ジャパンキックボクシング協会「challeger2~Beyond the limit~」2021年5月29日(土)東京・後楽園ホール
▼第8試合 メインイベント 67kg契約 3分5R〇モトヤスック(治政館/ジャパンキック ウェルター級王者)TKO 1R 1分09秒 ※左フック×喜入 衆(NEXT LEVEL渋谷/元ルンピニージャパン ウェルター級・初代MuayThaiOpenウェルター級王者)
モトヤスックは高校を卒業して大学生になったばかりで、2020年1月大会で同門の政斗と初代王座決定戦を争い王座に就いた。王者としての第一戦となった8月大会ではジャクチャイに判定負けを喫したが、1月のNJKFウェルター級2位・野津良太(NJKF/E.S.G)に2RでTKO勝ち。メインの役割を果たし、大会プロデューサーの武田幸三からMVPに選ばれた。
喜入は2001年プロデビュー、今回が72戦目となる大ベテラン。これまでJ-NETWORKスーパーライト級王座、初代MuayThaiOpenウェルター級王座(3度の防衛に成功)、ルンピニージャパンウェルター級王座と3本のベルトを獲得している。前戦は2020年12月に『イノベーション』で与座優貴にTKO負けを喫している。
1R、左右ローを蹴っていく喜入をモトヤスックはじっくりと見てタイミングを計る。喜入側のセコンドからは「右ストレートのタイミングを計っているぞ」との声が飛んだが、モトヤスックが繰り出したのは左フック。
この一発で喜入が吹っ飛んで倒れ、マットに後頭部を打ち両足を絡めて完全に伸びきった状態で痙攣。その後、ピクリとも動かず、目を見開いたままの状態が長く続いたため心配されたが、意識は取り戻して担架で運ばれた。
一時騒然となったリング上だが、8月22日の『challeger3』のメインイベントで、モトヤスックと元WKBA世界ウェルター級王者・緑川創の対戦が発表された。
モトヤスックは「僕にちょっと時間をください。先日、私事ですが自分を一番応援してくれていたおじいちゃんが亡くなってしまって。今日絶対に見守ってくれていると思うので、おじいちゃん、本当にありがとう。僕をサポートしてくれている治政館の皆さん、スポンサーさん、ファンの皆さんありがとうございます。8月22日、メインを務めさせていただきます。もっともっと精進していきますのでよろしくお願いします」と、涙ながらに話した。
リングに上がった緑川は「本当は武田(幸三=大会プロデューサー)さんと試合をしたかったんですけれど。武田さんからオファーをいただいて、若くて勢いのある選手とやってくれということなので引き受けました。6月、7月と試合が決まっていて連戦ですが容赦なくぶっ飛ばします」と宣戦布告した。
2度目のプロデュース興行を終えた武田幸三は「我々はこのような危険と隣り合わせで生きています。そして戦っています。次回も応援よろしくお願いします」と語った。
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▼第7試合 セミファイナル 日泰国際戦56.5kg契約 3分5R〇馬渡亮太(治政館/WMOインターナショナル スーパーバンタム級王者、元タイ国チェンマイスタジアム認定バンタム級王者、元ジャパンキック同級王者)判定3-0 ※50-46×3×ポンチャン・ペッノンセン(タイ)
馬渡は長身から繰り出すしなやかなミドルキック、切るだけでなく倒すヒジ、首相撲からヒザと、ジャパンキック屈指のテクニックを有する。昨年5月12日のプレ興行でチェンマイスタジアム王座の初防衛戦、8月4日の旗揚げ戦でジャパンキックバンタム級初代王座に就くも、さらなる高みを目指すべく、両王座を返上。8月のジャパンキックではダウサコンと引き分けた。10月の『NO KICK NO LIFE』では福田海斗に敗れたが、今年1月大会ではWMOインターナショナル・スーパーバンタム級王座決定戦でクン・ナムイサン・ショウブカイに判定勝ち。
当初は元タイ国9ch&パタヤスタジアム認定バンタム級王者ジョムラウィーとの対戦が決まっていたが、ポンチャンに対戦相手が変更となった。
1R、サウスポーのポンチャンに馬渡はまず右ミドル。次に右の三日月蹴り、さらに右ボディストレート。馬渡が組むとポンチャンはヒジを振る。馬渡は右インローを多用し、右のパンチでボディを狙い撃ち。ポンチャンもフックを振り回すが、リーチの長い馬渡の距離で試合は進む。
