2019年12月29日(日)、さいたまスーパーアリーナにて開催される「BELLATOR JAPAN」に、K-1甲子園2014王者・平本蓮(K-RIVER・AXジム)が参戦。元DEEPフェザー級王者・芦田崇宏(BRAVE)とRIZINキックボクシングルール・68.0kg契約で対戦する。
平本は小学生でキックボクシングを始め、ジュニアキックで活躍。ジュニア時代に那須川天心と対戦して勝利したこともある逸材で、2014年には高校1年生でK-1甲子園優勝、2015年1月にK-1でプロデビューを果たした。
2017年2月にはK-1 WORLD GP 初代ライト級王座決定トーナメントに出場し、決勝でウェイ・ルイに敗れるも準優勝。2018年3月にはゲーオ・ウィラサクレックと対戦し、日本人初のKO勝ちを成し遂げている。“新生K-1の申し子”と呼ばれるようになり、その将来が期待されていたが、同年8月のKrushでエキシビションマッチを行った後はリングから姿を消していた。
平本が復活の舞台に選んだのは、RIZIN。そして12月29日の「BELLATOR JAPAN」でRIZINキックボクシングルールで、金網のなかでMMAファイターの芦田と戦うことになる。
現在、長谷川賢や安西信昌らからMMAの手ほどきも受けているという平本は、1年9カ月の空白の期間から、何を求めRIZINマットに上るのか。芦田戦、Bellatorキックボクシング、海人戦、そしてMMA挑戦の意味を語った。
平本「ボクシングとムエタイを活かして、しっかりMMAの修行を積みたい」
――12月29日(日)の「Bellator JAPAN」で芦田崇宏(BRAVE)選手と、RIZINキックルール(68.0kg契約・3分3R)で対戦する平本蓮(K-RIVER・AXジム)選手です。いろいろお話をうかがう前に、頭が……先日の会見では赤く染めていたかと。
「ああ、これですか。普通に丸めようと思ってたんで。気合入れて坊主にしてきたって、って言うほどのものでもなく、鬱陶しいから切っちゃおうって(笑)」
――何か反省することでもあったかと(笑)。
「いやいや、全然(笑)」
――安心しました(笑)。2018年3月のK-1でゲーオにKO勝ちから1年9カ月。契約満了後、今回の参戦に至るまで、どのように過ごしてきたのでしょうか。
「前回の試合が終わって、まずしばらくゆっくりしたいなっていうのがあって、伸び伸びしながら過ごしていました。試合が無いからストレスも無く、練習も普段の自分のスタイルじゃない練習をすることが出来ました。例えば、やりたかった練習とか。試合を控えていると出来ないような、やりたい・覚えたい技術に取り組んで。前の自分のファイトスタイルを活かしつつ、新たなものを採り入れる練習を結構、自由に出来たなと思います」
――試合が続いていると取り組みにくい、積み重ねるような練習をしてきたと。一方で、試合が無いことが逆にストレスになったりはしませんでしたか。
「やっぱりフラストレーションはありましたね。試合を観に行くことが多かったので、仲間の応援だったり後輩の試合とかを観て、フラストレーションが溜まる部分もだいぶありました。早く試合をしたいなとか。疼くっていうか。ずっと自分が試合をしていないで、ほかの人の試合を観に行っていると、段々、自分が格闘家なのか分からなくなってくる。そういう部分は、ありましたね」
――自分がファイターだと認識することが難しくなることもあったと。でも試合が無い分、ダメージ的なものを抜いたり、怪我を治せたりもしたのではないですか。
「そうですね。スパーリングは一切、徹底して僕は昔からやらないので」
――ジュニア時代に那須川天心選手と練習していたときとは違うと。
「そうですね。あの昔の小学校の時にはバチバチとやっていましたが、今はその感覚はいらないかなって。“強マス”ぐらいはやりますけど、この間も脳にダメージ与えることはしなかったし、もともとダウンとかしない方なので、それよりも徹底してディフェンスを覚えようと思ってやってきました。それにパンチ一つひとつの技術、パワー、スピードとかいろいろ試し・試し、どれがいいんだろうって、いい試す期間になったかなと思います」
――そうすると実戦のなかで試したくなりませんか。
「それもそうなんですよ(苦笑)。だから出稽古とかに行って、今、波に乗ってる選手の出稽古に行くじゃないですか。スパーリングで結構……圧倒的にやれちゃうんですよ。その意味では自信がつきましたね。試合は出来ていないけど、こういう時間を過ごしたことで人間的にどんどん強くなってるなっていうことは感じました」
――今日はAXジムでの練習だったようですが、練習環境はどのように?
