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インタビュー

【iSMOS】北岡悟と対戦する小金翔「“唯一無二”の北岡さんとの試合で、格闘技の世界で生きてきた位置付けが決まる」

2020/07/30 02:07
【iSMOS】北岡悟と対戦する小金翔「“唯一無二”の北岡さんとの試合で、格闘技の世界で生きてきた位置付けが決まる」

 2020年7月31日(金)、北岡悟が主宰するパンクラスイズム横浜にて、無観客&ライブ配信の自主興行『iSMOS.1』(イズモスワン)が開催される。

 同大会では、北岡自ら復帰戦に臨み、小金翔と対戦する。北岡のキャリアを危うくする存在、それが8連勝中の現ZSTライト級王者だ。

 練習仲間として9年の付き合いがあり、ファイターとしての気づきも受けた北岡悟を、小金は「唯一無二の存在」と語った。


――北岡悟選手との試合のオファーを最初に聞いたときは率直にどのように感じましたか。

「5月の半ばくらいだったと思います。話を聞いたときは、ちょっとびっくりしました。一応ツイッターでは、北岡さんが自分で大会やりたいみたいなことは書いてあったので、大会自体はなんとなく聞いていたんですけど、自分が出るとはちょっと思わなかったですね」

――北岡選手の相手にというのは想像がしづらかったと。

「そうですね。単純に実績的に北岡さんと僕が並ぶというのはまだ早いだろうなと思っていたので、たとえば僕がRIZINに出て、実績を積んだら、同階級なのでそういうこともあるかなと思っていたんですけど、いまはその段階ではなかったので」

――北岡戦が決まってからの練習環境はどのような形でしょうか。GENスポーツパレスで練習されているようですね。

「はい。GENでは主にMMAを。打撃でもMMAの打撃だったり、MMAの寝技を意識して練習しました」

――GENというと大型選手が多くハードなイメージを勝手に持ってしまうのですが、実際は……。

「GENって大きい選手が集まるというイメージがあると思うんですけど、実はそれ以上に、すごく学びの場なんです。すごく教えてくれます。それぞれ世界を舞台に戦ってきた選手ばかりなので、みんなすごく一つひとつの動きや、試合の向き合い方などに考えがあって、練習後に話し合う場を設けていたりします。今までいろいろなところに練習に行きましたが、技術のレベルが高い。そして打撃、寝技、レスリング、全部のスペシャリストがいると感じています。ボクシングのトレーナーの方とかも来てくれているので。それに加えて、ボクシングでは使えるけどMMAではタックルも蹴りもあるからどうなるのかを、岡見勇信選手らが『もうちょっとこうしたほうがいいかもしれない』と教えてくれます」

――技術確認してシェアすることがあるのですね。

「そうですね。互いにテクニックの情報を共有し合ったり、週末にUFCとかがあったら、解説を先輩方がしてくれたり。普通そういう環境ってなかなか無いんです」

――なるほど。そういった環境があって、先日のUFCでのジャック・ヘルマンソンがケルヴィン・ガステラムに極めた外ヒールフックについても「今日この入りの逃げ方教わって、試合見ると大事なポイントが良くわかりました」とツイートされたのですね。

(C)Jeff Bottari/Zuffa LLC via Getty Images

「そうですね。それを僕が質問したのではなくて、僕はそこまで正直、そこに関して疑問が浮かばなかったんですけど、岡見さんが、『なぜあれは極まったんだろうね』とテーマに挙げて、山田崇太郎さんとか、安西信昌さんたちもいるので、その中で技術のポイントを話し合ったりしています」

――そこに気づきがあると。足関節も得意とする北岡選手対策にもなります。

「まあそうかもしれないですね。ただ、北岡選手の動きに足関節は多いですが、それだけではないことを理解していますので、そういった意味でも、先輩方は僕が全然気付かないところを教えてもらい、覚えていくという感じです」

――ライト級の選手も練習に来ているようですね。北岡選手と対戦経験があり、現在、ONEで活躍中の徳留一樹選手の姿も見ました。

「はい。徳留さんもそうですし、最近、ライト級の選手が多いですね。先日の試合でフェザーに下げましたけどアキラさん、去年くらいから、今度パンクラスのタイトルマッチに出る林源平(9月27日vs.雑賀ヤン坊達也)さんとか。8月1日の修斗でウェルター級で出る飯田建夫さんも来ています」

――YZD GYMにも継続して行かれて、元ラジャダムナンスタジアムバンタム級王者で梅野源治選手と対戦したシラー選手にもミットを持ってもらったりしていますね。コロナ前にはタイガームエタイでも出稽古している姿をSNSで拝見しました。

「はい。YZD GYMは元々地元に近かったので、昔から通っていたところに通っています。トレーナーの方とも呼吸が出来ていますし、タイガームエタイはコロナ前だったので、本当は(タイガームエタイの)トライアウトとかも受けたいなと思ってたんですけど、コロナで状況が変わってしまったので」

――なるほど。でもそのコロナもあって、今回の北岡選手の大会に出ることにもなりました。北岡選手にインタビューしたところ、「年始の練習に来てくれました」と。以前はロータス世田谷とかでも肌を合わせてきたかと思います。付き合いは長いですね。

