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【BOOKS】格闘家はどんな本を読んできたのか──青木真也、朝倉未来、石井慧、堀口恭司、那須川天心らが「好きな本」

2020/04/27 21:04

ファイターが選ぶ「親子で楽しめる児童文学」

◆松嶋こよみ・選
『銀河鉄道の夜』(宮沢賢治)

 ONE2連勝から2019年8月にマーティン・ウェンの持つONEフェザー級世界王座に挑戦した松嶋こよみ(パンクラスイズム横浜)。ONE3戦目にして初黒星を喫し、戴冠はならなかったが、2020年2月の再起戦でキム・ジェウンを3R  TKO。再び王座戦線にからむ見事な復活劇を披露している。

 そんな松嶋は、おすすめの児童文学として、「小学生になる時に祖父からもらった」という宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』を挙げる。「小さい頃は内気な性格だったので、主人公のジョバンニに自分を重ねて読んでいました」と明かす。

「この本を読んだのをきっかけに本が好きになりました」と振り返る松嶋は、自身のソーシャルメディアに読了した本をアップするなど、今でも本をよく読んでいる。

 近年では、山本周五郎賞受賞の『楽園のカンヴァス』(原田マハ)、元サッカー日本代表キャプテン長谷部誠のメンタル術『心を整える。 勝利をたぐり寄せるための56の習慣』、米国のノワール小説文学賞デイヴィッド・グーディス賞受賞作家・中村文則による『教団X』、所属ジムの関内駅から近い横浜駅が舞台の『横浜駅SF 全国版』(柞刈湯葉)、18世紀パリの死刑執行人を主人公とした漫画『イノサン』(坂本眞一)などの表紙を、instagramで見ることができる。

◆若松佑弥・選
『こまったさんのカレーライス』(寺村輝夫 作・岡本颯子 絵)

 2019年8月にジェヘ・ユースタキオを1R KO。10月にもキム・デファンを判定で下し、現在ONE2連勝中の若松佑弥(TRIBE TOKYO M.M.A)。昨年12月に第一子が誕生したばかりの“リトル・ピラニア”が挙げる「親子で楽しめる児童文学」は、『こまったさんのカレーライス』(寺村輝夫)。

 すぐに「こまった」と言うので、“こまったさん”のあだ名がついた主人公が様々な料理に挑戦するシリーズから、若松は『こまったさんのカレーライス』をピックアップする。同書に「小学生の時、図書室で出会った」という。

 不思議なストーリーに加え、かわいらしいイラストで料理のわかりやすいレシピも添えられているこの一冊は、自宅待機の時間が多い今、親子で料理をする入門書としても最適。親子二代に渡り読み継ぐ読者も少なくない。

◆山口芽生/内藤大樹・選
『かいじゅうたちのいるところ』(モーリス・センダック)

 ONE4連勝から、2月大会でデニス・ザンボアンガに悔しい判定負けを喫したV.V Meiこと山口芽生(RIKI GYM/和術慧舟會GODS/HybridFighter)と、ONE本戦3連勝中でONEムエタイフライ級世界王者のロッタン・ジットムアンノンに挑戦をアピールしている内藤大樹(BELLWOOD FIGHT TEAM)は、「親子で楽しめる児童文学」として、

世界中で愛されている絵本『かいじゅうたちのいるところ』を挙げる。

 山口は幼少期を過ごした米国で同書に出会った。「アメリカの幼稚園、小学校に置いてあって、読書の時間に自分で読んだり、先生が読み聞かせてくれたりしました」という。

 原題は『Where the Wild Things Are』。イタズラのおしおきに、夕食抜きで自室に閉じ込められた主人公マックスは不思議な世界に導かれる。部屋中に森や海が広がり、航海のすえマックスはかいじゅうの国に至る。かいじゅうを従え王様となったマックスは彼らと楽しいひとときを過ごすが、やがて……といった内容の絵本は、スパイク・ジョーンズにより映画化もされている。

 山口は、同作について「大人になって実写版の映画を見返して、子供の頃の残酷な感覚を思い出させてくれました。子供の心の葛藤を上手く描いている作品だと思います」と語る。

