MMA
インタビュー

【UFC】敗者バーンズが盟友ウスマンとケージのなかで語ったこと「友情が終わりを告げたとは思わなかった」=『UFC258』元同門対決

2021/02/15 11:02
 2021年2月13日(日本時間14日)、米国ネバダ州ラスベガスのUFC APEXにて、『UFC258』が開催された。  メインイベントでは、MMA16連勝中のウェルター級王者カマル・ウスマン(ナイジェリア・33)が、元同門でランキング2位のギルバート・ドゥリーニョ・バーンズ(ブラジル・34)を挑戦者に迎え、3度目の防衛戦に臨んだ。 photos by Jeff Bottari/Zuffa LLC via Getty Images  試合は、ウェルター級に転向後4連勝(ライト級時代と合わせて6連勝)で王座挑戦を決めたバーンズが1R、左ジャブを突くウスマンに右フックを当てて効かせると、2Rも左ミドルを当てるなど攻勢となるが、受けが強く軸が乱れないウスマンは左ジャブでダウンを奪う。  3R、オーソドックス構えから入るウスマンは、バーンズの右ローをかわすとサウスポーにスイッチ。右ジャブ一発でバーンズを倒すと、中腰からパウンド。バーンズは何とか下から足を手繰ろうとするが、剥がしたウスマンは、なおもパウンド連打。ハーブ・ディーンレフェリーが間に入った。  試合後、咆哮するウスマンだが、バーンズが立ち上がるのを正座して待ち、涙。勝者コールを受けると、顔を腫らせたバーンズと長い時間ハグをかわし、互いのセコンド勢、袂を分けた元ブラックジリアンズのジョルジ・サンチアゴともハグをかわした。  勝者ウスマンは試合後、「俺たちは一緒にスタートしたんだ。俺たちは旅路をともにしてきて、彼は階級を上げてここまでやってきた。一人ひとり倒して、登りつめてきたんだよ。今日はコーチの指示に耳を傾けていられたし、感情的にならないためにもそれが重要だった。元同門で、大好きな相手と戦うっていうことはそれだけタフなことなんだ」と、この特別な試合を振り返った。  ウスマンとバーンズは、2012年にブラックジリアンズで出会い、コンバット・クラブ、ハードノックス365、サンフォードMMAと、ともに10年間、練習を積んできた。  ジムのコーチの遠征中には、ウスマンはレスリングを、バーンズが柔術のコーチを務めるなど、「お互いに必要なことを与えられる」関係だったという。2018年のデミアン・マイア戦では、ウスマンのコーナーマンとして、バーンズが「試合の2分前までロッカールームでアップの手伝いをしていた」姿が伝えられている。  サンフォードMMAを離れ、バーンズと袂を分けたウスマンは、試合後、バーンズを抱き寄せ、耳元で「君のことが、好きだよ。君との戦いは一番ハードだったから、このまま頑張ってほしい」と涙を流しながら伝えてきたという。  バーンズと家族ぐるみの付き合いがあったウスマンは、試合をいかに振り返り、再戦についてどう語ったか。敗者の言葉も紹介したい。 [nextpage] 俺は自分を見失った ──序盤は攻勢でした。2R後半から何が起きたのでしょうか。 「自分がどうしたかったってことが全然できなかった。興奮しすぎていて、一発当てたところで俺の友人のコーディー・ガーブラントが陥った狂気(TJ・ディラショー戦からの3連続KO負け)にハマったというのか。二度目だったな。自分は、ダン・フッカーと戦ったときと同じ誤ちを犯した。オーバー・エキサイテッドだった。チャンピオンになりたいんだったら、こんな間違いをしては絶対にいけないんだ。今は、ロビー・ローラーみたいになりたいって思うんだ。というのは、彼はジョニー・ヘンドリックスに負けた後に復活できた唯一の男だろ? 2勝ほどして、チャンピオンになったじゃないか。それが今まさに俺の目指すべきことなんだなって。  クレイジーなサスペンション(怪我などによる出場停止)に合わないことを祈りつつ、帰ってちょこっと家族と休んだら、とにかくできる限り早く、試合をまたしたい。あとちょっとというところまで行ったんだから、俺には出来るはずなんだ。だからこそ、チャンピオンになるために同じ誤ちを繰り返さないようにならなくてはいけない」 ──今日の試合は、タイトル戦であることとは別の思いもあったのでは? 「ちょっとね。だって彼(ウスマン)のことが好きだし。すごくリスペクトしているんだ。とはいえ試合だと言ったときに、これはテニスの試合でもなきゃサッカーの試合でもなくて、格闘技の試合だからね。尊敬の念を抱いているからこそ、決して悪く言ったりということもないし、彼のお嬢さんも含めて、家族もよく知っているし、いっぱいいろんないい経験を共にしてきたから。試合をするとなったら、そういう面は見ないで、とにかくフィニッシュしたいということだけだった」 ──1RKOフィニッシュということも考えましたか。 