5月17日、シンガポール・インドアスタジアムで行われた「ONE:Enter the Dragon」メインイベントで、青木真也(イヴォルブMMA)がクリスチャン・リー(シンガポール)を相手にONE世界ライト級王座初防衛戦に臨み、2R TKO負け。リーが新王者となった。3月31日の両国国技館大会のメインでエドゥアルド・フォラヤンからライト級王座を2年4カ月ぶりに奪還した青木は約1カ月半のスパンで、リーのホームであるシンガポールで戦った。
「MMAの未来形」と呼ばれるクリスチャンとは16歳のときに初めてスパーリングをしたという青木は、そのつなぎ目のない動きについて、「彼には予定調和がない。構えて相手を見ての攻防が存在しない。ムエタイよりも早く、ボクシングよりも早いリズム」と高く評価していた。
王座を奪回し、じっくり試合を選んでもおかしくない環境で、20歳で11勝3敗、朴光哲、横田一則、徳留一樹という日本人強豪を立て続けにフィニッシュしているクリスチャンとの試合を望み、実現させた青木。キャリア3年半で王座戦を決めたクリスチャンとの試合は、MMA16年目・44勝8敗1NCの戦績を持つ36歳の王者にとってチャレンジングでスリリングなタイトルマッチだった。
試合前のインタビューで青木は、“MMAの未来形”と呼ばれる20歳のクリスチャンを防衛戦の相手に希望した意図を、「上のやつらが下との試合をやらなかった。当時の僕はそれを見ていい気持ちがしなかった」といい、次世代の超新星を相手に「僕が勝ちますよ。受けるんじゃない、挑戦する試合だから」と語っている。▼ONEライト級(※77.1kg)選手権試合 5分5R×青木真也(王者/日本/イヴォルブMMA)※初防衛戦[2R 0分51秒 TKO]○クリスチャン・リー(挑戦者/シンガポール/イヴォルブMMA)※青木が初防衛に失敗。リーが新王者に。
挑戦者のリーが先に入場。コーナーに姉のアンジェラ・リーが就く。王者の青木のコーナーマンには北岡悟、宇野薫が就く。リングでの5R王座戦。
1R、サウスポー構えの青木、オーソドックス構えのリー。組んで青木は四つ組みで小外がけもリーはロープに手をかけ踏ん張る。しかし、青木は再度、右で差して四つから小外でテイクダウン! コーナーでハーフから頭をつけて得意の左右からパスを狙う青木に、左で小手に巻き立つリー!
しかし青木も右で差してみたびテイクダウンとともにサバ折りでそのままマウントに! ヒジを落とす青木。出血するリーは、ケージウォークさながらにロープを蹴ってブリッジ。そこで前に落ちながら青木は腕十字へ!
青木はリーの右腕を右脇下に挟み、腕を伸びきらせるがリーは万歳の形でずらしながらブリッジ! さらにまたいで外しに行こうとすると、青木は自ら先に解いてしっかりサイドから抑えに行く。すぐにリーの脇を差しパスガードし再びマウントへ。
リング中央で再開。青木は縦のヒジを落として万全の体勢ながら、残り時間を見てか、多少強引に腕十字へ行く。ここはリーも上体を起こして外す。
2R、リーの左右の前進に低いダブルレッグは青木も切るリー。しかしなおも詰める青木は四つに持ち込む。ここも突き放すリー! 右を出す青木にリーは左を効かせると、青木は後退。ロープに詰まると続けてリーが右をヒット! さらに左のダブルに青木はコーナーでダウン。リーがパウンドラッシュ。レフェリーが止める、その直前に立った青木は早めのストップに不満気な表情を浮かべたが、顔を腫らせている。すぐにリーに近づき、若き王者を祝福した。
20歳のリーは、リング上で「シンヤ、あなたはレジェンドだ。この機会を与えてくれてありがとう。両親や家族に感謝したい。(チャンピオンと呼ばれ)いい響きだよ。一番若いチャンピオンになれて嬉しい」とマイク。36歳の青木はリーの肩のベルトを叩き、「マイキャリア、マイベルト、パス(俺のキャリアとベルトをパスする)」と語った。