 一方、内藤大樹は『かいじゅうたちのいるところ』を、「保育園の時に祖母に買ってもらいました。たくさんのかいじゅうが登場してワクワクしました」と当時の思い出を語る。「物語を通して大きく成長していく」主人公のマックスの姿が印象に残っているという。

 自身の内なる獣に打ち勝ち、その手綱を握ってコントロールして成長していく物語ともいえる同書は、自身の弱さを制御し、王冠を抱こうとするファイターにとっても示唆に富んだ内容なのだろう。

◆内藤のび太・選
『エルマーのぼうけん』(ルース・スタイルス・ガネット作・ルース・クリスマン・ガネット挿絵)

“内藤のび太”こと内藤禎貴(パラエストラ松戸)が挙げたのも、世界的な児童文学作品だ。

 内藤は、2018年5月に2度目のONEストロー級王座獲得も、ジョシュア・パシオに敗れ王座陥落。2019年は3月にレネ・カタランに敗れ厳しい連敗も、5月にアレックス・シウバ、11月にポンシリ・ミートサティートにいずれも判定で競り勝っている。

「『エルマーのぼうけん』を読んだのは小学校の頃だったかと思います。親に進められたかなにかで読み始めました」と、同書と出会ったきっかけを内藤は語る。

『My Father's Dragon』が原題の同作は、1945年、ルース・スタイルス・ガネットが22歳の時にスキー場のロッジでアルバイトをしながら書いた児童文学作品。主人公のエルマーがどうぶつ島に渡り、捕らえられていた竜の子供を様々な知恵を駆使して助けるという話だ。挿絵はスタイルスの義母クリスマンによって描かれた。

 1948年に米国で出版され、海外での翻訳はスウェーデン語に続き、2番目に日本語版が出版されている。幼少時に読んだ内藤は、「色んな所に行きたいというワクワクした感情は、今の自分にも影響を与えられた気がします」と語る。

 同作では、エルマーがどうぶつ島に向かうために、リュックサックにチューインガムや輪ゴムや磁石、歯ブラシなどのガラクタを詰め込み、決して強力ではない日常品を巧みに使用し、持ち前の勇気と知恵で、危機を乗り越える。

 MMAにおいて抜きんでた武器を持たない内藤は、持っている道具を工夫して組み立てる、粘り強い戦い方で世界と伍してきた。同書におけるエルマーの創意工夫は、内藤のファイトスタイルにも影響を与えているのかもしれない。

◆岡見勇信・選
『三匹の子豚』

 ONEで悪夢の2連敗から、2019年10月のアギラン・タニ戦で、スプリット判定勝ちをもぎとった岡見勇信(EXFIGHT)は、絵本・アニメ映画などで定番の作品を挙げる。

『三匹の子豚』は、もともと民間伝承によるおとぎ話の一つで、18世紀に英国で物語として出版されている。1933年のウォルト・ディズニーによるアニメーション映画『シリー・シンフォニー』の1話『三匹の子ぶた』により有名になった。

「幼稚園の頃、父親に読んでもらいました」というこの作品について岡見は、現在の自身のあり方に繋っているという。「三男の子豚の勇気と努力家のところを見て好きになりました。そして、最後に怖いオオカミをやっつけるところに感動を覚えました」。

 安易に作ることができるわらの家、木の家はオオカミに吹き飛ばされ、2匹の子豚は食べられてしまうが、3匹目の子豚は手間をかけてレンガの家を建て、無理に煙突から忍び込もうとしたオオカミを煮えたぎる鍋に飛び込ませることに成功している。

 ファイターであり父でもある岡見は、「『三匹の子豚』からは、努力すること、勇気を持つこと、真面目であること、優しさを持つこと──この4点を守ることで困難に立ち向かっていける、と子供ながらに影響を受けました。現在の自分の礎になっています」と語る。その勤勉さを持って岡見はUFCで世界の頂に挑んだ。果たして、ONEでは悲願のベルトを巻くことができるか。(協力:ONE Championship

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