2020年9月27日(日)さいたまスーパーアリーナにて開催される『yogibo presents RIZIN.24』の第6試合で、注目のバンタム級戦が行われる。
朝倉海(トライフォース赤坂)が王座に君臨するバンタム級(61kg契約)で、金太郎(パンクラス大阪稲垣組)と瀧澤謙太(フリー)が、ヒジ有りルールで対戦する。
カード発表会見で榊原信行CEOは、「多くのファンの皆さんからとにかく今回、『金太郎選手を出せ』という声が日増しに大きくなって、会見の中でも『なぜ出さないんだ』というお叱りの声や不信感もあったのかなと思います。今回、晴れて契約がクリアになりました。最後の最後まで諦めず、身体を作り、貪欲に試合の機会を狙い続けた金太郎選手に、そこまでして勝ち取った出場権、思いの丈をぶつけてもらえたらと思います」と、金太郎のRIZIN2戦目にして、PANCRASEでは上位ランカーとなる瀧澤(2位。金太郎は3位)との試合に期待を寄せた。
金太郎はMMA13勝8敗2分。少年時代は喧嘩に明け暮れる荒れた生活を送っていたが、キックボクシングを始め、18歳の時にMMA(総合格闘技)に転向し「THE OUTSIDER」に参戦。秒殺勝利を重ね一気に人気選手となった。
2012年からはDEEP、PANCRASE等に出場し、強豪アラン“ヒロ”ヤマニハ、TSUNEを破るなど4連勝(3KO・TKO)を飾ると、2019年7月のバンタム級王座戦で王者のハファエル・シウバを追い詰めながら、逆転の一本負けで王座獲得ならず。2020年2月のRIZIN.21で加藤ケンジをリアネイキドチョークで極め、RIZIN初陣を飾っている
今回の計量では、バンタム級の61kg契約を金太郎が60.95kg、瀧澤は200gアンダーの60.80kgでパスした。
計量後の金太郎に話を聞くと、「いつも結構、水抜きの幅が多いので、メッチャ弱った感じに見えてしまうと思うんですけど、全然体調はバッチリです」と笑顔を見せた。「今回は最後3、4kgくらい。夏で落ちやすくて水分が抜けてる状態で脂肪も無くなり、ちょっとキツかったですけど、前回みたいな感じにはなってないので」と、2月の浜松大会より調子はいいという。
契約問題で「最悪、出られないのかなという状況もあった」と榊原CEOは明かしていたが、金太郎はさいたま大会出場にこぎつけられたのは、ファンのおかげだという。
「前回の試合で勝ってから、いろいろあってオファーをなかなか頂けず、ファンの人たちがそれを知って、結構、RIZINにアピールしてくれて。そのおかげで状況が動いたというのはあります。感謝しています。いつ試合が決まってもいいように準備はしていました」と語りながら、「RIZINに出てからは毎日練習するようになったんで」とつけ加え、少し苦笑して見せた。
ポテンシャルの高さを期待されながら、それでもまだすべてを出し切れていないのは、「以前は全然、毎日は練習してなかった」と言い、「RIZINに出ることになって毎日練習しだしたんで、ちょっとそこは成長した姿を見せれるかなと」と、コロナ禍のなか、7カ月ぶりの試合に向けて抱負を語った。
「急遽、決まったから、(試合が決まらないなか)普段からの練習をかなりやってたから、準備がどれだけ大切か、あらためて分かった。諦めずにやってよかった」という。
所属するパンクラス大阪稲垣組に加え、パラエストラ東大阪に出稽古。「寝技は寝技でやってきたし、打撃は打撃でキックのジムにも通ってやってきた。試合前となんら変わりないような練習をプロ練習でずっとガンガンやってきた」と、濃密な練習の日々が続いていたことを明かす。
対戦相手の瀧澤は、PANCRASEで上位に位置するランカーだが、「PANCRASEに出ているからには、いつかやる相手なのかなというくらいで、相手のイメージとかは、別にあんまりどうでもいいなと思って」気に留めていないという。
試合は陣営と分析し、「長身の選手なので、それを生かした試合をしているなというイメージで、作戦もあるんですけど……僕は本能で戦っているので、型にはまらず倒してやろうかなと思ってます」と、瀧澤陣営の想定の枠を超えた自由な戦いをするとした。
サウスポー構えの金太郎とオーソドックス構えの瀧澤。金太郎はパンチ主体ながら、PANCRASEのTSUNE戦では、サウスポー構えから左ストレートを見せておいて細かいスイッチの右ハイキックで1R KOに下すなど、器用なところも見せている。
