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【ONE】女王スタンプ&トッドを越えるのは? 華麗なるONE立ち技女子の世界

2020/06/09 20:06

北欧の女忍者 アン・リン・ホグスタッド

 現在、ONE女子アトム級(52.2kg)ムエタイで2位、同キックボクシング部門で4位にランクインしているノルウェー出身のアン・リン・ホグスタッド(Team Anne Line Hogstad/Frontiline May Thai Gym)。

 ONE初のノルウェー人選手となるこのムエタイファイターは、2020年1月のマニラ大会で19歳のアルマ・ユニク(豪州)と対戦し、それまでスタンプの好敵手と言われていたWBC世界王者に判定で競り勝ち、一気に注目の選手となった。

 ユニクとの好勝負が認められランカー入りを果たした32歳のホグスタッドは、ムエタイ世界王者のスタンプ・フェアテックスの挑戦者候補の一人とも言われ、キックボクシングでも王者ジャネット・トッドとのタイトルマッチに射程圏内と注目が集まっている。

 北欧の豊かな自然環境に恵まれ育ったホグスタッドは、ラフティングやアウトドアスポーツを愛する大のスポーツ好き。ニックネームの「「NINJA LINE(ニンジャ・リン)」は、15年にわたり体操競技に取り組んでいた経験から、今でも後方宙返りが出来るなど、高い身体能力の持ち主であることに由来する。

 体操競技で戦う身体の基礎ができていたホグスタッドは、20歳で兄から紹介されたスポーツ柔術を学んだ後、MMAをテーマにしたTVリアリティ番組『ノルウェイズ・ベスト・ファイター』に出演。ムエタイ選手に敗れたことでムエタイに興味を持ち、首都オスロで『Frontline Muay Thai』に入門。ムエタイに一気にハマっていった。

「ジムもチャンスも、オスロにはたくさんあって、選手もたくさんいました。だからオスロに移った時に、自分にとって道が開けたと思いました」

 タイでのムエタイ修行も経て、立ち技格闘技に専念。オスロに来たことでチャンスは増えたが、ノルウェーの法律により、ホグスタッドはアマチュアとしてしか試合には出られなかった。プロになるには海外に遠征しなければならなかった。

 ISKA世界王者に2度輝き、スカンジナビアン王座K-1ルール(2回)、ノルウェイ王座(3回)ISKAスカンジナビアン王座(ムエタイ部門)のタイトルを獲得している。アジアでは中国の「Glory of Heroes」にも参戦。パートナーでトレーナーでもあるダニエル・ロペスは、ラウェイの経験も持つ立ち技ファイターで、ロペスのセコンドのもと、ホグスタッドはONE Championshipデビュー戦に臨んだ。

「大変だったわ。インターネットで検索して主催者に連絡を取ったり、試合を組むためにかなり一生懸命やってきた。今、ノルウェーの女性でこの大きな舞台に立っているのは自分だけ」

 当初、2019年11月に予定されていたONEデビュー戦だが、ユニクの怪我により2020年1月に延期。しかし、ホグスタッドは気持ちを切らすことなく最善の準備が整え、判定2-0でユニクを下している。

 ホグスタッドは自身のInstagramに、ユニクとの写真を2枚投稿。ユニクと抱擁する写真には「ムエタイ、3ラウンドの激闘。試合後はハグと食事を」とコメント。ケージ際で競り合う写真には「夢は大きく。夢に届くのは無理って言う人達がいるけど、それはそう思うからよ。私はもっと先にいるわ」と、力強いメッセージを記している。

「ONEが初めて連絡をくれた時のことを覚えています。しばらく話すことができませんでした。ただ本当に嬉しかった。自分が活躍することにより、ノルウェーの他の有望な選手のために、道を開きたいんです」

 10・20代の新世代の台頭が目立つONEだが、ホグスタッドの活躍にも注目だ。

“ムエタイ天才少女”から百戦錬磨の王者イマン・バーロウ

 2020年3月20日にヴィクトリア・リピアンスカとのストロー級戦が組まれていたイマン・バーロウは、ONE新規参戦選手。

 英国の格闘一家に育った26歳のバーロウは、2歳6カ月でムエタイを始め、4歳で初試合。8歳でタイのリングに上がっている正統派ムエタイファイターだ。

 93勝6敗という驚異的な戦績を誇るタイトルホルダーで、「LION FIGHT」では、ボクシング世界ランカーのジェリー・サイツ(米国)を首相撲からのヒザ、蹴り技で圧倒し判定勝利。LION FIGHT スーパーバンタム級王者に輝いている。

