2020年12月19日(日本時間20日)、米国ネヴァダ州ラスベガスの「UFC APEX」にて、UFC Fight Night: Thompson vs. Neal」が開催された。2020年のUFC最終戦となる。
メインイベントでは、ウェルター級5位のスティーブン・トンプソンと、11位のジェフ・ニールが対戦。
MMA15勝4敗1分けのトンプソンは37歳。“ ジェントルマンキック”と呼ばれるローキック&首相撲からのヒザ蹴り禁止のアメリカン・キックボクシング出身で、プロとアマで4つの世界王座を獲得している。
UFC7連勝で“ワンダーボーイ”と呼ばれたトンプソンは、タイロン・ウッドリーと王座戦で1敗1分け後、ホルヘ・マスヴィダルに判定勝利。2018年5月にダレン・ティルとの接戦で判定負けし、2019年3月にアンソニー・ペティスにKO負けで2連敗となったが、2019年11月の前戦ではUFC6連勝中だったヴィセンテ・ルケに判定勝利している。
対するニールは、「ハンズ・オブ・スチール(鋼の拳)」の異名を持つハードパンチャー。アメフトからMMAに転向し、LFAから「 Dana White's Contender Series 3」で勝利しUFCとの契約権を獲得した。MMA13勝2敗。
UFCでは5戦無敗で、前戦ではマイク・ペリーを左フックで1R TKO。フランク・カマチョ、ニコ・プライスらをKO・TKOに下すなどオクタゴンで強打が猛威を振るっている。
▼ウェルター級 5分5R○スティーブン・トンプソン(米国)[判定3-0] ※50-45×3×ジェフ・ニール(米国)
1R、オーソドックス構えのトンプソンにサウスポー構えのニール。右インローから入るトンプソン。さらに左前足でのサイドキック。右ミドルハイをガード上に当てる。
左ボディストレートはトンプソン。さらに右ハイ。出入りし左右に回るが、詰めるニールは金網を背にさせて左右の連打を狙う。左ジャブを当て中央に戻すトンプソン。さらに右の後ろ蹴り。
追うニールをサークリングでかわすトンプソン。サウスポー構えになり今度は右ジャブを刺す。詰めての左を振るニール。トンプソンは高い右の後ろ廻し蹴りをガード上に当てる。右から左を振り頭から突っ込むニールに、バッティングでトンプソンが眉間から出血。
2R、右で差して組むニールだが、突き放すトンプソンが、ジャブ&左ミドル! ニールの詰めに右サイドキックを当てる。さらに遠間から右ミドル、右ハイのダブル! 右ボディストレートも。打ち分けるトンプソンを追うニール。金網背に先に左右連打から回るトンプソン。詰めるニールをマタドールのごとく脇を潜る。
ガードを固め前に出て左を振るニールに、右を当てて左に抜けるトンプソン。詰めて左右連打を放つが、その合間に右前蹴りを巧みに入れるトンプソン。
3R、速いワンツーの右の突きはトンプソン。ニールの入りにショートの右、さらに長い右ハイをガード上に当てる。左フックから金網まで詰めるニール。アゴ下に頭を突けて右で差して組むと、右ヒザをこつこつ突く。しかし突き放すトンプソン。
左ジャブで距離を取るトンプソン。右のダブルで詰めるニールだが詰め切れず。トンプソンは右ミドルを脇腹に当てると右ストレートも。詰めるニールは右で差して押し込むと、外れたマウスピースを自ら拾い装着する。突き放すトンプソンは左右にステップして角度をつけて出入り。詰めて右の飛び込みはトンプソンをかすめる。
4R、空いたガードに右を刺し込むトンプソン。さらに隙間を突いて左ジャブも。顔面から出血するニール。前に詰めるニールに右サイドキックも。詰めてバックフィストはニールもかわすトンプソン。オーソドックス構えから右ジャブを突くトンプソン。右ヒジも。左ハイを空振りしバランスを崩すニール。スタンド勝負のトンプソン。逆にトンプソンのスリップにもニールはスタンドで待つ。
右ミドルを当てるトンプソンに左のダブルから右で詰めたニールは、左で差して金網に押し込むが、そのままブザー。トンプソンは右ヒザを痛めたそぶりを見せる。
5R、右足をひきずるトンプソン。しかしホーンにステップを踏む。詰めるニールの左右に右ハイを返すも顔をしかめるトンプソン。右足に痛みがあるか。足を止めてワンツーを2度連打するトンプソン。さらに右ハイも。ガード固めて左右を打ち返すニールはワンツースリーの連打で前進も、左右にかわすトンプソン。足をひきずりながら動くトンプソン。首相撲から左ボディも。詰めるニールの左右に右アッパー。ニールも右を当てるが、入りにカウンターの右はトンプソン。アッパーから左を打つニールは詰めるが、トンプソンも左を返してホーン。
