MMA
インタビュー

【UFC】コナー・マクレガー「カーフキックで足は完全に死んだ」「オクタゴンライフは楽じゃない、だけど去るのは今じゃない」

2021/01/25 04:01
 2021年1月23日(日本時間24日)、アブダビのヤス島に特設された「UFCファイトアイランド」にて、「UFC 257」が2千人限定の有観客の前で開催された。  メインでは、事前にPCR検査結果の提示が義務付けられた観客の大歓声に迎えられたコナー・マクレガー(アイルランド)が、1年ぶりの試合で元UFC世界ライト級暫定王者のダスティン・ポイエー(米国)と対戦。  2R 2分32秒、ポイエーのパンチラッシュからの左ストレートを浴びたマクレガーは、右フックでダウンを喫するとパウンド1発。レフェリーが間に入り、TKOで勝負は決した。  試合を決めたのは、大晦日RIZINでも堀口恭司が朝倉海を沈めているカーフキックだった。  堀口と同門のアメリカントップチームに所属するポイエーは、セコンドのマイク・ブラウンとともに磨いてきたヒザ下の筋肉が薄い部分を狙うキックをマクレガー戦でも武器とし、“ノトーリアス”を手詰まりにさせた。  ポイエーがヒットさせたローキックは、18発。  ともにサウスポー構えから、マクレガーは広いスタンスで前足を前に置いている。1R目は右のインローから入り4発。さらに、マクレガーの右ジャブに合わせて左のアウトサイドロー=カーフキックを4発。そして、マクレガーの奥足にも右のアウトサイドローを1発効かせている。  2R目はカーフキックとなる左アウトサイドローを9発当てた。  その9発目。マクレガーが前足重心で左ストレートで踏み込んできたところに、ポイエーは左のカーフキック!  完全にマクレガーの右足にカーフキックを効かせた手応えを得たポイエーは、足が前に出なくなったマクレガーの手打ちに対し、金網を背にしていた体を入れ替え一気にパンチの回転を上げ、左右ラッシュ。左ストレートをクリーンヒットさせて、マクレガーを金網に釘付けにすると、右フックでダウンを奪い、パウンド1発。すぐにレフェリーが間に入った。  試合後、マクレガーは右足をひきずりながら会見場にスーツ姿で現れ、「足は完全に死んだ。今、スーツの中はアメリカンフットボールみたいになって(腫れ上がって)いる」と吐露。  一方で「ダスティンのあのキックはとても興味深いものだった。あんなに効かせられるカーフキックなんて経験したことがないし、自分のスタイルに採り入れたい」「何が起きてもおかしくない世界だ。自分はまた進化し、格闘家としての人生をまっとうしたい」と、継続参戦に意欲を見せている。  試合後会見でのコナー・マクレガーとの一問一答は以下の通り。 マクレガー「あんなに効かせられるカーフキックなんて経験したことがないし、自分のスタイルに採り入れたい」 ──試合を終えた率直な感想をお聞かせください。 「胸が張り裂けるような気持ちだ。何も言い訳することはない、ただだ彼に脱帽した、彼のフェノメナル(素晴らしい)なパフォーマンスによるものとしか言いようがない」 ──カーフキックを受けた右足の状態はいかがですか。 「足は完全に死んだ。チェック(ローキックに対し、足を上げる・脛を外側に向けるなどの防御)できているように思えていたんだけど、ひどく妥協していたようだ。今、スーツの中はアメリカンフットボールみたいに(腫れ上がって)なってる。あんなローは経験したことがない。  できる限りの対処をしたつもりだったんだけど、あれは普通じゃないというか、何度も足を持ち上げようとしたんだけど、前の筋肉が沈んでいくというような感覚で、どんどんヤバくなって、しかもダスティンはディフェンスも上手かった」 ──2Rの途中から形成が逆転しました。何が起きたのでしょうか。 「起きたことは起きたこと。ダスティンの戦いは凄まじかったし、自分もテイクダウンされてもちゃんと対応して、立ち上がって彼を返せていたし、ケージに追い込んでいいヒジも打ったし、自分は2Rでは、大丈夫だったと思っていて、俺のほうがクリンチは彼よりいいから、彼を絞め上げようと思ったんだけど、ちょっと遅すぎた。足がだいぶ危うくて、アジャストできなかった。蹴り足を掴んだ後の動きがよくなかった。  正直に言うと、あの瞬間の状況はよく分かっていなくて、帰って休んで、試合を振り返ろうと思う。とにかく足は死んでしまい、ただ自分のラッシュが何発かあって、まあ、アジャストできてなかったんだ。苦ーい薬を飲まされる感じさ。あんなふうにアップセット(番狂わせ)されるってことがいまいち実感が沸いていないし、試合間隔が空いていたからどうこう、という視点ではちょっと語りづらいものがある」 ──6年半ぶりの再戦で、1年ぶりの試合だったことについては? 「ダスティンにフェアプレーを。