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【修斗】岡田遼が“投神”倉本を完封KOで暫定世界&環太平洋の二冠達成! 女子初代王座決勝は黒部vs杉本に

2020/05/31 08:05
 2020年5月31日(日)、無観客の『ABEMA』テレビマッチとして「プロフェッショナル修斗公式戦 Supported by ONE Championship」が行われた。  メインイベントとなった第8試合では、「世界バンタム級暫定王者決定戦」として、環太平洋王者の岡田遼(パラエストラ千葉)と、レスリンググレコローマン元日本代表の倉本一真(修斗GYM東京)が対戦。倉本最大の武器であるジャーマンスープレックスを完封した岡田が、カウンターの右フック、さらに左ストレートで倉本をマットに沈め、暫定王座を腰に巻いた。  第6試合では、青木真也による「AOKI PROJECT提供マッチ」として、世羅智茂(CARPEDIEM)と岩本健汰(IGLOO)の日本を代表するグラップラーがサブオンリーのルールで激突。ケージレスリング、さらにトップからパスガードを仕掛けた岩本に対し、ときにポジションを許しながらも極めさせず、ボトムから逆襲に転じた世羅が白熱のグラップリングマッチを展開。判定無しの10分時間切れドローとなった。  また第3試合と第4試合では、修斗女子初代スーパーアトム級王座決定トーナメント準決勝2試合が行われ、第3試合では、杉本 恵(AACC)が粘る中村未来(マルスジム)を振り切りリアネイキドチョークで一本勝ち。続く第4試合では、ベテランの黒部三奈(マスタージャパン)が、元全日本ジュニア柔道体重別選手権覇者の大島(旧姓・安達)沙緒里(AACC)をマウントからのパウンドで下し、それぞれ7月の決勝戦進出を決めている。  第1試合では、「格闘代理戦争」出身の空手家・木下タケアキと、『探偵ナイトスクープ』で話題となった“野生児”西川大和が対戦。西川がベアフットから繰り出す力強いテイクダウンを決め、17歳にしてプロ修斗デビュー戦を勝利で飾った。  大会は、4月17日の「Road to ONE:2nd」同様に、ケージサイドの中継スタッフおよびカメラマンが防護服を直用。コーナーマンおよび関係者もマスクを着け、試合毎にマットを消毒。メインの勝利者インタビューも距離が置かれメディアの動線が制限されるなど、新型コロナウイルス感染防止策が徹底された「無観客大会」として行われ、『ABEMA』にて生中継された。 プロフェッショナル修斗公式戦 PROFESSIONAL SHOOTO 2020 Vol.3 ABEMAテレビマッチSupported by ONE Championship2020年5月31日(日)18時開始 ▼メインイベント 第8試合 世界バンタム級暫定王者決定戦 5分5R〇岡田 遼(同級1位・環太平洋王者/パラエストラ千葉)[2R 3分02秒 KO] ※左フック×倉本一真(同級2位/修斗GYM東京)  プロ修斗31年の歴史に於いて初めて暫定王者を決めるバンタム級至極のカードが実現する事となった。第8代環太平洋王者・岡田遼(パラエストラ千葉)vs“投神”倉本一真(修斗GYM東京)の一戦が決定。  現環太平洋王者・岡田遼は2019年9月、“怪物”安藤達也を相手に初防衛戦を行い、ドローながら王座防衛に成功。  2020年に入り堀口恭司が所属しているATT(アメリカントップチーム)の合宿に1カ月参加し、マイク・ブラウンコーチの下、ATTのドリルを反復、ハニ・ヤヒーラ、アレッシャンドリ・パントージャらと練習を積んできた。  帰国後もパラエストラ千葉グループで扇久保博正、神田コウヤ、鶴屋玲らとレスラー対策を練ってきている。オールラウンダーぶりに磨きをかけた岡田は、倉本とは「MMAファイターとして差がある」という。この試合の先に正規王座との統一戦、そしてUFC挑戦を見据える。  その岡田の前に立ち塞がるのがMMA7戦全勝、2019年のMVPとベストバウトをダブル受賞した“投神”倉本一真だ。