「そんな考えを抱くことが間違いだったってことさ(苦笑)。実際、効かせられるとは思ったんだ。そうしてこれたしね。でもね、チャンピオンになるためには、もっと自己鍛錬が必要だ。 敬愛するコーディー・ガーブラントのように、彼が効いてると思った瞬間、戦略が頭からふっとんで、『やってやる』となってしまった。こういう誤ちは王座に就くものには相応しくないよね。  カマルの左を顎にくらったときの思いというのは……そうだな、友情が終わりを告げたとは思わなかったし、彼は負けた俺の耳元で『君のことが、好きだよ。君との戦いは一番ハードだったから、このまま頑張ってほしい。好きだよ』と言ってた。『僕も好きだよ』と答えたんだ。俺はただチャンピオンになりたかっただけだし、彼の家族もよく知っていて、必要だったら代わりに学費を払ってもいいくらいなんだけど(笑)、とにかく俺はチャンピオンになりたくて、素晴らしいチーム、ダニエル・エヴァンジェリスタ、コーチのグレッグ・ジョーンズをはじめとして、みんながそのために信じられないほどの仕事をしてくれて、クレイジーなトレーニングキャンプでものすごくいい感じに仕上がっていたのに、我を忘れてしまった。  とにかくすぐにでも戦いたい。顔はこんなだし、妻や子供たち、家族との時間だって必要だけど、出来る限りすぐに戻りたい。暖まってる状態だから、誰とでもやるよ、2、3週間……。なあ、ダナ、頑張ってきただろう、俺。試合をちゃんと見返して勉強し直して、まだまだ終わらないからさ、誰だって盤石じゃない階級だからね、すぐにでも戻りたい。やるべきことはたくさんある」 ──カマルと最後にトレーニングしたときの彼より進化していた? 「ノーだなんてとても言えない質問だ。彼はめちゃくちゃいい状態で、何回かものすごいのを喰らった。彼は、常に自己統制が取れているというか、それこそカマルなんだ。彼は速いというわけではなくて、当たってもハードだというわけではないが、めちゃくちゃ自己規律を保てる男だ。それが彼がチャンピオンたる所以だ。それに対して俺といったら興奮過剰で、load up punched(前のめり)で、それが俺の間違いだった。彼をフィニッシュするというのはどれほどハードなことか分かっているけど、だからこそもっとリラックスして、戦略に沿って自分がどう動けばいいかということをしっかりと維持して臨まなくてはいけなかった。彼は間違いなくすごく良くなってたわけだから」 ──彼の左右のジャブに対して何が問題になってしまいましたか。 「前がかりになりすぎていた。もし、自分がやっていたように頭を動かし続けていたり、もっと足を軽くステップ出来ていたら、彼は当てることは出来なかったんだけれども、自分はデカい一発を狙ってしまって、カウンター狙いになっていたのが間違いだった。彼が良かったというのはもちろんそうだけど、でも正直自分の間違いのほうが大きくて、彼がアジャストしてたってことじゃない。動き続けられなかったこと、フットワークを軽く出来なくされたことの代償は大きかった」 ──2R後の光景からすると、2R終了時点で、これは自分のラウンドだと感じていたのでしょうか。 「そう。どの瞬間をとっても、この試合は自分の方に向いてると思ったけど、前がかりになりすぎたね、そして間違いを犯した。俺はウォリアーだ、いろんなことをやり遂げてきて、これからだってそうする。俺がめちゃくちゃに落ちこんだからと言って、めちゃくちゃハードに頑張ってきたんだから、誰も止めることはできないよ。失敗したんだ。だからこそ、俺はやり続ける。それだけだ。なんだってするし、誰とでもやる。戻ってこなきゃいけない」 ──実際犯した誤ちというのは戦略上のどういうミスだったのでしょうか。 「俺は、彼にハードに効かせられてると思ってすごくエキサイトしたんだ。そのことで、前のめりになりすぎていった。自分がすべきことは。自分がやっていることをちゃんとやり続けることだったし、足を軽くして、彼をノックダウンするっていう、というのは俺のスピードはこの階級ではずば抜けていると思っていて、すごくクイックにテイクダウンも出来る。いくつかいい打撃があったけど、彼は統制が取れていたよね、だから両面なんだ、俺は興奮しすぎて、一方の彼は自分を抑制できていた」 ──ポジティブな意味で、リマッチをしたいと思っている? 「試合に臨むにあたっては顔を見たくないけど、最高位につきたいという自分の思いからすれば彼がそこにいるのならば自分はタイトルショットを再び掴み取って、再戦したいさ。正直言って、俺は自分に負けた。自分は間違いを犯した。彼はチャンピオンたる素晴らしいことを成し遂げたけれど、俺は自分を見失った。これをもう繰り返す事はできない」
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