彼のしていること、彼と奥さんの取組み(サウスルイジアナで妻と起ち上げた「グッドファイトファンデーション」※地域振興の財団)も含めてとても尊敬しているから、それをオクタゴンでシェアできたことは誇らしく思うし、平和を願ってるんだ。(負けて)がっかりはするけど、彼と戦えてとても満足しているし、自分の11回目のメインイベントを、中東で、ファンの前で、こうして戦えたこと自体も喜ばしい。自分の今のベストは尽くしたから、また頑張って這い上がるしかない、素晴らしい人生を送ることはできているから、意識を高く持って、続けるだけさ」 ──ダナ・ホワイト代表は「これでコナーに火が灯くか、これでもういいや、ってなってしまうかどちらかだろう」とあなたのことについて言っていましたが、どちらでしょうか。 「きちんと、体勢を立て直して、スタイルを見直す。自分の持っている多くの武器も出しきれなかったし、もう一度、這い上がろうと思っている。スタイルがファイトを創るんだ。これまでスタイリスティックなマッチアップはたくさんあったし、ダスティンとも1勝1敗の状況で、ネイトとも1勝1敗だから、自分にとって素晴らしいと思えるマッチアップがいろいろあるし、トリロジー(三部作)ってことで異なるアプローチを試みられると思う。  だって、ダスティンのあのキックはとても興味深いものだったんだ、あんなに効かせられるカーフキックなんて経験したことがないし、自分のスタイルに採り入れて、スイッチして、キープするっていうことをしないといけない。今日はいい試合をできた日じゃなかったけれども、体勢を立て直してまた戻ってくることを楽しみにしてるし、今は早く子供たちに会いたいし、言い訳せず、悪評も受け入れて、別に顔に何の傷もなくって失ったのは足だけ。とんでもない戦いで2人ともよくやったんだ。もっと、早いタイミングで試合しないといけないと思ってる」 ──あのローキックは実際にはどんな感じだったのですか。 「ダメージが蓄積されていく感じで、チアゴ・アウベス(ATTコーチ)もいたし、彼らがローを狙ってくることっていうのはよく分かっていたし、あれは効くからヤバいっていう意識は当然経験上も持っていたんだけど、どれか一発が結構一気に効いてきて、チアゴもあれが良かったと言っていたな。それをきっかけにどんどん蓄積されていったんだと思う。  とにかく立て直しを図るけど、違うスタンスに作り替えると思う。すべての対戦相手は異なるからそれぞれに異なるアプローチをするわけだけど、あのローはとにかくどう対応したものか、という感じで、あれは本当に面白くて、反対側のスタンスが……つまり、右のローキック(インロー)はクリーンにチェックできていたんだけれども外側のやつは、自分がチェックできて足を(外側に)返せていたと思っていても、相手の骨が(ふくらはぎに)当たってしまう感じがした。そうやって1勝1敗になった状況だから次があればと思うよ」 ──今回は2千人限定の有観客試合で、声援も大きかった(※観客もPCR検査のうえ観戦)。 「ファンの応援には本当に感謝してる。僕の戦う姿も、プライベート・ライフも、全ては、みんなを喜ばせるためにやっていることだ。そのためにクリスマスホリデーにウェイトを作る努力だってしているし、だから負けちゃって申し訳ないなって気持ちもある。とはいえフレッシュでヘルシーな状態で、なんのトラウマも感じてない。なんか足にフットボールが生えちゃったみたいにはなっちゃって数日しんどいと思うけど(苦笑)。  早く帰って子供と遊んで、美味しいアイリッシュコーヒーとパンケーキで朝を迎えたい。子供と妻と一緒にここに来れたことはとても感謝しているけど、でも俺の闘争本能は滾(たぎ)ったままだし、立て直し調整して、自分が成し遂げてきたことに再び挑むまでだ。何が起きてもおかしくない世界だ、自分はまた進化し、格闘家としての人生をまっとうするんだ。オクタゴンライフは楽じゃない、だけどそれを去るのも今じゃない」 ──今のその気分を害するのは恐縮だけど、ハビブ・ヌルマゴメドフのツイート(「こういうことになるんだ。チームを変更し、君を王者にしたスパーリングパートナーから離れると。現実は程遠いんだ」)にはどう答えるか。 「チームを変えたなんてことはないし、そういう奴だってことだ。アスリートとして敬意は持っているけど、そんなこと言いたいんだったら戻ってきたらどうだ、別に彼は俺にカーフキックをしようとしてるわけでもなし、いろんな勝ち方、負け方もあって、それぞれだっていうことで、スタイルが試合を決めると俺が言ってるのも、今日はダスティンが彼のスタイルで勝ったということで、俺はあのキックにアジャストして帰ってくるって思ってるんだよ、だからもし彼が自分にそういう敬意を欠いたコメントをしたいっていうんだったら『戻ってこいよ、またやろうぜ』ってことだけだよ。それだけだ」  大会後、マクレガーは松葉杖をついて、会場を後にしている。
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