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【UFC】2021年3月6日、ドミニク・クルーズが試合後に語ったこと──

2021/03/11 12:03

ドミニク・クルーズ「傷を毎日目にしては、相手のことを思い出さずにはいられない。そういうことが、人生を違うものに色付けていく」

──ケイシー・ケニー相手にスプリット判定で競り勝ちました。試合の率直な感想をお願いします。

「望んでいた通りに近かったけど、キャリアにおいてスプリット判定はたくさん経験してきたから、何か新鮮に感じるということもなく、判定結果に驚きもせずだった。というのもセコンドは正直なことを言ってくれて、つまり『2Rは確実に落としてる』と言われたから、それで自分を“3Rでもっと行かなきゃ”と思わせてくれた。実際ちょっと2Rではガスが抜けていて、数発パンチをもらうことになってしまったから、そこを3Rで回収しなきゃいけなかった。セコンドの声に耳を傾けるようにしていて『行け、行け、プッシュしろ、よしいいか、プッシュするんだ』という声を信じるようにしていたよ」

──チャリティマッチが実現しなかったとして、その場合、次は?

「まずは帰って試合を見返さないと。そして自分の間違いを正し、練習する。コーチのエリック・デルフィエロをはじめとする僕のチームや、僕のボクシングコーチのダニー・ペレスと話をしてみないとね。サンディエゴのみんなに感謝、サウス・アリゾナのみんなにも感謝したい。自分がどんな状態のときでも、アップダウンがあっても一緒にやってきてくれたし、それにそういう意味ではモンスターエナジードリンクもずっとこれまで寄り添ってきてくれたから感謝をしている。だから、自分が名前を出した人のことについてはあくまでもチャリティなんだってことをわかってほしい。自分は学び、自分自身を試し続けてる、連勝中の対戦相手と戦って。自分はこうして今バンタム級史上最も勝利を挙げていることができて、ありがたい。なんか恍惚としている、こんなんじゃなかったという部分もあるけど、すごくハッピーだ」

──左ローキックを受けた足の具合はいかがですか。

「別にいいよ。普通にちょっと腫れてる感じで、アキレス腱を痛めてるけど、ちょっと突っ張った打撲というだけで、腫れもひどくはない。試合をしたんだって感じだね、すぐ良くなるよ。傷ついてるけど、負傷はしてない」

──相手のセコンドが、「レッグキックを出し続けろ」、そしてあなたのハイキックに「カウンターをレッグキックで狙い続けろ」と言っていました。あなたは1Rの半分も過ぎた頃には、これが彼らのゲームプランなんだと気づくものがありましたか。

「そうだね……僕には素晴らしいレフティがいて、ブレンダン・ラフトリーが3カ月にわたって僕の足を蹴り続けていた。それは自分の練習のなかで必要なことだった。誰かに蹴られまくって何週間も痣になったりするなかで、自分の身体が、それは対処できるという確信を得ることにも繋がる。だから彼がどんなに足を攻撃してきても大丈夫。自分は対処できると分かっているから。自分の身体がそうできるって、ね」

──たしかに通常のローキックはしばらく蹴られ慣れていないとすぐに効いてしまいます。しかし、カーフキックの場合は、トレーニングするということがどれだけリスキーなことなんでしょう。コナーvs.ポイエー戦のあとにはとりわけ選手たちは、『あれを実際に練習しきれない』と言っていました。キャンプ中にあれによって故障してしまうから、だと。どれほど難しいことなんでしょうか。

「難しいよ。というか、試合に向けてするトレーニングで、苦労をしない日なんてのは、ありはしないんだ。それこそが、16年もやってきて、今まだ僕がここにいられる理由だよ。僕は変わるためにここにいる。公衆の面前での変身だ。きみたちの前で脆弱性を晒し、批評され、“こいつは最低だ”と言われるような、そんな立ち位置に身を置かなきゃいけない。自分がこのポジションで変化していかなきゃいけないと。そして、自分がそれより高い実力を見せられることがありがたい。乗り越えられたからだ。そしてさらに次のステップを目指す。進化して、成長するためにまた変化する。自分は何を成し遂げられただろうか。帰って試合を振り返り、自分自身を批評し、自分に厳しく、自分ができるベストを尽くすことで穏やかになる。そして、さらに前進するのさ」