「もともとK-1でやってた時から、AX GYMさんとかにお世話になっていたので、練習環境がめちゃくちゃく変わったというわけではないんです。元々ずっと1人でやっていたこともあるし……総本部のメンバーとスパーリングしなくなったことぐらいですかね。それ以外は何も変わってないです」
(※27日の会見では「K-1で活躍している近藤魁成選手としょっちゅうスパーリングしています。僕が関西に行って練習したり、あいつが東京に来たり。RISEに出ている篠塚辰樹が色んな選手とコミュニケーションを取っているので、前よりも練習の場を広げてくれています」と発言)
――そういう時間を経て、1年9カ月の間にさまざまな団体の試合も視察して、いろんな選択肢があったと思います。今回、なぜRIZINに決めたのでしょうか。
「マネージャーのシュウ(ヒラタ)さんといろいろ話して、今、一番自分のタイミング的にRIZINがベストだなと感じて決めました。別にRIZINを通過点とも思ってないし、踏み台とも思ってないんです。普通にRIZINでも自然とやれば“核”になるかなって……。それに、一つずっと思ってたのが、MMAをいずれやりたいっていう意欲がありました。決して舐めているわけじゃないですよ。去年くらいからその思いが本格的になって、RIZINという選択が強くなりました」
――キックで将来を嘱望されている平本選手が、いずれMMAをというのはどのような気持ちからですか。
「キックボクシングが好きだからこそ、そう思ったんです。キックボクシングが一番、誰が見ても面白いって思えるのが、僕にとってのK-1でした。ルールもシンプルで時間も短い。誰が見ても分かりやすいスポーツじゃないですか。そのK-1が僕は一番好きだったので、格闘技としても一番だって言いたかった。でも、たとえばボクシングの関係者からしたら、キックは所詮キックと言われる。MMAの人からしたら立ち技だけじゃんって。そんな評価を払拭したいなって。MMAで本当にK-1の強さを、ストライカーとして打撃を駆使してナンバーワンを獲ったらカッコいいんじゃないかなって。それが僕ならやれるんじゃないかなって思ったんです」
――全く別の競技ではありますが、ほかの格闘技のなかでもK-1ファイターの強さを証明したいと。でもその二刀流はなかなか両立できる人はいません。
「両立というよりも、キックでしっかりMMAの準備をしつつ、キックでちゃんとやるべきことをやれたら、いずれMMAに行きたいと思っています。しっかり計画を立てて練習を積んで、勝てると思った時にMMAデビューしたいです」
――本格的にMMAをやってみたいと。
「そうですね。自分のベースはやっぱりボクシングとムエタイなので、今すぐ挑戦はできなくても、そういう部分を活かして、しっかりMMAの修行を積めば、まだ21歳なので、普通にこのぐらいの歳から格闘技を始める人っていっぱいいると思うし、僕はそういう人よりもだいぶ強くなる可能性は高いと思うので、楽しみなんです」
――立ち技を後から習得する難しさと、組み技を習得する難しさがそれぞれあると思います。いまその向き不向きという点では、MMAの練習をしてみるなかでどう感じていますか。
「少しMMAの練習をやってみて、すごく面白いんです。とても奥が深いなあと。それに、立ち技だったら頭部へのダメージが集中しがちなので競技寿命が短いと思うんですけど、“何でもあり”のMMAだったら若干そこが伸びる部分もあるのかなって感じはしましたね。それにこの“何でもあり”って本当面白えな、カッコいいなっていうシンプルな感情もあるんです」
――Bellatorにもアマボクシング、アマムエタイ、アマMMA、そしてプロのMMAの全てで負け知らずのアダム・ボリッチというハンガリーの選手がいますよ。MMAではすでに14勝無敗です(※2020年1月25日の「Bellator 238」でダリオン・コールドウェルとフェザー級ワールドGP2回戦で対戦)。
「立ち技ベースの選手なんですね。僕、ボクサーだったらゴロフキン、UFCだったらファイトスタイル的には(コーディ)ガーブランドがむちゃくちゃ好きなんです」
――“ノー・ラブ”ですね。なぜガーブランドが好きなんですか。
「MMAでひたすらブン殴るみたいなのカッコいいですよね。全然蹴らないじゃないですか(笑)。あれがカッコいいですね。あのスタイル、めっちゃ好きです。それに、もともとUFCに興味をもったファイターは、ジョゼ・アルドなんです。ローキックがすげえ上手い。どうやって蹴ってんだ? って気になって」
――蹴るアルドと蹴らないガーブランド、どちらも好きだと(笑)。
「イスラエル・アデサニヤもカッコいいですね。キックボクサー、ボクサーから転向ですよね。やっぱりみんなストライカーっていうか。ジョン・ジョーンズやマクレガーは……ちょっと独特過ぎてわからない次元ですけど(笑)」
――MMAはヒジありです。
「ヒジはプロルールでやってた時はないですけど、小学校の時からヒジの練習はずっとやっていたので、ちょっとずつ再開している感じなんです。わりと自信があります。ただ、ムエタイではやりたくないんですよ。ヒジをやるならMMAのなかで出したい」