トーナメント出場8選手の中で随一の危険な匂いを漂わせるバズーカ(右)
2020年2月11日(火・祝)東京・大田区総合体育館『KNOCK OUT CHAMPIONSHIP.1』で行われる「無法島GP トーナメント」。同トーナメントに出場するMA日本キックボクシング連盟スーパーライト級王者バズーカ巧樹(菅原道場)のインタビューが主催者を通じて届いた。
バズーカはMA日本キックボクシング連盟をホームリングに様々な団体で活躍。特にKrushやK-1では6勝(4KO)1敗という好成績を残した。2019年12月の新日本キックでは2019年KTK 64kg級王者イ・ボムギュ(韓国)を降している。今大会では倒し屋が集った「無法島GRANDPRIX」に参戦し、トーナメント1回戦では“激闘大魔神”橋本悟と対戦する。記者会見や公開練習ではトーナメント参加者の中で随一の“殺気”を漂わせていた。
■いつかやってやる、って思ってました
質問をされると、短くひと言だけ返すのが「バズーカ節」だ。
試合への意気込みという定番の質問には「バズーカ砲をぶっ放します」や「今回は足バズーカ(キック)で」など、リングネームの「バズーカ」をからめて短く答えると、あとは無言。
師匠の菅原会長は、“狂拳”竹内裕二と「野性の剛腕」島野浩太朗という超攻撃型ファイターを育ててきたが、現在は、バズーカ巧樹を日本のトップファイターに育成中だ。
このインタビューには菅原会長が同席した。すると、バズーカはひと言喋ると菅原会長をチラチラとうかがい、あとは会長の話をじっと聞いて「押忍」だけ……。
今回は、菅原会長のお話と「バズーカ節」をそのままお届けします。
バズーカ「普通に、喧嘩とかに強くなりたくて」
菅原会長「さすがに最近はしないけど、10代の頃はしょっちゅう喧嘩してんだよな?」
バズーカ「押忍」
菅原会長「田舎だから、よく喧嘩するんですよ。お祭りの時なんか、気がつくとジムの外に飛び出して喧嘩してた(苦笑)。ウチの道場に入ってからは、さすがに自分から喧嘩を仕掛けるようなことはないんだけど、向こうから挑発されたら我慢できなかったんだよな?」
バズーカ「押忍」
――道場に入った頃は狂拳(“狂拳”竹内裕二)選手にボコボコにされてたそうですね。
バズーカ「そうですね……」
菅原会長「スパーリングでいじめられたな(笑)。狂拳のせいで何人か有望な選手が辞めてるんですよ(苦笑)。アイツ、まったく容赦しないから」
バズーカ「週の半分ぐらいはボコボコにされてました」
バズーカ「いえ。いつかやってやる、って思ってました」
――やり返せたんですか?
菅原会長「やらせなかったんですよ。バズーカが力を付けてきた頃、もう狂拳とはスパーリングをさせなかったんで。道場で喧嘩になっても困るしね」
バズーカ「押忍」
――会長、バズーカ選手の長所とは?
菅原会長「気持ちが強くて、体が強くて、練習もとても真面目なんですよ。練習をやりすぎてオーバーワークになって、それで怪我をしてしまうんで『そのぐらいにしとけよ』ってストップを掛けてます。『練習がキツい』って逃げた狂拳とは真逆だよな(笑)」
バズーカ「押忍」
――リングに上がると「凶暴さ」がむき出しになりますけど、それは昔からですか?
菅原会長「そうですね。よく覚えてるのが、アマチュアのデビュー戦。対戦相手がHIROYAのTRY HARD GYMの選手で。試合を見て『ああ、これはもう勝てるな』と思ってたら、バズーカが相手を倒して、その勢いのまま倒れた相手の顔面を踏みつけたんですよ(苦笑)」
バズーカ「あんまり覚えてないです。……無意識で」
菅原会長「向こうのセコンドが激怒して、俺と狂拳で必死になだめたんですよ(苦笑)。試合の後で聞いたら、バズーカ本人は『立ってる相手の顔に前蹴りを入れたつもりだった』って(苦笑)。ちょっと天然のところがあるんですよ」
バズーカ「押忍」
菅原会長「バズーカは、どこでスイッチが入るか分からないし、スイッチが入ると何をするか分からない。無法島GPでは早めにレフェリーに止めてほしいですね」
バズーカ「押忍」
菅原会長「試合中にキレると、訳がわからなくなるところがあるんだよな?」
バズーカ「押忍」
――最近はさすがに無くなりましたか?
