2020年6月6日(日本時間7日)、米国ネバダ州ラスベガスの「UFC APEX」にて「UFC 250」が無観客で開催された。
メインでは、女子フェザー級&バンタム級の2階級同時制覇王者アマンダ・ヌネス(ブラジル)がフェリシア・スペンサー(カナダ)を5R圧倒の末、大差判定3-0(50-45,50-44×2)で勝利。フェザー級王座初防衛に成功した。
注目のバンタム級では、ランキング2位のアルジャメイン・スターリング(米国)が、オクタゴンで5連勝中だった4位のコーリー・サンドヘイゲンを88秒、リアネイキドチョークで極めてUFC5連勝をマーク。ベルト獲りに名乗りを挙げた。
また、3連敗中だったコディ・ガーブラント(米国)がハファエル・アスンソンを衝撃KOに下し、復活の勝利。ショーン・オマリー(米国)がベテランのエディ・ワインランドを右ストレートの一撃でKOし、戦績を12戦無敗とするなど、「バンタム級 新黄金時代到来」ともいえる大会となった。
UFCは今回の「UFC250」に続き、6月13日(UFC Fight Night: Eye vs. Calvillo)と20日(UFC Fight Night: Blaydes vs. Volkov)の大会をラスベガスの「UFC APEX」で行うことを発表しており、ダナ・ホワイト代表は、6月27日の大会を「ファイトアイランズ」で行うことを米メディアに語っているが、果たして格闘島での大会は実現するか。
UFC 250: Nunes vs. Spencer
現地時間2020年6月6日(土)、日本時間7日(日)UFC APEX(米国ネバダ州ラスベガス)
▼UFC女子世界フェザー級選手権試合 5分5R〇アマンダ・ヌネス(ブラジル)145lbs/65.77kg[判定3-0] ※50-45,50-44×2×フェリシア・スペンサー(カナダ)144.5lbs/65.54kg※ヌネスはフェザー級初防衛に成功
メインイベントはUFC世界女子フェザー級選手権試合。王者アマンダ・ヌネス(ブラジル)は前日計量で145ポンド(65.77kg)で計量をパス。挑戦者フェリシア・スペンサー(カナダ)は144.5ポンド(65.54kg)でパスしている。
2018年12月にフェザー級でクリス・サイボーグを右フックで1Rわずか51秒 KOに下したヌネスは、2019年にはホリー・ホルムとジャーメイン・デ・ランダミーを下し、女子バンタム級王座も死守するなど二階級王者として君臨(MMA19勝4敗)している。フェザー級でも王座防衛なるか。
対する柔術&テコンドー黒帯のスペンサーはMMA8勝1敗。唯一の黒星は2019年7月のクリス・サイボーグ戦での判定負けだ。粘り強い組みのスペンサーとスタンドの遠い間合いで勝負できるヌネスの戦いとなるか。
1R、ともにオーソドックス構え。左を突きながら組みに行くスペンサーだが、切るヌネスは右オーバーハンドフック! しかしスペンサーもタフ。左ジャブ、右ストレートのヌネスに右カウンターを狙い前に出る。
ヌネスの右の蹴り終わりを掴んでシングルレッグはスペンサーも四つからヌネスは右で差して払い腰! テイクダウンを奪いそのままサイド奪うと、スペンサーの立ち際をバック狙い。正対しフックガードに持ち込もうとするスペンサーの脇を差して寝かせるヌネスは左ヒジを打ち込む。ハーフガードから腰を切りフルガードに戻すスペンサー。ハイガードからラバーガード狙いもホーン。
2R、細かく頭を振り右スーパーマンパンチを狙うスペンサーの打ち終わりに右を狙うヌネス。しかしスペンサーも左ジャブでアゴを上げさせる。右ローを当てるヌネス! サウスポー構えに変えるスペンサー。オーソドックス構えに変えると、ニータップから前足にシングルレッグへ。それを切るヌネスが頭を下げたところにギロチンチョーク狙い! しかし、サイドに回りながらすぐに外したヌネス。
スペンサーはシングルレッグから立ち上がり外足をかけてバックを狙うが、ここの際も強いヌネスは正対して立つ。左ジャブをボディに突くヌネス。さらに右バックフィスト。ブロックキングで防ぐスペンサー。ヌネスの右ローに右ハイを返すスペンサー。
3R、前に詰めてワンツーを打ち込むヌネス。しかしスペンサーも果敢に打ち返しに。遠間からダブルレッグもすぐにすぐに差し上げて切るヌネス。ワンツーの打ち合いはヌネス。スペンサーのマウスピースが外れる。グローブタッチし再開。ヌネスのワンツーに下がるスペンサー。しかしスペンサーも左ジャブを返す。