▼ONEライト級(※77.1kg)キックボクシング王座決定戦 3分5R×ニキー・ホルツケン(オランダ)[判定0-3]〇レギン・アーセル(オランダ)
ホルツケンは連勝を重ねて2007年のK-1 WORLD MAX 2007世界一決定トーナメント開幕戦に出場。1回戦でブアカーオに敗れた。2009年の同トーナメントにも出場して準決勝へ進出したが、やはりブアカーオに敗れている。その後はGloryを主戦場に連勝を続けウェルター級王座を獲得。2013年からはボクシングにも出場して連勝し、WBSSにも参戦を果たした。
1R、体格で優るアーセルに対し、ホルツケンはガードを固めて前へ出ていく。ホルツケンの後ろ回し蹴りに場内が大きく沸く。鋭いインローとパンチを繰り出すアーセルだが、プレッシャーをかけていくのはホルツケンの方。
2R、アーセルがワンツーとロー、そして飛びヒザ蹴りと一気にラッシュ。ホルツケンも強打を返して激しいせめぎ合いに。アーセルのヒザ蹴りにホルツケンは左右ボディで応戦。このボディ合戦はホルツケンに分があったか、アーセルは下がっていく。
それでもパンチを繰り出してホルツケンをロープに詰めたアーセルに、ホルツケンはヒザをボディに突き上げた。ダウンかと思われたがレフェリーの判定はローブロー。再開後、ホルツケンはバックキックでボディを攻める。
3R、ホルツケンは強いジャブを出してアーセルを下がらせるが、アーセルは2R序盤と同じようにパンチから飛びヒザ蹴りを連発して前へ出る。今度はアーセルの左ボディでホルツケンの動きが止まり、アーセルは左右ヒザ蹴りとボディブローでどんどん前へ出る。ホルツケンはガードを固めて耐える。
4R、アーセルの右ボディをもらったホルツケンは下がる。ホルツケンもジャブでボディを打ち返すが、アーセルは手数が多く、ヒザ蹴りも突き刺す。両者ともスピードがかなり鈍り、手数も減ってきた。残り30秒、アーセルがジャブからの飛びヒザを顔面へヒットさせてダウンを奪う。
5R、ホルツケンは顔面にパンチを集めて左ボディを打つ。お互いにボディを攻め、ボディを守る展開。手数が少なく、レフェリーから注意を受ける。前に出るホルツケンがパンチとバックキックで勝負をかけるが、アーセルもワンツーと打点の高いヒザ蹴りで反撃。終盤、ホルツケンの右ハイがヒットしたが、ダウンを奪い返すまでには至らず。判定3-0でアーセルが王座に就いた。
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▼ONEウェルター級(※83.9kg) 5分3R×セージ・ノースカット(米国)[1R 0分29秒 KO] ※右フック○コズモ・アレッシャンドリ(ブラジル)
ノースカットは2014年にアメリカのローカル団体でプロデビューを果たすと全てフィニッシュして5連勝し、UFCと契約。6勝2敗の戦績を残して今回ONEに初参戦を果たす。年齢も23歳とまだまだ若く、これまでKO負けを喫したことは一度もない。バックボーンは、空手、テコンドー、ブラジリアン柔術。
これまで、エディ・アルバレス、デメトリアス・ジョンソンや岡見勇信などトップ選手との契約が相次いでいるONEだが、ここに来て、23歳の新鋭選手であるノースカットが契約に合意した意義は大きい。今後、ますます多くのトップ選手がONEに参戦することになるだろう。
対するアレッシャンドリはブラジルのムエタイ界で頭角を現すとタイに拠点を移し、タイやイタリア、豪州などで戦績を重ね、2009年末にはタイの『KINGS CUP』で優勝。
翌10年3月にはイタリアでIt’s Showtime世界77kg級MAX世界王者に君臨。2011年3月にはイタリアでジョルジオ・ペトロシアンと対戦し、てこずらせて判定で惜敗というバリバリのワールド・トップクラスのキックボクサー。
