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【極真会館】100人組手に挑戦する世界王者・上田幹雄「どんなに苦しい状況でもそれを乗り越え必ず最後までやり遂げる」全世界にライブ配信も

2021/04/23 16:04
 2021年4月25日(日)東京・極真会館総本部代官山道場にて、2019年第12回世界大会王者・上田幹雄が100人組手に挑戦することが極真会館から発表された。  100人組手は極真空手の荒行のひとつで、1人の空手家が100人の空手家と連続して組手(対戦)を行うもの。1965年頃から極真空手の創始者・大山倍達の発案で始まり、当初は2~3日に分けて行われていたが、大山倍達が「100人組手は1日で行うもの」と定義付け、1972年9月にその第1回目が行われた。  これまでの完遂者は9名(下記参照=極真会館認定者のみ)で、最後に完遂したのは2014年4月のタリエル・ニコラシヴィリ(ロシア=2011年第10回全世界空手道選手権大会優勝者)。前回は2016年4月に2015年第11回全世界空手道選手権大会優勝者ザハリ・ダミヤノフ(ブルガリア)が挑戦したが、ドクターストップにより70人目で失敗した。なお、この時の1人目の相手が上田だった。  上田は身長187cm、体重102kgの体格を持ち、必殺のヒザ蹴りを武器に高校生時代から頭角を表した。2013年第30回全日本ウェイト制空手道選手権大会軽重量級優勝、2015年第11回全世界空手道選手権大会第6位、2018年第50回全日本空手道選手権大会優勝などの実績を収め、2019年11月に開催された「第12回オープントーナメント全世界空手道選手権大会」で24歳にして優勝。2003年に開催された第8回大会以来、実に16年ぶりに空手母国である日本に世界王座を奪還している。  7年ぶり10人目の達成なるか。荒行に挑戦する上田のインタビューが届いた。 100人組手挑戦を決めた理由「『覚悟』が最も重要なのではないかと思います」 ーー『極真空手最大の荒行』と言われる100人組手への挑戦が、いよいよ目前に迫ってきました。現在の心境は? 「自分は小さい頃から極真空手が好きで、昔の本を読んだり、映像を観たりしていろいろ調べているのですが、伝説の方々や偉大な先輩方が挑んできた100人組手に自分が挑戦できるという幸せを感じている一方で、どれだけ過酷なのかということも見聞きしているので凄く不安な気持ちの両方があります。ただし、今回の挑戦に向けて自分がやるべきことは全てやってきたつもりですし、コンディションも万全で臨むことができるので、当日はどんなに苦しくても諦めることなく必ず完遂するという強い覚悟を持って挑みたいと思っています」 ーー100人組手をいつ頃から具体的な目標として意識してきましたか? 「高校を卒業して選手として活動していくと決めたときから、全日本大会優勝、世界大会優勝、100人組手達成の3つを目標に掲げて稽古してきましたが、具体的に意識しはじめたのは2019年の第12回世界大会で優勝した後です。次の第13回世界大会で2連覇を狙うとなったときに、今のままでは何か足りないのではないかという思いがあり、それが何なのか考えても分からない部分もあって、であれば自分を極限の状態に持っていくことがベストなのではないかと。自分は(2018年の)第50回全日本大会の前に『自分改革』というテーマでロシアの長期合宿に参加するなど変化と工夫を目指して稽古を積み、それが翌年世界大会での優勝に繋がったと思っています。しかし、世界大会2連覇はそれ以上の『自分改革』を課さなければ成し遂げられない。そのためにも100人組手に挑戦しなければいけないという思いが日増しに強くなっていきました」 ーー2019年11月の世界大会優勝から1年5カ月後の今回の挑戦ですが、時期的なタイミングについてはどう思っていますか? 「昨年1月に100人組手挑戦の意志を松井館長に伝え、2月の自分の優勝祝賀会の席で発表し、本来であれば昨年10月に挑戦する予定だったのですが、コロナ禍の影響もあり今回の4月に延期になりました。改めて考えてみれば、昨年はまだ世界大会の疲れが抜け切れていませんでしたし、歴代の100人組手も大体3月~5月の春の時期に挑戦している人が多いこともあり、いろいろな意味でベストな状態で挑むことができるのではないかと思っています」 ーー世界大会後の昨年からコロナ禍が続いていますが、どのような稽古に取り組んできましたか? 「最も多かったのは一人稽古で、基本稽古、移動稽古、自重を使った拳立て・腹筋・スクワットなどフィジカル強化稽古の3つを重点的に行いました。試合で勝つための稽古は、相手を意識して打ち込むことに重きが置かれるのですが、100人組手にシフトチェンジしたときに思ったのは一人でも正確な突き、正確な蹴りが出せる、そして動き続けられる体力がなければいけないということでした。特にコロナ禍によって他人と接触する稽古や組手など対人稽古が制限される中で、そういった自分の土台になる部分をしっかり創り直す。なおかつ、相手がいて初めて一つの組手が成り立つということですから、その意識は常に持って稽古に取り組んでいました」 ーー世界大会優勝で新たに気付いたこと、実感できたことがあったと思います。世界大会の前と後では稽古内容、また稽古に向かう意識はどう変化しましたか? 「世界大会前は、絶対に日本が王座を奪回しなければいけないという思いで、なりふり構わず、無我夢中で稽古を行っていましたが、いざ優勝してみると、今度は(王座を)守らなければいけない立場に変わりました。