MMA
インタビュー

【UFC】2大王座戦、ミドル級「弱点を露呈したアデサニヤはヴェットーリの急所を突けるか」、フライ級は「フィゲイレードの力をモレノがどう封じるか」(高阪剛)=6.12『UFC 263』

2021/06/10 12:06
 2021年6月12日(日本時間13日)、米国アリゾナ州グレンデールのヒラ・リバー・アリーナにて、『UFC 263』が開催される。最大収容人員数1万9000人の同アリーナで、入場制限なしの有観客イベントとなる。  メインイベントはUFC世界ミドル級王者イズラエル・アデサニヤが、イタリアのマーヴィン・ヴェットーリを迎え撃つ3度目の防衛戦。さらにUFC世界フライ級王座をかけたダイレクトリマッチとなる、デイブソン・フィゲイレードvs.ブランドン・モレノ戦も行われる。  ミドル級王者のアデサニヤは、20勝(15KO)1敗のフィニッシャー。唯一の黒星は2021年3月に1階級上のライトヘビー級戦で王者のヤン・ブラホビッチ(ポーランド)に判定負けしたもの。今回はミドル級に戻しての再起戦となる。  対する挑戦者ヴェットーリはミドル級3位の強豪。2018年4月にアデサニヤと対戦し、接戦の末、スプリット判定で敗れている。以降、セザール・フェレイラ(腕十字)、アンドリュー・サンチェス(判定)、カール・ロバーソン(リアネイキドチョーク)、ジャック・ハーマンソン(判定)、ケビン・ホランド(判定)を相手に5連勝で、王座挑戦&リヴェンジの機会を得た。  フライ級王者のフィゲイレードは、2012年にMMAプロデビューし、JungleFightなどで連勝を重ね、2017年からUFCに参戦。2020年2月のフライ級王座決定戦で、ジョセフ・べナビデスに2R TKO勝利を飾るも、体重超過で王座剥奪。7月のダイレクトリマッチでべナビデスを1R リアネイキドチョークで絞め落とし、王者となった。  その後、2020年11月にスクランブル参戦の4位アレックス・ペレスを1Rギロチンチョークで極めて初防衛に成功。3週間後の12月に1位のブランドン・モレノと対戦し、5Rの死闘の末、マジョリティドロー(3Rにフィゲイレードがローブローで1ポイント減点)で2度目の防衛に成功している。戦績は20勝(9KO・TKO/8一本)1敗1分。  1位のモレノ(18勝5敗1分)は、2019年12月のカイ・カラ=フランス戦での判定勝利以降、2020年3月にジュシー・フォルミーガに判定勝ち、11月にブランドン・ロイバルを1R TKOに下し3連勝で、12月に王座挑戦。フィゲイレードに判定負けしている。メキシコ人初のUFC王者なるか。  この2試合の見どころを、WOWOW「UFC-究極格闘技-」解説者としても知られる“世界のTK”高阪剛に語ってもらった。 [nextpage] アデサニヤが敗れたブラホヴィッチと今回のヴェットーリはタイプ的に似通っている ――『UFC263』のメインイベントは、イズラエル・アデサニヤvsマーヴィン・ヴェットーリのミドル級タイトルマッチ。王者アデサニヤは前回、2階級制覇を狙いライトヘビー級王座に挑戦したもののヤン・ブラホヴィッチに判定負け。1階級上とはいえ、初黒星を喫した再起戦でもありますが、この試合どう見ていますか? 「王者アデサニヤにとっては、ここは正念場だと思いますね。というのも、ヴェットーリとブラホヴィッチは、タイプ的にけっこう似通っているんですよ。前回、ブラホヴィッチはスタンドでプレッシャーをかけていって、途中でテイクダウンを奪い、グラウンドで体力を削ってアデサニヤに判定勝ちしましたけど、まさにそういう戦い方を得意としているのがヴェットーリなんです」 ――圧力をかけ、テイクダウンを奪い、グラウンドで削ると。 「いわゆるグラウンド&パウンドを得意とするタイプですよね。約3年前の前回は1~2Rはヴェットーリが組みにいってもなかなかテイクダウンが奪えなくて、3Rにようやく寝かせることができたんです。