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【追悼】ジョシュ・バーネットがセンティアンノーイ氏、三浦建太郎氏を追悼「あなたは自分の炎の一部を与えてくれた。私たちはそれを燃やし続け、他の人たちにも伝え続ける」

2021/05/24 11:05
 2021年5月16日、ムエタイの伝説センティアンノーイ・ソールンロー氏が死去した。54歳だった。ムエタイの最高峰ラジャダムナン、ルンピニーの両スタジアムで王座を獲得し、国内外の強豪と戦った同氏は、引退後にジムを開設。日本からも多くのファイターがトレーニングに訪れている。  勝利後に相手にキスをすることから“殺しのキッス”の異名をもつセンティアンノーイ氏の悲報に、国内外から多くの追悼のコメントが寄せられている。なかでも、現地で自身が練習後、生徒たちも送り込んでいたジョシュ・バーネットは、SNSに長文の追悼コメントを寄せた。  本誌『ゴング格闘技』では、インタビューの際に、ジョシュが影響を受けた2人のクリエーター、センティアンノーイ氏と、同時期に亡くなった『ベルセルク』の作者・三浦建太郎氏(54歳)について、追悼のコメントを聞いた。下記に紹介したい。 成長と経験のサイクルが受け継がれていた ──ジョシュが師事していたセンティアンノーイさんの死去について、SNSで追悼文(※下記)を発表していましたね。 「私の友人であり、私だけでなく何人ものセンセイであるセンティアンノーイが、この世を去ったことを知りました。  このことについて悩んでいないとは言えませんが、私たちにはそれぞれの人生があり、それをどのように生きなければならないかを理解しています。周りに何人いようと、結局は自分の中で生きているのは私たちなのです。  しかし、私は死を最終的なものではなく、一つの節目と考える人間でもあります。なぜなら、センティアンノーイが私に与えてくれたもの、彼が分かち合ったすべての人に与えてくれたものは、“彼の炎の一部”だからです。それは私に、ビクター・ヘンリーに、アリーシャ・ガルシアに、そしてエンセン井上、多くの人々に与えられました。  私は、自分の火が消える時が来るまで、その炎を燃やし続けます。すべての行動、行為、言葉、そして技で。私がセンティアンノーイから与えられた幸運なものを、私もその炎から世界に与え、その中で彼は生き続けるでしょう。メメント・モリ(死を想い生きろ)。  私のために、生徒のために、そして世界のために、あなたがしてくれたことすべてに感謝します。あなたと知り合えてよかったです」 ──センティアンノーイさんからは、どんなことを教えてもらいましたか。 「彼とはすごく長い時間一緒にいられたというわけではなかったけど、フットワークやヒジのテクニックを具体的に教えてくれた。彼は師匠として僕のムエタイをより良くしてくれたと感じている。  タイのバンコクの北側にあるパトゥムターニーのトレーニングセンターに車を停めると、チーチーという巨大な豚が走り回っていて、鶏や2匹の犬(レッドビーンとグリーンビーン)がいて、そんなカオスな状態をセンティアンノーイが見守るなかで、みんなが一生懸命トレーニングしているのが見えた。  彼は自分の技術を世界に提供し、そこから彼のムエタイのネットワークを育むことにとても前向きだった。  センティアンノーイとの出会いは、僕が日本で暮らしていた2001年に、タイで映画撮影があったとき、エンセン井上を通して、休みの日にセンティアンノーイのジムでトレーニングできるように手配してくれたことがきっかけだった。  そこから、ビクター・ヘンリーやアリーシャ・ガルシアといった生徒たちを送り込むようになり、センティアンノーイのトレーニングキャンプは、ストライカーとして、ファイターとして、さまざまな面で彼らのスキルを向上させてくれた。トレーニングの後に夕食を食べさせてもらったことが記憶に残っていて、そして後々、自分の教え子たちも同じようにしていくのではないか、と考えると、成長と経験のサイクルはどんどん受け継がれている。その一端を担えたのは幸運だった」 ──“センティアンノーイ”とは「小さなロウソクの火」を意味するそうです。どんな形であれ、センティアンノーイさんが成しえたことに変わりはありません。最後に、彼に捧げる言葉があれば。 「あなたは、一緒に仕事をしたすべての人に自分の炎の一部を与えてくれました。私たちはそれを燃やし続けます。それは私たちの一部であり、私たちがここにいる限り、私たちと私たちの行動を彩り、私たちはそれを他の人たちにも伝え続けるでしょう。だから、あなたが本当にいなくなることはありません。あなたの心と寛大さに本当に感謝しています」 [nextpage] ガッツの、誰もが乗り越えたいと願うことに立ち向かい努力するところに親近感を抱いていた ──5月6日には、三浦建太郎氏が亡くなりました。あなたは『ベルセルク』のファンでもありましたね。 「あれほどの厳然たる闇をもって、ハイ・ファンタジー(架空の世界のファンタジー)からグノーシス・ホラーへと融合させているところが好きだった。超自然的な側面においては、古い『アブラハムの宗教』における密教的な部分や、そのほか数多の超自然的な神話が由来となっているのだろう。そしてこのような信仰の体系を描くことによって(クトゥルー神話として知られる)ラブクラフチアン的な要素を生み出している。中世(ヨーロッパ)の戦いや、鎧や武器のディテールなど、全体にまさしくヘヴィメタルな雰囲気を纏っていた」 ──どんなシーンが印象に残っていますか。 「チューダー騎士団からキャスカを護りぬいたガッツの100人斬りは、とてつもなく衝撃的だった。ガッツは自分の愛する者を守るために戦ったわけだが、それだけではなく、彼が何よりも愛すること──それはつまり彼自身の信念によって、彼自身の剣をもってして生死を分けて戦い抜いた。それから、ガッツが鷹の団を離れて独立する時が来たことを決意した際の、雪の中でのグリフィスとの戦いも好きだ。この戦いは、ガッツとグリフィス、2人の意志というものが肉体的に描き出されていて、ガッツの純粋な行動がグリフィスの利己的な行動に打ち勝つ様子や、グリフィスが、自分の縄張りすべてを支配できるわけではないと悟ったことによる落胆が描かれていて、とても印象的なシーンだ」 ──ファイターとして彼の作品からも影響を受けた。 「そうかもしれない!『ベルセルク』の哲学的で、隠喩的な側面がとにかく好きで、ある種ニーチェ的な要素を、とりわけガッツについては多分に含んで描かれていると思う。ガッツという人物、そして彼が抱く苦悩に関して、ストーリーのなかで文字通りに描かれているように、また誰もが乗り越えたいことに立ち向かい努力することの喩えとして捉えているところがあって、そこに親近感を抱くよ。それに、ガッツに対しては個人的にも共感するところがある。だからインスピレーションを与えてくれるようなものはなんであれ、自分の行動に対して影響しているんじゃないかと思う」 【写真】素手のボクシングにも挑戦し勝利したジョシュ・バーネット(C)Genesis ──30年以上にわたり執筆した三浦氏に追悼の言葉を。 「あなたの想像力を我々みんなに共有してくださって、本当にありがとうございました。個人的に、自分に喜びを与え、関心を抱かせてくれたことに心から感謝申し上げます」
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