『Enfusion』『MTGP』『武林風』などを主戦場に、2017年4月にはテレサ・ガナーソン(元WAKO52kg級K-1世界王者/スウェーデン)を5R TKOに下し、ヒジ・ヒザ・首相撲ありのMTGPで女子バンタム級王者に。続く、2017年7月には投げ技ありの『Enfusion』の54kg級王座戦で、WPMF世界フェザー級王者のアシュリー・ニコルズ(カナダ)にもスプリット判定勝ちで、同王座防衛に成功している(ニコルズはSB参戦経験があるタイのナムターン、ゴン・ヤンリにも勝利している強豪)。

 ONEが再開され、リピアンスカとの試合が実現すれば、初代ONE女子世界ムエタイストロー級王座決定戦になる可能性が高く、バーロウにとって100戦目の試合は、新たなベルトを祝う記念すべき日になるかもしれない。

19歳の新星アルマ・ユニク

 王者ジャネット・トッドを頂点とするONE女子アトム級キックボクシングキックで1位のスタンプに続くのが2位のアルマ・ユニク(豪州)だ。スタンプが君臨するムエタイ部門ではトッド、ホグスタッドに次ぐ3位にランクされている。

 アルバニアとコソボ出身の両親が子供達により多くのチャンスを与えようと豪州に移住。現在21歳の兄アンディ、20歳の姉アマンダとともに3兄姉全員でプロファイターとして活躍している。

「いつも兄と姉がそばに居てくれる。チームとして、いつも一緒にトレーニングしている」ユニクは、18歳でWMC豪州タイトルを獲得。続けてWBCとIPCCで世界王者に輝き、ONEに参戦した。

 2019年6月のムエタイアトム級の王座戦ではスタンプに判定負けだったが、後半に追い上げスタンプを疲弊させている。2020年1月にはホグスタッドに判定2-0で惜敗するなど接戦が続いている若きユニクが覚醒する日は近い。

“キル・ビー”復活なるか、チュアン・カイティン

 KANA、MIO、小林愛三とも対戦経験がある“キル・ビー”ことチュアン・カイティン。キックボクシングアトム級で王者ジャネット・トッド、1位のスタンプ、2位のユニクに続く3位につけている。

 台湾の孤児院に預けられ、10代で格闘技と出会ったチュアンは、ボクシングを習得し、キックでもWAKOタイトルを獲得、ONEに参戦を果たした。

 2018年のデビュー戦で、ムエタイ世界王者のヨッチャリー・シットヨートン(タイ) を撃破し、悲願の世界王者のベルトを獲得したが、2018年10月にスタンプに判定で敗れ王座から陥落。2019年7月にはジャネット・トッドにも判定負けと連敗中だ。元キックアトム級世界王者の復活はなるか。

ヨアナに勝ったエカテリーナ・ヴァンダリーバ

 2019年10月の「ONE:CENTURY 世紀」東京大会で、ジャネット・トッド(米国)のハイキックに敗れたヴァンダリーバ(ベラルーシ)は、スタンプが王者のムエタイ部門アトム級で1位のトッド、2位のホグスタッド、3位のユニクに続く4位。キック部門では4位のホグスタッドに続く5位にランクされている。

 バレーボール、陸上競技、護身術の経験を持つヴァンダリーバは、舞踏の振り付け学校を卒業後、2007年に16歳でキックファイタージムに入門し、キックボクシング始めた。

 2010年と2011年のWKN女子54kg級世界王者。WMF、IFMAでも王座を獲得しており、2011年11月には、WKNワールドGPでムエタイ時代のヨアナ・イェンジェチックに判定勝利している。後にスタンプを撃破するトッドには敗れたが、活躍が期待される選手だ。

番狂わせを起こしたクリスティーナ・ブロイアー

 2019年11月に初参戦した「ONE:AGE OF DRAGONS」で、サウスポーのロングスパッツ姿を披露。力強い左ストレートの連打と、右フックで強豪ヨリーナ・バースからダウンを奪い、判定勝ちしたクリスティーナ・ブロイアー(ドイツ)。15年以上無敗のバースに初の黒星をつけたファイターとなった。

 スペイン開催の『ECE』では、オープンフィンガーグローブを着けた左のスーパーマンパンチでのKO劇も見せているブロイアーは、“隠れた強豪”だった。

サイボーグを撃破ヨリーナ・バース

 2014年3月「Lion Fight 14」でクリスチャン・サイボーグからダウンを奪い判定勝利したことで知られるヨリーナ・バース(オランダ)。

 15歳でデビュー後、50戦近いプロの試合で15年以上無敗を続けてきた。サイボーグ戦後も、2017年からBellator Kickboxingにも参戦し3連勝後、WFLに出場しKO勝ちを収めている。

 しかし、2019年11月に参戦した「ONE:AGE OF DRAGONS」では、フェザー級戦でクリスティーナ・ブロイアー(ドイツ)にスプリット判定負けを喫した。再起が期待される強豪だ。

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