驚異のジャーマンスープレックスを武器とする倉本は、2012年~2014年まで天皇杯全日本選手権グレコローマン60kg級3連覇を果たし、2013年と2014年には世界選手権の日本代表にも選ばれている。  7戦のうち5つのKO勝利があるが、全てが投げによるダメージでのKO勝利。2019年11月の根津優太戦では、スタンドスキルで勝る根津の打撃をくらいながらも高角度ジャーマンを連発。3R開始直後に危険と判断した根津セコンドがタオルを投入し、7連勝を決めた。  根津戦の怪我を回復させ、2020年1月から再始動。前戦とは違う試合が出来ると自信を見せている。倉本はレスリングで勝つのではなく、レスリングを“活かして”勝つパターンを確立しており、相手に打撃の距離を作らせず、組みのなかに打撃も織り交ぜ、いかにアプローチするか。勝者は、正規王者で現在ONE参戦中の佐藤将光への挑戦権を獲得することになる。王座戦の5Rがどう影響するか。  先に入場は倉本。セコンドから背中を叩かれケージイン。マット上で見事なブリッジを見せる。続けて環太平洋のベルトを肩にかけて岡田が入場。国歌斉唱の後、両者がコールされた。  1R、ともにオーソドックス構え。いきなり前蹴りから走って低いダブルレッグで足首を引いてテイクダウンした倉本。金網背に上体を立てる岡田の足を束ねる倉本。  立ち際は投げを狙われるため注意が必要だ。バックについてくる倉本に正対際でクローズドガードに入れてギロチンチョークは岡田!  がっちり入るが、首を取られたまま倉本は立ち上がり岡田を落として頭を抜く。フックガードで尻を着ける岡田に首投げから袈裟固めを決める倉本も、頭抜き立つ岡田はスタンドに。  岡田はミドルキック、左ジャブを突き、右ストレートも。倉本はバックフィストも大きい。手を着いた後ろ廻し蹴りから近づくアプローチも見せるが、岡田はサークリング。  2R、右ローを当てる岡田。詰めて左右を振る倉本をいなす岡田は右ロー。倉本は打ち下ろしの右を当てるが、体を入れ替え岡田はダブルレッグも深追いせず。倉本の組みに尻をマットにつけて投げられず。倉本に力を使わせる岡田。徐々にバックに回り投げを狙う倉本は金網際で肩パンチも。  サークリングする岡田にバックフィストを狙う倉本。しかしその打ち終わりに岡田は右のショートフック! コンパクトに打ち抜かれた倉本はグラつき倒れるが続くパウンドに、驚異的なタフネスさを見せて立ち上がる倉本。しっかり追う岡田は、左右から左フックで倉本をマットに沈めた。  試合後、世界のベルトを腰に、環太平洋のベルトを肩にかけた岡田は、ケージのなかでマイクを握り、「修斗のダブルチャンピオンの岡田遼です。12年前に初めて鶴屋さんに出会った日から、人生いいときばかりじゃないんで、正直、ここまで何回も『もうだめだ』『もう辞めよう』と思いました。でも、そのたびに『いまはお前は苦しいかもしれないけど、いつかお前は必ず環太平洋のベルトも、世界のベルトも巻いて笑える日が来るから』って背中を支えてくれていたのが鶴屋さんです。言わせてください。鶴屋さん、ただの大学生だった俺をここまで育ててくれて、夢を叶えてくれてありがとうございます」と師匠の鶴屋浩氏への感謝の言葉を述べた。  パラエストラ千葉ネットワークとしては松根良太、扇久保博正、内藤のび太、黒澤亮平に続く5本目の修斗世界タイトルのベルト獲得となる。  続けて岡田は、「『人間万事塞翁が馬』です(※幸せが不幸に、不幸が幸せにいつ転じるかわからないのだから、安易に喜んだり悲しんだりするべきではないというたとえ)。これからまた俺も辛くて苦しい時間が、人生がやってくると思います。いまコロナで苦しい時間を過ごしている方がいたら、人生、悪いときばかりじゃないです。いつかきっと、『あのときは苦しかったけど』と笑える日が来ると思います。ウチの師匠はよく『叶えたいことは口に出せ、言葉に出しなさい』ってよく言います。だから僕は12年間ずっと『修斗のチャンピオンになりたい』って言ってきました。