秋に開催予定のS-cup世界トーナメントへ向けて、2020年初戦に臨む海人。
2020年2月15日(土)東京・後楽園ホール『SHOOT BOXING 2020 act.1』のメインイベントで、WPMF世界スーパーライト級王者ピンペット・バンチャメーク(タイ)とヒジ打ちあり、68.0kg契約で対戦するS-cup2018世界王者・海人(TEAM F.O.D)のインタビューが主催者を通じて届いた。
SBの絶対的エースとして君臨する海人は、昨年に世界の強豪との対戦を視野に階級を上げると、元Krush-70kg級王者・中島弘貴、RISEミドル級王者イ・ソンヒョン、RISEウェルター級王者“ブラックパンサー”ベイノアを下し現在3連勝中。階級(65~70kg)だけでなく、ヒジの有り無し関係なく結果を残している。
ピンペットはムエタイの“レジェンド”ブアカーオが、自身が優勝を果たした2010年のシュートボクシング・ワールドトーナメント『S-cup』から10年目となる、今年開催の『S-cup世界トーナメント2020』制覇を狙って送り込んで来た刺客。WPMF世界スーパーライト級王座を保持するだけでなく、現在はルンピニースタジアム認定スーパーライト級6位にランキングされており、クラップダム、インディートーンといった選手とも戦っているムエタイトップクラスの選手のひとり。テクニシャンでありながら相手をKOする破壊力を秘めた強打を併せ持つ。
■自由に自分らしく戦えることはより楽しみです
――昨年は5戦して4勝(1KO)1敗と好成績でしたが、ご自身にとってどういう1年でした?
「勝率は良かったのですが、自分的には全然納得のいかない1年でした。僕は勝つだけではダメな立場ですし、KOも少なかったので良い1年だったとは言えません。例え判定であっても盛り上げて勝つことを目標にしていますが、やはりその上でKOするのが理想です」
――4月のチャド・コリンズに敗戦して以降、3連勝しています。チャド戦で得たものがあり連勝につながっているものはありますか?
「チャド戦では自分の攻撃を当てることも出来ましたが、決定打は許してくれず上手くガードされてしまいました。そういう駆け引きの部分は学ぶことができたのかなと思います」
――前戦となった12月の“ブラックパンサー”ベイノア戦も振り返っていただきたいと思います。序盤は押されながらも後半に巻き返して判定勝ちでした。
「ベイノア選手はRISEチャンピオンだけに強い選手でしたが、対抗戦なのでファンには僕が圧倒する姿を見せなければいけなかったと思っています。それが出来なかったのはベイノア選手の強さですが、誰が相手でも悔しいですし反省すべき点だと思います。絶対に倒す、圧倒するという気持ちで序盤に焦った部分があって自分らしさを出せませんでした」
――海人選手は試合をすることで対戦相手からテクニックなどを毎回学んで自分の技にすると言われていましたが、今回ベイノア選手のテクニックで吸収したものはありました?
「技を受けた時のいなし方です。ベイノア選手はディフェンスの時も離れるのではなく逆にぶつかってきて、僕のパンチのコンビネーションを止めてきました。そういう部分がうまいなと思いましたし勉強になりました」
――階級を上げて今回4戦目となりますが、スーパーライト級の65kgで戦っていたときと比べて動きはいかがですか?
「身体の調子は問題ないです。スーパーライト級でも外国人だと自分よりもパワーのある選手が多いと思うので、今後スーパーライト級で試合をしても当たり負けしないために67.5kg~70kgで試合経験を積むことは大事だと思っています。まだ階級を上げた試合に完璧に慣れたとは思いませんが、試合が決まっている以上はそうも言ってはいられないのでしっかりと仕上げて自分の身体にアジャストしていきたいと思います。体重を落とさないぶん自分の攻撃力は上がってますし、スピード面も落ちていません。逆に練習している時のいい状態をそのまま試合中にも出せていると感じています」
――今回の相手ピンペットについてはどのような印象がありますか。
「試合映像を見たところ、蹴りのキレがありますし、組んだ時の組みも強くうまい印象を受けました」
――海人選手はこれまでにタイ人と4戦して3勝。負けたのは2018年9月のチャムアトーン戦のみです。vsタイ人に得意意識はありますか?