でもその後、スタンドに戻ったとき、アデサニヤ本来の動きができてなかった。だから、そこがお互いにとってのキーポイントなんだろうなと」 ――ヴェットーリがアデサニヤを寝かせられるかどうか。 「しかも、今度はタイトル戦で5R制なので、前回と同じようにヴェットーリが3R目でテイクダウンに成功して、べったり寝かせることができたら、4~5Rも続けることも可能だと思うんですよ。そうなると、アデサニヤの判定負けという結果も考えられますよね」 ――前回も3Rはヴェットーリが取って、テイクダウンを奪われて以降、アデサニヤの動きが悪くなっていたわけですしね。 「だからアデサニヤとしては、早めに打撃で仕留めたいところですけど、ヴェットーリはタフで体が頑丈。打たれてもあまり気にせずにガンガン前に出てくるし、サウスポーの構えから左ストレートをしっかり延ばしてくるので、そこで下がってしまったら、ケージに押し込まれて、テイクダウンを奪われてしまうかもしれない」 ――アデサニヤのような驚異的なストライカー相手だと、なかなか前に出られないものですけど、ヴェットーリは前回も打たれながら前に出ていました。 「そうなんですよ。ヴェットーリの前回の試合(2021年4月10日のケビン・ホランド戦)も、途中からテイクダウンが面白いように決まって、終始グラウンド&パウンドで大差の判定勝ちでしたから。ヴェットーリはあの戦い方を変えないと思うので、アデサニヤがそれをどう処理するかが、この試合の肝になる気がしますね」 ――アデサニヤにとっては、前回のヴェットーリ戦がスプリットの判定勝ちで、ブラホヴィッチ戦が判定負け。どんどん前に出てきて、テイクダウンを奪ってくる相手というのは苦手かもしれません。ブラホヴィッチ戦での結果を受けて、そこが克服できたかどうかが問われそうですね。 「だからブラホヴィッチ戦が、アデサニヤにとってどちらに作用するかでしょうね。幸か不幸か、同じようなタイプの選手なので。いい方で考えると、前回の敗戦から学ぶものがあって対策がしっかりできたとも言えるだろうし。悪い方で考えると、苦手意識がより強まった可能性もある」 ――ブラホヴィッチに、アデサニヤ攻略法が見つけられてしまった、ということにもなりかねないわけですね。 「だからヴェットーリは、自信をもって前に出てくると思います。それに対しアデサニヤは、ステップでかわしながらカウンターを入れてくるでしょうし、そういうところは天才的ですから。いくら打たれ強いヴェットーリとはいえ、アゴの先端やテンプルといった急所を打たれたら倒れますからね。アデサニヤはピンポイントで意識を刈りにくるんじゃないかな」 ――闘牛士のように、突進をかわしながらエストック(刀剣)を急所に突き刺す、と。 「急所に刺さないと、何度でも向かってくると思うんですよね。だから、アデサニヤがしっかりピンポイントで仕留められるかどうかにかかってくると思います」 [nextpage] フィゲイレードとモレノはグラウンドの質が違う ――もう1試合、デイブソン・フィゲイレードvs.ブランドン・モレノのフライ級タイトルマッチ。こちらは2020年12月の『UFC256』で引き分けを受けてのダイレクトリマッチになりますが、どう見ていますか? 「前回はフィゲイレードが、試合前夜に胃の感染症で病院に運ばれるなど完全な状態でなかったと言ってましたよね。そのエクスキューズありきで試合を見直すと、たしかに3R目から動きが鈍くなっていた。それが、体調不良によりパフォーマンスに影響が出たことでの失速であったのなら、今回は全然違った試合になるでしょうね」 ――具体的にはどう変わってきそうですか? 「体調不良がそこまで影響しなかったと仮定すると、モレノの勝機はやはり、テイクダウンからのグラウンドですよね。モレノは打撃も強いですけど、寝かせてからのコントロールが、いちばん心地いい状態だと思うんですよ。