いまは『一刻も早く、またお客さんでいっぱいの会場で修斗が、格闘技が開催できる日が戻ってくるように』と口に出して、今日のマイクを終えようと思います」と、コロナが収束してファンの前で再び試合が出来るようになるという願いを言葉にすることで、現実のものとする決意を語った。  そして最後に、「修斗バンタム級、激戦区と言われています。だけど、倉本、安藤、ラカイの化け物、藤井、祖根……みんな俺に勝てないよ。なぜ勝てないか? オンラインレッスンします。彼らより俺のほうが修斗を愛しているから! 今日はありがとうございました。以上」と咆哮し、きっちりメインを締めて、マットを後にした。 KO 2R 3分02秒 ※勝利した岡田が世界バンタム級暫定王者に[レフェリー]片岡誠人[サブレフェリー]田澤康宏 1R 9-10長瀬達郎 1R 10-9豊永 稔 1R 9-10 [nextpage] ▼セミファイナル 第7試合 ライト級 5分3R〇SASUKE(世界フェザー級6位/マスタージャパン)[判定3-0] ※30-27×3×西浦ウィッキー聡生(KRAZY BEE)  修斗でデビューし、様々な団体を渡り歩いてきたウィッキーと復帰後3連勝と波に乗る世界ランカーのSASUKE。注目の新旧対決が実現する。西浦は、2019年9月の『Road to ONE:CENTURY』のメインでクレベル・コイケに敗れて以来の試合となる。連敗は避けたいところだ。  1R、オーソドックス構えのSASUKEに、サウスポー構えのウイッキー。左ローキックを払ってテイクダウンしたSASUKE。肩固めを狙うがウイッキーは足を戻す。フルガードのウイッキー。金網まで運ぶSASUKEは足を抱えて接地点を無くすが、ウイッキーは金網背に尻まで立つと、背中を金網つけて座る。  その両足を束ねて手前に引いたSASUKE。再び上体を立てに行くウイッキーを引き付ける。マットに背をつけたウイッキー。SASUKEはハーフからヒジを打つ。額にこぶを作ったウイッキーは下から蹴り上げでスペースを作る。  2R、低い手の位置から飛び込みを狙うウイッキー。SASUKEは右インローをヒット。さらに右ミドルを当てる。ウイッキーは左で飛び込むが、続く中途半端な形になった跳びヒザを掴んだSASUKEはシングルレッグから大内刈を合わせてテイクダウン!  1R同様に両足を引き付けるSASUKE。自らの足でウイッキーの足を束ねる。足を抜いたウイッキーは下からシングルレッグで足を手繰りに行くが、がぶるSASUKE。首を狙うが抜くウイッキー。  3R、右フックを飛び込みを2度見せるウイッキー。徐々に当たりが深くなるがSASUKEは遠間からダブルレッグテイクダウン! 金網背に座るウイッキー。立ち上がると左で差して右はヒザ裏にかけて再びテイクダウンはSASUKE。立とうとしたきたウィッキーのバックに回り、ついにバックテイク。リアネイキドチョーク狙うが、4の字ロックを外したウィッキーが正対し、ついてきたSASUKEに前転から足関節を狙うもそこはきっちり防いだSASUKE。  判定は3-0(30-27×3)で26歳のSASUKEが勝利。4連勝をマークした。 [レフェリー]豊永 稔[サブレフェリー]田澤康宏 27-30(1R 9-10/2R 9-10/3R 9-10)長瀬達郎 27-30(1R 9-10/2R 9-10/3R 9-10)片岡誠人 27-30(1R 9-10/2R 9-10/3R 9-10) [nextpage] ▼第6試合 AOKI PROJECT 提供マッチ グラップリングルール 72kg契約 10分1R△世羅智茂(2017年IBJJF アジア選手権黒帯フェザー級準優勝 /CARPEDIEM)[時間切れドロー]△岩本健汰(ADCC2019アジア&オセアニア代表 ・GTF.3フェザー級王座決定トーナメント優勝 /IGLOO)  ABEMAで放送中の「AOKI PROJECT」が緊急発動。今回はグラップリングマッチが企画された。  