キックボクシング
レポート

【新日本キック】江幡塁がRIZIN榊原委員長の目前で判定勝ち。勝次は延長判定でWKBA王座獲得ならず=3.3「MAGNUM 49」

2019/03/04 11:03
【新日本キック】江幡塁がRIZIN榊原委員長の目前で判定勝ち。勝次は延長判定でWKBA王座獲得ならず=3.3「MAGNUM 49」

▼第10試合 スペシャルメインイベント WKBA世界ライト級王座決定戦 3分5R延長1R
×勝次(藤本ジム/日本ライト級王者)
[延長判定0-3] ※9-10×3
○ノラシン・シットムアンシ(タイ/元テーププラシットパタヤスタジアム60kg級王者)
※本戦判定1-0(48-48×2、勝次49-48)
※ノラシンが王者に。

2017年のKNOCK OUT初代ライト級王者決定トーナメントで準優勝後、2018年は前半はダメージ回復に努めた勝次だが、後半で復帰しタイ人相手に4連勝。WKBA世界王座挑戦に向け、「世界で最初に出来た目黒ジムの故・野口修会長が、初めて創設したキックボクシングの世界タイトルを目黒ジム(現・藤本ジム)の選手として、伝統のあるベルトを巻くことに意味があると思っています」と意気込む。対するノラシンは33歳で戦績52戦35勝(5KO)15敗2分。元テーププラシットパタヤスタジアム60kg級王者だ。

試合は、3Rに左アッパーでダウンを奪った勝次が、後半ノラシンに逆襲を許し、延長判定で惜しくも敗れる結果に。

ともにオーソドックス構え。序盤は王座戦のためか様子見か、いつもより動きが硬い勝次。ノラシンは勝次の蹴りをしっかりカットし、前蹴りと右ミドルで勝次を寄せつけない。2R、勝次の右ハイに軸足蹴りを合わせるノラシン。前蹴りも左右からタイミングが良く、勝次の出入りを警戒する。右ストレート、左フックはいずれも勝次の打ち終わりへのカウンターのもの。ジャッジ1者がノラシンにつける。

3R、距離を近づけた勝次。ノラシンの蹴り入りに左ストレートを当て、右ローもヒットさせるように。しかし、勝次の踏み込みに合わせた足払いで何度かノラシンは勝次を前のめりに崩す。勝次もノラシンの左ストレートに左をかぶせ、右フックへとつなぐと、ノラシンが左前蹴り、右ミドル、右ストレートを畳みかけてきたところを右をかわして左フックを叩き、ノラシンが右手を残したままつかみに来たとことを左アッパー! アゴにもらったノラシンは苦笑しながらダウンの宣告にすぐに立つ。ノラシンのダウンに右のスーパーマンパンチで詰める勝次は打ち合いに持ち込みノラシンの左に左フックも合わせるが、ノラシンもフィニッシュはさせず。

4R、ダウンを奪われたノラシンは巻き返し。勝次は左フックを入れるが、ノラシンは勝次の入りにサイドキック気味の強烈な左前蹴り、右ボディストレートと勝次を止めると、これまであまり出さなかったヒジを解禁。カウンターの右ヒジで勝次の左まぶたをカットさせる。4Rからギアを上げたノラシンは最終ラウンドも手足を休めず。勝次の飛び込みやフックに左右の前蹴りを当て採点を戻すと、本戦判定はジャッジ1者が勝次を支持したものの、1-0で延長戦に。

延長R、左右に回りながら距離を取り左ミドル、さらに右ミドルを当てるノラシン。ブロックする勝次だが印象はよくない。追う勝次の前足を払うノラシン。勝次は両手をマットに着く、さらに詰める勝次をいなすノラシン。延長判定はジャッジ3者ともノラシンを支持し、ノラシンがWKBA世界ライト級王者のベルトを巻いた。

勝次は王座獲得ならず。試合前に「ジム開設が目標と言いましたが、その前にやることはまだたくさんあります。今、話題になっているONEで、キックボクシングのチャンピオンとして試合をしてみたいです」と希望していたONE参戦はどうなるか。


▼第9試合 メインイベント 日タイ国際戦 56kg契約 3分5R
○江幡 塁(伊原道場本部/WKBA世界スーパーバンタム級王者)
[判定3-0] ※49-47×2、50-46
×アナージャック・シットゲーオプラユーン(タイ/元タイ南部2階級制覇王者)

