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【ONE】ミャンマーから米国に移住、養蜂家から格闘家となった英雄ンサンが再起戦KO勝利で「どうかミャンマーの未来について考えて」

2021/07/31 11:07
【ONE】ミャンマーから米国に移住、養蜂家から格闘家となった英雄ンサンが再起戦KO勝利で「どうかミャンマーの未来について考えて」

(C)ONE Championship

 2021年7月30日、シンガポール・インドアスタジアムにて「ONE:BATTLEGROUND」が開催され、メインで元ONE2階級世界王者アウンラ・ンサン(米国/ミャンマー)が登場。元コパドムンド柔術世界王者のレアンドロ・アタイデス(ブラジル)を1R 3分45秒 KOに下し、「ミャンマーに祈りを」と世界への配信で語りかけた。

 ンサンは、 1985年5月にミャンマーで生まれ、2003年に米国に移住する前にヤンゴンの学校で優れたアスリートとして頭角を現して来た。2004年、ミシガンのアンドリューズ大学で農業科学を学びながら、ブラジリアン柔術などの格闘技を学び、すぐに格闘技の虜となる。

 卒業後、養蜂家として働きながら受粉などで全国を旅していたが、すぐに格闘技に人生を捧げる決断をする。2005年にプロのデビューを果たした頃から、そのサブミッションのスキルが評価され“ビルマパイソン”と呼ばれてきた。

 2014年にONE Championshipと契約した後、ンサンは2年振りにミャンマーに戻り「ONE:UNION OF WARRIORS」で勝利した事で国民的ヒーローとなった。

 試合前にンサンは、「養蜂をしていたときは、ほとんど毎日蜂に刺されていたけれども楽しかった。外での作業もはちみつ作りも、受粉作業も好きだった。受粉のためにいろんなところに行ったよ。カリフォルニアではアーモンドを、ウィスコンシンではクランベリーを、ミシンガンではブルーベリーを、フロリダではオレンジを受粉した。そういった移動型のライフスタイルはすごく自由に思えた。養蜂の仕事は安定していたけど、格闘技への思いが深まり、養蜂の仕事を辞めてMMAに向かった。

 僕は普通の人間で、自分で自分のことをヒーローだとは思っていないんだ。ソーシャルメディアをチェックしたり、物事を調べることを心がけたり、良い人間でいられるようにトレーニングしている普通の人間で、自分のことをヒーローって思うのは好きじゃないんだ。父親であり、夫であり、自分の人生をただシンプルに生きようとしているだけ。そういう中で自分の周りにいる人たちをできる限り助けていきたいと思っているよ」と語っていた。

 ONEではミドル級とライトヘビー級の2階級でベルトを獲得。しかし、コロナ禍の2020年10月と2021年4月のタイトル戦でライニア・デ・リダーと対戦し、初戦でリアネイキドチョークで敗れ、再戦では判定負けを喫し、2つのベルトを手放した。

 連敗からの再起戦の相手は、レアンドロ・アタイデス。2018年5月にヴィタリー・ビグダシュを3R TKOに下し、2020年2月にンサンが2度敗れているデ・リダーに判定まで持ち込むも敗れているブラジルの強豪だ。ンサン対策としてデ・リダーとも練習を積んできたというアタイデス。

 対するンサンは、ミャンマーの政局が混乱し、同朋たちが犠牲となることに心を傷めながら、米国のサンフォードMMAでローリー・マクドナルドらと練習を積んできた。

▼ミドル級→95.8kg 5分3R
〇アウンラ・ンサン(米国/ミャンマー)95.8kg, 1.0207 ※体重超過
[1R 3分45秒 KO]
×レアンドロ・アタイデス(ブラジル)92.60kg, 1.0191

 1R、ともにオーソドックス構え。先に右ハイを見せるンサン。さらに右ストレート、左ミドルも。続く右をかわして左を振るアタイデスは左ロー。

 さらに左右フックで前進するンサンにカウンターのダブルレッグテイクダウンはアタイデス! 足を効かすンサンにいったん離れたアタイデスだが、ンサンの立ち際にスタンドバックに。金網まで歩いて防ぐンサン。ブレーク。

 左ジャブを突き、右ハイも見せるンサンはボディストレートも。さらに金網に詰めて、左ヒザを突くと、左右フック! 崩れ落ちたアタイデスを見てレフェリーが間に入ると、後ろを向き、マウスピースを吐き出したンサン。

 勝利コールにも何か激高し、ケージ外にいるチャトリ・シットヨートンにも語りかけると、ケージ内に戻り、「彼(アタイデス)に試合前のインタビューで、怯えてるんじゃないかと言われていた、自分は誰一人として恐れたことなど、ない。ミドル級、どうぞ、誰でも。レッツゴー。誰とでもやる。チャンピオンとやりたい、ウェルター級選手とだっていい、チャンピオンとやりたい」と、対戦をアピール。

 さらに、「アブソフ、待ってるよ、レッツゴー、やろうじゃないか。それからレジェンドの岡見勇信、ビグダシュとやったってエキサイティングな試合になるだろう。実現してほしい。誰もつまんない試合なんかみたくないだろ。ファンが望むようなエキサイティングな試合を見せたい」と、次戦について語った。

 続けて、涙ぐみながら「ミャンマーの人たちのために祈りたい。僕たちみんなにとってとても辛い時期が続いている。とりわけ僕自身にとってはすごくきつかった、ジムに行くときもミャンマーにいる人たちのことを思ってしまって……、どうかミャンマーの未来について考えよう。自分自身のためのことばかりでなく。みんな、ありがとう」と、クーデターから半年で犠牲者が930人超という混乱の最中にある母国に目を向けてほしいと語った。

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