2020年1月26日(日)東京・新宿FACEで開催される『ZST.67』の会見が5日、都内にて行われた。
新体制で初のナンバーシリーズとなる2020年ZST開幕戦に出場する6選手および勝村周一朗プロデューサーが会見に出席。「新しいZSTの方向性を示すカード」と勝村プロデューサーがいう通り、多様なカードに臨む個性的な選手たちが、それぞれの形で意気込みを語った。
最初に会見に登場したのは、『ZST.67』でヒジありの「ZST特別ルール」ライト級5分2Rで対戦する、前ライト級王者・平信一(綱島柔術)と佐野哲也(チームSOS)。
2018年10月のZSTライト級タイトルマッチで小金翔に判定負けで王座陥落した平は、2019年1月にベン・ブッカンに判定勝利後、PANCRASEに参戦。デカゴンで松岡嵩志に判定負け後、阿部右京に判定勝利と1勝1敗でZSTリングに戻ってきた。
佐野は、2019年1月の「SWAT! 168」でのグラップリングバウトで平山学にダースチョークで一本勝ち後、5月の「ZST 64」でマックス・ザ・ボディにスプリット判定勝ちしており、「THE OUTSIDER王者時代から対戦を熱望していた」という平との、「ZST対THE OUTSIDER対抗戦最終章」で連勝を狙う。
会見で、「前THE OUTSIDER 70-75kg王者の佐野哲也です」と自己紹介した佐野は、「今回“ついに”というか“ようやく”というか、ずっと対戦を希望していて、THE OUTSIDER当時にZST王者だった平選手との試合が決まりました」と、念願の試合が実現したことを語ると、続けて「ただ、平選手が希望しているヒジありルールというのは、最近、(平が)PANCRASEに出ていたからヒジありルールにしたいのかなと。ひょっとしてZST愛が薄れていませんか」と平に疑問を投げかけた。
その言葉を受けた平は、なぜか上半身裸で会見に臨み、「佐野の大胸筋にヒジ打ち」と一言。印象を問われても「特にないですね。大胸筋にヒジ打ち」と繰り返すばかり。
佐野は「思うんですけど、胸にヒジだったら現行のZSTルールでもできるんじゃないですか。あっ難しいこと聞かない方がいいですか」とアドリブのきかない平に対し、饒舌に語ると、平の印象について、「このキャラクターについてはこんなものだろうな、という感じです」とばっさり。しかし、ファイター平信一については「トリッキーで何言っているか分からないキャラクターに比べて、試合の方は愚直にやることやるタイプで、藤巻(優)戦でも最後はパウンドアウトしている。戦いがいがある魂があるファイター」と印象を語った。
さらに、「僕の腰にはいまはないけどハートにはTHE OUTSIDERのベルトがあるつもりで、みんなの気持ちの分も──伊澤(寿人※1R TKO)、堀 (鉄平※ドロー)選手がやられている、その平選手にどんな形であれ勝ちたいので、全力を尽くして勝ちます」と必勝を宣言した。
そんな佐野の評価に、重い口を開いたのが平。「佐野、俺は怒っているんだよ。なぜか分かるか」と問いかけ、佐野が「アドリブが苦手なのに記者さんたちを煽って困っている」とすぐさま答えると、「違う……2016年5月7日、結婚式に呼ばれてねえぞ! 呼ばれてもいかねえけど」と、佐野の結婚式に呼ばれなかったことを根に持っていることを吐露。佐野は「え? それだけ? もう4年にもなろうということを怒っている?」と困惑。
意外な因縁を告白し会場が戸惑うなか、勝村プロデューサーが「僕も呼ばれていないです(笑)。その気合を試合で見せてもらえればいいと思います。じゃあもう帰ってください……」と両者を退場させた。なお、今回の平vs佐野戦は、平の希望によりヒジ打ちありに。そして佐野の希望により、ユニファイドルールと同じ計量で1ポンドオーバーまで認められる形となった。
竿本樹生「10連勝に伸ばしてRIZIN出場へ」vs 清水俊裕「ライダーが階級下の相手に負けるわけにはいかない」
続けて、会見に第4代ZSTフライ級王者の竿本樹生(BRAVE GYM)と“ZSTの仮面ライダー”こと清水俊裕(総合格闘技宇留野道場)が登場。両者はバンタム級・5分2Rで対戦する。
2018年5月に加マーク納に判定勝ちし、ZSTフライ級王者に輝いた竿本は、同年10月に前王者の伊藤盛一郎を2R判定で撃破。2019年は5月に佐々木亮太に判定勝利後、RIZIN出場を目指し、12月5日には1階級上げてDEEPに初参戦。ケージの中でハシャーンフヒトに判定勝利し、9連勝を飾っている。
清水は2019年7月に青森で行われたGFG(Global Fightingsport Game)で梶川卓と対戦予定だった竹内直矢の欠場により、緊急参戦。実力者の梶川に1R、リアネイキドチョークで一本勝ちを収めると、8月の「ZST 66」では、諏訪部哲平に判定勝利。続く12月の「ZST in 師走」では所英男の愛弟子・萩原一貴に三角絞めで一本勝ちするなど、現在3連勝をマークしている。
勝村プロデューサーは、フライ級王者竿本のバンタム級挑戦について「RIZIN参戦を後押ししたいので、前回に続いてのバンタム級での戦いとなる。RIZINは軽い階級が組まれたり組まれなかったりなので、フライ級を待っていてもしょうがないと、前戦もDEEPでバンタム級で戦ったけど、試合が始まったらどっちが上の階級かわからないくらい竿本選手が圧倒していました。はっきりと上の階級でも通用することを証明して大きな舞台に繋げていただければ」と期待を寄せ、対戦相手の清水についても、「清水選手は改造人間ばりのパワーがある。3連勝しているライダーが意地を見せられるか。両選手の熱い思いが出ればいい」と両者を紹介した。
