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【GLADIATOR】佐々木信治が4度の手術を経て4年ぶり勝利、フジメグ・愛娘に抱かれ「戦う許可を出してくれてありがとう」

2021/02/09 12:02
 2021年2月7日(日)大阪・176boxにて「BODYMAKER presents GLADIATOR 013」が開催された。  2020年2月23日の「GLADIATOR 012」以来、1年振りとなる同大会では、新型コロナウイルス感染対策のため、メインイベントが第1試合から行われ、チケットは完売。ツイキャス配信のなか、全11試合が行われた。  全選手入場から、いきなり始まったメインイベント。 「GLADIATORライト級暫定王座決定戦」として、元修斗環太平洋ライト級王者の佐々木信治(総合格闘技道場BURST)が初参戦。DEEP、GRACHANで活躍中の植田豊(リバーサルジム新宿Me,We)と王座を争った。  佐々木は、韓国ROAD FCで日本人初となる最多5勝をマークしライト級王座戦も経験。前戦は2018年5月に現PFLファイターのバオ・インカンと北京で対戦し、反則のエルボーも受けるなか、眼窩底、上顎、頬、鼻と、10箇所以上を骨折しながら最後まで奮闘、判定負けを喫した。  しかし、ダメージは大きく、4度の手術では全身麻酔、気管切開も行い、妻で格闘家の“フジメグ”こと藤井惠は、事前のVTRで、「本当に普通の生活ができるかどうかくらいの状態でした」と、振り返る。 「ただ、選手として私もずっとやってきてたので、本人の選択肢のなかに“やらない”っていうのが全く無かったので、後悔無く、自分のやりたいことをやり切ればいいのかな」と、死線を潜った夫の復帰戦を後押しした。  佐々木自身もSNSで「2018年5月12日 あの日から止まったまま。 入院中はとにかく何も考えないようにしてた。 ちょっとでも考えるとおかしくなりそうだった。 人形みたいになってた。 全身麻酔で10時間以上のオペを2回して1年で4回の手術でした。試合中に“死ぬかも知れないなぁ……”ってあの時はほんとに思ったな。 術後本当に辛かった。 でも家族や周りの人達の支えで気持ちが持ち堪える事が出来た。あの日から止まったままの時間を動かします。 どんだけ出来るかわかりませんがあのままでは終われないので戻って来ました。 応援して下さい」と記している。  インカン戦での大怪我の度重なる手術を経て、今回が2年9カ月ぶりの再起戦となる佐々木は、「ただの男の意地ですね」という。 「あんな状態で終わっちゃったら、死ぬ時、後悔しちゃうだろうなってのもある。やり残したというか、終わっていいのかなって気持ちがずっと3年近くあるんで、もう一回、やるために復帰戦をしようかと思いました」  再起戦の舞台に選んだのは、所属ジムのBURTSの選手も参戦しており、地域の選手を起用するGLADIATORだった。 「選手を大事にする団体だし、GLADIATORが好きですし、個人的に櫻井雄一郎代表のことが好きなので、ここで復帰したいなという思いはありました」と、復帰への思いを語る。  対する植田は、2009年DEEPフューチャーキングトーナメント優勝者。DEEPを主戦場としていたが一度は引退。2019年1月に、約5年のブランクを経て「Wardog Cage Fight 20 x GRACHAN 38」でカムバックし、モンゴルの豪腕ブレンゾリンク・バットムントに判定勝利。  2019年12月の「GRACHAN42×GLADIATOR011」では、GRACHANライト級王者・山本琢也に挑戦するも敗戦。以降もGRACHANに継続参戦し、小谷直之には判定負けも、岸本篤史、藤村健吾に勝利するなど実力を見せており、今回のGLADIATORライト級暫定王座戦に推薦された。  佐々木について「総合力というよりは、一発で神懸っている選手だと思います」と、評しながらも、「誰と決まろうが腹くくっている部分もあるし、こっちは全力でぶつかるだけなんで、覚悟しとけよ、というのはありますね。思いっ切り爆発したいし、暴れたい」と意気込みを語っている。  佐々木も対戦相手の植田を、「強いと思いますね。自分だったらこうするって動きを同じようにやっている。実は……隠れファンというか(笑)」と、同じ組み技師としてシンパシーを感じているといい、「自分の持っているものを全部出して、挑戦者のつもりでこの試合をしようと思っています」と、後悔無く戦うつもりであることを語った。  GLADIATORライト級正規王者は韓国のキ・ウォンビンが君臨するが、コロナウイルスの影響により海外選手の国内参戦が厳しい状況にあるため、国内でのライト級ベルトの停滞を考慮し今回の暫定王座戦が組まれている。  キャリアでは佐々木が上だが、復帰以降、コンスタントに試合を重ねる植田の充実ぶりも際立つ。両選手共にパワフルでサブミッションに長けており、打撃でもアグレッシブ。GLADIATORによれば、今回の暫定王者決定戦の勝者は、次回正規王者との統一戦が組まれるという。 ▼第1試合 メインイベント GLADIATORライト級暫定王座決定戦 5分3R○佐々木信治(総合格闘技道場BURST/元修斗環太平洋ライト級王者)[1R 3分42秒 TKO]×植田 豊(リバーサルジム新宿Me,We)※佐々木信治がライト級暫定王者に  先に入場の植田のセコンドには名将・山崎剛Me, We代表の姿。