キックボクシング
インタビュー

【KNOCK OUT】丹羽圭介「年齢はただの数字』と証明します。若手狩りですよ。30代、なめんなよ」

2020/02/04 22:02
2020年2月11日(火・祝)東京・大田区総合体育館『KNOCK OUT CHAMPIONSHIP.1』で行われる「無法島GP トーナメント」。同トーナメントに出場するREBELS63kg級王者・丹羽圭介(TEAM ニワールド)のインタビューが主催者を通じて届いた。  丹羽は日本拳法を経てキックボクシングに転向し、2010年2月にプロデビュー。RISEで11連勝を飾るなど活躍後、フリーとなって様々なリングに参戦。2018年10月からはREBELSを主戦場にして、2019年4月に王座決定トーナメントを制してREBELS 63kg王者となった。8月のKNOCK OUTでは大月晴明を降したが、12月には勝次に敗れた。  トーナメント1回戦では古村匡平(FURUMURA-GYM)との対戦が決まっている。 ■自分の実力とかパフォーマンスを300%出せている感覚  丹羽圭介ほど、異色の経歴を持つ格闘家はいない。  元々、格闘家志望ではなかった。モデル・俳優として活動していた頃、日本拳法の経験を買われて知り合いの映画監督の要請でHAYATO(当時K-1ファイター)のスパーリングパートナーに。そこで抜群のセンスを見込まれて「アマチュア大会に出てみないか」と誘われて格闘家の道へ。  アマチュア全国大会で優勝し、26歳でプロデビュー。新人王に輝き、連勝を重ねてタイトルマッチに臨んだ。  ここまでは順調だったが、タイトルマッチで敗北。以降、勝てない状態が続いた。  丹羽は当時をこう振り返る。 「その頃は『これでいいのかな?』という迷いが常にあって、それが3分3ラウンドの戦いの中に如実に現れたんです。ごまかしながら、何とか自分の運動神経を使って勝っていきましたけど、常に努力して鍛えているトップどころとの試合では迷いがあったら勝てないです」  現役Jリーガーで日本代表の経験を持つ2歳下の弟、丹羽大輝(FC東京)からは、こんなアドバイスをされた。 「兄ちゃん、本気でチャンピオンになりたいと思ってるなら、今の環境で悶々としてても絶対に勝たれへんで」  その言葉に背中を押されて、丹羽はフリーになることを決意。  パーソナルトレーナーとして活動しながら、最高の練習環境を求めている時、出会ったのが那須川親子。テッペンジムの那須川会長と「神童」天心だった。 「那須川会長と天ちゃん(天心)との出会いはめちゃめちゃ大きかったです」  練習拠点を主にTEPPEN GYMに移し、2018年よりREBELSに参戦。すると、それまで2年間白星から遠ざかっていた丹羽が橋本悟、潘隆成に連勝。 「REBELSの63㎏級のベルトを作って貰いたい」  丹羽のアピールが実り、開催された王座決定トーナメントでは恭介と稲石竜弥を破り、プロ初となる「REBELS 63kg級王座」のベルトを巻いた。  だが、丹羽は悲願達成にも立ち止まらない。  昨年8月のKNOCK OUTでは「レジェンド」大月晴明と対戦し、得意の右ストレートでダウンを奪って判定勝利。また、昨年12月には新日本キックで「蒲田のロッキー」勝次と凄まじい打ち合いを演じて、判定で敗れたものの「REBELS王者の強さ」を印象づけた。  丹羽はこう振り返る。 「有言実行してきてますね(笑)。あり得ない挑戦を描いて、あり得るような行動をして、自分の圧倒的な努力と圧倒的なスペシャリストたちの協力で、自分の実力とかパフォーマンスを300%出せている感覚です。年齢という概念ではなく、自分のやれることはすべてやり切って『もう伸びしろはない』と思ったら引退でしょうけど、今、36歳で日々『伸びしろ』を感じます。今日もさっきまでTEPPEN GYMで練習してて『まだまだ自分の余白があるな』と。あそこは最高のパワースポットで、常に引き上げて貰えるんですよ」  現在、TEPPEN GYMでは週3、4日練習しているが、丹羽は1つ、心掛けていることがある。 「受け身で『いるだけで強くなる』ことはないです。『いい環境で練習してる自分』に満足したら絶対にダメなんですよ。  僕は、自分の工夫や思いをちゃんと持っていって、那須川会長や天ちゃんたちにぶつけまくってます(笑)。