2R、馬渡は右インローを蹴りつつ、右ミドル、左前蹴り、右ボディストレートとボディを狙い撃ち。左フックからの右ボディも。ローを蹴りながら下がるポンチャン。馬渡はヒジを繰り出すが、ポンチャンもこれにヒジで応戦。粘るポンチャン。
3R、馬渡の右ハイキックをしゃがみ込むようなダッキングでかわしたポンチャンに歓声があがる。前へ出てパンチ、ヒジで攻め続ける馬渡だが、ポンチャンはヒジ、左ハイキックで逆転を狙い少しも諦めていない。馬渡がやや攻めあぐねると前へ出て右フックで攻め込むポンチャン。
4R、前蹴りで突き飛ばしてのヒジを狙う馬渡にポンチャンは前蹴りで対抗。ロープを背負うポンチャンをヒジとパンチで攻める馬渡だが、ピンちゃんもヒジを打ち返す。馬渡の右ヒジがヒットし、鼻血を出すポンチャンだがヒジを打ち返す。
5R、ヒザを突き上げる馬渡にポンチャンは胴を抱きかかえて崩す。馬渡が右ストレート、左ハイキック、右ボディと攻めていくもポンチャンはロープを背にしてリングを回り込み、ヒジでの逆転を狙う。攻め切れない馬渡と、タフで諦めないポンチャンの勝敗は判定に持ち込まれ、大差で馬渡が勝利した。
試合後、8月22日のchalleger3で馬渡との対戦が決まったWBCムエタイ日本統一バンタム級王者・一航(新興ムエタイジム)がリングに上がった。
馬渡は「8月にNJKFの一航選手と試合が決定しました。8月まで100倍くらい強くなってくるので楽しみにしていてください」、一航は「8月に馬渡選手と試合させていただけるってことで、しっかり仕上げて勝ちに行きたい。前回、僕のお兄ちゃんが勝っているので僕もこんなところで負けていれらないのでしっかり差をつけて勝ちます」と、兄に続いて馬渡を越えていくと宣言した。
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▼第6試合 日泰国際戦57.5kg契約 3分3R 〇瀧澤博人(ビクトリージム/WMOインターナショナル フェザー級王者・元日本バンタム級王者)TKO 2R 2分35秒 ※右ハイキック→レフェリーストップ×コンゲンチャイ・エスジム(タイ/エスジム/元タイ国ルンピニースタジアム認定バンタム級3位)
瀧澤は3連勝と勢いに乗っていたが、2020年1月大会でペッワンチャイの強打の前にTKO負け。8月大会で再起戦を行い、NJKFフェザー級1位・小田武司をヒジ打ちによるTKOで降している。昨年11月大会ではジョムラウィーに勝利してWMO王座を獲得した。
当初はクン・ナムイサン・ショウブカイとの対戦が決まっていたが、コンゲンチャイに対戦相手が変更となった。
1R、瀧澤はリーチの長さを活かしたジャブ。前に出てくるコンゲンチャイのミドルをかわすと右フック。初回はどちらも様子見。
2R、左フックに右ヒジを返す瀧澤。前に出てくるコンゲンチャイに瀧澤はロープを背負う時間が長い。互いに右ローを蹴っては頷き合う両者。右ローに固執するコンゲンチャイに、突然瀧澤が右ハイキックを蹴る。この一撃がドンピシャのタイミングで決まり、コンゲンチャイはダウン。レフェリーが即、試合をストップして瀧澤のTKO勝ちとなった。
瀧澤は「我々格闘家は身を削って、来ていただいたお客さんに明日から頑張ろうと思ってもらえる試合をするのが仕事です。次にビクトリージムの主催興行があるので、そこで挑戦と思ってもらえるビッグマッチをしたいと思います。そのために一日一日精進したいと思います」と、次はビッグマッチに臨みたいとした。
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▼第5試合 53.5kg契約 3分3R×石川直樹(治政館/ジャパンキック フライ級王者、元スック ワン キントーン スーパーフライ級王者、元日本フライ級王者)判定0-3 ※29-30×3〇ジョッキーレック・ZERO(タイ/ZERO/元タイ国イサーンスーパーフライ級王者、元DBSスーパーフライ級王者)
旗揚げ戦からジャパンキックを引っ張ってきた石川は2020年1月大会で四冠王・松崎公則にTKO勝ち。しかし、8月大会ではHIROYUKIとの再戦でカーフキックによるKO負けを喫した。今回が再起戦。当初は蹴拳バンタム級1位・志賀将大との対戦が決まっていたが、ジョッキーレックに変更となった。