「去年は会って練習したりはしていなかったんですけど、お正月に伺いました。けっこう北岡さんと付き合いが長くて、ちょうど僕がプロデビューした前後くらい、北岡さんが青木さんと試合したとき(2011年大晦日「DREAMライト級タイトルマッチ」)に初めて練習をしたんです。当時、AACCのプロ練に行っていて、北岡さんが青木さんと試合をするということで、僕の身長が180cmくらいで似たような体格だったので一緒に練習させてもらいました。以降もいろいろなところで顔を合わせるようになって、プロとして様々なアドバイスをもらったり、一度、怪我で網膜剥離をやって落ち込んでいたときにも、北岡さんから『今は治るから、もう1回頑張りなよ』と励ましていただいたことがすごく印象に残っています」

――9年前の出会いからそれぞれ戦って来た。北岡選手も「大きな意味では後輩みたいなものだと思います」と言っていました。

「そうですね。ロータスで北岡さんのクラスを受けたこともありますし、TRIBE(TOKYO M.M.A)で練習をさせていただいたりとかもありました」

――ファイターとして北岡選手のスタイルについてはどのように感じていますか。

「スタイル的には……珍しいというか、僕も対策として、北岡さんみたいな人と練習しようと思うんですけど、なかなかそういうタイプの人がいないといいますか」

――現代MMAを咀嚼しながらも、特殊なんですね。

「そうだと思います。だからこそ目立っているというか、ずっと唯一無二の選手なのだと思っています」

――そんな歴史と状況のなかで、小金選手にとっては、北岡選手を等身大で捉えられている状況ですか。

「やっぱり改めて──もちろん練習していていろいろなことは感じていたんですけれども──いろいろな試合を見たり、北岡さんのDVDを昔の試合から持っているので、過去の映像も見て、改めてこういう動きをよくやるなとか、こうなったらちょっと危ないからこうしようとか、対策は立てています。事前動画でも言いましたが『ここだったら勝てる部分はある』というのも見えてきました。自分ではそう思っていますけど」

──「けど」……。

「思っていますけど、それ以上のものが来るかもしれない。1年くらい試合をしていないじゃないですか、北岡さんも。だから、いいイメージばかりでなく、うまくいくとは限らないイメージで戦おうとは思っています。うまくいかなくても次こうしようというプランは何個かあるので」

――これまでの小金選手の試合で北岡選手の体型に近いのは……マックス・ザ・ボディとかでしょうか。あのときはテイクダウンをされながらも、コーナーで立ち上がってという展開でした。今回はリングからケージに試合環境が変わります。

「リングかケージかは、そこまで意識していなくて。それよりも、今回、ケージが小さいこととか、相手がいつもそこで練習しているということの方が考えます。コロナ禍の自主興行なので第三者のリングではないので。たとえそれがリングだろうが、ケージだろうが、相手のほうが慣れているということは前提にしています。そしてそれは承知の上で僕も受けたので、ケージでもさらに狭いケージの中でどう戦うかというのは、いろいろな人にアドバイスをもらいながら考えています」

――あのケージのサイズだと距離を保つのがなかなか難しそうに感じます。

「そうですね。どうしても接近戦になる時間は長い」

――接近戦の戦い方、すぐにケージに詰まるケージ際での戦い方も想定してやってきたと。

「そうですね」

――あらためて、今回の北岡悟選手は、これまで小金選手が戦ってきたどの選手よりも修羅場を潜って来た選手だと感じます。その選手と戦うことについて、どんな位置付けで捉えて、今後につなげたいと考えていますか。

「僕はこれまでも北岡さんといろいろ会うことが多くて、背中を追っているみたいなところもあったので、その先を見据えているところもあるんですけれども、いまは自分の中では一つの目標にしていた試合でもあるので、まずはこの試合に集中して、先のことは考えないようにしています。勝ったらもちろん自分が行きたいところには行けるとは思うんですけど、それよりも目標にしていた人と戦えるということのほうが、自分の人生においては意味がある。僕にとっては同じライト級で、青木さん、五味さん、川尻さん、そして、北岡さんは特別なんです。その選手と試合出来るということは、自分がこうして格闘技の世界で生きてきた一つの位置付けが決まるんじゃないかなと思っています。だからこそ勝ちたい」

──今回、RIZINにZSTから伊藤盛一郎選手、関鉄矢選手、竿本樹生選手が出場します。小金選手はZSTライト級王者として、8月に別の決戦に臨むわけですが、そこに思うところもありますか。

「やっぱりZSTがどうしても修斗、DEEP、PANCRASEに比べて低くなってしまっているので、ZSTをその中に入れるように盛り上げていきたいんです。その代表となるのは、ZSTのチャンピオンたちなので、そういう人間が活躍していけば、ZSTの価値も高まると思うので、ほかのチャンピオンにも結果を出してほしいなとは思っています」

──昨年末には合同練習もありましたね。

「あのときは……個人的なことを言うと、父親が病気で亡くなって。そこからいろいろ自分でも考えることがありました。親父、父親が仕事もうまくやっていて、人生の中ではいい時期だったと思うんですが、そういうときに病気になってしまった。そのときに、改めて、人生どうなるか分からないなと感じたんです。父はいつも自分の試合を観に来てくれていて……自分もしっかりと目標にしていたことを早く実現しないと、自分の人生、どこまで続くか分からない。そんななかで実現したいと思っていた試合が来てくれたことは、本当に自分の中でモチベーションになっています。親父に試合の報告は出来なくても、親父の知り合いとか友達の人たちはいっぱい繋がっているので、僕が活躍してその人たちが喜んでくれることが、父親の評価を上げることでもあると思うので、父の息子としてその姿を見せたいです」

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