スペンサーの接近に足を取り組み崩すヌネスだは深追いはせず。スペンサーを立たせると、金網詰めてワンツー&右ハイ! ブロックするスペンサーは距離を詰めてテイクダウン狙いもヌネスは金網際に回り切る。左ジャブ、ワンツーのヌネス。さらにバックヒジも見せたところでホーン。この回までヌネスが制したラウンドに。
4R、ジャブを突いて前に出るスペンサー。後半戦もスタミナは落ちない。しかしヌネスも右ローを当て、右ストレートでスペンサーのアゴを上げさせる。スペンサーの右をかわしてローシングルレッグで簡単に倒すヌネスも深追いせず。立つスペンサー。ヌネスのジャブをアゴを引いて受け、カウンターを狙う。しかしヌネスは縦ヒジ狙い。さらに右の後ろ蹴り! 金網まで詰まるスペンサー。足を上げるとシングルレッグで倒される。
頭を下げて足を掴みに行くスペンサーに、ワンツーの右を打ち下ろすヌネス。右ローを警戒しサウスポー構えに変えるスペンサー。しかしヌネスは金網に詰めて右オーバーハンド、さらに右アッパーを織り交ぜて右ストレート! たまらず足を手繰りに行くスペンサーを切ってバックに回りリアネイキドチョーク狙いは手の平を合わせたパームトゥパーム。その組手をスペンサーは掴んで防ぎホーン。ここもヌネスのラウンドに。
5R、前に詰めるスペンサーだが、いなして右を打ち込むヌネス。金網に詰まりダブルレッグに入るスペンサーだが、両足を後方に飛ばすヌネス。片足首を掴むスペンサーだが、切るヌネスがバック狙い。正対しガードを取るスペンサーはハーフに。肩固め狙いのヌネスに下からキムラクラッチを狙うスペンサー。外すヌネス。フルガードに戻したスペンサーは額から出血。クローズドガードを解くと、両手首を掴み腕十字を狙うが、察知したヌネスは体を離す。
立つヌネスにシッティングガードで近づくスペンサー。ドクターチェック。再開。残り50秒。サウスポー構えから右ハイ狙うスペンサーに強い右で差していとも簡単に後方にテイクダウンするヌネス。立つスペンサーに右を打ち込みホーン。全ラウンドを制したと思われるヌネス。判定へ。
判定は50-44が2者、50-45が1者の大差3-0でヌネスがフェザー級初防衛に成功。圧勝したヌネスは「スペンサーが強い選手とは知っていたから驚くことはなかったです。もし5R戦うなら圧倒しないといけないと思っていました」と試合直後の感想を語ると、バンタム級とフェザー級の両階級で敵無しの状態について、「今後は分からない、2つのベルトを同時制覇すること、防衛することが夢だった。チームとの日々に感謝し、幸せを感じています。子供がもうすぐ生まれます(※9月にUFC女子ファイターでパートナーのニーナ・アンサロフが出産予定)。彼女たちがいるから私は戦えます。まずは家に帰り、この2つのベルトを喜びたい。母に報告したいです」と、まずは防衛を周囲と喜びたいと語った。
最後に「5Rフィニッシュしたかったです。5R戦い抜く覚悟は出来ていました。彼女はほんとうにタフだった。でもまだ戦える力が残っています」と付け加えたヌネスは、「もうひとつ」と語り、「みんな世界を変えるときです。みんなでよりよい場所にしていきましょう」と、コロナ禍、人種や性差別で揺れる世界の変革と協調を呼びかけた。
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▼バンタム級 5分3R〇コディ・ガーブラント(米国)136lbs/61.69kg[2R 4分59秒 KO]×ハファエル・アスンソン(ブラジル)136lbs/61.69kg
今大会注目のバンタム級では、6月3日にMMA引退を発表した水垣偉弥と対戦経験があるコディー・ガーブラント(米国)、アルジャメイン・スターリング(米国)、エディ・ワインランド(米国)の3選手が出場する。
バンタム級5位のアスンサオと9位のガーブラントの戦い。
MMA27勝7敗、37歳のアスンサオは、2017年1月からスターリング、モラエス、ロペス。フォント相手に4連勝も、2019年2月のモラエスとの再戦でギロチンチョークに敗れると、8月にサンドヘイゲンに判定負けと連敗を喫した。タイトル戦線に戻るためには落とせない一戦。
対するガーブラントは脅威のMMA11連勝から、2017年11月に元同門のディラショーにMMA初黒星のKO負け。2018年8月の再戦でもKO負けで連敗。前戦2019年3月のペドロ・ムニョス戦でも打ち合いで敗れ3連敗。両者ともに崖っぷち対決ともいえる。
1R、ともにオーソドックス構え。遠い距離を保つガーブランド。右ローを当てるアスンサオ。さらにスイッチしての左ハイは浅い。右の後ろ廻し蹴りで牽制はガーブランド。サウスポー構えに変えて左ハイも打つが遠い。
