戦いを終えて、ガッチリと握手を交わし肩を組む裕樹(左)と那須川
2020年11月1日(日)エディオンアリーナ大阪にて開催された『RISE DEAD OR ALIVE 2020』の一夜明け会見が、2日(月)大阪府内にて行われた。
メインイベントで対戦したRISE世界フェザー級王者・那須川天心(TARGET/Cygames)とRISE三階級制覇・裕樹(ANCHOR GYM)が揃って会見に出席し、前日の試合を振り返った。
2R2分56秒、飛びヒザ蹴りでKO勝ちした那須川は「裕樹さんとは昔からたくさんの思い出があります。僕がアマチュアKAMINARIMONでベルトを獲って初めてRISEを見た時に、裕樹さんは吉本(光志)選手をKOしていて(2010年12月19日)、凄いなと思いましたし、そこからまさか戦うことになるとは思ってもいませんでした。今回、引退試合をやって欲しいと言われた時は、体重が合わないし、絶対やらないだろうとは心の中で思っていたのですが、まさか体重を落としてくるとは思っていなかったので、僕にはない熱いものを感じました。終わって僕が勝つという形になりましたが、まだ勝ったという感じがしません。これからも裕樹さんの想いを背負って活躍してきたい」とコメントした。
試合前の心境を聞かれると「試合に臨むまではいつもと変わりませんでした。試合中、1Rを終えて2R目から早く終わって欲しいという感覚で試合をしていました。凄く時間がゆっくり流れ、僕だけが早く動いていた別次元の感覚がありました」という。
すると、裕樹は「俺が遅かったということ?」と鋭い突っ込み。慌てて否定するかのように那須川は「ローキックを3発もらって、その時は痛くはなかったのですが、朝起きたら痛かったんです。普通は腿の上を蹴る選手が多いのに、裕樹さんのローは膝の下を蹴ってきて初めてもらうものでした」と裕樹の代名詞といえるローキックを評価。
なお、今大会では那須川天心挑戦者決定トーナメントが行われ、昨年9月に勝利している志朗(BeWELLキックボクシングジム)が挑戦権を獲得。会見に同席した伊藤隆代表によれば来年2月末の大会で那須川vs志朗のリマッチを実現したいという。
那須川は「自分もあのトーナメントには凄く興味がありました。本当に格闘技は残酷。ずっと連勝していた鈴木(真彦)選手があと一歩というところでやられて、ああいうような形になりました。もう(鈴木選手とは)やることはほぼないですし、ここで優勝を掴み取った志朗君は持っているなと思います。トレーナーが同じで、一緒に練習することはないのですが、勝つために志朗君は全てを取り入れている。彼は本当にライバルで特別な存在です。昨日の試合結果で、初対戦した試合の価値がより上がったと思います。もう一回やっても絶対にリベンジさせません」と返り討ちを予告。
志朗からは「天心君がボクシングに移籍する前に、自分が敗北の味を教える」といった那須川へのリベンジに自信に満ちたコメントを残しているが、那須川は「進化しているのは志朗君だけじゃなく、僕も常に強くなることを考えてますし、前に戦った時の僕ではないよと。同じトレーナーから教わっていることを応用して、突拍子もないことをたくさんやりたい」とした。
一方、裕樹は「試合後のダメージは最後に飛びヒザをもらって、前歯がぐらついてて痛い。前に痛めていてちょうどいい機会なので差し歯に変えます」と苦笑い。
「世界一を肌で感じることができて凄く楽しい瞬間でした。引退したから反省しても意味ないのですが、夜中に嫁さんに『もうちょっとできたんちゃうかな?』と言ったら『あんたまだ続けるの?』と言われました。ファイターとして心はいつまでもファイターなんですよね。ここでもローキックを打てたんじゃないかとか映像を見て反省している自分が面白かったですし、そういうふうに思わせてくれたこの一戦。RISEさんと天心君には本当に感謝しています」と感謝の意を示す。
現役生活を終えたことについては「まだ実感がありません。58kgの体重にするために1年間頑張ってきたので、今ご飯を食べていいのか。食べたら罪悪感はないのか、食べたら走りにいかないといけないという意識があるので、まだ実感はないです」という。
今後については「ジムでの僕の指導方針で、選手を育てるという意識がなく、育つやつは勝手に育つんです。強くなりたければ自分で練習しますし、僕に言ってくると思うんです。言ってこないやつはそもそもそういう気持ちもないと思うんです。後進の指導は、言ってくる子がいたらしますが、基本的に力を込めてする気持ちはありません。命がけでやりますと言ってきた選手に1年間、僕と同じ生活をやれと言ってもできないでしょう。やるやつは勝手にやるので、そういうやつをRISEの舞台に上げたい。どっちかというと、フィットネスをやっている女性の方が命がけでやっていると思うので(苦笑)、フィットネスに力を入れていきたい」とした。
そして最後にマイクを握ると「引退試合で天心君の大事な一戦を使わせていただいて本当に感謝しています。天心君は本当は受けたくなかったんじゃないかと思うんです、僕が彼と戦うことと、彼が僕と戦うことは全然意味が違うと思います。そういう中でも彼は受けてくれて、リング上で向かい合ったときに『全力でいくから』と言ってくれました。その時、彼の覚悟を感じましたし、来るというのを感じました。『2R目から早く終わって欲しい』と言われてましたが、あれは僕に対する配慮。どこかで僕を壊してしまうんじゃないかという気持ちがあったんだと思うんです。凄いヒザ蹴りが飛んできて僕はぶっ飛びました。試合後に周りの方からいただいた写真を見ると、彼は優しい表情をしていました。僕は世界最強の男と引退試合をできたことを感謝しています。天心君、ありがとうございました」と再び感謝の言葉を述べた。