バズーカ「いや……、倒れた相手を攻撃しそうにはなります」
菅原会長「キレると自分では止まらないんで、レフェリーがしっかりと止めてくれないと」
バズーカ「押忍」
――そのスイッチは突然入るんですか?
バズーカ「えっと……、試合中に入るんです」
菅原会長「俺もいつバズーカのスイッチが入るか分からないんですよ。だから、バズーカと対戦する選手はくれぐれも注意して貰いたいですね(笑)」
バズーカ「押忍」
■自分は修理とか電池交換とかが得意なので
――今、お仕事は?
バズーカ「ショッピングモールにある時計屋で働いてます。今年で5年目に」
――試合前の合宿や、計量・試合の時に休んだりすることは大丈夫なんですか?
バズーカ「自由に休めるんで」
菅原会長「店長がバズーカを怖がってて、なんも言えないんだろ?(笑)」
バズーカ「押忍」
――ええー?
菅原会長「最初に就職した会社が、練習や試合で休んだりするのがキツいところだったんですよ。だから『キックのチャンピオンを目指すなら考えろ』って言って。それで、今のショッピングモールの時計店に入社したんです」
バズーカ「押忍」
菅原会長「タイの合宿に行くからって休ませたり。結構、自由にさせて貰ってるんで」
――バズーカ選手は普段から全然喋らないそうですが、それで「お客様、お似合いですよ!」とか言ってるんですか?
バズーカ「いえ(笑)。結構、自分は修理とか電池交換とかが得意なので」
――海外からの観光客には英語とか中国語で話しかけたりしてるんですか?
バズーカ「いえ(笑)」
菅原会長「ニーハオ、って声を掛けて、お店に入ってきたら『シェー、シェー!』って逃げてな(笑)。あとは店長に全部まかせるんだよな(笑)」
バズーカ「押忍」
――選手として、今の自分に足りないものは?
バズーカ「足りないもの……」
菅原会長「試合のキャリアだな。もっともっと試合をやらないと」
バズーカ「押忍」
菅原会長「本当に真面目に練習するし、蹴りとかパンチもいろんなものを使えるんで。いろんな相手と試合をして、キャリアを積んでいけばもっと強くなりますよ」
■誰にも負けない選手になりたい
――さて「無法島GP」の話です。ワンデートーナメントの経験はありますか?
バズーカ「J-NETWORKで、1日2試合のトーナメントを2回やってて」
菅原会長「道場の近所の山とか階段ダッシュで鍛えているんで、スタミナはバッチリですよ。1日3試合だって、3試合目の3ラウンド目にラッシュを掛けて倒しにいけますよ」
バズーカ「押忍」
菅原会長「バズーカは痛みにも強いんですよ。途中で怪我したって根性で戦いますよ。ウチは鍛えてるから」
バズーカ「押忍」
バズーカ「全員ぶっ倒して、優勝します」
菅原会長「やるからには優勝を目指すし、プロだから、お客さんに見せる試合をしないとな」
バズーカ「押忍」
――BS日テレやTOKYO MXで放送されているレギュラー番組「キックボクシング KNOCK OUT」の無法島GP特集の反響はいかがですか?
バズーカ「ちょくちょく『出てたねー』と声を掛けて貰いました」
バズーカ「夢? …まあ、誰にも負けない選手になりたい、ですかね」
――目標にしてる選手は?
バズーカ「特にいないです。一番になりたいです。同じ階級なら誰が来ても負けない選手に」
――では、無法島GPに向けての意気込みを。
バズーカ「バズーカ砲を3発命中させて、優勝します」
ちなみに、バズーカ・プチ情報としては「両親、祖父母、姉夫婦の大所帯で実家暮らし」「彼女とは付き合い始めたばかり」「バズーカは全然喋らないけど結構モテる(菅原会長より)」とのことでした。
文/撮影(人物)=茂田浩司