右ローを当てるガーブランド。アスンサオがスイッチすると右前足にインローを打ち込む。ローからワンツーで入るガーブランドにカウンターの右を狙うアスンサオ。右ローを当てる。さらに右の後ろ廻し蹴りを見せ、ガーブランドがスウェイで避けたところでホーン。
2R、アスンサオの右の後ろ廻し蹴りにテイクダウンを合わせたガーブランド。すぐに立つアスンサオの立ち際に蹴りを狙う。ガーブランドの右カーフキックを嫌ったか、アスンサオはサウスポー構えに。オーソドックス構えに戻すアスンサオ。アスンサオの左ミドルとガーブランドの右ミドルが交錯。徐々に詰めて行くガーブランド。頭を下げてテイクダウン狙いも切るアスンサオ。
ガーブランドの右に一瞬片ヒザを着くアスンサオ。すぐに立つとガーブランドは右手を振る。右の水面蹴りを見せるガーブランド。アスンサオは金網に詰めて右の跳び蹴りも着地。ガーブランドは金網背に。アスンサオはサウスポー構えから右を振るが、ダックしてかわしながら振りかぶったガーブランドはタメを作って右フック! と同時にホーン。カウンターでもらい後方に倒れたアスンサオを見てレフェリーが試合を止めた。ホーン後、両肩を支えられて立とうとしたアスンサオは足もとがふらつき立ち上がれず。
約3年半ぶりの勝利に“ノーラブ”ガーブランドは「長い旅だった。アメリカ中を旅して練習してきた。こうしてジョーからまたインタビューを受けられる。タイトルマッチに再び挑戦するんだ。マーク・ヘンリーとクリス、サクラメントとニュージャージーのコーチたちに感謝したい。彼(アスンサオ)が削れているというコーナーの声を信じていた。もともと自分はスピードがあったけど、(コーチたちが)高いレベルに引き上げてくれた。パッション、モチベーションも高まっている。バンタム級は層が厚く燃えている。そこに絡みたいし、タイトル戦線に戻ってきたい。いま涙が出るくらい嬉しいよ」と笑顔を見せた。
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▼バンタム級 5分3R〇アルジャメイン・スターリング(米国)136lbs/61.69kg[1R 1分28秒 リアネイキドチョーク]×コーリー・サンドヘイゲン(米国)135.5lbs/61.46kg
MMA18勝3敗のスターリング(米国)が、MMA12勝1敗のコーリー・サンドヘイゲン(米国)と対戦するバンタム級戦に注目が集まっている。ともにオーソゾックス構えを基本にサウスポーでも戦うスイッチヒッター。
ランキング2位のジャマイカ系米国人のスターリングは、NCAAディビジョン3でオールアメリカンに2度選出されたレスラーかつ柔術黒帯。2017年12月に現ランキング1位のマルロン・モラエスにTKO負けを喫したものの、以降2年間負け無し。ブレット・ジョンズ、コーディー・スタマン、ジミー・リベラ、ペドロ・ムニョスを相手に4連勝を飾っている。
対するサンドヘイゲンはランキング4位。17歳からネイト・マーコートの下でMMAを始め、キックボクシングでもWKA世界王座を獲得。プロMMAファイターとしては、RFA、LFAで活躍後、2018年1月にUFCデビュー。これまでオクタゴンで5連勝をマークしている。BJJでも茶帯を巻いており、2019年1月にはマリオ・バウティスタに腕ひしぎ腕固めで一本勝ち。2019年8月の前戦では、ハファエル・アスンサオの寝技を凌いで打撃で上回り判定勝ちを収めている。
1R、ともにオーソドックス構えから積極的に詰めるスターリングが、サンドヘイゲンを金網に詰めて、右で差して前方にいなしてバックテイク。背後から足をかけて引き込むとリアネイキドチョーク狙い。4の字ロックからいったんは腕を外したサンドヘイゲンだが、スターリングは左手を喉元に巻くと、後ろ手を剥がそうとしたサンドヘイゲンだが力無くなりタップ。敗者サンドヘイゲンは「ベルトを獲りに行け」とスターリングに語った。
試合後、ジョー・ローガンからインタビューを受けたスターリングは、ミネソタ州ミネアポリスで白人警官が黒人男性を死に至らしめた事件について、「マイノリティに対し、正義の無い悲しいことが起きている。抗議を起こさなくてはいけない」と主張。
さらにサンドヘイゲン戦と今後について「キャリア最大の大きな試合だった。サンドヘイゲンは強かった。ロングアイランドでアイアキンタらと毎日際限なく練習してきたんだ。ここで止まるわけにはいかない。ベルトを獲りに行く。僕はマット・セラのBJJの黒帯だけどサンドヘイゲンも帯を持っている。バックを取ってテイクダウン出来て自信になったよ。世界初のこのジャマイカの国旗を掲げたチャンピオンになりたい」と王座獲りを宣言した。
