グラップリング
インタビュー

【ZST】伝統のベルトを巻いたグラップラー岩本健汰「同じ志を持った人と地道に研究していくことが大切」

2020/03/28 18:03
【ZST】伝統のベルトを巻いたグラップラー岩本健汰「同じ志を持った人と地道に研究していくことが大切」

2020年3月15日(日)、GENスポーツパレスにて「マリオンアパレル Presents GTF.3 ~ZSTグラップリングトーナメント フェザー級王者決定戦~」が無観客試合として行われ、岩本健汰(IGLOO)が全試合一本勝ちで優勝、ベルトを巻いた。

初代王者・所英男、第二代王者バレット・ヨシダに続き、第三代王者となった岩本は、早稲田大学大学院で物理学を学び、グラップリングにおいても仮説・実験・検証を繰り返すことで確実に強さを獲得していった研究肌。青木真也、北岡悟らMMAファイターとの練習、さらに公園にマットを敷いての独自練習なども行う異色のグラップラーだ。

道衣柔術と“ノーポイント&サブミッション・オンリー”のグラップリングが別競技になりつつある現在、日本でサブオンリーの強豪グラップラーとして、注目が高まっている岩本に、ベルト獲得後、話を聞いた。

──まずはZST「GTF.3」で優勝した率直な感想をお願いします。

「ここで躓いたら先のレベルでは難しいと思っていたので、エントリーしたときは優勝以外はありえないと思ってました。グラップリングに対する姿勢とか練習量とか気持ちで負けることはないと思っているので。あとは一緒に練習してくれている人たちの期待も背負っていたので、青木(真也)さんや北岡(悟)さん、八隅(孝平)さん……この人たちに教えてもらっている限りは負けられないと思って試合に臨みました」

──1回戦ではいきなりCARPE DIEM三田の竹内稔選手とのADCC以来の再戦で、1分40秒、ヒールフックを外ヒールで極めました。

「以前(2019年ADCC準決勝)にヒールフックで勝っている選手なので、ヒールフックは絶対に警戒されていると思っていました。アナコンダが得意な選手なので、そのエスケープ方法などの対策も取りつつ、結果的にヒールフックでもう1回(タップを)取れたのですが、前回の内ヒールと異なり、今回は外ヒールで極めました。

ほんとうはテイクダウンからとか立ちの状態でバックに回って攻めようかと思っていたですけど……、ちょっと変更してボトムから直接攻めるんじゃなくて、引き込みと同時にアンダーフックを取ってそこから攻めるように切り替えました。それが上手くいきました」

【写真】引き込みと同時に竹内の左脇を差していた岩本。そこに右足を差し込んで前方に煽り、インバーテッドガードから右腕で相手の足を手繰りに行って、三角に組んで最後は外ヒールを極めた。

──準決勝では、小野隆史(フリーダムオズ)選手を相手に、バックテイクから最後は後ろ三角で腕を極めました。最後は相手のオーバータイム狙い(※岩本は一回戦と準決勝のオーバータイムは先攻と決まっていた。後攻は先攻のタイムを見ることができるため有利)もあるなか、相手の左腕を左足で縛り、よく極め切ったと思いました。

「7分の試合で残り時間も少なく、取り切れなかったら嫌だなと思いまして。腕をトラップにして後ろ三角に行けたので、あそこまで行けたら大丈夫だろうと」

【写真】シングルレッグでテイクダウンした岩本。腰を殺してパスガード。小野の左腕を左足で縛って右腕を狙いつつ後ろ三角で両足をヒザ裏でクラッチ。最後は右腕を極めた。

──決勝は寒河江寿泰(トイカツ道場/今成柔術)との対戦となりました。互いにヒール狙いから、岩本選手の強いパスガードに寒河江選手のガードへの戻し、寒河江選手の足関節狙いに岩本選手がバックテイクを合わせて完全バックを取るという攻防にも見ごたえがありました。

「寒河江選手とは練習してこともあり、互いに足関節が得意で、結構入ったかなと思ったときもあったんですけど、寒河江選手も足関節が上手くて逃げられたりしたのが数回あって、そんな中で、足関にこだわらず上からプレッシャーを掛けたりして、最後は足関節のカウンターでバックを取りました。そこからはゆっくり攻めようと思い、最後はチョークで極めました」

【写真】岩本のパス狙いに何度もヒザを戻してくる寒河江。いったんは左で頭を押さえ、右腕を腰に差し込んで完パス、上四方を奪った岩本だが、ここも寒河江はガードに戻した。

──延長となった場合は、バックコントロールかスパイダーウェブというオーバータイムのルールもありました。そんななかで全試合一本勝ちで極め切った手応えはいかがでしたか。

「延長戦になっても勝ち切るような練習はしてきましたので、負けられないと思って戦ってきました。それに柔術のようにバックに行くまでのプロセスよりも、サブオンリーの場合はパスをしても極めないと意味はない。途中の動作でなくマウント、サイド、亀などバックから極め切ることをいつも重視しています。このルールでも勝ち切る選手は結局、強い選手ばかりですし」

【写真】寒河江のインバーテッドガードからのサドルロック狙いに、横を向いて足を抜いていた岩本は左腕で肩を抱きに行きバックテイク。寒河江の向き直りを許さず、最後は両足を三角クラッチでリアネイキドチョークを極めた。

──セコンドの青木選手からの指示は、ポジションを奪ってからは落ち着いて極めればいいという安心した感じでした。

「セコンドについていただいた青木さんからは『いつも通りガツガツ攻めていけば大丈夫』と言ってもらえてました」

──今後の目標は?

「今後はまずはもう一回、ADCC世界大会に出て、1回戦を突破して傷跡を残したいです。ZSTのベルトの防衛戦は……海外の強豪選手とやりたいです。ZSTもそうですが、ADCCだけじゃなくとか、EBIとかほかの大会でもスーパーファイトなど海外の世界的に有名な強豪選手とやるチャンスがあれば、ぜひやって名前を上げていきたいです」

──公園柔術もいまも続けているのでしょうか。

「続けています。やっぱり同じ志を持った人と地道に技を研究したり、限定スパーなどでもコツコツと技術を積み上げていくことが大切だと思っています。グラップリングは日本では競技人口が少ないし、なかでもそういう同じ志を持っている人も少ないので、なかなか孤独な戦いではあるかもしれないですけど、いまある環境のなかでも頑張っていきたいです」

──ノーギ柔術ではなくサブオンリーとしてのグラップリングに磨きをかけられる練習が必要であると。MMAのグラップリングとも似ている部分と異なる部分もあります。MMAにも興味はあるのでしょうか。

「ちょっと考えていたことはあるんですけど、目先はグラップリングなので、まずはそこに全てを賭けようと思います」


【写真】発売中の『ゴング格闘技』5月号(NO.307)では「──エモい──U23日本格闘技界代表:Grappling 岩本健汰、23歳」も掲載。

【関連記事】
朝倉未来が、社会経済学者・松原隆一郎と対談! 未来が選んだ3冊とは?
青木真也と那須川天心がスパーリング対談で「思考の格闘技」を語る
朝倉海のトレーニングにぱんちゃん璃奈が挑戦、見事完遂

MAGAZINE

ゴング格闘技 NO.331
2024年3月22日発売
UFC参戦に向け、ラスベガス合宿の朝倉海。「プロフェッショナル・ファイターの育て方」でチームを特集。『RIZIN.46』鈴木千裕×金原正徳インタビュー、復活K-1 WGP、PFL特集も
ブラジリアン柔術&総合格闘技専門店 ブルテリアブラジリアン柔術&総合格闘技専門店 ブルテリア