岩本健汰(IGLOO)は、柔術、ノーギの世界で快進撃を続ける23歳の超新星。2020年3月に開催された、国内フェザー級最強グラップラーを決めるトーナメント「GTF.3」では、名だたる組み技のスペシャリストを相手に全試合一本勝ちで優勝を遂げている。  2018年、2019年と全日本ノーギ選手権無差別級を連覇し、更にはアジア&オセアニア代表としてADCCに出場。世界の強豪達に立ち向かい、上位入賞はならなかったものの、国内グラップリング界に希望をもたらす活躍をみせた。  今回は修斗のケージを使用した“ケージ・グラップリング”。青木真也らMMAファイターとグラップリング練習を行い、壁レスリングにも取り組んでいる岩本は、修斗マットでどんな動きを見せるか。  対する世羅智茂(CARPEDIEM)は、4月12日に開催された「RoadtoONE:2nd」で青木本人と対戦したグラップラー。青木との一戦は互いに相手の動きを誘い、探り合う展開となり、物議を醸す時間切れのドローに終わった。  試合後に世羅は「次に戦いたい相手」として岩本健汰の名前を挙げており、そこを青木が見逃す筈もなく、今回のプロ修斗大会に強引にねじ込んで来た。  その根底には、日本に置けるグラップラーの存亡の危惧があるという。グラップリング界に警笛を鳴らす青木真也が「AOKI PROJECT」でしか組めない、柔術、ノーギの世界がざわつく国内最高峰の超豪華グラップリングマッチ(72kg契約)を実現した。  腕十字とギロチンという強い武器を持ち、前戦より動きのある試合を目指すという世羅と、一本を狙って膠着しないよう戦いたいという岩本。ノーギ柔術でもない、サブオンリーのグラップリングならではの極めの緊張感ある試合が期待される。  1R、スタンドの展開から。岩本のダブルレッグにギロチンを合わせる世羅。仰向けで外す岩本は立つとケージレスリングへ。左で差して押し込みバックテイクを狙う。右足を外に出して防ぐ世羅。  岩本はボディロックからいなしてテイクダウン! ガードを取る世羅だが、頭が当たったか額から出血。ドクターチェック後、再開。ガードから岩本の右足を手繰る世羅。  いったん右足を後方に下げて右から逆の左に回ってパスした岩本! サイドから上四方に回りノースサウス、さらにサイド、キムラを狙う岩本。世羅も潜り足を戻してニーシールドに。再びハーフから浮かせて足関節を狙う世羅。跳んで外した岩本はハーフから上体を固めて左で脇差しパスガード!  サイドからマウントを奪い、肩固め狙いから腕十字へ! しかし世羅もマウント返しからヒザ十字のカウンター。それも組ませない岩本は上に。外ヒールを狙うが、世羅も完全にサドルは組ませず足を抜き、ガードに。なおも上から強いアタックをかける岩本。世羅もしっかり凌ぎ、ホーン。  白熱の攻防は、時間切れドローとなった。試合後、ケージを終りる両者に青木は握手を求めた。 [nextpage] ▼第5試合 バンタム級 5分3R〇清水清隆(世界フライ級2位/TRIBE TOKYO M.M.A.)[2R 4分34秒 TKO]×小堀貴広(世界フライ級7位/ゴンズジム)  TRIBE TOKYO M.M.A.の若頭・清水清隆がコロナウイルスの影響で中止となった3月29日後楽園ホール大会からスライド参戦。対戦相手は「AOKI PROJECT」でも盛り上がっていた平良達郎ではなく、2018年度年間ベストバウト賞を獲得した小堀貴広(ゴンズジム)に変更された。  清水は今年デビュー12年目を迎え、PANCRASE在籍時には5度の王座防衛記録を持つフライ級屈指の実力者。2019年5月には扇久保博正の持つ世界バンタム級王座に挑戦するも偶発的なバッティングにより、4Rテクニカル判定負け。  しかし、ONE両国大会の修斗vsPANCRASE前哨戦として行われた9月の「Road to ONE CENTURY」では、PANCRASE4位の秋葉大樹を1R2分15秒、左ジャブでKOに下し見事に復活。