MMA
インタビュー

【UFC】カーフキックでマクレガーの足を破壊したポイエー「マイク・ブラウンの存在はとてつもなく大きな意味を持っている」

2021/01/25 12:01
 2021年1月23日(日本時間24日)、アブダビのヤス島に特設された「UFCファイトアイランド」にて、「UFC 257」が2千人限定の有観客の前で開催された。  メインでは、事前にPCR検査結果の提示が義務付けられた観客の大歓声のなか、元UFC世界ライト級暫定王者のダスティン・ポイエー(米国)と、コナー・マクレガー(アイルランド)が、2014年9月以来、6年半ぶりの再戦に臨んだ。  最初の対戦では、マクレガーに1R TKO負けを喫しているポイエーは、この日、18発のローキックをヒットさせ、マクレガーの足を破壊。2R 2分32秒、最後は左ストレートをクリーンヒットさせて、右フックでダウンを奪い、TKO勝ちした。  試合を決めたのは、大晦日RIZINでも堀口恭司が朝倉海を沈めているカーフキック。堀口と同門のアメリカントップチーム(ATT)に所属するポイエーは、セコンドのマイク・ブラウンとともに磨いてきたヒザ下の筋肉が薄い部分を狙う蹴りをマクレガー戦でも武器とし、14発のアウトサイドロー=カーフキックで、“ノトーリアス”を手詰まりにさせた。  ケージのなかで思わずマクレガーに「カーフキックは痛い……」とつぶやかせた必殺の蹴り。ケージのなかでポイエーは、「アウトポジションをキープし、カウンターに注意した。マックス・ホロウエイがボクシングが上手いと言うかもしれないけど、僕は彼を2度倒してる。コナー相手にこのボクシングを見せた僕も凄いだろ?」と、強打を誇るマクレガーに対し、位置取りに注意しながら、足を効かせたことを振り返っている。  さらに、会見に出席したポイエーは、「マイク・ブラウンの存在は、カーフキックを出すのに、とてつもなく大きな意味を持っていて、とてつもなく大きな結果を残した」と、ATTの名将への感謝の言葉を語り、コ・メインで150秒TKO勝ちで鮮烈な印象を残したチャンドラーについてもコメントを残している。 ポイエー「去年は無観客でも試合をしたけど、ブーイングを受けながら入場し、歓声を浴びながら退場するっていうのは、MMAのファンはフェアだなと思う」 ──6年半ぶりの再戦で、コナー・マクレガーに勝利しました。今の気分は? 「とてもハッピーだよ。最初の戦いのことを振り返るということは全然なくて、2週間ファイトアイランドのホテルであらゆるノイズを断ち切って、ひとり自分と向き合った。コナーも言うように、この試合で多くの経験をできたし、誰が何を思おうが関係ない。今日の試合はリベンジしたっていう感覚はなくて、素晴らしいストーリーのなかでいい試合をしたと思ってる。  すごくいい右が出せて心と体もひとつになって、全てを出し切ることができた。32歳になったばかりなんだけど、この2週間のファイトウィークで良かったことは唯一、戦っていた瞬間だけだ。“ファイトアイランド”って言うけど、“ファイトホテル”だよ。ただ2週間じっと座って減量していた。一番遠出したのはワークアウトルームに行ったくらいで、牢屋に閉じ込められているようだった。で、昨日が最悪。試合の前日っていうのはもうバルコニーから飛び降りそうなくらいだった(苦笑)」 ──コナー相手にATT陣営とどんな作戦を練っていたのですか。 「足(の動き)が重くならないようにして、ボクシングにおいてパワー・ショットを早めに出していくこと。要するに作戦は、キック、レッスル、そしてボクシング、それらをミックスして、MMAの戦い方に昇華することだった。インサイド・キック、そしてアウトサイド・キック。  マイク・ブラウンの存在は、カーフキックを出すのにとてつもなく大きな意味を持っていて、とてつもなく大きな結果を残した。コナーの足に効かせることができて、早々に(コナーが)良くない体勢になっていったから、レッグ・キックを繰り返すことによって、彼が(ローキックを)チェックし始めたときには、ちょっとしたローテーションができていない感じだったよね、(ふくらはぎの)すごく小さくて細い筋肉を狙うキックに意識を注いでいた。  経験上、あれが効かされるとどれほどキツいかはわかってるんだけど、5Rの試合だから、最悪なのはキャッチされてからコナーのレフトハンドのカウンターを当てられることだっただろうけど、接触をしながら、効かせられてるってことを把握して、もしキャッチされてからテイクダウンされるようなことがあっても、僕は柔術黒帯だからサブミッションだってできるという、柔術への自信も持っていた。でも、ただ、レッグ・キックが効いてて、彼が僕の足をキャッチしたときに、セコンドが『あと3分だ』って言ったときに、(いつも使う)ギロチンチョークに移行するなんて考えは捨てていた。ま、チャンスがあればこのファイトアイランドをギロチンアイランドに改名してあげたいところだったんだけれどもね」 ──試合前にあなたのコーチのマイク・ブラウンは、あなたは時々、感情的になるファイターだと言っていました。