勝ち方ができたから、ここに繋がったって感じですかね。やっと、いつもの練習通りの動きがちょっと出てきたかなっていう試合だったんですよ。いつもなかなか練習通りの動きができなかったんですけど、自分もキャリアを重ねてきて、やっと最近は一番動ける状態で試合ができてる印象なんです」
──では、落ち着いて試合ができた?
「そうですね、冷静に戦えて、しっかり倒し切ったのでよかったなと思います。勝ったらタイトルマッチをアピールするつもりだったし、地元開催ということもあって負けられないし、ということでプレッシャーもいろいろあったんですけど、その中でもいい勝ち方ができたので、かなりよかったですね」
(写真)栗秋祥梧を2RでKOした──いい流れで今回の試合につながったと。
「絶好調で来てますね。もうこの勢いのまま本当に主役の座を奪おうと思ってます。今までにもタイトルは獲ってますけど、東京の、というか全国区のメジャーのベルトなんで、それを持ってるのと持ってないのでは全然違うんで。いくら九州のベルトを何個も持ってても、やっぱり東京のベルトが1個もなかったら、本当にチャンピオンなのかっていう話なんで。やっぱ何でも東京から発信されるじゃないですか。東京で活躍した選手が一躍有名になるんで、やっぱ東京で活躍しないとというのはありますね」
──現状はそうなっていますが、このベルトを獲ることによってそういう状況を変えたいという気持ちもありますよね。
「もちろん。九州在住の人間が東京で活躍すれば、九州の人たちももっと盛り上がってくると思うんですよね。『東京で試合します』と言ってもあまりピンとこない人もけっこういて、『ああ、頑張って』みたいな感じなんですよ。でも東京の人たちには熱があって、選手に対してメチャクチャ応援とかサポートしてくれたり、熱く接してくれるじゃないですか。そういうサポート面に関しても、九州ではなかなか本気でやってくれる人がいないんです。そのへんも変えたいし、もっと九州の格闘技の熱も上げていきたいし。自分がここで結果を残していけば、もっと下の若い子たちが『九州からでもチャンピオンになれるのか。自分もなれるんじゃないか』っていう期待を持って頑張れると思うんですよね。自分が活躍して、いろんな人たちにパワーを与えていけたらなと思います」
──その意味でも本当に大事な一戦ですね。
「そうですね、これは本当にデカい一戦だと思います。絶対に九州にベルトを持って帰るつもりでいます」
──この一戦のために、特に強化している部分というのはありますか?
「対策はしてますけど、特にここを強化したってのはあんまりないですかね。全体的な底上げはしてますけど」
──で、倒すイメージを持っていると。
「ありますよ。何しろ彼は負けたことがないんで、初黒星を味わわせてやりますよ。歴史に残るでしょ(笑)」
──ではそういったところも全部踏まえて、当日一番注目してほしいポイントは?
「今回は気持ちを見てほしいですね。気持ちと根性で戦って、もう龍聖選手がイヤ倒れするぐらい攻め抜いてやろうと思ってます。会場を爆発させてやりたいと思うんですけど、けっこう自分の試合って、ガッツリ倒しちゃうんでドン引きされるんですよ(笑)。今回も推されてる龍聖選手が初めて倒されて負けて、会場を静まりかえらせてやりますよ」