ストレートのように重いジャブを繰り出すシュルト。ハントは顔面へ受けて消耗していった
1986年10月に創刊され、30年以上の歴史を誇る格闘技雑誌『ゴング格闘技』が、秘蔵写真と共に過去4月にあった歴史的な試合や様々な出来事を振り返る。61回目は2008年4月13日に神奈川・横浜アリーナで開催された『K-1 WORLD GP 2008 IN YOKOHAMA』より、メインイベントで行われたK-1スーパーヘビー級タイトルマッチ、セーム・シュルト(オランダ/正道会館)vsマーク・ハント(ニュージーランド)。
身長212cm、体重136kgの“最凶巨神兵”シュルトは大道塾、パンクラス、UFCを経て2002年4月からK-1に参戦。2002年のK-1 WORLD GPでは決勝トーナメント進出を決めていながらもPRIDEでのアントニ・ホドリゴ・ノゲイラ戦で負傷して欠場。2005年からK-1に本格参戦を果たし、同年のWORLD GPで初優勝。2006、2007年も優勝して史上初のK-1 WORLD GP三連覇を達成した。
2007年3月にはレイ・セフォーをKOして初代K-1スーパーヘビー級王者となり、6月にはマイティ・モーを完封して初防衛に成功。今回は2度目の防衛戦となる。
文字通りK-1の“絶対王者”として君臨するシュルトに挑むは、2001年のK-1 WORLD GP優勝者のハント。2004年4月にMMA転向を発表して同年6月からはPRIDEに参戦、今回は約5年ぶりのK-1での試合となった。両者はもちろんこれが初対決。
シュルトはピーター・アーツ、アーネスト・ホースト、レミー・ボンヤスキーと歴代GP王者を全員倒しており(アンディ・フグは除く)、ハントをも破ればまさにパーフェクトな王者となる。
1R、前に出てくるハントにシュルトはロー、ミドル、前蹴りで距離を取る。さらに重いストレートのようなジャブでハントを近づけさせない。ハントは右ローを蹴り、右のスイングフックを繰り出して場内を沸かせるが、シュルトはブロックして再びロー、ミドル、前蹴り、そしてジャブ。
シュルトのジャブをもらって後退するハント。前蹴りも次々と命中し、ハントは顔をしかめる。必殺のヒザ蹴りをブロックするもコーナーまで吹っ飛んだハントはすぐに飛び込み、ジャンプしての右フックを繰り出すがこれも空を切る。
シュルトのジャブ、右ストレート、左ハイにハントは後退を繰り返す。思い切って左右フックとボディブローを放つハントがヒットを奪うが、シュルトは前蹴りで突き放す。この前蹴りが三日月蹴り気味に腹へ突き刺さり、ハントはそのたびに嫌そうな表情。さらにジャブを警戒するためガードが高く上がる。
1ラウンド残り10秒を告げる拍子木が鳴ると、シュルトはヒザ蹴り、ワンツーでハントを下がらせ(ガードを上げさせ)、ロープを背にしたハントへ右の後ろ蹴り。レバー付近にモロに喰ったハントは大の字となり、カウント8で立ち上がろうとするも立ち上がれず、シュルトのKO勝ち防衛となった。
テレビ解説を務めていた魔裟斗は「強すぎますね。誰か倒す選手が出てきてほしいです。憎らしいほど強いですよ」と、シュルトの強さを評した。敗れたハントは「あんな強い蹴りは蹴られ慣れていない。まるで馬のような蹴りだ」と舌を巻いた。