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ONE Championshipは10月25日(金)、インドネシア・ジャカルタのイストラ・セナヤンにて「ONE:DAWN OF VALOR」を開催した。
メインイベントのウェルター級世界タイトルマッチでは、挑戦者のキャムラン・アバソフが、2度目の防衛に挑んだ王者のゼバスチャン・カデスタムを判定3-0で下し、新王者に輝いた。また、コー・メインイベントのライト級キックボクシング世界タイトルマッチでは、王者レギン・アーセルが挑戦者ニキー・ホルツケンを判定で下し、初防衛に成功した。
日本勢は2戦全勝。第2試合のフライ級ムエタイで、内藤大樹がアレクシ・セレピソスをTKOで下し、ONE白星デビュー。第4試合のMMAライト級では、徳留一樹がジョニー・ヌネスを判定で退け、ONE2連勝を飾った。
その他では、第10試合のバンタム級で元UFCのジョン・リネカーが、ONEデビュー戦でムイン・ガフロフに判定勝利。また格闘技新興国インドネシアの地元選手が大いに会場を沸かせた。第7試合では、新旧エース対決が行われ、ベテランのステファー・ラハルディアンが、連勝中の新エース、エイドリアン・マティスとの接戦を判定勝利。第12試合では、インドネシア格闘クィーンのプリシラ・ヘルタティ・ルンバン・ガオールがスタンド状態での蹴りでイエローカードを受けながら、ボツヘナ・アントニアとの打撃戦を判定で制している。
ONE Championship「ONE:DAWN OF VALOR」
2019年10月25日(金・現地時間)インドネシア・ジャカルタ イストラ・セナヤン
▼ONE世界ウェルター級(※83.9kg)選手権試合 5分5R
×ゼバスチャン・カデスタム(王者/スウェーデン)
[判定0-3]
〇キャムラン・アバソフ(挑戦者/キルギスタン)
※アバソフが新王者に
かつてPANCRASEにも参戦したオマー・ブイシェ、さらにK-1&HERO'Sで活躍したオーレ・ローセンを師と仰ぐカデスタムはPXCウェルター級王者から、2018年11月にタイラー・マグワイアをKOに降し、ONE世界ウェルター級王者となった。2019年3月にはカザフスタンのゲオルギー・キシギンを退け王座防衛に成功している。
対する26歳のアバソフは2018年12月のマレーシア大会で地元の英雄アギラン・タニをクリンチボクシングで殴り、豪快に投げてパウンド、最後はリアネイキドチョークで絞め上げタップを奪う無慈悲な勝利を挙げている強豪だ。2018年8月に、ボンサイ柔術のマスコス・ソウザをノーコンテストながら一度はTKO状態にまで追い込んだヌルスルタン・ルジボエフに判定勝ち。2019年5月には岡見勇信を2R パウンドでTKOに下している。
1R、ともにオーソドックス構え。PANCRASEのバッテンマークをパンツの前後につけたカデスタムはいきなり滑るように右ローをヒット! バランスを崩すアバソフ。カデスタムの右ミドルをつかむアバソフはパンチから前へ。金網に詰め右で差すアバソフが崩そうとするが、崩れないカデスタム。両脇を差すアバソフだがヒザ蹴りが金的に。
再開。右ハイでバランスを崩したカデスタム。詰めるアバソフだが戻すカデスタム。ステップし足に的を絞らせない。詰めてボディロックしたアバソフはテイクダウン! ガードを取るカデスタムはオーバーフックで凌ぐと、金網背に上半身を立てるとアバソフはノーアームギロチンへ。しかし残り10秒をカデスタムは落ち着いて凌ぐ。