1R、ともにオーソドックス構え。遠い間合いから左サイドキックはノースカット。
MMA用に広くスタンス取るアレッシャンドリは先に詰めると、ノースカットは下がりながら左に回ると、不用意に左を出すが、そこにアレッシャンドリは頭を下げて右のロングフック! アゴを打ちぬかれて前方に崩れたノースカットにアレッシャンドリはさらにダウン際に左も返し、完全KOした! 元UFCファイターが簡単には勝たせてもらえないONE。超新星のノースカットもONEデビュー戦でマットに沈んだ。
▼ONEライト級(※77.1kg)GP準決勝 5分3R×アミール・カーン(シンガポール)[1R 2分50秒 KO]○ザイード・フセイン・アサラナリエフ(トルコ)
トルコ在住のダゲスタン人のザイード・フセイン・アサラナリエフは、日本大会でエディ・アルバレスをKOしたティモフィ・ナシューヒンを2018年9月に1分57秒で下している。準々決勝ではエブ・ティンも25秒でKOに下しており、2018年3月の山田哲也戦以降、3連続フィニッシュを決めている強豪だ。
対する地元のアミール・カーンはアリエル・セクストン欠場による代替選手。2018年9月にホノリオ・バナリオに一本勝ちもフォラヤン、セクストンには敗れている。
1R、アサラナリエフvsカーン、ともにオーソドックス構え。先にローはアサラナリエフ。さらにシングルレッグからハイクラッチでリフトしテイクダウン! すぐにサイドを奪うと、脇を差し右で枕に巻くが、上体を立てたところを両足で挟んだカーンが際で立ちあがる!
しかしその際もバックについてボディロックからテイクダウンはアサラナリエフ! カーンは亀から立ちあがることに成功する。
スタンド。互いにジャブを突くなか、ロープに詰めるアサラナリエフは接近戦でも左フックを効かせると、さらに返しの右! すぐにカーンの首後ろをつかんで固定するとクリンチアッパーを2連打! アゴが上がったカーンが糸が切れた人形のように崩れ落ちた。アサラナリエフが決勝進出!
▼フライ級ワールドGP 代替試合×キム・キュソン(韓国)[判定0-3]○ジェヘ・ユスターキオ(フィリピン)
1R、ともにオーソドックス構え。右のカーフキックはユスターキオ! さらに左のインロー、右ロー! 左前足を効かされたキム。
ユスターキオはバックフィストも。かわすキム。ユスターキオは後ろ蹴り。しかしキムも左ローを返す。左インローを効かすユスターキオは手数が減る。キムは右ハイキックを放つ。
前に出てきたキムにボディロックからテイクダウン狙いはユスターキオ。しかしキムはロープを掴んで防ぐ。遠間からジャブ、ワンツーを狙うキム。そこに右フックを放つユスターキオ!
左前蹴りから続いて左バックフィスト! 当てられるキムが前に出ると後ろ蹴りはユスターキオ。さらにワンツーの左フック!左のダブルをアッパーで突く。
2R、左ローを打ち、その打ち返しの右を掴んでニータップを狙うユスターキオ。切るキム。ユスターキオは同じ動きから上下に散らし的を絞らせない。さらに左右の右はオーバーハンドフック。
アップライトのキムは徐々に詰めていくが、そこにユスターキオはバックフィストを合わせる。
3R、バックフィスト、さらに後ろ蹴りと回転系を入れて出入りするユスターキオだが、フィニッシュにはいかない。詰めるキムは右を打ち下ろし前に出るが、そこにユスターキオ脇をくぐりボディロックを掴むが、深追いはしない。
ユスターキオの左にヒザを合わせに行くキム。頭を下げたユスターキオに首相撲からヒザ! ユスターキオは嫌がるそぶりを見せる。気合の声を挙げるキムは前に出て首相撲から単発のヒザ! 左目尻から出血するユスターキオを追い、ワンツー! ユスターキオの打ち終わりに右ストレートを当てるとユスターキオは後退!