そして同じくTSUNE戦で瀧澤はオーソドックス構えから右のヒザ蹴りをそのまま前方に着地させての右フックで2R TKO勝利という、空手の追い突きをMMAで決めている。
前進してのインファイトの金太郎に対し、距離を取って蹴りを軸に戦う瀧澤。決めどころでの飛び込みは両者に共通するが、相手のテイクダウンを切って、得意の打撃で削りに来る瀧澤と金太郎とでは、距離が異なる。
「そこはまったく気にしてない。他の選手はやられても、俺はそんな簡単じゃないよというイメージしかないので。蹴りもパンチも別に脅威ではなく、オープンフィンガーなんで、誰でも当たれば倒れる。あんまり打撃が上手いとか強いとかは意識してないですね」と金太郎は“ストライカー”瀧澤を評する。
2020年2月の前戦「RIZIN.21」では、強打者である加藤ケンジをテイクダウンで寝かせ、リアネイキドチョークで極め、初陣を飾った。グラップリングでも強さを発揮している金太郎だが、「ああなればできるし、僕はほんまに何もいつも考えてないんです。いろんなパターンの作戦は用意してあるんですけど、試合は本能。打撃でもいいし、寝技でもいい、どっちでもいいわと。レスリングシューズが履けなくても問題ないです」と、試合のなかで本能で動いているという。
PANCRASEでは瀧澤同様にハファエル・シウバに敗れているが、相手のテイクダウンに対してヒジを打ち下ろし、あと一歩のところまでシウバをTKOに追い込んだ金太郎にとっても、ファイターとしての契機となった試合と振り返る。
「あの選手とやって、世界のツワモノというか、そういう選手とできたことで、戦いに対するメンタルは強くなりました。私生活も含めて、あの選手とやってから変わったかなと。シウバと2R戦って(瀧澤は1R 一本負け)、あの強さを体感した。それで強くなった面はあるかなと思います」
「毎日練習していなかった」金太郎を覚醒させたシウバ戦。コンディションを整え、技術の幅が広がることで、より本能的に戦うことも可能となる。
「僕は相手を倒す、壊すことを重視しているんで、キレイに勝とうとは思っていない。いろいろ向こうも作戦はあるだろうし、向こうのやってきそうなことも頭にはあるけど、とりあえず勝つも負けるも、明日わかる。派手なスタイルで、型にはまらず、いろいろな場面に本能で応じて盛り上がる試合をしようと思っています。みんな楽しみにしていただけたら」
大事にしているのは、「自分で納得できる試合をする=周囲の期待を裏切らない」こと。今回、その「納得」には「勝利へのこだわり」も大きな割合を占めている。
「いつも『負けられへん』と言われるけど、僕は試合のとき『勝たなあかん』より、自分で納得できるかどうか。勝っていって人気になるというより、期待を裏切らない試合をしたい。ただ、もちろん勝たないとベルトも獲れないし、名前のある選手とも出来ないから、今回はしっかりKOするか・一本獲るか、そして勝つということにもこだわろうと思っています」
海外選手の来日に時間がかかるなか、勝者は、朝倉海が持つバンタム級のベルトに近づくことになる。
「もちろんバンタム級のベルトを狙いたい。そこに一歩でも近づけるように。何よりファンの人が望むカードをやりたい。みんな見たいんじゃないですか。そこはしっかり明日勝って、次のステップを考えようかなと思っているので、まずは、目の前の相手に集中しています」
全11試合のなか、最後に急遽、決まったカードで、世間的な知名度は高くない両者だが、金太郎は「俺の試合が一番面白い」と断言する。
「どのラウンドでもいつでも倒せると思うし、勝負の世界だから分からないけど全力で戦う。俺の試合が一番面白いから、絶対に注目してほしい。相手もそれなりの選手だから、めちゃくちゃ楽しみ。どんな感じのアドレナリンが出るのか。久々に、シウバ戦のときのように試合が待ち遠しい」と、目を輝かせる。
そして、このコロナ禍の中、さいたまスーパーアリーナで観客の前で試合をすることに感慨があるという。
「いろんなことがあって、格闘技をやってて、さいたまスーパーアリーナで試合ができるというのは、日本では最高峰だと思うし、すごく嬉しいですね……誇りになるというか。試合が決まった時点で、チケットがほぼ無かったんで、限られた人しか呼べなかったんですけど、テレビやPPVもあるので、そこで見てもらえたらなと思っています。豪快な戦いを見せるんで、応援よろしくお願いします!」