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インタビュー

【DEEP】魂のテイクダウン、新王者・牛久絢太郎と前王者・弥益ドミネーター聡志、勝敗を分けた“ダウン後”

2020/09/21 19:09
【DEEP】魂のテイクダウン、新王者・牛久絢太郎と前王者・弥益ドミネーター聡志、勝敗を分けた“ダウン後”

ヒザ蹴りを受けダウンした直後の牛久のテイクダウン。朦朧としながら必死にしがみつき、相手の心を折った。(C)若原瑞昌/ゴング格闘技

 2020年9月20日(日)、「DEEP 97 IMPACT」が後楽園ホールにて、有観客で開催された。

 メインイベントの「DEEPフェザー級タイトルマッチ」では、王者・弥益ドミネーター聡志(team SOS)と挑戦者・牛久絢太郎(K-Clann)が対戦。判定4-1(28-28マスト牛久、29-28弥益、28-29×3牛久)で牛久が新王者に輝いた。

 2Rに左ストレートで先にダウンを奪ったのは牛久。しかし、すぐに弥益がヒザ蹴りでダウンを奪い返すダウンの応酬に。このピンチに、牛久はダメージを受けながらも渾身のテイクダウン。勝負を分ける局面を凌ぎ切り、3Rは弥益“ドミネーター”を逆にドミネイトする猛反撃で、新王者に輝いた。

 試合後、バックステージで牛久は、勝因を「気持ちで勝てたんじゃないかなと。技術とかは置いといて、最後まで諦めない気持ちが自分のなかできちんと持つことができた。それが、結果に繋がったんじゃないかなと思います」と語った。

 2012年8月にPANCRASEでプロデビューし、2013年から怒涛の7連勝をマーク。16年4月には、田村一聖を相手に「PANCRASEフェザー級暫定王座決定戦」に臨むも3R TKO負け。そこからまさかの3連敗を喫している。

 PANCRASEでの厳しい時期を経てのDEEPでの戴冠に牛久は、「ほんとう一つのことを続けているといいこともあるんだと思いました。舞台は違いますけど、一回タイトルマッチを経験して、ベルトを獲れず、そこからもがき続けて、でも諦めないでやっぱり自分がチャンピオンになれるという可能性を信じてやってきた。それが、今回に繋がって本当によかったなと思います」と、腰のベルトに手を置きながら、その軌跡を振り返った。

 PANCRASEで厳しい連敗を喫した当時と今と異なるのは、経験値だという。


【写真】ヒザ蹴りでダウンした時の牛久。大の字で意識が飛んでいるように見えたが、ここから立ち上がり、必死のテイクダウンを決めた。目は虚ろなままだ。

「どんなに危ない場面があっても……昔は若さの勢いだけでやっていて、ちょっと自分が不利な場面・ヤベえなあという状況でパニクってました。あの経験があったからこそ、いまはどんなにヤバい状況でも冷静でいられる自分がいます。今回(のダウン時)も“ああ、昔の自分だったらヤベえな、テンパッてたな”という部分がありましたけど、いまはああいう場面でも、自分がやれることは何だろうって、冷静に対処することが出来た。それはやっぱりPANCRASEでの経験があったからこそ出来たことなので、PANCRASEさんにほんとうに感謝しています。

 今回の試合の勝ち方も、一本・KOじゃなかったですけど、最後まで危ない場面でも諦めないで戦い抜くことができたのが……、ほんとう自分の今までの練習に対する姿勢も、毎日毎日、キツい練習をどんどん乗り越えた。そのしんどい思いをすることで、最後まで諦めない力がつき、ベルトに繋がったと思います」

 2Rのダウンの応酬で、ヒザ蹴りを受けながらしがみついて弥益をテイクダウンして凌いだ場面。ダウンを奪った弥益にとっても、勝負の分かれ目の大事な局面だったという。

 試合後、弥益は「最終的に、精神的なスタミナと肉体的なスタミナの両方で自分が上回られた試合だと思います。特に2Rに自分がヒザを当てて、牛久選手は完全に目が飛んでたんですけど、そっから全力でしがみついてきて、そのしがみつきに自分がビビっちゃって……精神的に一回折れてしまったのが敗因だと思います」と、悲痛な面持ちで振り返っている。

 最初にダウンを奪ったのは、サウスポー構えの牛久が磨いてきた左ストレートだった。「パワーオブドリームでの出稽古がほんとうに力になりました。パワーオブドリームの皆さんのおかげもあって、このベルトを獲ることが出来たなって。選手のみんながほんとうに優しくてすごい励ましてくれたんです。とても感謝しています」と、牛久は足立区の仲間たちからも夢の力を得たという。

 判定は4-1で牛久が勝利。悲願のベルトを巻いた牛久を、リング上で祝福したのは、同じフェザー級のベルトをかつて巻いていた師匠・横田一則K-Clann代表だった。

「横田さんもすごく喜んでくれて、『やったな。やっとベルト持ってきてくれたな』って。自分の戴冠を、横田さんが自分ごとのように喜んでくれて、それを体験してなんか……涙が出てきました。でもリングの上では泣いちゃいけないと思って。リングの上で泣くのはカッコ悪いんじゃないかと思って、リングを下りて、陰で泣きました」

 試合後に勝者と敗者に分かれるのが勝負の常だ。そのコントラストが鮮やかなほど、勝者の輝きが増し、敗者の影は濃くなる。しかし、語られなかった敗者にも、勝者と同じように物語は存在している。

 敗れた弥益は、バックステージで言葉を詰まらせながら「ごめんなさい、梅田(恒介)さんは茨城に住んでいるのに、毎週、東京に出てきてくれて、自分に稽古をつけてくれて、一緒に強くなることができました。勝ってまた、ありがとうございましたと言いたかったですけど……ダメでした」と振り絞るように悔しさを語った。

 勝者には、次を雄弁に語る権利がある。注目の日本フェザー級には、RIZINで7連勝中の朝倉未来がいる。RIZINでは、修斗王者の斎藤裕が摩嶋一整を下し、ZSTフェザー級王者の関鉄矢らも白星を挙げている。DEEP新王者は、何を目指すか。

「ひとつの区切りがついたので、ひとつの目標を達成できたのですが、このDEEPのベルトはゴールじゃないので、あくまで通過点。もっと大舞台に出て、自分の存在をもっとアピールしていきたいと思います。大舞台? そこは……逆にここで言わない方が皆さん盛り上がるんじゃないですか。もっと強い選手と肌を合わせたい。もっと練習して自分も強くなります。そして、この横田さんが築き上げたDEEPのベルトの価値・重みは、いまのこのベルトとは重みが全然違うので、その横田さんを越えられるチャンピオンになりたいです。明日から練習ですね」

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