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【GONG×ABEMA】青木真也×平田樹、初ロング対談「青木塾、開校」~MMAとは、格闘技とは何か?

2021/03/26 12:03
 青木真也と平田樹、ちょっとした師弟関係にあるように映る両者が、初めて90分に及ぶ、長時間の対談を行った。ABEMA×GONG共同企画、青木×平田は、「MMAとは、格闘技とは何か」を青木真也が平田樹に説く、そんな時間となった。  2021年3月11日、平田のために1日限りの青木塾が開校された。そのロング対談から、スペースの都合上、泣く泣くカットし、MMAPLANETに掲載されたエピソードをここで紹介したい。対談の本編は、『ゴング格闘技』(NO.313)にて掲載中、そしてABEMAにて配信される。 「世界」って何だ? 青木 だからね、やっぱりどんどん格闘技の話をしなくなっていくの。これはもう本当に。北岡(悟)さんとか、八隅(孝平)さんとか、本当に格闘技が好きな人間とは「こうなっていて、こうなんだぁ」みたいなものを喋っているけど、他の選手とはどんどん格闘技の話をしなくなっていくんだよね。俺、「世界」って言わないじゃん。「世界チャンピオンになる」、「世界で一番になる」とか言わないでしょ。「世界で戦う」とか。それはADCCがあって……マルセロ・ガウッシアって分かる? 平田 ……いえ。 青木 マルセロ・ガウッシアっていうのは2003年にシャオリン・ヒベイロをアームドラックからバックを取って絞めて、グラップリングの世界観を変えた人で。シャオリンって分かる? 平田 聞いたことはあります。 青木 修斗のチャンピオンだったヴィトー・シャオリン・ヒベイロから、アームドラッグからのチョークで取って勝ったんだけど、これが革命で。僕はADCC世界大会に2005年に行って1回勝って、次にマルセリーニョとやって。もう相手にされなくて。 ――1回戦で戦ったマルコス・アヴェランも米国のトップ・グラップラーでした。青木選手は相手のフィールドでしっかりと勝っています。 青木 NAGAって分かる? 分からないか(笑)。 平田 ハハハ。 青木 NAGAっていう大会があって、マルコス・アヴェランはNAGAのチャンピオンだったんですよ。マルコス・アヴェランとデイビッド・アヴェランというのは、グラップリング・シーンですごく有名で。当時はコブラカイのジョー・スティーブンソンとか、僕がすごく影響を受けた選手もいて。 階級別でマルセリーニョにやられて、次は無差別でホジャ―・グレイシーとやって。ホジャ―・グレイシーは分かるでしょ? ホジャ―・グレイシーにも負けて。ADCC後もグラップリングではクロン・グレイシー、ゲイリー・トノンにも負けて。 MMAの世界でいうトップどころでじゃ、エディ・アルバレスもそうだし。ギルバート・メレンデスに負けた。そこが結構すごく大きくて。当時のギルバート・メレンデスは、世界で一、二の選手だったと思っているから、そこで負けた経験があるから、何かこう……「世界って何だ」というものを、僕は弁えている。 ――平田樹選手は柔道からMMAに来て、今は色々なことを学びたい。色々なことを消化したい時期にあるかと。青木選手の3戦目の頃ってどうでしたか。 青木 中尾(受太郎)さんが2戦目です。だから、僕は平田さんとすごく近いよ。キャリア的には。あなたのほうがどんどん先に行っているけど。僕も男子の中では……堀口(恭司)選手はピャーっと行ったけど、僕もDEEPでデビュー2戦して、すぐ修斗に行って5戦目でチャンピオンだから。 平田 へぇ……。 ――今とは時代が違いますが、青木選手がADCCに出る前ぐらいからジムの垣根を越えたプロ練習が始まりました。 青木 それ以前はなかったですねぇ。DEEPの時は、今成(正和)さんたちとのスポセン軍団です。僕はチームROKENだった。 ──懐かしい。 青木 そこからパラエストラへ行って……でもこれは不思議で、本当に今もソックリ。格闘技を教えてもらえると思って行ったの。所属になった。2004年から2005年頃。でも、いまだに1回も教わったことはない。正直、誰からも……ですね。八隅さんっていう、すごく優秀なコーナーマンがいて、そして北岡さんがいて。「どうなんですかねぇ」みたいなことを、ずっと試行錯誤しながらやってきた。いまだに「先生は誰ですか?」と言われても、いないもん。だから、平田さんとは凄く似ていると思う。 ――とはいえ、あの頃と違い今は強くなるテキストブックがあります。 青木 ありますね。あの頃は、ただスパーリングをやるだけで。ドリルもなかった。技術練習もなかった。皆がヒザ立ちからスパーリング。確かに立ちからやっていた僕たちは、珍しいほうでしたね。 [nextpage] 3.11から1カ月、米国で戦った (C)Bellator ――対談収録の今日は3月11日ということで……本当に久々に思い出したのですが、青木選手が東日本大震災から1カ月も経っていない2011年4月9日に、米国サンディエゴで試合(Strikeforce: Diaz vs. Daley)をしました。 青木 はい。ライル・ビアホーム戦でした。 ――あの時は川尻達也選手と高谷裕之選手も出場したStrikeforceのビッグショーで。ギルバート・メレンデスと戦う川尻選手と、青木選手が現地の記者の取材を受けたんです。川尻選手は茨城だったから、その時の大変な状況を話して『みんなに勇気を』という話をして。 平田 ハイ。 ──至極真っ当ですよね。その時に青木選手は「関係ないよ。地震で親が死のうが、別にオレは試合するよ。勝てば良いんだろ」って。 青木 ハハハハハ。 ――米国のメディアは皆が取材の後で「アイツは頭がおかしいんじゃないか?」と私に話しかけてきて。こういう青木選手のメンタルをどう思いますか。 平田 変わっているなぁって……。 一同 爆笑 青木 でもね、3月11日は練習していたもん。地震が起こった時に八隅さんのところで。 平田 私はまだ小学生でした。ちょうど休みだったか何かで。自分とお母さん、お母さんのお姉さんとで大阪に行っていたんです。だから、あまり地震を体験していないんです。東京に戻れなくなったなぁって言っている時に、津波の映像が流れてきて……。 青木 僕は練習していてさ。第一波の時にすごく揺れて。「何だよ」って思いながらバックを取っていたの。で、北岡は横で誰かをガブッていたの。揺れても、誰も外に出ようとしない(苦笑)。すっごく揺れていたのに。 ――当時のロータスは、私の自宅に今より近いので、どれだけ揺れたかは想像がつきます。家の庭とコンクリの部分が何かの遊戯マシーンと思えるほど、ズレて揺れ続けていましたから。 青木 僕らは「ヤバいんじゃない? でもいいか」と思ってスパーしていたら、宇野薫はやっぱりまともで。宇野さんが「やめて、すぐに出ろ!」って叫んで。それで何人か外に出たんですよ。それでも北岡はまだガブっていて、オレはバックについていて(笑)。で、「お前ら出ろ!」って宇野さんが怒ったんですよ。宇野さんが絶叫したのは、あの時だけ。 ――不謹慎かもしれないですが、良い話です。 青木 揺れが収まってから、もう1回練習していたんですよ。やっていて、余震が来て、もう「打ち止め、まぁしょうがないか」って感じで終わった。それだけ、変わらず練習していたんですよ。あの時のメンバーは、10年経ってもまだやっているから。 平田 ……。 青木 それぐらい、みんな好きだったんですよ。 ――あの揺れは本当に凄かったですけどね。 青木 僕たちは本当に……次の日は、僕と北岡さんだけだったかな。2人だけで練習して。狂っていましたね。あっ、あともう1人いたけど、誰かは思い出せない。地震の翌日も練習していて、物がないのよ。水がないとか。コンビニに何も売っていなくて。 そうしたら北岡さんは、麦茶でプロテインを割って飲んでいて。「水が売ってねぇよ!」ってキレていましたけど、「いや、プロテインを飲まなくてもいいだろ」みたいな話をしていた記憶があります(笑)。それだけブレていなかったと思います。 ――いや、ブレていないですね。でも人としてはどうかなということですけど。「親が死んでも戦って勝つんだよ」って平田さんは言えますか。 平田 ……、いやぁ。 青木 でも僕、それは思っていますよ。いまだに。この仕事は親の死に目に会えない仕事だと思ってやっている。僕、祖母がDREAMのマッハ戦の前に亡くなったんですよ。「どうするの? 帰ってくる?」と聞かれても「帰るわけないでしょ」って。ウチの親もそう思っている。「帰らないよね」って。そんな感じのテンションでいるので。 ――その想いはあっても、地震で日本のことを心配してくれている記者に対して、わざわざああいうことを言うかなとは正直感じました。 青木 僕が逆にビビッたのは、「じゃあ僕に何を求めているのかな?」って。「試合しないで帰ります」と言ったら困るだろって(笑)。 ――川尻選手は「被災者の皆のために戦う」と言っていて、凄く対照的だったんですよね。 青木 僕は「みんなのために戦う」って思ったことがないんですよね。自分のために、自分が好きだからやりたいので。何もないんですよ。だから、そんなにのめり込まないほうがいいよ。好きになっちゃうと、困っちゃうから。  青木の格闘技への正直な想い、「好きになっちゃうと、困っちゃうから」の真意とは──青木真也が、平田樹に「格闘技、MMAとは何か?」について熱弁を振るった、題して「青木塾、開校」。両者にとって初めてのロング対談は、MMAPLANETにより行われ『ゴング格闘技』に掲載中。そして、ABEMAにて配信される。
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