MMA
インタビュー

【ONE】女王アンジェラとの再戦を狙う山口芽生「燃え尽きて空っぽになったら、パワーが入ってくる」

2020/06/11 09:06
【ONE】女王アンジェラとの再戦を狙う山口芽生「燃え尽きて空っぽになったら、パワーが入ってくる」

 ブラックサバスの“IRONMAN(アイアンマン)”の爆音が鳴り響く中、空手衣姿で華麗な“体捌き”から気合の“正拳突き”──颯爽と戦場へ向かうのが山口芽生(V.V Mei)の入場スタイルだ。日本の女子総合格闘技(MMA)界を牽引する山口は“グローバル・ステージ”のONE Cahmpionshipでレジェンドとしての地位を確立した。

 2018年5月に世界女子アトム級王者のアンジェラ・リー(米国/シンガポール)に敗れて以来、4連勝と波に乗っていたが、2020年2月のシンガポール大会で新鋭のデニス・ザンボアンガ(フィリピン)に判定で敗れた。コロナ禍からのイベント再開前、山口は何を思うのか、電話取材した。

 山口にとってコロナ自粛は「横に置いていた大事なこと」に集中できた時間だったという。

「自粛が解除される6月の初めまでジムには一回も行かず、一人で体を動かしました。空手の基本動作や体重移動、パンチを打つ時の重心チェックなど、シンプルな動きをゆっくりとやって、正確に動いているか確認していました。本来は一番大事だけどあまり時間をかけていなかった事に集中しました。一人でも伸ばせることはある。要は考え方次第。とても良い時間を過ごしました」

 コロナ自粛で不安な気持ちと戦っている選手が多い中、“不動心”とも言える山口のこの姿勢は、昔から師事する武道の先生の“ある言葉”を大切にしているからだという。

「日野晃先生(日本武術研究家)のセミナーに通っているのですが、先生から昔に頂いた言葉を大切にしています。

『エネルギーは無限大にあるのに自分自身がそれを止めている。試合では燃え尽きなさい。自分の全てを出し切りなさい。燃え尽きて空っぽになったら、観客の応援やパワーが全て自分に入ってくる。エネルギーを循環させなさい。そうすれば、次へ続けていける』

 だから、今やっている事に全力で向かい合います。他人に対しても、色々と感情的に思うことがあっても、そのエネルギーを溜めずにぶつける。全力だと必ず返ってくるものはあるんです。でも、良い循環にするには自分の考えや視野を広く持つことが大切ですね。コロナも“こんな事で悩んでいる場合じゃないだろ”って思えるようになります。日野先生の考え方を聞くと、悩んでいたのが馬鹿らしくなるんですよね。そういう先生の考えやマインドをいつも聞かせてもらっているので、あまり気持ちがブレることがないのかもしれません」

 注目されているアンジェラとの再戦を尋ねると、「決まればすぐに受けたいですが、上位の選手との対戦後になると思います。彼女とは戦いの相性が良い。実現すれば、動きのあるエキサイティングな試合になるはず。

▼ONE女子アトム級
世界王者|アンジェラ・リー(シンガポール)
1. デニス・ ザンボアンガ(フィリピン)
2. メン・ボー(中国)
3. リン・ホーチン(中国)
4. 山口芽生(日本)
5. ジナ・イニオン(フィリピン)

 アンジェラは打撃でガンガンくるけど、グラウンドに持ち込めばそこでも勝負してくるし、私とは手が合うんです。アンジェラは(最後に試合をした)2年前と比べると強くなっていますが、苦手な部分はまだあるようですね。ション・ジンナン(中国)と対戦した時もボディでダウンしているし、心が折れることもまだあるみたい。若いから伸びしろがあるけど、自分が対戦するとしたらピンポイントで弱点を狙う。太刀打ちできる可能性は十分あると思います」

 一方、山口に勝利した23歳のザンボアンガは、スタンプ・フェアテックス(タイ)のトレーニングパートナーとして力をつけ、ONE2勝。通算7勝と無線記録を伸ばしている。特にジヒン・ラズワン(マレーシア)を相手のホームで下し、世界タイトル戦に2度挑戦した経験を持つ山口を下したことが好評価に繋がっている。チャトリ・シットヨートン会長兼CEOは、ザンボアンガを次のアンジェラの挑戦者とすることを発表している。

 アンジェラはザンボアンガについて、「デニスの前の試合(山口戦)を見たけれども、テクニックも試合運びも常に進化している。若くてハングリーな新世代のMMAファイターだと思う。多才で急上昇中のスターと、ONEのケージで対峙するのを楽しみにしています」と語る。

 山口が言う通り、アンジェラとの再戦を実現させるためには、メン・ボー、リン・ホーチンら上位の中国勢との戦いは避けては通れない。2007年から、34戦(21勝12敗1分)のキャリアを持つ山口に、最後にどこまで現役生活を続けるか尋ねた。

「まだ取り組んでない部分があるかなと思う限りは続けます。自分でそこを確認し、観客やファンの皆様に喜んでもらえる試合がしたい。自分が完全に納得ができたら、パッと辞めてもいいかなって思ったりします」

「勝負も人生も所詮納得の問題だ」と言ったのは『日本人のメンタル・トレーニング』を著した長田一臣氏の言葉だ。山口は悲願のベルトを腰に巻くことができるか。

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