平田直樹の「心の強さ」
打撃の危うさを持つ平田、その打撃によるダウンを奪ってからの強い組みからのフィニツシュ──実力者を相手に、進化を見せながらも「やれない」ことより「やれる」ことの強みが上回っている。それは妹・樹にもいえることだ。
初の3R戦で、1Rに自身の蹴りを横山に巧みにスネ受けをされて足を痛めたが、序盤から厳しい組みの展開を厭わず、最終ラウンドを「勝負のラウンド」と試合前から想定し、それを実行した。横山の出稽古先のロータス世田谷代表で、セコンドについた八隅孝平は、試合後、自身のnoteで平田のハートの強さを称えている。
「試合自体は、お互いのやりたい事の押し付け合いで一進一退でしたが『心の強さ』で平田選手に上回れられそのままやられてしまいました。相手の全ラウンド組み伏せる力よりもっと神経を疲弊させ、もっと手詰まりにさせ、最後は勝つ! と考えていましたが、平田選手がそれを上回る勝つ気持ち、そして神経や疲れに心が折れず前に出て来ました。正直完敗です。“現場”で『心が強い』部分を出せるっていいですね」(八隅)
試合という本番で、「心の強さ」を出せるほどの日々の積み重ね、そして試合“現場”で実際にそれを発揮できるファイターとしての素質が、23歳の平田直樹にはある。これでプロ負け無しの3連勝。数年後には、フェザー級の中心人物になっているかもしれない平田に試合後、話を聞いた。
──初の3R戦で、フィニツシュしての勝利でした。
「今回、初めての3R戦でサッカボール(キック)も踏みつけもありだったので、やられるリスクもあるけど、使ってみたいと思って、やってみようと思っていたことができました。パウンドをずっと練習していて、いつもポジションが悪くてなかなかパウンドが打てていなかったんですけど、今回、しっかりポジションを取って、ヒジも打てたので次に繋がったと思います」
──序盤から、組みで力の入る攻防を続けていました。スタミナに不安は無かったですか。
「作戦は組んで組んで、ひたすらしがみついて、しがみついて、3(R)でどれだけいけるか。判定を想定していました。3Rでキツいとは思っていましたが、3Rが勝負と思っていました。スタミナにはそこそこ自信がありましたし、1、2やって、どれだけ3でがむしゃらにやれるか、だと思っていました。3Rでフィニツシュ出来たのは一番、収穫になったかなと思います。だから、今日初めて、ガッツポーズを出しました。柔道でも出したことが無いです。嬉しかったです。フィニツシュ出来て」
──柔道の足払いが一度、それ以外はすべてダブルレッグなど下半身へのタックルでした。
「最近はレスリングメインです。ちょっと足をかけたりもしますが、どんどんいろいろな技を勉強していきたいです」
──何度も脇を潜りバックテイクまでは行けても、横山選手に巧みに正対されました。フィニツシュに繋がったのは、最終ラウンドのカウンターの右ストレート、右フックでした。あの打撃は覚えていますか。
「がむしゃらでした。自分も1回飛んでいたので。初めて当たって、相手がフラッとなったので、本当は打撃で仕留めたかったんですけど、相手選手も寝技もすごく研究してきたので、自分がやりたいことを相手のセコンドが先に言ってきてすごくやりにくかったですけど……なんとか勝てて良かったですね」
──MMA3戦目だった平田選手にとって、MMA13勝7敗の横山選手との試合は、いまの力量を測る実力者との対戦でした。どんな思いでしたか。
「はい、ここはもうすごく勝負でした。相手の方が経験豊富で、ここで勝つか負けるかで違うし、メインでフィニツシュ出来たことも嬉しいです」
──もう“平田樹のお兄ちゃん”の呼称は失礼だと感じました。
「うーん……まだですけど、これからが楽しみです!」