しかしキムも大ぶりに。それを潜ったユスターキオはボディロックからテイクダウンし、上でゴング。3Rにユスターキオを追い込んだキムだが判定は届かず。3-0でユスターキオが辛勝した。
▼ONEストロー級(※56.7kg)5分3R×デェダムロン・ソー・アミュアイシルチョーク[1R 4分09秒 KO]○ミアオ・リー・タオ
1R、詰めるミアオはいきなりダブルレッグテイクダウン! ロープでの試合で立ちにくいなか、デェダムロンは蹴り上げから立とうとするが、その足を捌かれサイドを奪われる。右で差して立とうとするデェダムロンを潰すミアオ。
下のデェダムロンはもぐりを潰され、ミアオの鉄槌を浴びる。亀になるとミアオはバックへ。ミアオを背に立つデェダムロンは正対する。
いったん離れてから近い距離に詰め、左を当てるミアオ! デェダムロンは右ヒジを返すと右ローも。しかし左右を強振するミアオ。さらにダブルレッグも、ここは差し上げるデェダムロン。互いにジャブの刺し合いも、ミアオは右の拳を返さずテンプルに強烈に叩きつけると、さらに左ストレートをアゴにヒット! デェダムロンが棒立ちのまま倒れた。
強靭な身体と体軸を持つ中国のミアオはONE2連勝。
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▼ONEストロー級(※56.7kg) 5分3R×アレックス・シウバ(ブラジル)[判定0-3]○内藤のび太(パラエストラ松戸)
内藤のび太は、2018年9月にジョシュア・パシオに判定で敗れ、ストロー級王座陥落。2019年3月8日のヤンゴン大会でもレネ・カタランにも1R TKO負けを喫しており、約2カ月を置いての再起戦でどこまで心身ともに戻せるか。
2連敗中の内藤の相手は、過去1勝1敗のアレックス・シウバとなった。2018年5月のシウバとの前戦では、内藤がスプリット判定勝ちを収めている。クラッチも組めるリングでの戦いも心得ている内藤に対し、シウバはいかに内藤のテイクダウンを狙いを切るか。
1R、内藤、シウバともにオーソドックス構え。内藤の遠間からのシングルレッグにがぶるシウバ。なおも押し込む内藤に、シウバは最下段のロープの下に両足を出してスプロール。足を手繰られると、左足にヒザ十字狙いからトランジッションで上に。
しかしすぐに左で差して外がけからテイクダウン狙う内藤。しかしシウバはロープを掴み防ぐ! 今度は右に回り、小外刈から左に回してテイクダウンは内藤! もぐって足を取りくるシウバを外し、バックを狙うが、シウバも右で小手に巻く。脇を潜り、バック奪う内藤! 背後からパウンドを数発。
シングルバックから引き込むが、両足はフックできず。立つシウバに内藤は背後から殴るもゴング。
2R、最初の右を振ってシングルレッグテイクダウンを狙う内藤。またもエプロンに両足を出してスプロールするシウバに粘り強く左で脇を差す内藤がテイクダウン! シウバの身体が外に出て中央でインサイドガードから再開。
こつこつと鉄槌を打つ内藤。シウバはヒップスローを狙うが潰す内藤。しかしシウバはもぐりから足関節狙い。そこで足を抜く内藤の際で離れる。
右ミドルは内藤! しかしシウバもそこに右フックを首もとに当てる。シングルレッグも引き込み気味になった内藤。下からまだヒザを掴んでいる内藤はディープハーフ。シウバは右で脇差してパスガードを狙う。バタフライガードに戻す内藤はみたびシングルレッグに入るが、足を後方に投げ出すシウバは押しつぶして上に。そこもポジションは許さない内藤はシングルレッグから立ちあがり押し込む。
3R、ワンツーの打ち合いはややシウバ優勢。身体が伸びた内藤にボディロックからテイクダウンはシウバ。内藤も両脇を差しバタフライガード。そこからの煽りを潰していくシウバ。内藤の立ち上がり際をバックを狙う。そこはさせない内藤だが正対することに。ハーフガードから左で脇差し立つ内藤はコーナーまで押し込みダブルレッグテイクダウン! しかし尻で立つシウバに背中をつけさせることができない。
