MMA
インタビュー

【RIZIN】RENAが語る「空白の110日」――それでも彼女は拳を握って立ち上がる

2019/04/21 14:04
4月21日(日)、横浜アリーナにて開催される『RIZIN.15』で再起戦を行うシュートボクシング世界女子フライ級王者RENA(シーザージム)。 昨年の大晦日『RIZIN.14』でサマンサ・ジャン=フランソワ(フランス)との対戦が組まれていたが、減量の最終段階で過度の貧血と脱水症状のため倒れ、病院へ搬送されてドクターストップ。試合は中止となった。 注目度の高い大会を減量の失敗によって欠場してしまったことは、知名度の高いRENAにとって逆風が吹き荒れる結果となってしまった。それでも、RENAは再び拳を握って立ち上がり、サマンサの待つリングへ上がる。大晦日から空白の110日、RENAは何を想い、何をしていたのか。【試合レポートはこちら】 やれと言われればリングに立とうと思っていました 昨年7月の2連戦初戦となったエレイン・リアル戦。この時は相手が体重超過ながらRENAは試合を受けた。しかし、この2連戦が自身の体重超過の引き金になるとは――今まで対戦相手の体重超過はありましたが、ご自身がしてしまったのは初めてでした。 「7月の2連戦でホルモンバランスが崩れ、通院はしていたのですがなかなか体調が戻らず、体重の落ち方もいつもと違っていたので焦りはありました。最後あと300グラムだったんですが…まさかという感じでした。MMA(総合格闘技)の練習を始めてから大きな筋肉が付きはじめ。減量がキツくなっている部分はここ2~3戦であったので、一つの体調の乱れで限界を迎えたんだなって感じです」 ――具合が悪いと感じたら、そのまま倒れてしまったという感じでしょうか。 「そんな感じでした。意識はあったはずなのですが気が付いたら救急車の中で、どうしようって。刻々と計量時間も近づいていて、でもすでに病院で点滴を打たれていて、これはヤバいなって。それ以上にのどが渇きすぎてしまい、とにかく水分が欲しくてたまりませんでした」 ――試合をすることを諦めたのは病院へ着いた時点でですか? 「それについてはRIZIN側とシュートボクシング協会側で話し合いをしていて、病院へ着いた時点ではまだどうするかという状況だったんですが、私はもう頭が全く回らなくて。今回は棄権しようという話をされてパニックになったのを覚えています。何せ相手がいることなので、どうしよう、でも自分は病院へ運び込まれて点滴を1kg以上打たれてしまってる…って」 ――ご自身としては何が何でも試合をやろう、と思っていたのですか? 「やる、やらなければと思っていました。ただ、計量失敗というのは10年以上この世界でプロとしてやってきた私の中で一番許せないミスで、でも計量時間は過ぎているわけで実際にそれを犯してしまっている自分を信じられなくて、色々なことが頭の中でグルグルと回っていて言葉では説明できない心境でした」 ――入院はされなかったんですよね? 「半日病院で安静にしていて、その夜に試合を棄権すると伝えられました。茫然としたまま翌日の午前中にさいたまスーパーアリーナへ行かせていただいて、榊原委員長、サマンサ選手、それとテレビ局の方々に直接会って謝罪させていただきました。そして試合があった浜崎(朱加)さんに頑張ってくださいと伝えて会場を後にしました」 ――サマンサはコメントでかなり辛辣なことを言っていたんですが、ご存知でしたか? 「私が謝罪する前だったのかな? そのコメントは読みましたが、仕方がないことなので。私もこれまで何度も対戦相手の体重超過を経験してきましたし、立場が逆だったら、私も怒っていたはずです」 ――その後、RENA選手はネットを中心にバッシングを浴びることになりました。相当メンタルをやられたのではないですか? 「いえ、そういうのわざわざ見ないんです。その時はSNSも止めていましたし、外に出ることもしなかったので感情も止まっていました。人から聞かされたりはしましたが、良くても悪くても話題にされているということはプロなので有難いことだと思っています。そういうネットの人たちから与えられるダメージとかではなく、自分で自分を許せないやり場のない怒りというかダメージの方がデカすぎたので、バッシングがどうとか以前に心は砕けていました」 ――プロとして一番やってはいけないことをやってしまった、という自責の念ですね。 「一番嫌だったし、まさか自分がそんなことをしてしまうなんて…、許せなかったですね」 ――再始動したのは早かったようですね。 「前に進むしかもう道はないと思ったんです。時間は進んでいく一方ですし。迷惑をかけてしまった関係者の方々や待ってくださっているファンの皆さんのためにも早く復帰はしたかったので、それには練習するしかないと。