RIZIN榊原信行実行委員長がリングサイドで観戦するなか、2018年6月のKNOCK OUTで小笠原瑛作にKO勝ちするなど7連勝中の江幡塁が、元タイ南部2階級王者のアナージャックと対戦する。アナージャックは65戦45勝(10KO)18敗2分という20歳。

試合前のインタビューで那須川天心戦への興味について聞かれ、「僕たちの打倒ムエタイの試合スケジュールが最優先ですが、もしもそういう話が出てくれば、やらない理由はありません。それによって業界が盛り上がってくれるのであれば、喜んで協力しますよ」と語っていた江幡(※下部に掲載)。

試合は、序盤は細かいステップから左右ローで攻める塁に対し、懐深いアナージャックは前蹴りで距離取りローを返していく。そのアナージャックの蹴りに右ストレートを合わせる塁は、徐々に得意の左ボディ、右ロー、奥足ローを効かせると、足が流れるアナージャックはダメージを嫌い前足を変えるように。塁は首相撲から右ヒジもヒット。

アナージャックは左右ミドルを塁の腕、あるいは脇腹にヒット。受ける印象はよくないもののその蹴り足をつかんでの得意の右ストレートを塁も狙う。出入り、飛び込んでの右フックを当て、近い距離でボディ、右アッパーも決めた塁が、左ミドル、左ハイで応戦するアナージャックを振り切り、判定勝利。危なげなく8連勝をマークした。


▼第8試合 73kg契約 3分3R
△斗吾(伊原道場本部/日本ミドル級王者)
[判定1-0 ドロー] ※29-29×2、29-30
△プーパンレック・クラミツジム(タイ/元蹴拳スーパーミドル級王者)

1R、パンチ主体の斗吾に対し、プーパンレックは右ミドル、前蹴りを的確に返していく。2Rにはプーパンレックの首相撲で苦戦する斗吾は、3Rもパンチを振るうが決定打にかける。引き分けに終わった。


▼第7試合 67.5kg契約 3分5R
○リカルド・ブラボ(アルゼンチン/伊原道場アルゼンチン支部/日本ウエルター級王者)
[2R 1分47秒 KO] ※右ストレート
×デンノンセン・エイワスポーツ(タイ/エイワスポーツジム)

リカルドは1Rから右ロー、右ミドルで前進。2R、リカルドが右ストレートでデンノンセンからダウンを奪い、そのままKO勝ちした。


▼第6試合 51kg契約 2分3R
○アリス(伊原道場本部)※デビュー戦
[判定3-0] ※30-29×2、30-28
×栞夏(トーエルジム)※デビュー戦

エイベックス・マネジメント株式会社所属で「ミスセブンティーン2018」のモデル・高橋アリスがプロデビュー。4歳から伊原道場で練習するアリスは、江幡を彷彿させる両腕ブロックで、1Rから左ジャブ、右ストレート、右ミドルでプレッシャーをかける。終始、手数で上回り判定勝ちしたアリスは「今日デビュー戦で勝つことが出来て嬉しいです」と笑顔を見せた。


▼第5試合 71kg契約 3分5R
○喜多村誠(前日本ミドル級王者/伊原道場新潟支部)
[1R 2分53秒 TKO]
×中川達彦(元インターナショナルマーシャルアーツ王者/打撃武道 我円)

▼第4試合 62kg契約 3分3R
○内田雅之(藤本ジム/日本ライト級1位)
[2R 1分54秒 KO]
×拓也(チャクリキ武湧会)

▼第3試合 61.5kg契約 3分3R
○髙橋亨汰(伊原道場本部/前日本フェザー級1位)
[2R 2分10秒 TKO]
×長谷川健(RIKIX/WPMF日本ライト級王者/RIKIX)

▼第2試合 ライト級 3分3R
○渡邉涼介(伊原道場新潟支部)
[判定3-0] ※30ー27×3
×北川哲也(スタージス新宿ジム)

▼第1試合 フライ級 3分2R
○石渡悠真(P.K.センチャイムエタイジム)
[判定3-0] ※20-19×3
×小野拳太(日本フライ級/藤本ジム)

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江幡塁が試合前に語っていたこと──「那須川VSメイウェザーを見て、若い頃の気持ちを思い出しました」

――WKBA世界スーパーバンタム級王者の江幡選手は、那須川天心選手と階級がほぼ同じですよね。昨年末の『RIZIN』のメイウェザー選手との試合はご覧になられましたか?