コーナーで立つシウバの脇をもぐりバックに回る内藤だが、シウバも両足を上げてスクランブル。内藤も上を取りそうになるが、すぐに足を戻すシウバ。立ちあがるシウバの脇を潜り、バツクを奪いかける内藤は、力を使い続けてアタック。小手に巻きバックを許さないシウバ。
互いに打撃では決定打はなく、組み技でアタックは内藤だが……判定は3-0で内藤が勝利! 連敗を2で止め、アレックス・シウバとの戦績も2勝1敗と勝ち越した。
ストロー級の現王者は4月大会で猿田洋祐を4R KOに下し王座を奪取したジョシュア・パシオ。元王者同士の対決を制した内藤はストロー級王座戦線をサバイブした。
▼ONEフェザー級(※70.3kg) 5分3R○ゲイリー・トノン(米国)[1R 0分55秒 ヒールフック]×中原由貴(マッハ道場)
PANCRASEフェザー級2位の中原由貴は、ONE2戦目。2月大会でエミリオ・ウルティアとの打撃戦を左ストレートKO勝ちで制した中原は、当初、組み技系の実力者との試合が決まっており、今回の対戦相手変更にも調整に余念がない。
対するトノンはグラップリングではクロン・グレイシーを追い込み、マーチン・ヘルド、青木真也にも一本勝ちする強豪グラップラーだが、3月の両国大会ではオランダのアンソニー・アンゲレンを相手にテイクダウンからマウント&パウンドでTKO勝ち。ポジショニングにおいて絶対の自信を持つ。リングでのMMA。
1R、サウスポー構えの中原に、周囲を回るオーソドックス構えのトノン。圧力をかける中原のジャブの打ち終わりに前足にシングルレッグ(片足タックル)はトノン。
片足を掴み外がけから後転して引き込むと、うつ伏せになって足を抜こうする中原に、トノンは最後はインサイドサンカクにも組み、外ヒールフックを極めた。
中原はONE連勝ならず。トノンはONEでのMMA戦は5連勝。青木真也とのグラップリングマッチ以来の伝家の宝刀ヒールフックを、MMAで披露し、一本勝ちを決めた。
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【ONEフェザー級(70.3kg)キックボクシング・ワールドGP】※優勝賞金100万ドル
▼フェザー級(-70.3kg)キックボクシングワールドグランプリ準々決勝第4試合 3分3R×ジョルジオ・ペトロシアン(イタリア)[判定1-2]〇ペットモラコット・ペッティンディーアカデミー(タイ)※ペットモラコットが準決勝へ進出。
優勝賞金100万ドル(約1億950万円)のキックボクシング世界トーナメントが今大会より開幕。その絶対的な優勝候補ペトロシアンが1回戦に登場した。2009年と2010年のK-1 WORLD MAXでミドル級世界トーナメントを制し、世界にその名を轟かせてから、10年にわたって世界最高峰に君臨してきた。
ペットモラコットはタイのビッグマッチ常連の超一流選手として活躍し、ルンピニースタジアムではミニフライ級王座とスーパーフェザー級王座に就いた。2015年4月には初来日し、梅野源治の挑戦を退けている。ONEでは3月に健太と対戦し、勝利を収めて健在ぶりを発揮。
1R、両者サウスポーから左の蹴りを出していき、前に出るのはペトロシアン。早くからパンチ主体のスタイルに切り替えたペトロシアンが、ロープを背にするペットモラコットに左右フックとボディストレートを当てに行く。同時に放った右フックでスピードで劣ったペットモラコットが吹っ飛ぶ。ペトロシアンのパンチをもらう度に打ち返すペットモラコットだが、全てペトロシアンのスウェーにかわされる。
2R、ペットモラコットは首相撲からのヒザ蹴りに活路を求める。これにペースを崩したかペトロシアンのパンチが雑になり、ペットモラコットのパンチも当たり始める。パンチの打ち合いの中で組みからのヒザをボディへ突き刺すペットモラコットは、どんどん前へ出て組んでいく。ペトロシアンは左の強打を叩きつけるが、ペットモラコットの首ヒザはしつこい。