前田吉朗、石井逸人、ショージン・ミキを全て1R KO・TKOに葬り去りっているパンチ力は健在だ。40戦を超えた今が正にキャリアの頂点を迎えようとしているTRIBE TOKYO M.M.A.のベテランだ。  一方の小堀は、2019年6月に高岡宏気に判定勝ちし、9月に平良達郎に1R KO負けも、2020年1月19日の前戦では、rootsの輝龍に判定勝ちを収めている。気持ちの強さを全面に押し出すファイトスタイルで時には相手のパンチを被弾する事もあるが、常に観客を湧かせるアグレッシブな戦いを信条としている。シャープな打撃に加え、打ち合いになっても決して下がらず乱打戦を得意とする小堀だけにKO決着は必至。倒すのは清水の一撃か?小堀の手数か?  1R、ともにオーソドックス構え。ジャブの刺し合いから左インローは小堀。清水は左フックから飛び込み、右ローを当てる。フェイントをかけて左ローは清水。右前蹴りを返す小堀。清水は右手を上に挙げたフェイントから右ロー。小堀の右フックに右ローを合わす。左ローを当てる清水。さらに金網に詰めての右を対角線で攻める。清水の左足にシングルレッグに入る小堀も切る清水。再びローをカーフ気味に決める。  2R、左インローから入る小堀。右フックで飛び込む清水。細かいジャブで圧力をかける清水。左ジャブは浅いが右ローも。小堀はジャブ、右ストレートも単発に。小堀の蹴り足を掴んだ清水だが、足を抜く小堀。右の跳び込みは清水。小堀の右に一瞬、清水は腰を落とすが、立ち上がり前へ。そこに小堀が入ってきたところに頭がぶつかったか、ダウンしたのは小堀。その足をさばきながら清水がパウンド連打すると小堀の足が効かなくなり、レフェリーが間に入った。  清水は試合後、ケージのなかで、「リングに立つのにサポートしてくれた長南さん、チームのみんなありがとうございます。もうひとつ、1人だけに。返すか、俺とやるかはっきりしろ!」と、王者・扇久保博正に訴えかけた。 KO 2R 4分34秒 ※グラウンドパンチ[レフェリー]豊永 稔[サブレフェリー]田澤康宏 1R 10-9長瀬達郎 1R 10-9片岡誠人 1R 10-9 [nextpage] ▼第4試合 THINKS INTERNATIONAL Presents 修斗女子初代スーパーアトム級王座決定トーナメント準決勝 5分3R〇黒部三奈(マスタージャパン)[3R 1分54秒 KO] ※パウンド×大島沙緒里(AACC)  勝ち上がった2名が修斗史上初となる女子王座決定戦に駒を進めるトーナメント準決勝。“女王”黒部はトーナメント1回戦でドイツ王者・ターニャ・アンゲラーと対戦。スロースターターと思われていた黒部だが、勢いとパワーで勝るターニャをあえて真正面から受け止め、全局面で圧倒。試合終了8秒前にパウンドをまとめKO勝利で下し、準決勝進出を決めた。  そして、1月の後楽園ホール大会でのマイクアピールでは、「小耳にはさみましたが、2人とも素敵な旦那さんがいらっしゃる? それ以上、何を望むんだ!? 勝っても負けても私は一人で家に帰るんだ。ベルトをください」と嫉妬も絡み、何ともわかりやすくベルトを懇願している。果たして黒部は優勝して幸せを掴めるのか。  14勝5敗とMMAキャリアでは大きく勝る黒部に対し、柔道出身の大島は9月のアマチュア修斗全日本選手権アトム級優勝からまだプロ1勝の新鋭。しかし、1月の開幕戦では緊急参戦したリバーサルジム沖縄A・P・Pの小生由紀を対相手に抜群のボディバランスで下から仕掛ける小生をトップポジションから完全制圧。最後は身動きが取れないクルスフィックスの状態から拳を落とし続けパウンドアウトしている。  柔道の名門・東海大柔道部出身で、2014年9月の全日本ジュニア柔道体重別選手権女子44kg級で優勝(旧姓・安達)の実績を持つ大島は、AACC先輩・浜崎朱加のアドバイスも受け、番狂わせを狙う。  大島は小生戦後、「1年前は育児に追われていました。いまは総合格闘技も出来てすごく充実しています。頑張ります」と意気込みを語っている。幼少より柔道で培った技術と勝負に徹する母親のハートの強さを黒部戦でも見せるか。