サバットが靴を履いて戦う理由は?──ワールドカップ日本代表・舟山健太に聞く
中谷潤人とコンディショニングサポート契約を結んだ「TENTIAL」で、今回のプロジェクトを推し進めた舟山健太CROは、サバットの男子56kg級や60kg級で日本代表として活躍しているアスリートだ。
世界選手権で2019年に銀メダル、14、17、23年に銅メダルに輝き、3年ごとに開催されるワールドコンバットゲームズの23年リヤド大会で銅メダル。24年6月のアジア選手権では4連勝で優勝した。25年10月4日(日本時間5日)にオーストリアで開催のワールドカップでは、優勝を目指している。
サバットといえば、古くはアーネスト・ホーストやジェラルド・ゴルドー、元UFC&Bellatorのシーク・コンゴやクリスチャン・ムプンボらが戦い、現UFC世界女子フライ級王者のヴァレンティーナ・シェフチェンコも試合を行っているフランス式キックボクシング。
9月7日の『K-1 WORLD MAX 2025 -70㎏世界最強決定トーナメント開幕戦』では、アルビオン・モリーナを1R TKOに下し、準々決勝に進出した、サバット世界選手権-75kg王者のアルフォセヌー・カマラ(セネガル/Emergence Le Havre)の活躍が記憶に新しい。
そのサバットで日本代表として戦う舟山は、幼少期から大学までサッカーを続け、東京大大学院薬学系研究科の修士課程で脳科学の研究に没頭するなか、研究室の先輩に誘われてフィットネスクラスに通い始めたという。
そこに、Japan Savate Clubの代表かつ日本代表チームの選手兼コーチ兼監督でもある窪田隆一氏がいた。そこでサバットに触れ、練習や試合を重ねるなかで、2014年のローマでの世界選手権に日本代表として出場。初出場で銅メダルを獲得した。
サバットは、「グローブ」と足に履いている「シューズ」のみを使って攻撃や防御をすることが有効となる。この二つの部位以外を使った防御や攻撃は有効とカウントされず、ヒザ蹴り、スネを当てるようなキックや、スネを使った防御(カット)は禁止となる。
そんなサバットを舟山は、「K1ルールに近い」という。クリンチや首相撲が禁じられたサバットでは、いかにグローブとシューズを相手に当てるかを競い合う。しかし、地面に対して垂直な軌道をとるような蹴り(サッカーボールを蹴るような蹴り上げや踵落とし)は禁止となり、フェッテと呼ばれる回し蹴り、「軸足をしっかり回転させ、その力が運動連鎖によって伝わり腰が回転し、回転の遠心力がパワーとなって蹴りだすキック」が有効とされる。
その難しさや魅力を舟山は、「格闘技において重要な距離感や、多彩なフットワークを駆使した攻防」にあるという。
「前述のルールの通り、スネを当てることが禁止でシューズで蹴らなければいけない分、キックの飛距離が長くなり、立ち位置が遠くなります。また、相手のローキックやミドルキックをスネでカットすることも禁止されているため、ディフェンスとしては足でカットしたりブロッキングするのではなく、『避ける』ことがベースとなるため、少し間合いを遠めに設定する必要があります。そこでいかに蹴りやパンチを当てるのか、その技術の多彩なところや的確性、攻防がより必要とされることがすごく面白いところなんです」
キックボクシングやMMAでいえば、カーフキックなどももらわずに自身は長い距離から当てる。そのために、絶えずステップを踏んで角度をつけて、距離をコントロールする。その動きは激しく、1R2分の間、フットワークを使って常に動き回るため、スタミナの差が顕著にでやすいという。
しかし、なぜ靴を履き、スネでカットをしないルールになったのか。それは、サバットが、「男性が外出する際の装いを想定した護身術」として生まれたことに起因するという。
「柔道が着衣を想定しているように、路上で靴を履いていない人はいない。靴先に刃物を仕込んで攻撃するストリートファイターもいるなかで、基本、蹴りをもらってはダメ。スネでブロックしても刃物で切られてしまう。だから当てられないように避けるのだ、と聞いています」と舟山は説明する。
そのサバットのワールドカップで優勝を目指すために減量中の舟山は、コンディショニングを自社製品を使って整えているという。
「もともと自分は製薬会社出身なんですが、人の健康に関わる仕事をやっていく中で、病気になってから治して健康に戻すよりも、病気になる前に予防することが、とても重要じゃないかと思い、この会社に入りました。普段、自分がアスリートで、試合に向かうコンディショニングされた時の自分のポテンシャルが、それができていないときと、同じ人間でも全然違うことを実感しています。それをより多くの人に感じてもらいたいなと思っています」
中谷の新たな挑戦のサポートとともに、自身も世界の舞台でいかにポテンシャルを発揮するか。オーストリアでのワールドカップは来週、開幕する。
◆舟山健太
2024年: サバット世界選手権 アソー(ライトコンタクト部門)男子-60キロ級 銅メダル
2024年: サバットアジア選手権 アソー(ライトコンタクト部門)男子-60キロ級 優勝
2023年:World Combat Games サバット アソー(ライトコンタクト部門)男子-60キロ級 銅メダル
2023年:サバット世界選手権 コンバ(フルコンタクト部門)男子-56キロ級 銅メダル
2019年:サバット世界選手権 コンバ(フルコンタクト部門)男子-56キロ級 準優勝
2017年:サバット世界選手権 コンバ(フルコンタクト部門)男子-56キロ級 銅メダル
2014年:サバット世界選手権 アソー(ライトコンタクト部門)男子-60キロ級 銅メダル








