MMA
インタビュー

【ONE】北米の強豪に一本勝ちした青木真也「年末に猪木会長から手ほどきを受けてネッククランクがまた上手になった」

2021/01/23 09:01
 2021年1月22日(金)、シンガポール・インドアスタジアムにて、ONE Championship「ONE: UNBREAKABLE」が開催され、ONEライト級(※77.1kg)で、青木真也(日本)が、ジェームズ・ナカシマ(米国)に、1R 2分42秒、ネッククランクで一本勝ち。2連勝を決めた。  タップを奪った青木は、試合後すぐにケージの外に出てセコンドの宇野薫とハグ。勝利者インタビューで、「次はタイトルショットか?」と問われ、「ベルトとか考えてないです。ほんとうに怖くて、でもすごく幸せな時間で、あの……俺も格闘技、別にやんなくてもよくて、それでもやることで喜んでくれる人がいるんで。俺たちはファミリーだ!」と、涙を流しながら語った。  続けて「もう、格闘技が好きなだけ。日本にはいっぱい応援してくれる人がいて、37年間生きてきて、いまが一番応援を受けていて、いまが一番幸せです。ありがとう!」と、感謝の言葉でサークルケージを後にした。  試合後、ABEMAスタジオで解説を務めた北岡悟、大沢ケンジのインタビューにも現地から答えた青木は、「ホッとしています。本当にラッキーでした。みんなに感謝しています。僕の最近のキャリアのなかで、1、2を争う強い選手だったし、年齢的にも追い上げられる相手だった」と、北米でも活躍したライト級転向初戦の強豪を相手に、タップを奪い勝利した安堵の気持ちを語った。  試合の流れを決めたのは、青木が当てた打撃だった。レスリング出身のナカシマのテイクダウン、左のパワーハンドを封じた右のミドルハイキック、そして、クリーンヒットさせた右フックのタイミング。  事前の公開練習では、飯村健一・大道塾吉祥寺支部長とのミット打ち後、「総合格闘技はやっぱり試合に出さない懐の深さが大切だと思っている。テストに出ないけど教養として持っておくもの。だからグラウンドもいけるし、これ(打撃練習)があるから不安なく戦える」と語り、綺麗なフォームから左右の蹴りとヒジ&パンチを打ち込んでいた。 「あれはたまたま当たった右フックが結構効いていたんではないかと思います。あの後から(ナカシマが)力が入って無かった」と勝負の際を語った青木。  警戒していたナカシマの打撃に対し、立ち会ったところで「懐」から打撃を引き出し優位に立つと、両脇を差して組んでからは、詰め将棋のようにバックを奪い、ナカシマを追い込んで、最後は首を捩じり上げた。 「(スタンドバックについて)足を(4の字)フックしたところで終わったなと思いました。たまたま運が良かったですね」と、青木は再び一本勝ちを「ラッキー」だと表現した。  その「たまたま」を試合で出せたのは何か。  コロナ禍も自転車移動で練習を続け、元旦も「いつもの金曜日」ととらえて練習に向かってきた。日々の練習に加えて、青木の数ある顔の一つであるプロレスラーとしても表現を磨いてきた。 「年末に猪木会長(アントニオ猪木)から習うことがあって、首の捻り方とかを教わって、それでまたちょっとネッククランクが上手になった」と、青木はフィニッシュを語る。 「日々、コツコツとやるのが良かった。試合が無い日々もやっていた。コロナでみんな“右向け右”の時期も、練習してきたから実った感じがしました。また帰って一生懸命練習するだけです」  最後に柔和な笑顔を見せた青木。試合前には“青木潰し”とも言える厳しいマッチアップに、「僕の存在感は消せないから」と語っていた青木真也、37歳。  大会後、“AGE IS JUST A NUMBER(年齢はただの数字に過ぎない)のTシャツを纏って、ZOOM囲みインタビューブースに現れた青木との一問一答の全文は、以下の通りだ。 総合格闘技として完成度の高い試合だったのが、一番良かった ──勝利、おめでとうございます。今のお気持ちをお聞かせください。 「ありがとうございます。ラッキーでした。それだけです。たまたま、ラッキーでした」 ──試合前のインタビューではタフな試合になると語っていましたが、実際のところ、1R 2分42秒での一本勝ちでした。ご自身でも驚いていますか。 「はい。本当に驚いています。もっと厳しい、タフな試合になると思っていたので、この結果は本当にラッキーだったと思っています」 ──格闘技のキャリアを続けるモチベーションは何でしょうか? 今後タイトルマッチをやりたいという気持ちはありますか。 