──そして、あなたは最終的に3Rで彼が減速していくのを感じていたのでしょうか、あなたのペースは1、2Rとは変わっていなかったように見えました。

「うん。それが僕にとってのカギだった。2Rでガスが抜けてしまう、そういうことになってはいけなかったんだ。だから自分にその点でイラついてる。かつて5Rの試合をずいぶんとこなしていたけど、そのなかでも感じていたことで、自分は──うーん……何て言うのかな、この感じを──そうだな、彼らのエネルギーがすごく爆発することを感じるんだけど、それで後から自分が報われるというのか。彼らのその爆発を自分は利用することができる。2R後にコーナーに戻ったときにはっきりと『お前はこのラウンドを落とした』と言われた。自分は『オーケー』と答えた。それで3Rでやってやらなきゃということになったわけだけど、対戦相手のプレッシャーをすごく感じたんだ。でもそれは攻撃的なプレッシャーというものではなかった。彼は前にプッシュしてくるけど、それはコンビネーションでもなく技術的なことでもなく、それは“負けていると思われないため”に、そう見えるような下がり方をしないために前に出ているという感じだった。だからそれを利用することでテイクダウンの機会が開けたり、右のパンチ、いくつかのコンビネーションを何発か当てられたりということに繋がったんだ」

──あなたは11年前の今日、WEC世界バンタム級王座戦でブライアン・ボウルズに勝利しました。今日、出場したジョセフ・ベナビデスとは2度、競い合ってきたでしょうが、あなたの息の長さと対照的だったようにも感じます。

「今回のカードにはティム・エリオットやジョセフ・ベナビテスが並んでいたよね。だいたいこういう連中を見て、目があったりしようものならお互いに“おい、俺たちまだここにいるよな。しょうがないよな”なんて思うのさ。僕は彼らを心底尊敬してる。もちろん、全てのファイターに対して敬意を払っているけど、彼らにはちょっと違う繋がりがあるから。ティム・エリオットとはトレーニングしたし、ジョセフとの試合では鼻に傷をつけられたんだよね。その傷を毎日目にしては、彼のことを思い出さずにはいられない。そういうことが、人生を違うものに色付けていく、それがこのスポーツの美しいところだと思う。このスポーツは、真理を語ってくれるものに他ならないんだ。それこそが自分の愛するところで得難いものだ。自分が負けて心が傷ついていても、誰の試合も断ったりしないし、何かうまくいかないことでハッピーじゃない時だって、僕はただこう言うんだ。『むかつくけど、誰も知ったこっちゃない。それが試合だ』って。だからみんなそんな感じで飲み込んでさ、前へ進まないと。やり遂げなくてはね」

──ハードコアなファンは「PRIDE NEVER DIE」と言いたがりますよね。人々にとって忘れ難いWECの夜のことを、今晩の試合で、みんなに思い起こさせたと思いますか? 小柄な男たちが、スポーツにおいてもっとも人々を興奮させた日のことを。

「ユライア・フェイバーと対戦した日のことについて、彼が最近、1カ月前くらいだったかな、彼の試合の契約を教えてくれたんだよ。彼は僕との145ポンドの世界タイトル戦で7000ドル。僕は敗戦で2000ドル。自分の最初の世界タイトル戦をテレビで見て、いかにこのスポーツが進歩したことか。ダナにもロレンゾ・フェティータにもフランク・フェティータにもとても感謝してる。FOXに移ってもスティーブ・ベッカーはじめみんなに感謝していて、FOXなしにESPNなしにはこんなに成長し続けられずここまでやってこれなかった。メディアというのは大きくて、とくにファイターにとってESPNが記事にしてくれることはどれだけ重要なことか。僕たちに稼ぐ機会を与えてくれているんだ」