3Rも前に出るのはペットモラコットで、パンチの打ち合いを挑む。近付くと組もうとするがこれを嫌がるペトロシアン。組まれるよりも先に左右フックをヒットさせにいくが、ペットモラコットのしつこい首相撲からのヒザでかなりの消耗が見える。ペトロシアンは入り込んでの左右フックを打つが、勝利を確信したペットモラコットは残り30秒で試合を流し始めた。
判定は割れ、2-1でペットモラコットが勝利。ヨードセングライに続き、優勝候補本命のペトロシアンが敗れるという大波乱となった。▼フェザー級(-70.3kg)キックボクシングワールドグランプリ準々決勝第3試合 3分3R×ヨードセングライ・IWE・フェアテックス(タイ)[判定0-3]〇サミー・サナ(フランス)※サナが準決勝へ進出。
ヨードセングライは長きにわたって世界のトップに君臨している実力者。ムエタイの殿堂ルンピニースタジアムではフライ級(50.80kg以下)王座とウェルター級王座(66.68kg以下)を制し、現在は70kg前後で世界各地に招聘されて試合をしている人気者だ。3月の日本大会ではアンディ・サワーとの再戦をKOで制している。
対するサナは元WBCムエタイ世界ミドル級暫定王者で、昨年6月にはONEで元ルンピニースタジアム認定ウェルター級王者ソーグラーを相手に大善戦した。フェザー級にして193cmの長身を持つ。
1R、かなりの身長差。サウスポーのヨードセングライにサナは右ハイとワンツーを伸ばしていく。しかし、ヨードセングライはリーチ差をものともせずサナの奥足を左ローで蹴る。サナの右ミドルとヨードセングライの左ミドルの蹴り合い。サナのヒザ蹴りにヨードセングライはボディストレートで応戦だ。ラウンド終了間際、右ハイをヒットさせたサナが左フックでダウンを奪い、ヨードセングライはフラつきながらも立ち上がる。
2R、ヨードセングライはジャブと左ミドルの安全策かと思えば、サナが打ち合いを仕掛けてくると真正面から打ち合いに応じる。ヨードセングライは左ボディストレートを狙い撃ち。サナはヒザ蹴りで応戦する。アッパーを突き上げるヨードセングライにサナは右ストレート。両者のパンチが相手の頭を激しく揺らす。いつ倒れてもおかしくないサナの右強打をもらっても、前へ向かっていくヨードセングライ。ラウンド終了のゴングが鳴ると、場内は大歓声に包まれた。
3R、ミドルの蹴り合いからまたも打ち合いが始まる。サナの右ストレートが直撃し、ヨードセングライは絶体絶命。サナは掴んでのヒザ蹴り連打で注意を受ける。それでも前に出るヨードセングライにサナは顔面前蹴り、右ストレートを突き刺す。諦めずパンチを繰り出すヨードセングライにサナはヒザを左右で突き刺していく。左ミドルで対抗したヨードセングライだが、有効打とダメージの差は明らか。
判定は3-0でサナが番狂わせの勝利。ペトロシアンと並ぶ優勝候補ヨードセングライが準々決勝で姿を消す番狂わせとなった。
▼フェザー級(-70.3kg)キックボクシングワールドグランプリ準々決勝第2試合 3分3R〇ジョー・ナタワット(タイ)[3R1分24秒 KO]※3ノックダウン×サーシャ・モイサ(ウクライナ)※ナタワットが準決勝へ進出。
ナタワットは昨年ペトロシアンと対戦しているが判定負け、サミー・サナには勝利している。
当初はアンディ・サワーがワールドグランプリにエントリーしていたが欠場となり、このサーシャが代打出場。現在は拠点をタイに移して練習と試合を積んでいる。
1R、ナタワットは左右のミドルとロー、モイサはその蹴り足をつかんでのパンチ、蹴りへのカウンターのパンチを放つ。ナタワットは滑らかなコンビネーションでパンチから最後は右ローへつなげる。モイサはほとんど蹴りを出さずパンチのコンビで勝負。