2R、後ろ蹴り、さらに右ローを当てるカデスタムは右ヒジの打ち下ろしも! アバソフも右ローを返す。カデスタムの左ハイをブロックするアバソフはワンツーで前へ。そこに首相撲で応戦するカデスタムはアバソフを突き離す。しかしアバソフはダブルレッグテイクダウン! 出血するアバソフに下のカデスタムは背中を見せつつも正対して立つ。シングルレッグで力を使うアバソフだが片足立ちでヒジを入れるカデスタム! ついに離れるカデスタムはロー。左フックで飛び込むアバソフだがカデスタムはブロックしてローを返す。
3R、左から右アッパーで入り、右からも入るアバソフだが、かわすカデスタム。しかし、アソフフも前足を相手の外足にかけて足払いテイクダウン! 中央で背中をつけるカデスタムは鉄砲で上に! しかしすぐに上体を立てるアバソフはスタンドでボディロックでサイドスープレックス! サイド奪い右で脇差しヒザを頭部突くが単発。しかし2発目の左ヒザでカデスタムが側頭部から出血! カデスタムは腰を切り片足ずつ足を戻し、フルガードに。残り30秒。カデスタムも下からヒジを突く。
4R、早々に右を当てて連打するアバソフ! 詰めてダブルレッグテイクダウン! パウンド。しかし汗で滑る後半で抑え込めずカデスタムが立つ。勝負所で再度クラッチを組みテイクダウンするアバソフ! サイドからカデスタムの足首を持つがケージウォークするカデスタム。サイドから脇腹にヒザを突くアバソフ。防御するカデスタム。
最終5R、互いにハグしてスタート。先に右ローはアバソフ。右フックを当てるカデスタムからテイクダウン狙いへ。切るアバソフはバックフィスト狙いへ。かわすカデスタムだが、4Rまでに削られたか手数が出ない。ワンツーはカデスタム。ブロックするアバソフは逃げ切り体勢。バックヒジを狙うカデスタム。さらに打ち下ろしの縦ヒジを打つがヒットせず。残り10秒、詰めるカデスタムだが、アバソフはかわす。
判定は3-0でテイクダウン&コントロールのアバソフが勝利。新王者に輝いた。日本勢ではアバソフに敗れている岡見勇信、タニに敗れた秋山成勲、エルナニ・ペルペトゥオに勝利した手塚基伸らがウェルター級戦線でいかに上位にからむか。アバソフ同様に岡見に勝利しMMA12勝無敗のジェームス・ナカシマが次期挑戦者候補となりそうだ。
▼ONE Super Seriesキックボクシング世界ライト級選手権試合 3分5R
〇レギン・アーセル(王者/オランダ)
[判定3-0]
×ニキー・ホルツケン(挑戦者/オランダ)
※アーセルが初防衛に成功
2019年5月大会の再戦。前回はアーセルが判定3-0でホルツケンに勝利し、ONEライト級キックボクシング初代世界王者に輝いている。
ダイレクトリマッチに臨む王者アーセルは名門ジム「シットヨートン・アムステルダム」所属。ONEでタイトルを獲得する前は、ラスベガスを本拠地とするLion Fightでスーパーミドル級世界王者に、ドイツのMFC(Mix Fight Championship)でもキックボクシング世界王者となった。
南アメリカのスリナム共和国生まれで、4歳の時、新天地を求めた家族とともにアムステルダムに移住。護身術を身に付け、8歳でテコンドーを始めた。キックボクシングでも成果を残し、プロ転向。長い手足をフル活用して繰り出すキックや、強烈な跳びヒザ蹴りを得意としている。
対するホルツケンは元GLORY世界ウェルター級王者。10歳の時にボクシングを始め、のちにキックボクシング、ムエタイも学び、競技の幅を広げた。
16歳でラモン・デッカーに師事し、重ねた白星は100以上に上る。うちKOがキックボクシングで約50回、ボクシングで11回という驚異的な記録を持つ。
2007年にはK-1 WORLD MAX 2007世界一決定トーナメント開幕戦に出場。1回戦でブアカーオに敗北。2009年の同トーナメントでは準決勝進出もまたもブアカーオに敗れ、その後はGloryを主戦場に。