──この試合の何がターニングポイントでしたか。

「見直さなくてはいけないけど、3Rだ。彼のプレッシャーを感じ、それを利用することができたということ。若干テクニックに落ち度があったりしてそれをきっかけに利用できた」

──この試合、どれほどの重荷だったでしょう。というのは、長いこと勝利から遠ざかっており、しかし皆は、あなたは常に最高のバンタム級だととらえてきました。これが、若者たちにあなたは健在だと思わせることになったでしょうか。

「素晴らしいことを聞いてくれたが、それは、多分、みんなの解釈次第だよ。現実的に言って、誰もが言ったりはできないことが、モハメド・アリのように、自分が常に頂点であるということだけど、自分自身は、バンタム級で最高の選手だと信じているし、それは実際に、ベルトを誰よりも長く保持し、防衛してきたという自負によるものだ。ただ、これに関しては、もう周りの人だったり他人次第で、彼らがどう思うかによるよ。そういうことで人を偉大にするんだと思う。みんながどう思うかによること。それでも自分は自分を誇りに思っている」

──若手の選手たちがどう思うかという点で、あなたはいつも対戦相手がどう言おうとその手に乗らないというような選手だと思いますが、今回に関して、つまり対戦相手が、「5年前10年前にユニークだったかもしれないけど、時代は変わっていってるんだ」というようなことを言われたことを覆した事実に対して、快感であったり思うところはありますか。まるで向こうはあなたのスタイルもあなたのゲームプランも分かり切っているかのようだった中で、あなたが勝てた、ということに。

「ああ。いつだって、対戦相手の言い分が間違ってると証明できることはいいことだ。ただね、否定はできない。どれほどの選手がいて、正直どれだけの選手がいるか覚えられないし、自分はただ試合を魅せたいだけというのもあるけど、あらゆるどの試合においても、何か、自分にはできないと言われたことに対して、やり遂げてきた。覚えているのが、両ヒザをやられて3年半離脱している間に、みんなが、『TJディラショーが僕の上位互換だ』という風に言ったんだ。それで、僕はその彼を倒して世界タイトルを獲得した。あれは最高だった。それに僕が(NCAA)Pac-10チャンピオンのスコット・ヨルゲンセンを倒した時っていうのは、WEC王座の防衛にしてUFC王座の戴冠ということになった。僕は“彼をレッスルすることなんてできない”と言われたけど、できたよ。ケニーをラウンドのはじめにテイクダウンできなかったけれど、テイクダウン・アテンプトはあって、つまりテイクダウンしてフィニッシュできなかったからといって、何もしてなかったことにはならない。これはMMAだ。詰めて攻撃を続けていても、最終的には隙を作ってしまう。順調に進めていけば自分のためになる。

 自分は最高の状態で、自分がまさにここにいるということ。自分の本能に従って、過去に止まるでもなく、未来でもなくて、自分の力がまさしく“今この瞬間に、ここに発揮される”ということは、つまり僕のコーチのエリックが初日から一緒にいて、このパンデミックの最悪な時期にも寄り添って、いい時も悪い時もずっとジムにいて、みんなを鼓舞して団結させてきた。このパンデミックであらやることがキツくて、それでもブレンダンが毎日暗いうちから来て、ときには僕よりも早く来ていた。彼は僕を怒鳴るし、僕のことが嫌いだけど、それはそれで(笑)。それからダニー・ペレス、すごいボクサーだ、ありがとね」

──先ほど、「このスポーツは真理を語るものに他ならない」というようなことを言ってましたが、新たな真実は何かありましたか? 試合においてでも、この試合のためのキャンプにおいても。

「いい質問だね……新たな真理か……まずは試合を見返してみないとなんとも言えないんだけれども、そうだな。自分にとって新しい真実として言えるのは、もし何か自分に疑問を感じたとしても、やり抜ける、乗り越えられる。とにかく目の前が燃えたら避けて行こうとするのではなく、ただ、その中を歩いていけばいい、ということだね」

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