「はい。自宅で観ました。あの条件の中、よく頑張っていましたね」

――やはり那須川選手にとって不利な条件だったと思いますか。

「そうですね。ボクシングルールで、しかも体重も経験も違います。誰がどう見ても、那須川君のほうが不利だというのは分かるのではないでしょうか。でも仮に自分が彼と同じ立場だったとしたら……、やはり挑戦してしまいますね。どんなに不利な条件だと分かっていても、あの最強と呼ばれるメイウェザー選手が相手ですから、対戦したくなるのは格闘家として当然だと思います」

――そういうものですか。

「ええ。僕はそう思います。結果は残念でしたが、あの試合を見て自分が若い頃の気持ちを思い出しました。自分なら絶対にできる、絶対に負けないという野心や自信は、若い頃に強く持つものですからね。ああ、自分にもそういう時期があったなと、とても懐かしく思いました」

――目標だけを真っすぐに見て、ガムシャラに突き進む那須川選手の姿を見て感情移入したファンもいたと思います。江幡選手も、そういう時期があったと。

「あったというか、今もありますね。懐かしいとは言いましたが、そういう意味では昔から目標は変わっていませんね。打倒ムエタイというのは、僕たちの目標ですから。僕たちの階級で誰も成し遂げていない伝統あるラジャダムナンスタジアムのベルトを獲得することしか見ていません。彼の試合を見て懐かしいと思ったのは、うまく表現できませんが那須川選手の純粋な気持ち……、自分を信じる思いが伝わったからかもしれません。その意味では、僕たちと同じだなと思いました」

――一方で、那須川選手と武尊選手の対戦の話題がよく出てきます。頂上対決という表現に対して、どういう思いでいるのでしょうか。

「僕は盛り上がればいいと思っています。彼らがメディアに出て大きく取り上げられることの方が重要で、キックボクシング界にとっていいことですよね。そこで興味を持ってくれたファンが、本場ムエタイに挑戦をしている僕らの存在を知ってもらえれば嬉しいし、一緒に盛り上げていきたいとは思っています」

――対戦したい気持ちはあるのでしょうか?

「僕たちの打倒ムエタイの試合スケジュールが最優先ですが、もしもそういう話が出てくれば、やらない理由はありません。それによって業界が盛り上がってくれるのであれば、喜んで協力しますよ」

――那須川選手や武尊選手に勝つことがゴールではないと。

「はい(きっぱり)。僕たちにとって一番、大切なことは、ラジャダムナンスタジアムのベルトを腰に巻くことです。キックボクシングの選手、新日本キックの選手にとって、それを目指すのは宿命ですから。そこは、昔からまったくブレていません。歴史に守られたムエタイの聖域とも呼ばれる伝統の階級に挑戦して、目標を達成するのが僕たちの悲願です」

――他のことにとらわれている時間はないですか。

「そこだけにフォーカスしていないと、目標は達成できないのではないでしょうか。そんなに甘い世界ではありませんし。今回、兄の睦がタイで試合をしたんです。セコンドについたんですが、相手にローキックを効かせて足を引きずるくらいまでダメージを与えていたのに、判定負けを喫してしまいました。日本だったら勝っていたと思いますが、あらためてタイの判定基準の難しさを痛感しましたね。首相撲対策をばっちりやって、パンチでも蹴りでも負けるわけがないという万全の状態だったにもかかわらず、ミドルキックのポイントで判定負け。判定の取り方は分かっているつもりでしたが、さらに研究が必要だと思いました」

――そこは難しいところですよね。ムエタイの基準で争うと、小さい頃からやってきた彼らに同じことで競り勝つことは難しいわけですし、強引に倒しに行けば隙が出て、そこを狙われてしまいます。

「そうなんですよね。でも、だからこそ面白いのも事実です。難しいからこそ挑戦する価値のあるものですし、ぜひ兄弟で達成したいですね」

――今回は、南部2階級元王者のアナージャック選手との対戦です。南部王者は、ネームバリューこそないものの地味に強い印象があります。

「たしかにこれまで何回か南部王者と対戦してきましたが、みんな強かった印象がありますね」

――相手の研究はするのでしょうか。

「映像で見るかもしれませんが、研究はしないでしょうね。これは伊原会長にもよく言わることなんですが、相手が誰でも闘える準備をしておきなさいと。だから、どんなタイプがきても問題ありません。実際、僕はどんな技でも倒せる準備をしていますから、研究されても大丈夫です」

――ここ数年、ローキックだけではなく、ハイキック、ボディブロー、ヒジ打ちなどでKOしていますね。

「臨機応変に使い分けられるようにしないと、打倒ムエタイは達成できませんから。すべての技でKOできるように高めたいです。そうすれば、打倒ムエタイは達成できると信じています」

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