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【UFC】2021年3月6日、ドミニク・クルーズが試合後に語ったこと──

2021/03/11 12:03
【UFC】2021年3月6日、ドミニク・クルーズが試合後に語ったこと──

(C)Zuffa LLC

 2021年3月6日(日本時間7日)米国ラスベガスの「UFC APEX」にて『UFC 259』が開催され、プレリミメインに元UFC世界バンタム級王者ドミニク・クルーズが出場。LFA二階級王者からUFCに転じて5勝1敗のケイシー・ケニーと対戦した。

 幻惑のステップやサークリングで“MMAに革命を起こした”35歳の元王者は、29歳のケニーを相手に、ローキックに苦しめられながらも、これまで何度も戦ってきた5Rのチャンピオンシップを「3Rのチャンピオンシップラウンドだと思ってメンタルを切り替え」、最終ラウンドで足を止めての打ち合い。そしてダブルレッグから魂のニータップを決めてテイクダウン。パウンドを落としてスプリット判定を制した。

 試合後、ジョー・ローガンの勝利者インタビューで「この先はどうする?」と問われたドミニクは、「分からない。そうだな……すごく長い、素晴らしい得がたいような旅路をこれまで送ってきたし」と勝利を振り返ると、生放送のなかで、突然の告発と提案を語った。

「それでね……チャリティーマッチについて考えてるんだ。ランボルギーニの横でフェイク写真を誰もが撮れるような今の時代に、チャリティー・ファイトをラインナップしたらどうかなって。ハンス・モレンカンプ(UFCスポンサーのモンスタエナジー社の社員)──そう、そいつが多くのファイターを契約を盾にして“人質”にしてる。あいつは、『自分はすごいプロファイターだ』と言って、試合を選んだりしているようだ。だからチャリティーのために何かしないか? 彼は100ポンドのアドバンテージを持っている。たくさんのお金を使ってショーをすることができると思う」と、格闘技界のインフルエンサーの一人と言っていい、UFCスポンサーのモンスタエナジー社の社員ハンス・モレンカンプについて切り出した。

 表情が強張るローガンは「ポリティカルだから、ここまでにしよう、とにかくおめでとう」とインタビューを切り上げようとするが、ドミニクは「ジョー、これはポリティカルなんかんじゃない、分かっていると思うけど、これはモンスターエナジーの話だ」と、UFCのスポンサーであるエナジードリンクの社員の行動について、物申した。

「分かっているよ……」とローガンが答えたところで、映像は切り替わったが、その後のバックステージや会見でもドミニクは、スポンサーの立場を利用して、いち社員がファイターとの2ショットや、インタビュー、さらにスパーリングを強要しているとして、ケージでも“オヤジファイト”的なキックボクシングの試合の経験を持つモレンカンプに、以下のようにチャリティーマッチを呼び掛けている。

「モンスターエナジードリンクにおいて、どういうわけか彼がMMAのアカウントを運営している。彼の投稿にコメントしたり、 彼と写真を撮ったりインタビューに応じなければ、彼はスポンサーシップを考慮に入れて 不利な立場を取るだろう、とダナ(ホワイト)にも言われてた。僕はモンスターエナジードリンクにスポンサーしてもらってるけど、彼からじゃない。僕が言いたいのは、彼と契約したわけじゃないから。彼と写真を撮ったりインタビューしたりっていう“仲良しごっこ”をさせられるのを押しつけられることに疲れたんだよ。自分はモンスターエナジーにスポンサーしてもらっているからといって彼から受けているわけじゃないのに。

 虚勢を張るために利用されたくないんだ。僕の顔を見てくれ、この身体も。生きていくために、死ぬほど殴られているんだ。彼の投稿にコメントしてないとそれを強制するようなメールがきて、インタビューに応じなければ僕の生活費を奪うというのか? どういうことなんだ。モンスターにスポンサーしてもらっているはずなのに。(モレンカンプは)“自称プロ”だから名前を出した。チャリティマッチならウィン・ウィンだろ? プロの戦績を証明するといい」

 ドミニクはモンスターエナジーのサポートに感謝の意を示しながらも、あらためて、スポンサードの権限を持つと言われているモレンカンプの行動について、ファイターの思いを代弁するかのように、苦言を呈した。

 この件については、以前にダナ・ホワイト代表もツイッターで不快感を表明していたが、後に削除。試合後の会見では「ドミニクはハンスが嫌いで、ほかにも何人か選手が彼個人と問題を起こしているとして、それは個別に問題を解決するしかない」と、「個別の問題」とし、さらに「モンスターという会社は選手たちの面倒をとても良くみている。みんなに分かってほしいのは、誰かが支援してくれるということであったり、スポンサーシップでお金をもらえるなんてことは、特権だということ」と、長年スポンサーとしてUFCを支援してきた同社については擁護した。

 ダナ代表は会見で「ハンスはまあマヌケ野郎ではある。しかしながら、彼らはスポンサーなんだ。何が言いたいかっていうと、彼らは選手に巨額を支払っているわけで、モンスターはそのなかでも本当に選手のケアをしていると思う。どの選手であろうとスポンサードしたいと思ったからこそそうするわけで、だからこの問題は、つまり仕事の場で誰かをどうにか不快にしているような状況っていうことではなくて、これはスポンサーシップの引き換えのようなもの。

 スポンサーから、そうしたいからとお金をもらえているということで、それは特権的なことだ。だからスポンサーしてくれている会社がいたとしてそこのビジネスのやり方が気に入らないなら、その人とは仕事をしなければいい、というだけのことだ。

 ただね、彼ら(モンスターエナジー)は、我々に対してはずっと良くしてきてくれている。間違いなく、スポーツ業界にとってね。選手に対してはなおさらのことだ。ドミニクはハンスが嫌いで、ほかにも何人か選手が彼個人と問題を起こしているとして、それは個別に問題を解決するしかない。モンスターという会社にしてみれば、とてもソリッドで、選手たちの面倒をとても良くみている。みんなに分かってほしいのは、誰かが支援してくれるということであったりスポンサーシップでお金をもらえるなんてことは、特権だということ。(クライアンントが誰か特定の選手に)支払い義務はないのだから」と、語っている。

 モンスターエナジーは、今回のドミニクの告発を受けて、「このような疑惑を真摯に受け止め、現在調査を行っています」とメディアにコメントした。

 巨大スポンサーの担当者によるパワハラともとれる行為は、格闘技界に限ったことではない。2005年にプロデビューしたドミニクは、まだ軽量級が軽視されていた時代から、その革新的なMMAで牽引し、プロデビュー以後もコールセンターで働きながらキャリアを積んできた筋金入りのMMAファイターだ。

 WEC王者からUFC王者となり、様々な記録を打ち立て、名勝負を繰り広げて来た彼の告発は、スキャンダラスな表面だけをピックアップしても真意は伝わらない。試合後の会見での記者陣との質疑応答から、ドミニクがいかにこのMMAというスポーツを愛しているかを感じてほしい。

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