勝者のスターリングは、引退を表明したヘンリー・セフードが持っていたバンタム級のベルトへの挑戦権を得たか。同級では、1位のマルロン・モラエス、3位のピョートル・ヤンの動向も気になるところだ。
▼ウェルター級 5分3R〇ニール・マグニー(米国)171lbs/77.56kg[判定3-0] ※30-27×2, 29-28×アンソニー・ロッコ・マーティン(米国)170.5lbs/77.34kg
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▼バンタム級 5分3R〇ショーン・オマリー(米国)136lbs/61.69kg[1R 1分54秒 KO] ※右ストレート×エディ・ワインランド(米国)136lbs/61.69kg
日本のファンには、2019年12月の「QUINTET ULTRA」で2階級上の五味隆典に一本勝ちしたことで知られるショーン・オマリー。ホイス・グレイシーの弟子ジョン・クラウチを師に持ち、得意のハイエルボーギロチンチョークで五味を極めているが、MMAでは打撃でのフィニッシュも多く、LFA、DW's Contender Series 2017を経て参戦したUFCでの3つの勝ち星のうち、ひとつはUFC5勝2敗のホセ・キニョネスに1Rハイキックでダウンを奪ってのパウンドで勝利している。
対するエディ・ワインランドは、2013年に当時の王者ヘナン・バラォンに挑戦したキャリアを持つベテラン。2RバックスピンキックでKO負け後、水垣偉弥に勝利するなどオクタゴンで4勝4敗の五分。2019年6月の前戦ではUFCデビュー戦のグリゴリー・ポポフに右クロスで1RKO勝ちしている。
1R、右後ろ廻し蹴りを見せるオマリーは左ミドルを当て、右ストレート。ワインランドの詰めにバランスを崩して尻餅を着くが、すぐに立ち上がると左ストレート、さらに右アッパーのフェイントから右ストレート! アゴを打ち抜かれ後方に倒れたワインランドを見て、オマリーは深追いせず踵を返した。
25歳のオマリーは、これでプロMMA12戦負け無し(アマチュア9勝2敗)。元WEC王者をワンパンKOし、その印象を「特に何も感じなかった」とクールに語ったオマリー。ランカーとの対戦が見えてきた。
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【プレリム】
▼フェザー級 5分3R〇アレックス・カサレス(米国)146lbs/66.22kg[判定3-0] ※30-27×3×チェイス・フーパー(米国)145.5lbs/66.00kg
▼ミドル級 5分3R〇イアン・ハイニッシュ(米国)185.5lbs/84.14kg[1R 1分14秒 TKO] ※右オーバーハンドフック→パウンド×ジェラルド・マーシャート(米国)185.5lbs/84.14kg
▼バンタム級 5分3R〇コーディ・ステーマン(米国)145.5lbs/66.00kg[判定3-0] ※30-27×3×ブライアン・ケレハー(米国)146lbs/66.22kg
▼ミドル級 5分3R〇マキ・ピトロ(米国)185.5lbs/84.14kg[2R 1分10秒 TKO] ※ボディ効かせたピトロが大外刈TD→パウンド×チャールズ・バード(米国)184.5lbs/83.69kg
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【アーリープレリム】
▼フライ級 5分3R〇アレックス・ペレス(米国)126lbs/57.15kg[1R 4分06秒 TKO] ※右カーフキック×ジュスエー・フォルミーガ(ブラジル)126lbs/57.15kg※ペレスはUFC3連勝。
▼ライトヘビー級 5分3R〇デヴィン・クラーク(米国)205.5lbs/93.21kg[判定3-0] ※30-27, 29-28×2×アロンゾ・メニフィールド(米国)205lbs/92.99kg
▼150ポンド契約 5分3R〇ハーバート・バーンズ(ブラジル)149.5lbs/67.81kg[1R 1分20秒 リアネイキドチョーク] ×エヴァン・ダナム(米国)149.5lbs/67.81kg
※ダナムの左をもらうバーンズだが、ダブルレッグからバックに回り足をかけて引き込み、4の字ロックからうつ伏せにさせてリアネイキドチョーク。