世界王者として恥ずかしくない空手、また世界王者にふさわしい空手を体現できなければいけないという観点から、先ほど言った正確な突き蹴り、自分の体を扱えるフィジカルを強化するための一人稽古が増えていきました」ーーよく試合の組手と100人組手は、組手のスタイルが違うと言われますが、それは意識していますか? 「100人組手でも一人一人との組手に勝敗は付きますが、それを最優先に考えなくていいという違いがあります。試合で最も重要視されるのは勝敗で、その次に自分の心技体を発揮することですが、100人組手の場合は心技体が最初で、その次が勝敗。その違いが一番大きいように思います。ですから、勝ちにいくのではなく、感覚的には自分自身の組手を創り上げていくイメージ。組手の中で心技体を上げていくことで、100人と戦い終えた後に、どれだけ次の世界大会に向けて自分の新たな組手が構築できるのかがポイントになると思っています」 ーー100人組手を完遂(達成)するためには、スタミナ、体力、技術、精神力など様々な要素が不可欠だと思いますが、最も重要視しているものは何でしょう? 「精神面でいえばやはり『覚悟』が最も重要なのではないかと思います。どんな展開になったとしても痛くて、つらくて、苦しくなることは避けられない。限界ギリギリまで追い込まれる。そのときに絶対に完遂するんだという『覚悟』を持って挑む。逆にいえば、自分は極真が一番強いと思っていますし、極真会館に恩返ししたいという気持ちがありますから、それを体現できる絶好のチャンスでもある。完遂することで、極真空手は凄いんだ、素晴らしいんだということをより多くの皆さんに伝えていけたらと思っています。肉体面でいえば、試合は規定時間の中でどれだけ稽古で培ったものを出し切れるか、自分自身を表現できるかだと思うのですが、100人組手は2分間×100回の中で自分の組手を創り上げていく作業ですから、その意味で重要になるのはペース配分だと思います。イメージ的には、試合が中距離走だとすれば、100人組手はマラソンに近いのではないかと。ですから、ペースを上げ過ぎてもいけないし、全く上げないのもいけないということを意識して稽古してきました」 [nextpage] 「特別な状況に置かれた者しか味わえない体験を通して成長できたら」 ーー100人組手に向けた予行練習を2月末に行ったとお聞きしましたが、どんな収穫がありましたか? 「まず2分間×100回を実際に体験してみたかったというのが予行練習の目的でした。それまでサンドバッグの打ち込みで50~70回の回数は普段の稽古でもやっていましたが、組手を交えた長い回数の稽古はやっていなかったので、組手とサンドバッグとトレッドミル走で合計2分×100回やりました。収穫は、肉体的なスタミナよりも精神的なスタミナが鍛えられたと思います。2分間フルで100回行い、短い休憩を挟みながらでも約6時間かかりました。しかし、実際に体験し、これだけ長いのかとか、次第に腕や関節が痛くなるなど、こういう変化が起こるのかということが感覚的に理解できたと思います」 ーーその2月末の予行練習以降の2カ月は、本番に向けてどのような稽古を続けていましたか? 「2月末に一度ピークに持っていったので、3月からは70パーセントくらいの出力で稽古を続けながら、技術面を高める内容に重点を置きました。試合の改定ルールにも応用できる足掛けであったり、押し技で相手を懐に入れない技術であったり、足捌きで相手の間合いを外す技術であったり。無駄な打ち合いをする必要はないし、無駄な動きをすれば当然スタミナが削られていきます。ただし、極真空手である以上、状況によって打ち合うことはどうしても避けられないでしょうし、そのときでも意地になって相手を打ち負かそうとするのではなく、先ほども言った“自分の組手を創り上げる意識”で対応できたらと思っています」 ーー精神的なプレッシャーも強いと思いますが、その辺りはいかがでしょう? 世界チャンピオンとして失敗は絶対に許されないとか、失敗したらどうしようとか…。 「自分が体験したことがないものなので、松井館長や増田章師範など偉大な諸先輩方の書物や映像を観ながら想像していくしかないのですが、絶対に完遂するんだと思って毎日を過ごしながらも、凄く楽しみな日と反対に凄く不安な日があったり、いろんな感情が湧いてきました。ただし、そういった不安定な感情も100人組手という『伝説の荒行』に挑むからこそ味わえるものだと思います。そう考えると100人組手そのものも大きな修行ですが、そこに至る過程も大事になってくるのではないかと。日々精進していく姿勢であるとか、不安を克服していく過程であるとか、特別な状況に置かれた者しか味わえない体験を通して成長できたらと思います」 ーー今回の挑戦を今後の空手人生にどう活かしていきたいと思っていますか? 「2023年の第13回世界大会で2連覇するためというのはもちろんですが、自分自身の目指している大山総裁や松井館長が創り上げてきた空手に一歩でも近づきたいというのが、100人組手に挑戦する一番大きな目的かもしれません。世の中が大変な状況であるにもかかわらず、こういった挑戦ができるのは多くの方々の協力や支えがあってのことだと感謝しています。また、今回の100人組手は『KYOKUSHIN ONLINE』を通じて世界中にライブ配信されるのですが、良いことも悪いことも全てありのままが映されると思います。どんなに苦しい状況でも何とかそれを乗り越え必ず最後までやり遂げて、観ていただいている方々に少しでも勇気や希望が与えられるような100人組手を目指したいと思っています」
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