AACC同士、勝ち上がれば同門対決の覚悟も出来ているという。  1R、ともにオーソドックス構え。大島の左の蹴りを掴む黒部だが、片足でしのぐ大島。ダブルレッグに入る大島がテイクダウン。そのままサイドに。立つ黒部を崩す大島はバックに回るが、両脇差してバックに。正対する黒部。すぐに詰めてダブルレッグテイクダウンも金網で立つ黒部。大島のダブルレッグをついに切ると、身長差を活かして首相撲ヒザ蹴り! さらに脇を潜ろうとするが小手に巻く大島は正対。しかしその離れ際に左ヒジ! さらに長い左右をヒット! 一瞬アゴが上がる大島は組みに行くが、黒部が潰して上になりホーン。  2R、大島の低いダブルレッグを切る黒部。さらにダブルレッグテイクへ。差し上げる黒部だが尻を着く。立ち上がり際にキムラを狙う大島に、シングルレッグから上になる黒部。立つ大島はダブルレッグへそこから頭を脇に出してバックへ! しかし引き込みに正対する黒部。ハーフからヒジ・鉄槌で削る黒部。足を戻してフルガードにする大島を潰して鉄槌連打は黒部! 大島は足を伸ばして何とか凌ぐ。  3R、インターバルで座り込む大島。再開。ダブルレッグに入る大島を潰す黒部。ハーフでニーシールドの大島。しかし足を捌いてパスする黒部がマウントに! ヒジを落とす。大島はケージを蹴ってブリッジするが逃げられず。ヒジ・パウンド連打にレフェリーが間に入った。  スロースターターながら、MMA経験に勝る黒部が最後はきっちりフィニッシュして決勝進出を決めた。  試合後は、決勝で黒部と対戦する杉本がケージイン。「久しぶりに試合ができて楽しかったです。皆さんありがとうございました。決勝までまだ準備期間があるのでしっかり準備します。狙うはこのベルトなので絶対に負けません」と必勝宣言。  対する黒部は、「何とかベルトまであと一個まで来ました。私は、ケージに入るときは試合に勝つか負けるかは考えません。生きるか死ぬかで入ってきています。ここで死んでもいいやと思っています。杉本さんにその覚悟はありますか?」と問いかけ。  杉本の「あります」の返答に。「奥さん、いいんですか? ファイナルアンサー」とさらに念押しすると、杉本は「いいです」とアンサー。黒部は「分かりました、いい試合をしましょう」と納得した表情でケージを降りた。 KO 3R 1分54秒 ※グラウンドパンチ※勝利した黒部がトーナメント決勝戦に進出。[レフェリー]片岡誠人[サブレフェリー]田澤康宏 1R 10-9/2R 10-9長瀬達郎 1R 9-10/2R 10-9豊永 稔 1R 10-9/2R 10-9 [nextpage] ▼第3試合 THINKS INTERNATIONAL Presents 修斗女子初代スーパーアトム級王座決定トーナメント準決勝 5分3R〇杉本 恵(AACC)※インフィニティリーグ2019王者[2R 3分32秒 リアネイキドチョーク]×中村未来(マルスジム)  韓国のイ・イェジが、新型コロナウィルスの影響により日本への入国制限等を受け欠場。かわって札幌マルスジム所属の中村未来が出場し、AACCの杉本恵と修斗女子初代スーパーアトム級王座決定トーナメント準決勝を争う。  杉本は、全日本学生選手権2位など圧巻のレスリングテクニックでインフィニティリーグ全勝優勝。ストライキング寄りの中村にとっては苦手なタイプのファイターだろう。同日のトーナメント準決勝で黒部三奈と戦う杉本と同門の大島沙緒里(講道館杯ベスト8)と中村は全日本選手権の決勝で当たっており、大島が判定勝利。杉本にとってはその攻略法は既にインプット済みと見られる。  イェジの代打として急遽エントリーする事になった中村未来はアマチュア修斗全日本選手権準優勝の肩書を引っ提げて2月のニューピアホール大会でプロ修斗デビュー。AbemaTV「格闘代理戦争」に出場していた梅原拓未(GRABAKA)と対戦し、得意の打撃で圧倒し、デビュー戦を華々しい勝利で飾っている。この一戦の内容からトーナメントへのエントリーが決定した。  