2R、モイサは前に出てパンチを当てたいが、ナタワットの蹴りに阻まれる。パンチから右ローにつなげるナタワットにモイサは防戦一方に。ナタワットは右ローだけでなく、左右ミドルやハイキックで揺さぶりをかけていく。
3R、ナタワットが右ローからの右フックでダウンを奪う。パンチをまとめ、右ローも蹴るナタワットにモイサは棒立ち。右ストレートでダウンを奪われ、モイサの連打で再び棒立ちに。レフェリーがストップに入り、ナタワットが3ノックダウンでKO勝ちとなった。▼フェザー級(-70.3kg)キックボクシングワールドグランプリ準々決勝第1試合 3分3R〇ジャバル・アスケロフ(ロシア)[判定3-0]×エンリコ・ケール(ドイツ)※アスケロフが準決勝へ進出。
アスケロフはブアカーオ、ジョルジオ・ペトロシアン、マイク・ザンビディスらに敗れるもトップ選手たちと拳を交えてきたベテラン選手。2009年7月にはK-1 WORLD MAXに初来日し、日菜太を延長戦の末に下している。
ケールは2014年にK-1 GLOBALが開催したK-1 WORLD MAX決勝戦でブアカーオと対戦し、ブアカーオが本戦ドローの判定を不満に思い延長戦を放棄したため、優勝を遂げている。ケールもまた、2015年にペトロシアンと対戦しているが敗れた。
1R、サウスポーのケールは左ミドルで先制し、左右ローとパンチにつないでいく。アスケロフもローを返しつつパンチを狙う。ケールはアスケロフのローにパンチを合わせに行き、左インローへつなぐ。アスケロフは左フック狙い。
2Rもケールはパンチからローのコンビネーション。接近してフックを繰り出すアスケロフにケールはヒザ蹴りで応戦。アスケロフは右ローが効いたか構えをサウスポーに変える。アスケロフは右フックをクリーンヒット。
3R、アスケロフが2度続けて胴廻し回転蹴りを放ち、2度目がヒット。ダウンにはならなかったがアスケロフが一気にラッシュをかけると、ケールはこれに耐える。アスケロフは胴廻し、バックハンドブローと大技を連発し、優勢を印象付けて判定勝ちした。
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▼ONE女子アトム級(※52.2kg) 5分3R○V.V Mei(RIKI GYM/和術慧舟會GODS/HybridFighter/Team Teppen)[1R 3分46秒 腕十字]×ラウラ・バリン(アルゼンチン)
当初、中国のモォン・ボウと対戦予定だったV.V Meiだが、現地空港に着いてからモウの欠場を聞き、2月のシンガポール大会に続いての試合キャンセルを避けるため、V.V Mei自らチャトリ・シットヨートンCEOにコンタクト。「キックルールでもグラップリングでもいいから」と試合を熱望し、今回の対戦が実現した。
タイにいたラウラ・バリンにとってはショートノーティスでの試合となる。リングでのMMA。
1R、オーソドックス構えのVから先に中央を取る。サウスポー構えのバリンの右前足にシングルレッグ(片足タックル)でテイクダウンはV! ハーフガードから右腕で枕に巻き、片足を抜いてサイドに出て肩固めに入るが、内側を向くバリン。肩固めを外したVはマウントへ移行。左右のパウンドを入れて脇を開けさせて腕十字へ! バリンがタップした。
2018年5月にアンジェラ・リーとの激闘で判定負けしたVだが、その後、両国大会と今回のシンガポール大会で2連続一本勝ち。再び王座戦に向けて、存在をアピールした。
▼ライト級(※77.1キロ)5分3R○ユーリ・ラピクス(イタリア)[3R 3分10秒 リアネイキドチョーク]×シャノン・ウィラチャイ(タイ)
▼ONE Super Seriesキックボクシング・フェザー級ワールドGP準々決勝リザーブファイト 3分3R○ダニエル・ドーソン(豪州)[判定2-1]×ブラウン・ピナス(オランダ)
▼ライト級(※77.1キロ)5分3R○ラフール・ラジェ(シンガポール)[1R 4分43秒 リアネイキドチョーク]×リチャード・コーミナル(マレーシア)