ぶつけると、那須川さん親子は想像以上のことを返してくれて、本当にクオリティの高い、お互いにとっていい練習ができるんです」  そうした練習をする中で、丹羽は「神童・那須川天心」の凄さを肌で感じている。 「天ちゃんは、練習の動きをそのまま試合で出せる。それは、常に圧倒的な臨場感と緊張感で練習しているからです。しかも、彼は3秒前まで冗談を言っていたのに、ゴングが鳴ってマススパーリング(軽く当て合うスパーリング)を始めようとグローブを合わせた瞬間、グッと『試合モード』に入っているんです。意識的にではなくて、ナチュラルに、スッと。彼の中に何かスイッチがあるんでしょうね。だから、僕もテッペンジムで練習する時はずっとスイッチの入った状態です。自分がいい状態にいないと、あの空間で時間を過ごすのがもったいない。悪い状態では行きたくないですね」  そうした練習の成果が、REBELSやKNOCK OUTでの活躍につながっている。丹羽はKO勝利こそ少ないものの、ほとんどの試合で鮮やかなカウンターを決めてダウンを奪って勝ってきた。  丹羽は試合中に「打てば倒せるタイミングとポイント」が鮮明に見えるのだという。 「はっきりとピントが合う瞬間があって『そこ』にパンチを打ち込むと相手は倒れているんです(笑)。『そこ』に至るストーリーも、那須川会長とか僕のチームに入ってくれている人が描いてくれているので、あとは僕が『そこ』に入ればいい。ものすごくやりやすいですし、自分の力がめちゃめちゃ引き上がっていることを感じてます」 ■年齢はただの数字にすぎない  今回の無法島GP1回戦は、デビューから15戦負けなしの二十歳のホープ、古村匡平。  すでに丹羽には「古村攻略」の図が見えているという。 「昨年12月の勝次戦では、向こうのペースに飲まれて、同じようなペースでラリーをやっちゃったんで、自分の無双ビートはまったく発動せず(苦笑)。会場は盛り上がって『面白かった』と言って貰いましたけど、同じやり取りで、打って打たれてをやっちゃったら勝てないですよ(苦笑)。  1回戦の古村選手は、若くてバネがあって、思い切りがいい。自分の右ストレートとか右のキックに自信があるんだと思います。だから、向こうのパターンに入らず、崩しにいきます。  トーナメントなので全員の分析は終わってますけど、何よりも自分のパフォーマンスが高くないと体現できないですから。相手のポイントは押さえながら、あとはいかに自分がいいパフォーマンスをできるか、になるでしょう。  1日3試合やるとなると『自分の実力以上を出す』とか『強運を引き寄せる』という戦いになってくるので、自分の力以上のものを出すために、セコンドの力も、会場に応援に来てくれる人たちの力も、すべて合わせて『自分の力じゃない力』を背中に感じて戦いますよ」  最後に一つ、聞いておきたいことがあった。 「無法島 GRAND PRIX」開催が発表されると、丹羽は当然のようにエントリーしてきたが、回避することは考えなかったのか。  1日3試合のトーナメントは想像以上に「過酷」だ。体力的に厳しい上に、古傷を悪化させたり、ダメージを深くするケースが多い。無法島GP出場選手は8人中6人が20代。怪我のリスクを覚悟した上で「無法島GP優勝で自分の名を世間に知らしめる」と参戦してきた。  丹羽は最年長の36歳。REBELS王者として鈴木千裕らに「挑戦したい」と対戦を熱望される立場だ。「王者として防衛戦に専念する」とトーナメント回避の選択肢もあったはず。  丹羽の答えは明快だった。 「自分が『これがやりたい』は、REBELSのベルトを獲ったことで1つ、コンプリートしてるんです。だから、あとは周りがどれだけ喜んでくれるか、自分に望まれている戦いができるか。今『このチャレンジがどうなるか分からない』ぐらいのチャレンジができる状態なので、そういう意味では本当に恵まれています。  最年長の36歳でトーナメントを制覇して『Age is just a number』(年齢はただの数字にすぎない)、まだまだいけるぞと証明して、僕と同年代の人たちに勇気を与えて、僕を応援してくれる人たちの夢や希望をかなえたい。だから、20代の選手たちには負けていられないんです」  それまでにこやかに話していた丹羽が、一瞬、険しい目をした。 「『若手狩り』ですよね。なめんなよ、って」 文/撮影(人物)=茂田浩司
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