いつ声がかかっても、1週間前でも5日前でもカードに穴が開いて声がかかったとしても、それには出場しようという気持ちで病院の先生と相談して、体調を整えながら練習して準備していました」 [nextpage] 1人でも応援してくれる人がいてくださるなら戦うべき ――復帰の舞台はRIZINで、その相手はサマンサというのは決めていましたか? 「いえ、私に選ぶ権利はないですし、私から何か要求するつもりも一切なかったので、ただオファーを待つのみでした。だから今回のオファーをいただいたのはありがたかったですし、感謝しかないです。望まれることはありがたいことなので断る理由はなかったですね」 ――どれくらい落ち込んだのでしょう? 「引きこもっていたわけですが、昔、何年も引きこもっていたのでそれ自体は苦ではなかったですね。心のスイッチを切っていました。それに家にいるのは好きなので、ずっと家で過ごしてました。でも、それを心配して友だちが連絡をくれたりわざわざ家まで来てくれたりして…。そうやって励まされたり元気をもらっているうちにこのままではいけないって思えたんです。年末からこれまで、本当に周りに助けられました。スポンサーや先輩から厳しいお言葉もたくさんいただきましたが、それも上げて温かい気持ちがあるからこそなので有難いと感じていました。どん底に落ちれば当然人は離れていくものですが、どんな状況でも変わらない人は本当に変わらないんだってあらためて感じることができましたし、そういう人たちに恩返ししたいと思ったから復帰を決めました」 ――何年もかけて今まで築き上げたものがあって、それが一気にどん底まで落ちてしまったかのようです。ここからまた挽回していくには大変なパワーを必要とすると思います。しかも、世間の風当たりも強いでしょうし。 「世間のマイナスな意見に左右されるなんて時間がもったいないです。私は今までプロとして自分自身で話題を生んで流れを作ってきた自負がありますし、予想以上の結果で盛り上げることもあれば、逆に大事なところで負けてしまって期待を裏切ることもありました。そこに賛否は生んできたつもりです。今回もある意味、絶対負けられない流れを自分で作ってしまったので、ちゃんと楽しめるように自分に喝を入れてチャンスを掴み取るだけです」 ――今までで最大級の逆境ではあると思います。 「どうなんでしょうね。こういうのって逆境というよりチャンスなんじゃないんですか。誰にも関心を持ってもらえなくなったらプロとしての存在意義はなくなりますけど、私は1人でも応援してくれる人がいてくださるなら、それは全力で戦うべきだと思います。昔よりは精神的に図太くなったので大丈夫だと思います」 ――必ず這い上がってみせますか? 「その気持ちがなかったら試合に出ません」 [nextpage] 今はMMAに自信が半分はあります ――しばらく見ないうちに、また身体がゴツくなりましたね。 「組み技系の練習をするとどうしても身体が大きくなりますね。MMAの練習を始めて3年経ちますが、身体つきは年々変わってきています」 ――昨年末には練習仲間である浜崎選手が浅倉カンナ選手に勝ってRIZINのチャンピオンになりました。あれほど強い選手といつも一緒に練習しているというのは自信につながるのではないですか? 「そうですね。世界も獲っている方なので、目に見える目標が目の前にいるのでやりがいがあるというか、楽しいというか。ある意味、海外まで練習に行くよりも練習になる部分もあると思います」 ――大晦日の時点よりも、今の方が強いとの自信は? 「今の方が全然強いです。今までMMAの試合では寝技に自信がないままで10戦近くしていましたが、今は自信が半分はあります。半分というのは、頂点を取らなければ100%の自信にはならないからです。でも今はある程度の選手とやってもある程度は対応できるので、自信をもって臨みたいと思います」 ――SNSに書かれていた「夢がかないそう」とはどんなことなのですか? 「それはまだ内緒ですね(笑)。今回はそのための第一歩です。この試合を綺麗に終わらせなければ、すっきりとは行けないかなって思います」 ――映像を見ると、サマンサは序盤からアグレッシブに打撃で攻めてくるタイプです。 「多分、向かい合ったら相手は来れないと思います。打撃の圧力が私にはあるので。そうさせない空気も作れるし、来たら来たで殴り倒せる自信もあります。グローブが小さくて見えないパンチも出てくるので100%はありませんが、打撃で負けることはないと思います。もしそうなっても、今の私ならタックルにも行けますし、いろいろな成長を今回の試合で見せられたらいいな、と思います」 ――今回のRENAは一味違う、という感じですね。 「けっこう寝技を頑張ってきたんで試したい気持ちもあるんですよね(笑)。まだまだ苦手な部分はありますが、以前とは違う私を見せられるんじゃないかなって思っています」
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