試合に先立ち石川はこの試合を最後にバンタム級転向を表明、ジャパンキックのフライ級王座をリング上で返上した。
1R、強い右ローを蹴ってくるジョッキーレックに石川はワンツーで対抗。ジョッキーレックが石川の蹴り足をキャッチしての軸足払いで奇麗にコカす。石川も右ローを蹴るがジョッキーレックはしっかりとカット。右のパンチを狙っていく石川。
2Rになるとヒジを狙ってくるジョッキーレック。これに石川も前へ出て攻めの姿勢を見せたが、ジョッキーレックの右フックでガクッとヒザを折る。すかさず倒しに行こうとしたジョッキーレックだが、石川は得意の首相撲に持ち込んでこのピンチをしのいだ。
3R、ロープを背負い待ちの体勢で右フックを狙うジョッキーレックに、石川は右ロー、パンチの連打と積極的に前へ出るが、守りに入ったジョッキーレックをなかなか捉えることができない。石川の左ボディ、右フックに組み付いて時間を稼ぐジョッキーレック。
判定は3-0でジョッキーレックが逃げ切りに成功した。
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▼第4試合 ジャパンキック ライト級 3分3R〇内田雅之(KICK BOX/ジャパンキック ライト3位・元日本フェザー級王者)TKO 3R 3分00秒 ※レフェリーストップ×興之介(治政館/同級4位)
1Rと2Rに内田が右ストレートでダウンを奪い圧倒的優勢に。内田も深追いはせずローの蹴り合いを淡々と行う。興之介はダウンを奪い返そうとパンチを連打するが内田を捉えきることが出来ない。
3Rも内田は淡々と右ロー、左ミドルを蹴り手数は少な目。興之介は右ハイキックを狙い、パンチで前へ出る場面もあるが手数が少ない。興之介の左フックを空振りさせた内田が右フックで巻き込むようなダウンを奪い、最後は右のバックスピンエルボー。この一撃が見事に決まり、ダウンした興之介の額からは鮮血が吹き出る。
レフェリーがすぐにストップし、内田の壮絶なTKO勝ちとなった。
▼第3試合 55kg契約 3分3R〇義由亜JSK(治政館)判定3-0 ※30-27×3×中島大翔(GETOVER)
ジャパンキック軽量級の怪物と期待される義由亜と、GETOVER中島稔倫会長の長男が対戦。中島は今回でプロ2戦目となった。
1R、右ロー連打の中島に、義由亜はカウンターの右ストレートを返していく。義由亜は長身を活かして組んでのヒザを仕掛けるが、中島もヒザを当て返す。2R、組んでのヒザ、右ストレートをもらいながらも中島は前に出てパンチを返すが、義由亜のパンチで押されてしまう。3R、義由亜は組んでもヒザ、中島をこかしていくだけでなく、長いリーチから繰り出す右ストレートを当て、中島を入らせない。ヒット数の義由亜が判定勝ちした。
▼第2試合 ジャパンキック ウェルター級 3分3R×山内ユウ(ROCK ON)判定0-3 ※27-30×3〇正哉(誠真) 両者ともにデビュー戦。1Rゴングと同時に正哉がパンチラッシュを仕掛け、山内はダウンを奪われるかと思われたがパンチを打ち返す。正哉は左ハイ、2Rにはバックスピンキックをクリーンヒットさせたものの、山内はタフネスぶりを発揮し倒れない。3R、さすがに攻め疲れを見せる正哉だが、最後まで山内を追い込み大差の判定勝ちを収めた。
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▼第1試合 女子キック ピン級 2分3R〇藤原乃愛(アマチュアKNOCK OUT女子45kgリーグ戦優勝/ROCK ON)判定3-0 ※30-27×3×須藤可純(NJKF・笹羅ジム/ミネルヴァ ピン級6位)
5戦3勝(1KO)2敗の戦績を持つミネルヴァランカーの須藤と、今年3月のアマチュアKNOCK OUTで女子45kgリーグ戦優勝の実績があり、この日デビュー戦を迎えた藤原が激突。
オーソドックスに構える藤原は1Rから左ミドルと突き刺すような前蹴りの連打で圧倒。須藤は被弾しながらも前に出るものの、藤原は首相撲での展開でもヒザ蹴りを当てていく。3Rまで藤原の手数は落ちることなく判定勝ち。デビュー戦でミネルヴァランカーを食うビッグインパクトを残した。