会見で、DEEPでのバンタム級での試合を「問題なくできたと思う」と振り返った竿本は、今回の試合を「DEEP後、すぐにオファーをもらって、最初は清水俊一選手だと思って『やります』と答えたのですが、しばらくして見返したら、あれ、そっちかと(笑)。勘違いしてオファーを受けました。でもまあ大丈夫かなと。次男でもOKです。勝ってお兄さんとやりたいというのはないです」とリラックスした表情。
2戦続けてのバンタム級の試合も「特に問題なく体重調整が楽という感じ。和歌山県に帰って太って65kgになりましたが、食生活を戻せば大丈夫」と、RIZIN出場のために継続してバンタム級で戦う意向を示した。
12月29日のBellator JAPANはさいたまスーパーアリーナで、31日のRIZIN.20は携帯で見たという竿本は「やはりスーパーアリーナで試合をしたい」とRIZIN出場を熱望。
今回の清水戦を「結構、面白い人だなと。ただ試合では可哀そうですけど、思いっきりブッ飛ばして連勝を10連勝に伸ばしたい」と語った。
また、Fighting NEXUSで橋本薫汰に一本勝ちしフライ級王者となった駒杵嵩大が竿本との対戦を訴えていることについては「他団体でチャンピオンにいきなり対戦表明されましたが、正直言って見てる景色や立っている位置が違う。ほかの団体の王者とやって勝ってもいまはメリットがない。ほかで頑張ってから僕のところへ来てほしい」とした。
竿本と対戦する清水は、一貫して“ライダー・ヒロ”で記者陣の質問に答えた。
「今回の対戦相手の怪人は、今までZSTで数々の選手を倒して王者となり、DEEPでも一階級上げたなかで勝利をして、竿本選手こと“ウェイクアップ”怪人……」と言ったところで、勝村プロデューサーから、「ウェイクアップ? 目覚ましということ?」と突っ込まれ、「“ウェイトアップ”怪人」と訂正。「ウェイトアップ怪人のフライ級王者に、バンタム級でライダーが戦う。その流れを止めてやる。よろしく頼むぞ」とお決まりの文句で意気込みを現した。
また、現在3連勝と好調の秘訣を問われると「特にないですけど……ひとつあるのが、自分の信じた実力でまっすぐに仕掛けていく、諦めずにいくしかない」と回答。
「勢いよく止まらずに行きたい。ライダーが階級下の相手に負けるわけにはいかない。とにかくZSTの王者になるのが目標です。まだ強い選手もいっぱいいるけど、勝たないと何もできない。ライダーとして勝つことが目標なので……以上です。よろしく頼むぞ」と最後も繰り返して、必勝を誓った。
伊藤盛一郎「一本勝ちで実力を見せつけたい」vs 長谷部悠「僕の名前を憶えてもらう」
会見の最後には、グラップリングマッチに出場する伊藤盛一郎(リバーサルジム横浜グランドスラム)と長谷部悠(リバーサルジム新宿Me,We)が登場。
勝村プロデューサーは「GTルール」での今回のグラップリングマッチを、「温故知新ということで、これまでもZSTで数々の名選手が好勝負を繰り広げてきたグラップリングマッチについて、いろんなところから声がかかってきました。本戦でもほかのMMAの試合に見劣りしない熱い試合になると思います」と紹介。
会見で伊藤は、「今回新体制で初のナンバーシリーズで、ほかからも出たいという声が上がるなか、自分が“ZSTグラップリングとはこうなんだ”という試合で証明したいと思います」と意気込みを語ると、対戦相手の長谷部について、「合同練習でのスパーを見ていて、みんなを極めまくっていたので、試合をしてみたら面白いと思っていて、今回のオファーにすぐにお願いしますと答えました。当日は柔術の選手が相手ですが、ZSTらしい動きのある試合ができる思う」と抱負を語った。
対する長谷部も、「いきなり本戦デビューを非常に嬉しく思います。グラップリングオンリーで今までやってきたことを出して、たぶんいまは“長谷部って誰だよ”という感じでしょうけど、僕の名前を憶えてもらうような試合をします」と意気込む。
新宿Me,We所属で、山崎剛代表から「絶対に使ってくれ」と勝村プロデューサーが推薦を受けた長谷部は、柔術歴12年の茶帯で、NO-GIアダルトエキスパートライトフェザー級で優勝など3連覇を達成しているグラップラーだ。
伊藤について長谷部は「非常に動きのある選手で噛み合う展開が多く生まれると思う。バンバン動いて獲りに行く、ZSTに相応しい試合できる」と期待。練習会で肌を合わせたときは、「非常にやり辛さもあって極めまで至らなかった」と難敵であることを語れば、伊藤も「練習会のときはお互いに探り探りだったので、当日100パーセント同士でやれるのが楽しみ。自分はグラップリング専門の選手ではないけど、ZST元王者なのでしっかり一本を取って実力を見せつけたいですね」と、ハイレベルな攻防の末に一本勝ちしたいと語った。
また、RIZINでは才賀紀左衛門に判定勝利、マネル・ケイプにTKOで敗れている伊藤は、「この間の大晦日もテレビで見ました。RIZINでしっかり一本・KOで勝つことが達成できていないので、2020年は狙っています。大晦日にも出たいです」と再出場をアピールした。
会見の最後に、勝村プロデューサーは、「グラップリングのハイレベルな試合をプロの舞台でやってみたいという選手はぜひ連絡を」と、呼びかけている。2020年はさらなる大物選手によるグラップリングマッチが実現するか。期待の新生ZSTだ。