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2021年10月2日(土)、RIZINの新シリーズ『RIZIN LANDMARK vol.1』がU-NEXTにてPPVライブ配信されるも、過去最高の購入申し込みがトラブルに繋がった。
当初は18時30分から配信開始・19時試合開始予定だったが、配信トラブルにより、20時から配信がスタート。スマートフォンのアプリからの視聴は可能となったものの、ウェブブラウザからのアクセスはエラーが発生しており、3,800円のPPV購入者で視聴が出来なかった視聴者も多くいた。
このトラブルについて、RIZINの榊原信行CEOは、試合後の囲み取材冒頭で、「言い訳はできませんが、配信のトラブルがあったことを、まず最初に心からお詫びしたいと思います。本当にすみませんでした。楽しみにしてくれて見れなかったファンの人たちもたくさんいたと思います。今後この失敗を教訓にして、U-NEXTさんとこれからも、共に進むかどうか、色々そこも含めてしっかり検証していきたいと思いますし、まず、前もって買っていただいたり、買ったけど見れなかったファンの方、お客様には、U-NEXTさんと払い戻し対応したり、アフターケアをしっかりさせていただきます。心からお詫び申し上げます。本当にすみませんでした」と謝罪。払い戻し対応を行うとした。
また、アクセスエラーとなった原因については、「ひとつは、(大会直前に)アクセスが集中し、購入していただく皆さんが集中したことでサーバーが機能しなくなったのだと思います。U-NEXTの想像以上に、試合まで1時間を切ったあたりから、すごい数のアクセス、購入アクションをファンの皆さんにしていただいた。それがシステム障害を引き起こす原因となったことは間違いないようです。今後は事前購入に特典をつけるなりして、事前購入を促すことで、分散して購入していただく方法を考えることが大事かと思っています」と、直前にPPVを購入して視聴する駆け込み視聴が多かったことを挙げた。
その数字は、「具体的には言えませんが、過去のU-NEXTでのLIVEのPPV配信では最高の数字を出す結果になりました」といい、U-NEXT内でのサザンオールスターズや、5週連続無観客配信ライブを行ったB'zのオンラインライブの購入件数を「大きく上回った」という。
「ポジティブにとらえればそれだけたくさんのお客様に視聴したいと思っていただけた。過去の音楽コンテンツも含めて、記録を塗り替える結果を出すことができたことに、この場を借りて御礼申し上げたいと思います。格闘技のコンテンツの力、そしてRIZINの力、朝倉未来、萩原京平以下8選手の、素晴らしい試合でしたし、みんなの、チームとしての力をしっかり示すことが出来ましたし、視聴いただいたお客様には楽しんでいただけたかなと思います」と、人気YouTuberでもある朝倉未来を中心としたマッチメイクで、格闘技のコンテンツとしての力を示すことが出来たとした。
PPVの実数は非公表だが、「それでも、過去、我々が2002年にK-1と一緒に国立競技場でやったDynamaite!の数字(視聴料金2,000円で10万件)まではいってない」という。
榊原CEOは、「僕らが目指すのはこの数字じゃないと思っていて、海外のメイウェザーvs.ローガン・ポールは100万件を超える。配信に切り替えたときに、プラットフォームを持つ皆さんと圧倒的なインフラの整備をしていく必要があります」と、配信環境の安定は避けて通れない課題とした。
「そのパートナーが、U-NEXTさんであればいいとは思いますが、トップの皆さんと協議して、今回の大失敗を糧に、今後どうケアしていくか相談します」と、パートナーの変更も示唆するが、自前の「RIZIN LIVE」などの配信フォームとは異なる強みもあるという。
「U-NEXTさんですでに顧客を持たれている。月額サブスク(リプション)として加入者が圧倒的な数を誇る。興味が無くても、チャンネルには視聴習慣がついている顧客がいるのは、RIZIN LIVEとは別物。持っている力を活用できるというのが今回の数字にも乗ってきているのが大きいと思う」と、大手配信プラットフォームとして、より広い層に訴求できる力が魅力とした。
しかし、現場では配信トラブルで、刻々と進行する時間のなか、様々な苦悩や決断があったという。
「スタートが1時間遅れたことは本当にご迷惑をおかけして申し訳なく、こちらもずいぶん肝も冷やしました。テレビやスマホでは見ていただくことができましたが、ブラウザで購入いただいた方に映像が配信できないということが、大会開始の19時少し前に発覚した。同時に、90名くらいの観客の方にも会場に入っていただいていたので、ライブ進行の部分の皆様へのケアと、配信を事前にご購入いただいてスタンバイしている方に、ずっと同じ画面を出し続けなければいけないことも悩ましかった。U-NEXTのホームページもダウンし、こちらからの状況報告のアップデートが、購入者にお伝えできず焦ったこと。有料配信をメインにということで皆さんと覚書もかわしましたが、最悪、ほかの配信方法を考えるのか、ライブ会場だけのライブ進行だけで、配信を全部諦めるのかも含めて、裏でとてもU-NEXTとやりとりがありました」と、厳しい決断を迫られていたことを明かした。
それでも「久しぶりにパニックになりかけたスタッフチーム含めて、新しいことへのチャレンジの難しさを感じ、そういった体験を得ることができたことを、失敗から学んで次に繋げたい。トラブルが2度と起きないように、どう改善するか。起こしてはいけない事故をプラスに変えられるか。苦い経験はうまくプラスに変える材料にしたい」と前を向いた榊原CEO。
大量の観客を入れるという従来型の興行スタイルではなく、ファンクラブ限定チケットを20万円と高額に設定し、有料ライブ配信を収益の柱に据えた新しい「RIZIN」の形態として始動した『RIZIN LANDMARK』。朝倉未来ありきの旗揚げ大会で、大きな課題と可能性の両方を感じさせた新シリーズは今後、どんな展開を見せるか。
大会前の本誌の取材に「場所を限定せずに、アリーナを飛び出そうという発想です。スタジオなどの屋内だけでなく野外もあり得るし、国内だけでなく海外での大会もあり得る。ランドマーク──象徴的な場所、みんなが興味を持つような環境でやりたいということのほかに、“これが格闘技の大会の流れを変えたランドマークの大会だったな”と、ファンや選手にとっても、記憶のランドマークになるような大会にしたいという意味も込めています」と語っていた榊原CEO。
苦難のなかに「過去最高アクセス」という希望も乗せた新シリーズの船出、今後どこへ舵を切るか。