それに対しフィゲイレードの寝技は、トップコントロールというより、いろいろ仕掛けて、最終的に自分がいい形になるというもの。同じように寝技をやっているように見えて、両者はグラウンドの質が違うんですよね」 ――フィゲイレードはアタックする寝技で、モレノはコントロールする寝技だと。「動けば動くほど、グラウンドはフィゲイレードの方が有利になるんですよ。だからモレノはフィゲイレードの仕掛けに付き合わず、一個一個の動きを潰してコントロールして、削っていくという戦い方になると思いますね」 ――そうして体力を削れば、スタンドに戻った場合も、フィゲイレードの猛攻が弱まるという。 「そうです。また打撃に関しても、フィゲイレードはプレッシャーをかけていって、相手が手を出してきたところでカウンターを当てるのがうまいし、強いんですよ。あとはボディを強く打って、相手の足を止めて、距離を詰めて顔面を打ちにいくとか。接近戦での打ち合いに強い。だからモレノも長いリーチを伸ばしていくストレートとかいいものを持っているんですけど、打ち合いになったら分が悪いので、そこに付き合わないことも大事になると思います」 ――グラウンドでもスタンドでもやり合ったら、モレノは厳しくなるわけですね。 「打ち合いになりそうなところで離れて、空振りさせたりとか。グラウンドでも、フィゲイレードが切り替えそうとしてきたら、スタンドに戻るとか。そうやって気勢を削いでいくのも大事になってくるんじゃないかと思うんですよね」 ――打っても響かない感じでイラつかせて、徐々にスタンド、グラウンドの両面で削っていけば勝機も見えてくると。 「そうですね。根本的なところで、フィゲイレードはものすごく強いし能力が高い選手。フィジカル、テクニック、スピード、すべてのレベルが高くて気持ちも強いチャンピオンだからこそ、それを空回りさせる必要がある。だからこの試合は、体調万全で出てくるであろうフィゲイレードの力を、モレノがどう封じるかがポイントになると思いますね」(取材/文・堀江ガンツ) ◆WOWOW『UFC -究極格闘技-』放送・配信スケジュール『UFC263 in アリゾナ ダブルタイトルマッチ!ミドル級アデサニヤ&フライ級再戦』 6月13日(日)午前11時[WOWOWプライム]※生中継(WOWOWオンデマンドで同時配信) 6月15日(火)夜10:45[WOWOWライブ]※リピート(WOWOWオンデマンドで同時配信) 【メインカード】 ▼UFC世界ミドル級選手権試合 5分5Rイスラエル・アデサニヤ(ナイジェリア)王者 20勝1敗(UFC9勝1敗)マービン・ヴェットーリ(イタリア)挑戦者 17勝4敗(UFC7勝2敗) ▼UFC世界フライ級選手権試合 5分5Rデイブソン・フィゲイレード(ブラジル)王者 20勝1敗(UFC9勝1敗)ブランドン・モレノ(メキシコ)挑戦者 18勝5敗(UFC6勝2敗) ▼ウェルター級 5分5Rレオン・エドワーズ(英国)8勝3敗(UFC10勝2敗)ネイト・ディアス(米国)20勝12敗(UFC15勝10敗) ▼ウェルター級 5分3Rデミアン・マイア(ブラジル)28勝10敗(UFC22勝10敗)ベラル・ムハマッド(パレスチナ)18勝3敗(UFC9勝3敗) ▼ライトヘビー級 5分3Rポール・クレイグ(スコットランド)14勝4敗(UFC6勝4敗)ジャマール・ヒル(米国)8勝0敗(UFC2勝0敗) 【出演】解説:高阪 剛、堀江ガンツ実況:高柳謙一 YouTube「WOWOWofficial」WOWOW公式サイト
全文を読む

MAGAZINE

ゴング格闘技 NO.331
2024年3月22日発売
UFC参戦に向け、ラスベガス合宿の朝倉海。「プロフェッショナル・ファイターの育て方」でチームを特集。『RIZIN.46』鈴木千裕×金原正徳インタビュー、復活K-1 WGP、PFL特集も
ブラジリアン柔術&総合格闘技専門店 ブルテリアブラジリアン柔術&総合格闘技専門店 ブルテリア

関連するイベント