「特にそういうのは感じませんが、タイ人は独特なリズムがあり、それをキープされるとこっちのリズムが取りにくくなるのでそこを崩していくための戦略は掴んではいます。僕はムエタイのトップクラスの選手とやらせていただく機会も多くなり、蹴りのタイミングや攻撃のいなし方など優れたテクニックを身体で学ばせていただいています」
――今回はチャド戦以来のヒジ打ちありルールとなりましたが、感覚的にはどうでしょうか。今回の対戦カードが決定してSNSでの反響を見ると「海人選手のヒジありの試合が見たかった」という声が多かったです。
「そうですね。ファンの方々がそういってくれるのは凄く嬉しいです。僕としてはヒジはあっても無くてもいいのですが、今回のルールはヒジを打ったらダメやったなとか試合中に自分を抑えていた部分もあるので、自由に自分らしく戦えることはより楽しみです。今回のピンペット選手はヒジ打ちを簡単に当てさせてくれるとは思ってないので、練習では以前よりもヒジのコンビネーションを増やしましたし、一発一発の精度を上げています」
■S-cupを4度制覇しているアンディ・サワーとも闘ってみたい
――ムエタイの“レジェンド”であり、S-cup2010王者ブアカーオの愛弟子ということで、ブアカーオのことは意識はしてますか?
「昔からテレビなどで見ていた選手なので、もしセコンドで来日してくれることがあれば、愛弟子をブアカーオの目の前でしっかり倒して僕の名前を胸に刻んでもらいたいと思います」
――ブアカーオとの対戦を意識は?
「70kgでブアカーオとの試合というのは未知数ですが、もしそういう機会をいただけるのであれば、『やります』と即答します」
――S-cup世界王者対決が楽しみです。
「自分の方が新しいS-cupの世界チャンピオンですし、ブアカーオのような歴代王者に負けているようではダメだと思うのでぜひ試合して結果で証明したいです。ブアカーオもですが、S-cupを4度制覇しているアンディ・サワーとも闘ってみたいです。サワーは“SBの絶対王者”といわれていて、いつまでもそういわれているのは僕的には嫌なのでそろそろ世代交代しないといけません」
「SBのチャンピオン同士が戦えば盛り上がると思います」
――昨年大晦日のRIZINには海人選手の出場も噂されていましたが、結局は出場が決まりませんでした。どのような心境でした?
「対戦相手が決まるかもしれないという状況を聞いていたので練習して準備はしていましたが、大会まで時間がないということもあり結局試合は消滅してしまいました。でももし出場していたら今回の2月大会には短いスパンで出場することになっていたので、いい結果を残すためには準備が足りなかったかもしれません。今回しっかり結果を残してまたいつでも呼んでもらえるように結果を残していこうと思います」
――大晦日のRIZINでは、立ち技が2試合組まれました。どのように見てました?
「那須川天心選手が圧勝していて、素直にさすがやなと。自分の立場的にも那須川選手のような形で勝たないといけないなとあらためて思いました。格闘技業界が注目する大晦日の大舞台でああいう試合を見せつけられたのは正直悔しい気持ちがあります」
――RENA選手はMMAルールで一度負けているリンジー選手に大逆転勝利しました。
「RENAさんのことを応援していたので、勝った瞬間は凄く嬉しかったですね。僕もリベンジしないといけない選手が3人(チャド・コリンズ、チャムアトーン、ザカリア・ゾウガリー)いるので、RENAさんの試合を見てモチベーションが上がりました。RENAさんのように今年はSBをどんどん広めていきたいですし、SBが格闘技全体を盛り上げるように頑張りたいと思います」
「去年が納得いかなかったぶん、今年一発目の試合なので派手に倒してS-cupにつなげることが出来る様にいいスタートを切りたいと思います」
――今年はどういう1年にしたいですか?
「負けている選手へのリベンジとS-cup2連覇を目標にします。日本人選手でS-cup2連覇している選手はいないのでそこを狙っていきます」
――リベンジしたい3人ともS-cupでやるのが理想ですか?
「3人とはキッチリ勝負を付けたいのでワンマッチでやりたいですが、S-cupであればリベンジへのストーリー性もあっていいのかなと思います。」
――ちなみに今年初詣は行かれました?
「正月は家でゆっくりしたいと思っていたので行ってないです。毎年おみくじは引かないですし、引いて、もし悪いことが書かれていたらテンションが下がっちゃうので(笑)。神頼みはしないので、自分の力で道を切り開いて運気を上げていくだけです。まずは今回のピンペット選手をしっかり倒して、皆さんと一緒にいい1年にしたいと思います」