判定は3-0(50-45×3)のフルマークでトンプソンが完勝した。ウェルター級トップランカーの強さを見せた。試合後、トンプソンは公式インタビューで、試合中の負傷について、「オクタゴンの中での逆境には慣れている。ヴィセンテ・ルケ戦は両手を骨折して終わったし、今回は右ヒザを痛めてしまったけど、そんなことは頭の後ろに置いてやるべきことをやるしかない」と説明。
バックステージでは松葉づえをついたトンプソンは、「俺たちは尊敬し合って試合していた。最高だった。4ラウンド目が終わった後、ヒザ蓋骨だと思った。右足に凝りがあるように感じたから。ヒザを曲げようとしたら、筋肉だった。あまりひどくないことを願っている。手術にならないといいけど。戦うのだから、アップダウンはあるし、怪我もつきものだ。でも、痛みは後で感じればいい。そのためにトレーニングしているんだから。俺は15歳の頃から戦っている。どのファイターだって、コンディショニングのプロセスを経て試合に臨んでいる。痛かろうがなんだろうが、試合中は無視だ。自分の思うような角度に動けなかったから、やりながら学んで調整しないといけなかった。でもそれだけのこと。彼はプレッシャーをかけてくるタイプ。俺にやるべきことは落ち着いて、歯を食いしばって打ち込んでいくことだった」と、ピンチだった終盤を振り返った。
さらに、「最高の気分だよ。ジェフ・ニールはものすごくタフだ。打っていくたびに、岩かと思うくらいだった。ずっと前に出てくるしね。全力で大振りのキックを顔面に食らわせてやったのに、それでも前に出てくるんだ。怪我はしたけど、自分のパフォーマンスにはとても満足している。彼は素晴らしいボクシングのベースがある。ポジションを保つのもうまい。ラウンドの序盤は彼がイラついていたと思うけど、ポジションから出ることはなかった。いつも、俺がイラつかせたら、相手は普段ならやらないことをやってくるんだけどね。彼は違った。ずっと良いポジションをキープしていたし、前に出続けてきた。あれはすごいと思ったよ」と、ニールがペースを崩さなかったことを賞賛した。
また、今後については、「ジェフ・ニールとビセンテ・ルーケに良い形で勝利できたから、トップ5の誰かとやらせてほしい。俺はまだランキング5位にいるんだ。ホルヘ・マスビダルなら最高の試合になりそうだ。前にもやったことがあるからね。どうなるか見てみよう」と、現4位でBMF (Baddest Mother F*cker)ベルトを持つマスビダルとの再戦を含む上位陣との対戦をアピールした。
アンソニー・ペティス「俺が相手のベストを引き出している。俺の人生からバカ騒ぎを排除した」
▼ウェルター級 5分3R○アンソニー・ペティス(米国)[判定3-0] ※29-28×3×アレックス・モロノ(米国)
「最初のラウンドでミスしてしまった。ジャンプキックを狙ったんだけど、向こうにうまく利用された。相手がプレッシャーをかけてきたけど、それに関してはもっと忍耐強くいくべきだった。試合の進み方が気がかりで、そのつけを払ったってわけだ。今はだいぶひどい顔になっているな。向こうの最初の2発でこれだ。すぐに分かった。落ち着いてリセットをかけたんだ。自分のリズムとレンジを見い出して、そこからは俺の試合ができた。まずは相手を感じるべきだった。ジャンプキックを狙った時、特に何があったわけではなく、試合はまだ始まったばかりだった。相手がプレッシャーをかけてくるのは分かっていたし、チェックフックで捕らえられる気がしていた。スリップしてしまい、背中からいったせいで向こうに漬けこまれた。背中を取られたから、巻き返すのに時間を使うしかなかったんだ。
正直、ノックアウトしたように思っていた。目が泳いでいたし、自分がどこにいるかも分かっていないようだったからね。試合後でさえ、向こうは“何を当ててきたんだ?”と言っていたくらいさ。スピニングフックキックさ。あいつはタフだ。あいつの頭に当てた俺のかかとはまだ痛い。ケリでかなりモメンタムがあったし、食らわせてやれたと思っている。アレックスがすごいのさ。タフなやつだぜ。タフな試合を仕掛けてくるだろうとは思っていたけどな。俺と戦うやつは誰もが自分のベストな試合をしてくる。ショータイムとの試合が一生涯のチャンスだと分かっているのさ。俺が相手のベストを引き出しているってわけだ。
自分自身を心から誇りに思うよ。ガッツを見せてやれた。ウェルター級はヤバイ。ライト級とは違うビーストだらけ。俺がライト級にいないのはただ怠けているだけさ。オクタゴンの外に出ると太っちまうし、自分のキャリアなんて気にしていない。クラブやパーティーでバカ騒ぎして、食いまくっていた。俺の人生からそういうのを排除した。オクタゴン外の生活も愚直にいく。ライト級に落としても十分やっていけると思っている」