空手
コラム

【1997年6月の格闘技】殺気漂うにらみ合いに場内どよめく、塚本徳臣が宿敵・岡本徹を破り三冠達成

2020/06/09 09:06
 1986年10月に創刊され、30年以上の歴史を誇る格闘技雑誌『ゴング格闘技』が、秘蔵写真と共に過去6月にあった歴史的な試合や様々な出来事を振り返る。第20回目は1997年6月22日、千葉・幕張メッセイベントホールで開催された新極真会『空手ワールドカップ』より、塚本徳臣(城南支部)が全世界、全日本に続く三冠を達成した日。  1994年の極真会館『第26回全日本空手道選手権大会』で頭角を現し、組織分裂後に行われた1996年1月の『第6回全世界選手権大会』で鮮烈な初出場初優勝(しかも史上最年少)を飾った塚本徳臣。その後も同年10月に開催された『第28回全日本選手権』をぶっちぎりの強さで制するなど連戦連勝を続けていた。  今大会は初めて開催された体重別の世界選手権大会。重量級にエントリーした塚本は初代の重量級世界王者を目指して驀進したいところだったが、大会3週間前に左手首の骨折(全治2カ月)という大きなハンディを負っていた。加えて、勝利を半ば義務付けられた人間としてのプレッシャーも重くのしかかっていた。  1回戦はロシア人選手に膝蹴りで技ありを奪っての本戦判定5-0、2回戦は南太平洋代表に本戦判定4-0、準決勝では1997年ヨーロッパ重量級王者と再延長で決着がつかず、試割り判定で決勝進出の勝利を得た。  決勝は大方の予想通り、塚本vs岡本徹(城西三和道場)の宿命の対決となった。  疾風のようにラッシュを仕掛ける岡本。得意の左下段廻し蹴りを連続して叩き込む。試合開始直後の猛攻に塚本は一瞬戸惑ったような表情を浮かべたが、すぐに反撃。この時、初めて左の突きを出した。塚本のマッハ蹴り、岡本の左下段と突きの連打が交錯し、中盤までは岡本やや優勢だったが後半は塚本が盛り返して本戦の判定は0-0。  延長に入ると、岡本の攻撃がいよいよ冴えまくる。左の下段連打に突きを絡ませ、塚本が受け身に立ったところに矢のような上段廻し蹴り。前半の60秒間は明らかに岡本優勢で、このまま押し切りそうな気配が濃厚だった。  その時だった。一発の膝蹴りが試合の流れを大きく変えた。歓声が渦巻く中、塚本は下段と膝蹴りで猛ラッシュ。岡本を場外へ押し出す。直後、塚本は岡本に額をくっつけるようにしてのがん睨み。岡本を睨み据える眼の光には殺気が漂っていた。岡本も負けじと睨み返し、視線が絡み合った。一瞬の出来事であったが、戦う男の本性をむき出しにしたシーンに場内は大きくどよめいた。 (写真)優勝が決定した瞬間、顔をクシャクシャにして喜びを表す塚本 塚本は試合後、こう告白している。「今回は“ケンカ”するつもりでした。ああいう試合がしたかったんです」 息を吹き返した塚本は、土壇場で世界王者の貫禄を見せつけるかのように大技を連発。最後の30秒は岡本に反撃の糸口を与えなかった。延長1回、判定5-0で塚本が史上初の全日本、全世界、ワールドカップの三冠王となった。  同時に連勝記録を守った塚本は「諦めなければチャンスはきっと来ると信じたのがよかった。よく身体がついてきたなと思います。自分の身体を褒めてやりたい」と言って、ほっとしたような表情を浮かべた。
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