ここで組み技系の選手への対応をいかに見せるか。距離を詰める杉本と距離を取りたい中村。緊張感溢れる制空権争いに注目だ。勝てばいよいよ初代女王の頂きが見えてくる。  1R、サウスポー構えの中村にオーソドックス構えの杉本。ファーストタッチでいきなりダブルレッグへ入る杉本。右で差し上げて左と組みネルソンでクラッチし凌ぐ中村。  シングルレッグから再びダブルレッグに入る杉本。金網背に中村は鉄槌も落としテイクダウンされない。ブレーク2度まで凌ぐ中村。右の蹴りで攻める中村。詰める杉本に中村はニンジャチョークへ! 頭を抜く杉本。右ローを打つ中村はスイッチ。さらに左右を振るが強引に詰める杉本。  2R、右ローを突く中村だが、杉本は詰めてクラッチ、中央に向けてダブルレッグテイクダウン! 手首をつかみ足を効かす中村に背中をつかす杉本。中村は下からコムロック狙いから外ヒールフックへ。ヒザを抜いて回って外す杉本。インサイドに入っていく。パスガードから中村の立ち際にバックに回る杉本はリアネイキドチョークへ。前転して落とそうとした中村だが、がっちり首もとに入ってタップした。  前半は杉本のテイクダウンを防ぐなど健闘した中村だが、2Rのダブルレッグから劣勢に。最後は杉本がきっちりチョークを極めた。杉本は決勝進出。 一本 2R 3分32秒 ※リアネイキドチョーク※勝利した杉本がトーナメント決勝戦に進出。[レフェリー]片岡誠人[サブレフェリー]田澤康宏 1R 10-9長瀬達郎 1R 10-9豊永 稔 1R 10-9 [nextpage] ▼第2試合 フェザー級 5分3R〇石井逸人(世界バンタム級10位/TRIBE TOKYO M.M.A.)[判定3-0] ※29-28×2, 29-27×齋藤 翼(FIGHT FARM/総合格闘技津田沼道場)  インフィニティリーグ2020にエントリー中の石井逸人(TRIBE TOKYO M.M.A.)と“津田沼の新特攻隊長”齋藤翼が対戦。石井は前戦2020年2月16日の一條貴洋で判定3-0勝利。齋藤は2019年9月22日に藤井伸樹に判定負けして以来、8カ月ぶりの再起戦となる。  1R、ともにオーソドックス構え。ワンツーの齋藤をステップバックでかわす石井。サウスポー構えになる齋藤。左ローを当てる。齋藤の打ち終わりに右を当ててダブルレッグは石井、ボディロックからテイクダウンもすぐ立つ齋藤に、石井はすぐに再びダブルレッグへ。  差し上げる齋藤が逆にダブルレッグへ。差し上げる石井は四つから電車道で反対の金網まで押し込み大外刈テイクダウン! すぐ立つ齋藤はヒジを石井の頭に打ち下ろす! シングルレッグに切りかえる石井はその立ち際にバックを狙うがホーン。  2R、オーソドックス構えから右を振る齋藤。詰めて足を止めたところに石井は頭を下げたテイクダウンのフェイントから打ち下ろしの右! ダウンした齋藤にハーフガードの齋藤。石井はバックに回り4の字ロックからリアネイキドチョーク狙いも、手を掴む齋藤は防御。背後から石井は鉄槌連打! しかしインサイドから正対した齋藤はヒジ! 詰めてワンツー! しかしかわした石井がダブルレッグへ。切る齋藤にシングルレッグの石井は鉄槌を落とされる。ダウンを奪った石井だが、後半の細かい打撃は齋藤も返している。  3R、左右を振って前に出る齋藤。テイクダウンも混ぜていく。石井はヒザ着きの低いタックルで足を手繰りにいくが切る齋藤。詰める齋藤は跳びヒザ&スーパーマンパンチも。石井の蹴りが金的に入り中断も再開。右のカーフィックもかまわず前に出る齋藤。サウスポー構えから左インローを当てる。右をスイングして詰める齋藤。石井は右ジャブ。齋藤の打ち終わりに右をかすめる石井。齋藤は左ハイから入るが下がりながら石井も返しの左を狙う。苦しい時間帯、齋藤はダブルレッグテイクダウンへ! 尻着くもすぐ立つ石井。離れ際に齋藤が右を振ってゴング。  判定は3-0で石井が接戦を勝利。2Rの値千金のダウンで石井が競り勝った。 [レフェリー]豊永 稔[サブレフェリー]田澤康宏 29-27(1R 10-9/2R 10-8/3R 9-10)長瀬達郎 29-28(1R 10-9/2R 10-9/3R 9-10)片岡誠人 29-28(1R 10-9/2R 10-9/3R 9-10) [nextpage] ▼第1試合 ライト級 5分2R〇西川大和(西川道場)[判定3-0] ※20-18×3×木下タケアキ(和術慧舟會HARTS)  西川大和(西川道場)は修斗初参戦。4月17日に開催された「Road to ONE:2nd」でキック界の重鎮、緑川創のローを受けながらも最後まで応戦し、同大会でメインを務めた青木真也が試合後に直接アドバイスをするなど、17歳ながらそのポテンシャルの高さと期待が伺える。  産まれてすぐに「世界チャンピオンにする」と決めた父・武彦氏が1日も休む事なく鍛え上げ、小学5年生の時には『探偵ナイトスクープ』でそのあまりにも特殊過ぎるトレーニング方法が紹介されるなど、注目の選手だ。  2019年はシュートボクシングにも参戦し、元スーパーウェルター級王者・坂本優起にも判定勝利。MMAでも国内外のプロモーションでキャリアを積んでおり実績は十分。もともと修斗ジムで練習していた父と、佐山聡、中井祐樹の系譜を持つ“野生児”は、満を持して修斗マットに上がる。  そんな “ 17歳の二刀流”西川の前に立ちはだかるのが“押忍”木下タケアキ(和術慧舟會HARTS)だ。  MMAにも挑戦した加藤丈博率いる武心塾出身で、少年時代に五味隆典の胸を借り、大沢ケンジのもとでMMAファイターとなった。極真世界連合(KWU)世界大会準優勝。プロデビュー前に『格闘代理戦争』で、韓国MMAの超新星ユン・チャンミンを左上段廻し蹴りで失神KOに下しており、その殺傷力は時に対戦相手を破壊してしまう程のストライカーだ。2020年1月26日の前戦では、小林孝秀を1R 1分24秒、左上段の蹴りから右ストレートでKOに下している。  一撃で相手を仕留める打撃を持つ木下とジャンルを超越して強さを究める西川。危険な予感漂う試合になりそうだ。  1R、父・武彦氏がセコンドの西川。「シャー」と咆哮しケージイン。対する木下は空手衣を着て入場。コーナーには大沢ケンジ代表がつくが左足にテーピングも。  サウスポー構えの木下。オーソドックス構えの西川。右インローから入る西川。さらにダブルレッグへ。金網背に右で小手に巻く木下。しかし西川はボディロックから回してテイクダウン! サイドからすぐにマウントへ。亀になる木下にバックマウントへ。西川は腕十字に。腕を抜く木下。  右ストレートを当てる西川。詰めるも左に木下は左を合わせに行く。さらに頭を下げたところに左を首もとに。西川はダブルレッグからシングルレッグへ。ヒザを一瞬マットに着くも立つ木下。西川のラウンドに。  2R、左ジャブを細かく突きながら近づく西川。しかし、木下の蹴りが西川の股間に入り、中断。再開。互いに左ロー。つめる西川はダブルレッグテイクダウン! 金網背に立つ木下。その立ち際を西川は左右を振る。離れて左ハイは木下も空振り。西川はバックフィストも空振り。しかし首相撲からヒザ! さらにダブルレッグテイクダウンから、かみつきパス狙い。そこで空いたスペースで足を戻す木下に両足を束ねて尻を着かせる。木下の立ち際をバック狙う西川。離れる木下だが、しつこくついていく西川。突き放す木下は左を突くが、距離を詰める西川はみたびダブルレッグへ。尻を着く木下。立ち上がるも西川は連打をまとめゴング。判定は3-0で西川が勝利。  互いに決定打を決めることはできず。詰めの甘さなど課題は残るも、17歳の西川が念願の舞台で組み力で競り勝った試合となった。 [レフェリー]豊永 稔[サブレフェリー]田澤康宏 18-20(1R 9-10/2R 9-10)長瀬達郎 18-20(1R 9-10/2R 9-10)片岡誠人 18-20(1R 9-10/2R 9-10)
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