スリジエの『叩き上げガール』でケージイン。  続けて佐々木は、大怪我をしたROAD FCの入場時とあえて同じいでたちながら、新たな入場曲『Turn On Fire』で登場。セコンドに藤井惠がつく。  櫻井会長の暫定王座戦の宣言後、ゴング。  1R、オーソドックス構えの佐々木に対し、サウスポー構えの植田は左インローから入る。喧嘩四つの前手争いから、左ストレートを突く植田。佐々木は指を前に伸ばしたアピールからグローブタッチし再開。  ステップインした佐々木は右ミドルハイ。ブロックした植田は前手の右フックを振るが、避ける佐々木は左カーフキック。さらに右フックを狙う。  避ける植田は、左フックから右フックを打っていく。さらに左の低いローキックを打つ佐々木。植田の左ストレートを掻い潜り、中に入る佐々木は、そのまま金網まで押し込み右フック。  右で差し返した植田に、四つから肩パンチは佐々木。アゴ下に頭をつけるが、植田は首相撲に組むと、右ヒジ! 佐々木が押し込みブレークに。  左ストレートで前に出る植田は、佐々木を下がらせると、さらに左で前に。右フックまで繋げるが、そこに佐々木も右を返す。距離を取り直し左フックを当てた植田は左ストレートを当てると、左右のラッシュ! 金網に詰まり被弾した佐々木に、上田は右を差さずとも胸を合わせた形で払い腰テイクダウン!  ハーフガードを取る佐々木の背中をつかせるが、足を戻しバタフライガードの佐々木に、植田は上半身を離し、中腰からパウンド。体を離したところで佐々木もすぐに立ち上がる。  すぐに詰めて左を当てる植田。金網に背にする佐々木に左ストレートを当てると、さらに右ヒザ蹴り! 佐々木を金網に釘付けにして連打を放つ。「浮くなよ!」の山崎代表の声に、右でのど輪気味に固定しながら左を打ち込む植田。  連打が一瞬止まり、上体を戻した佐々木は、植田の左の入りにカウンターの左フック! コンパクトに振り抜いた左は植田のアゴをとらえ、植田の動きが止まり後退。  ここを逃さない佐々木は、さらに前に出て左ストレート! 後方にダウンした植田はクローズドガードを取るが、インサイドから佐々木は左右のパウンド&鉄槌の52連打! 頭を振る植田だが、打たれ続ける植田にレフェリーが間に入った。  レフェリーに身体を起され、座り込む植田の横で、佐々木は後ろを向いて正座し動けず。「1R 3分42秒 TKO」のコールに、植田は再び大の字に。  レフェリーに促されて立ち上がった佐々木は、左手を挙げられると目に光るものが。櫻井代表からベルトを腰に巻かれると、思わずハグして涙。植田からの握手にも応じ、認定書、大会冠スポンサーであるBODYMAKERの長渕翔代表らから勝利者賞を受け取った。  記念撮影中にも涙が止まらない佐々木。ケージに上がってきた夫人と愛娘を見ると、しゃがみ込んでまたも涙。長女・咲耶ちゃんから「ヨシヨシ」と頭を撫でられた信治は立ち上がると、咲耶ちゃんを足もとに引き寄せてマイクを握った。 「すいません、もうほとんど3年振りなので分からない人もいるかもしれないんですけど、広島でBURSTというジムの代表をやって、3年前までずっと戦っていました、佐々木信治です。ありがとうございました。  あの本当に今、世の中はこういうコロナの状況で大変ななか、大会を開催してくれたGLADIATORの櫻井代表に感謝します。そして、こうして会場に集まってくれた皆さまに、本当に感謝しています。  みんな、言いたかったことがひとつあって、この世の中でお店とかも大変だったり、仕事も大変で──大変なことがいっぱいあると思います。でも、俺も3年前にちょっと怪我をして、ちょっと死にかけちゃって、もう選手としては終わったと自分でも思ったところもあったんですけど、諦めずに……戻って来れました」と、語ったところで、涙が止まらず目頭を押さえた。  続けて、「正直、ちょっと今日の戦い方はあまり上手じゃなかったですし、ただ気持ちでガムシャラにパンチを振っただけなんで、上手いかどうかは分からないですけど、この気持ちがあれば、またこうして戻って来れるので、皆さんも大変だと思うんですけど、諦めずに頑張ってください。  それから娘にこうやって見せることができて嬉しいです。もう一つ、旦那があんな怪我で入院してて、それでもこうしてまた戦う場に送り出してくれた嫁さん──ここにいるんですけど、戦う許可を出してくれてありがとう」と感謝の言葉を述べると、藤井も自らの胸をポンポンと叩いて応じた。  試合翌日、「昨日の試合ですが全然上手く動けなかったけどなんとか勝つ事が出来ました。あの怪我から約3年振り、勝ち星は4年振りでした。諦めないで良かったです。本当に諦めないで良かったです。咲耶、めぐ、ありがとう。応援してくれた皆んなも本当にありがとう」と、ツイートした佐々木。  大怪我からの再起を果たし、2017年2月のROAD FCでのアルバート・チェン戦以来の勝ち星を手にした佐々木は、9日には、BURSTで会員とともに練習を再開している姿を見せている。
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