「(格闘技を)なんでやっているかって言うと、(ケージの中で)喋ったように、あんまり格闘技をやらなくても良いと思うんです。格闘技が好きで単純に楽しいから、これ以上楽しいことも好きなこともないし、単純に好きだからやっているだけです。タイトルマッチと言うよりも、次の試合がテンポよく来たらいいなと思います。毎回、試合をなかなか頂けないことが多いので、早く試合が欲しいなと思っています」 ──サークルケージの中で涙も見せました。どのような喜びを感じましたか。 「喜びというか、これだけ苦しい思いをして、試合をするのが嫌で怖くて、それで試合から解放されるというのが単純に嬉しいです。それが一番、苦しいところからの開放感みたいなことが楽しいです」 ──試合の最初に見せたミドルハイキックはジェームズ・ナカシマ選手の左のパンチへの対応策でしたか。 「テイクダウンのデフェンス、レスリングの強い選手だったので、連帯というか、しっかりと蹴って綺麗な構えと強い右の蹴り、ハイキックというよりミドルキックなのですが、強い蹴りと綺麗な構えを大事にして試合をしました」 ──最後の決まり手はフェイスロックでしたか、ネッククランクでしたか。 「あー、ネッククランクかな。年末に猪木会長から習うことがあって、猪木会長から技の手ほどきを受ける機会があって、『ちょっとお前、俺にフェイスロックをかけてみろよ』って言われて、あんなデカいから極まるわけないじゃん。それで首の捻り方とかを教わって、それでまたちょっとネッククランクが上手になったスね」 ──えっ、アントニオ猪木さんからですか? マジですか。 「真面目な話。猪木会長から習ったの」 ──今回のタフなマッチアップに、試合前には「僕の存在感は消せない」と言っていました。それを実際に成し遂げて、どのような感慨がありますか。 「やっぱり僕がやっていることは、この格闘技のなかでもONEのなかでも独特だと思うんですよ。すごく感情が出るMMAで、ただの競技じゃない。勝とうが負けようが人の感情を揺り動かすということに関して言うと、なかなかほかの選手には、僕より優っている選手はいないと思うから、感情を揺さぶるというところで言うと、僕の存在は消せないんじゃないかなと思います」 ──これまでのキャリアの中で、今回の一本勝ちはどのくらい気に入っていますか。 「どうなんだろう。ただ後ろひっついて首捻っただけですからね(笑)。一つひとつのサブミッションに思い入れがあって、今回の試合は総合格闘技として完成度の高い試合だった。(それが)一番良かったんじゃないかなって思っています」 ──「タイトルマッチはあまり考えていない」ということでしたが、戦いたい選手はいますか。 「あまりないです。とにかく早く試合がしたいですね。ただ、日本人で言ったら秋山(成勲)とかとやってみたいですね」 ──いま着ているTシャツに“AGE IS JUST A NUMBER(年齢はただの数字に過ぎない)”と書いてありますが、実際にそう思っていますか。 「僕、若いでしょ! 若くない? 全然、自分が37歳っていうのはあまり感じていないです。あまり年齢は気にしていないし、変わらず楽しいし。だって普通に考えたら、おかしいでしょ。30歳とかいいオジさんが裸になってパンツ一丁になってグローブ付けてぶん殴りあったりしているんだからさ。そのくらい、まだ気持ちは若いです」  同日には、4月7日のシンガポール大会で、ライト級でエディ・アルバレス(米国)vs.ユーリ・ラピクス(モルドバ)ほか、当初2月24日に予定されていた「ONE世界フライ級選手権試合」アドリアーノ・モライシュ(ブラジル)vs.デメトリウス・ジョンソン(米国)、そしてロッタン・ジットムアンノン(タイ)vs.ジェイコブ・スミス(英国)のノンタイトル戦が行われることが発表されている。  米国のTNTとジョイントして開催される4月大会は、米国市場向けにシンガポールの午前中に行われることも決定している。  ライト級4位として、前ウェルター級王座挑戦者を見事に退けた青木に、エディ・アルバレスvs.ユーリ・ラピクスの勝者との対戦が組まれてもおかしくない、この日の完勝劇。4月にアルバレスが勝てば、3度目の青木vs.アルバレス(1勝1敗)の可能性も出てくる。 「テンポよく試合をしたい」という、青木の次戦はいつ誰と戦うことになるか。円熟の青木真也の最終章はまだまだ続きそうだ。
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