今日の試合では1R目と2R目で、どういう感情になっていたのか教えてください。 「正直、今日は一番の状態だったと思う。自分は感情のない殺し屋で、相手を仕留める。とにかく感情的になるということはなくて、すごく集中していて、すごくいい感じだった。全然ウォーミングアップも、隔離もエンジョイしてなかったんだけど、すごく落ち着いていて、自分はまるで壊し屋みたいな感じだったから、そこに感情の入る余地はなかった。  入場もロッカールームもすごく緊張はしていたんだけど……とてもフラットで、何も感情的になることはなかったんだ。この照明に照らされた瞬間から元通り。最高の気分さ。しっかり集中したし、最初に戦ったときはそれができなかった。うまく入り込めていなかった。起きていることを全然楽しめなかったんだ。でも今はここにいられることが嬉しいし、楽しいよ。トラッシュトークもね。彼がショーマンだってことは分かっているから、楽しめればいいかなって。オクタゴンに向かうときにスポットライトを浴びて、コナーの姿が見えて“ああ、始まるんだ”と思った。世界の誰が相手でも倒せるような気がした。  あいつも分かっているし、俺もこの意味を分かっている。お互いに痛めつけ合うんだってことは分かっていた。2人とも経験豊富だし、楽しむことも、外では仲良くなれることも分かるくらい成熟している。そしてケージが閉じられれば何をすべきかもね。去年は無観客でも試合をしたけど、ブーイングを受けながら入場し、歓声を浴びながら退場するっていうのは、MMAのファンはフェアだなと思うし、だから向こうへの(応援の)チャントがどうこうとかそういうのは関係なかったよ」 ──コナーは「立て直してまた戦いたい」と言っていましたが、ダスティンはどう考えますか。 「お互いにTKOで1勝1敗の状況だからね。何が起きるかなんて未来は分からないけど、それもあるかもしれない。彼とのリマッチには興味があるよ。あとはいつも、ネイト・ディアスのケツにムチを打ってやりたいって思ってる。戦うために筋が通ってるってことが大事だと思うんだよ。(試合中にコナーから)いいヒザ蹴りを受けて『ウッ』って声が出て、『あれは素晴らしかった』って彼に伝えたよ。彼のレフトハンドはキツくてちょっとフラッシュもしたしね。もしもっとプレッシャーをかけられて、もっとさらに当てて来られたら、すごくヤバかったと思う」 ──コナーは1年ぶりの試合でした。初戦からこの6年半の試合数(マクレガーが8試合、ポイエーは13試合)もあなたと異なります。ブランクは影響したと思いますか。 「いろんな人がいる。そんなこと全然関係なくって、だって彼だってしっかりトレーニングキャンプで鍛えてきているわけで、ただ実生活のなかで戦う好機っていうのはあって、自分は今回それをトレーニングキャンプで得られたと思っている」 ──コ・メインのライト級戦で、マイケル・チャンドラーがダン・フッカーを150秒TKOに下しました。チャンドラー戦は考えられますか。 「ない。素晴らしい試合をした彼には敬意の念は持っているけど。シャーウス・オリベイラとやるといいんじゃないか。今は早く家に買って家族に会って、パパに戻ってホットソースを売りたい。それで、自分のファンデーション(グッドファイトファンデーション)の仕事に戻る。僕には試合以外で起きていることでやるべき使命がたくさんあるんだ」 ──今後について、どんなプランを考えていますか。 「今回は、コナーのためでもUFCのためでもない。自分の家族のためにやったことなんだ。自分たちを一番いいポジションに置けるようにね。それが何よりも大事だと思っている。繁栄のためさ。経験も歳もとって32歳になる。あのベルトのひとつを持ちながら、追い求めることを考える。俺は暫定世界王者だ。あとどのくらいの試合が残されているのか分からないけど、去るときには世界チャンピオンでいたい。チャンピオンになりたい。そのために必死に頑張っている。“まっとうな世界タイトルをかけた試合”で腕を挙げてもらえていないこと以外、やれることはすべてやってきた。残りを達成したい。  最悪のときも最高のときもこの競技で経験していて家族も誇りに思ってくれているけれど、自分の財団を通して問題を抱えている子供たちの力になりたい。決して自分は特別な存在じゃなくって、彼らと同じで、だから誰にだってできることなんだって。だからそういうトラブルを抱えた子供たちに、格闘技を伝えて、目標を持ってもらって、ポジティブになってもらえたらと思う。格闘技が自分の人生を変えたように、彼らの人生も変えられるって思う。人々に希望を与えて笑顔の意味を与えたい。でも、どうなるかはそのうち分かるだろう。次の試合を焦ってはいない。家に帰って、ホットソース(ポイエーがプロデュースするルイジアナスタイルのソース)を売りたいだけさ」
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