元UFC世界ミドル級王者、元UFC世界ウェルター級王者、UFC史上4人目の二階級制覇王者などの肩書きを持つ“GSP”ことジョルジュ・サンピエール(カナダ)のUFC殿堂入りが発表された。5月9日(日本時間10日)米国フロリダ州で「無観客」で開催された『UFC249』でのこと。
GSPはこの発表を受け、SNSで「UFCの殿堂入りを果たすことができて、とても光栄です。ロレンツォ&フランク・フェティータ、ダナ・ホワイト、UFCチーム、家族、コーチ、チームメイト、スポンサー、その他の協力者、対戦相手、ファンに感謝したい。この素晴らしい旅は、あなたがいなければ実現しなかったでしょう」とのコメントを発表した。
ダナ・ホワイト代表も「MMAのパイオニアであり、この競技の世界進出を支えてくれた。カナダ史上最も有名なアスリートであり、史上最高のMMAファイターの一人でもある。2020年のUFC殿堂に招き入れることを誇りに思う」と讃え、GSP本人にFaceTimeで祝福のメッセージを伝えている。
GSPは、2017年11月4日の「UFC 217: Bisping vs. St-Pierre」でマイケル・ビスピンに一本勝ち後、2019年2月21日に地元モントリオールで記者会見を行い、総合格闘技からの引退を発表していた。
1981年5月19日、カナダケベック州サンティジドールで生まれたGSPは、7歳から極真空手を学ぶことで格闘技に触れ、その後、柔術、ボクシング、レスリングなども学び、2002年、カナダ「UCC 7」でプロMMAデビュー。「TKO」を経て2004年1月から「UFC」参戦。MMA戦績は26勝2敗で、UFCではウェルター級王座を9度防衛している。
2017年11月に約4年ぶりにオクタゴンに戻ったGSPは、ミドル王者マイケル・ビスピンをリアネイキドチョークで極め、UFC史上4人目となる二階級制覇を達成。同年12月7日に健康上の問題を理由にミドル級王座を返上。柔術コーチのジョン・ダナハーが示唆していた通り、2019年2月21日、37歳で正式に引退を表明した。
引退会見では、「チャンピオンになり、チャンピオンであり続けるためには多くの鍛錬が必要だ。一方で、肉体的にも精神的にも人生で最高の状態にあると感じながらも辞めるということにも多くの自制心が必要になる。それでも、健康な状態でトップにいる間にこのスポーツを離れたいとずっと思っていた」と現役を退く理由を語っていたGSP。
「家族、ファン、コーチ、トレーナー、トレーニングパートナー、スポンサー、エージェント、ずっと支えてきてくれたみんなに感謝したい。また、ロレンゾ・フェティータとフランク・フェティータの偉業、そして、UFC 46からUFC 217まで、世界に向けて自分のスキルを発揮するチャンスを与えてくれたダナ・ホワイトとUFCのすべてのスタッフに生涯、感謝する。これまで戦ってきたすべての対戦相手にも感謝したい。その誰もが全力で戦う必要のあった素晴らしいアスリートだった。
自分が携わってきたこのスポーツにポジティブな影響を与え続けたまま、誇りを持って競技から引退する。この先もずっと、生きている限りは格闘技のトレーニングと練習に励むつもりだ。MMAの未来に向けて、新たな世代のチャンピオンたちの姿を見ることを楽しみにしている」と周囲への感謝と未来への期待を寄せて、笑顔で会見を終えていた。
その言葉通り、GSPは現在でもグッドシェイプを保っており、このコロナ禍を受けて、自宅で可能なトレーニング動画を公開している。
今回のGSPのUFC殿堂入りは「モダンウィング」部門でのこと。同カテゴリは「2000年11月17日(MMAユニファイドルールに基づく最初のUFCイベントが開催されたとき)以降にプロ転向した選手、35歳以上の選手、または引退後1年以上経過した選手」が対象となり、これまで、BJ.ペン、フォレスト・グリフィン、ユライア・フェイバー、ロンダ・ラウジー、マイケル・ビスピン、ラシャド・エヴァンスが殿堂入りを果たしている。GSPの式典は「今年の後半に」開催される予定。
GSPの殿堂入りを発表したUFCは、UFC史上最多テイクダウン奪取記録(90回)を保持し、テイクダウンの成功率74%と驚異的な精度を誇るGSPの試合のハイライト動画をアップロード。序盤では、極真会の道衣を着たジョルジュ・サンピエール少年の稽古姿と「押忍」の声を聞くことが出来る。