GLORYではマーセル・グローエンハートに連勝するなどウェルター王座を防衛もセドリック・ドゥンベに敗れ王座陥落。アリム・ナビエフにも判定で敗れ、2013年からはボクシングにも出場して連勝。WBSS参戦を果たしている。
ONEでは2018年11月にコスモ・アレキサンドラを2R KO。2019年2月にムスタファ・ファイダに判定勝ちと2連勝も、2019年5月にレギン・アーセルに判定負けでライト級王座獲得ならず。今回が再戦となる。
1R、アーセルvsホルツケン、5カ月ぶりの再戦。ともにオーソドックス構え。上下打ち金網に詰めるアーセルは右跳びヒザ! ダウンするアーセルだが大成レフェリーはフラッシュダウンと判断しノーダウンに。
アーセルは左ロー、顔面、ボディと上下に散らして金網に詰めて右のヒザは顔面まで届く。さらに右ハイを当てて、右ストレート! ダウン! しかし、立つホルツケンはアーセンに右の跳びヒザ! 下がるアーセル。起死回生のホルツケンの跳びヒザ、続く右フックにアーセルは金網詰まるもゴングに救われる。
2R、右ローを突くアーセル。ホルツケンも左ローを返す。しかしアーセルの右ミドルにホルツケンの動きが止まる。ワンツーから前蹴りと多彩な技を繰り出すアーセルに後ろ廻し蹴りを見せるホルツケン。しかし、アーセルも後ろ廻し蹴り、さらに左テンカオ。ガード固めるホルツケンにその上からアーセルは左右ハイ。そして右ローを突く。
3R、右ローから入るホルツケンにワンツーローのアーセル。それをこかすホルツケン。手数多いアーセルはハイから跳びヒザへとつなぐ。さらに歩いて前蹴り、サウスポー構えから左のテンカオ。オーソドックス構えに戻すアーセルは左ボディストレート、左インロー、さらにスーパーマンパンチで飛び込む。ホルツケンは手が出ない。
4R、左のダブルの蹴りを上下に打ち分けるアーセル。さらに左ローから右ハイの対角線攻撃。ワンツー右アッパー、左ミドルと的を絞らせないアーセル。ホルツケンは左ジャブ、打ち返しを狙うが、アーセルのコンビネーションに阻まれる。
5R、左ミドルのダブルはアーセル。さらに高い右の後ろ蹴り! ガードするホルツケンは圧力をかけていくが、前蹴り・ジャブで阻むアーセル。さらに左ローの連打にホルツケンの身体がくの字になる。
ゴング後の音楽に早くも勝利の行進を見せるアーセル。判定はユナニマスでアーセルが完勝。初防衛に成功した。試合後アーセルは「アメージングだ。ニキーと戦えてモチベーションが高まった。セコンドのみんな、インドネシア・ジャカルタのファンのみんな、最高だ」と挨拶した。
▼女子アトム級(※52.2kg)5分3R
〇プリシラ・ガオール(インドネシア)
[判定3-0]
×ボツヘナ・アントニア(ミャンマー)
地元ガオールはウーシュー出身でONE6勝4敗。前戦は5月、カンボジアのノウ・スレイ・ポブに判定勝ち。対するアントニヤはONE3勝1敗。唯一の黒星は2018年10月のリカ・イシゲ戦。
1R、サウスポー構えのガオールにオーソドックス構えのアントニア。遠い間合いのガオールにアントニアは右で飛び込み左ミドルまで打ち込む。
金網に詰まりカウンターの前蹴りでこかすガオールだが、倒れたアントニアの立ち際に反則のサツカーキック。顔面に受けたアントニアだが鼻血を出しながらも試合続行。ガオールにはイエローカード(20パーセントの減点)が出される。
右のサイドキックで距離を取るガオールだが、アントニアは右のスーパーマンパンチへ。かわすガオールはカウンターのダブルレッグテイクダウン。しかしすぐに立つアントニアは金網まで押し込み両脇を差すと右の小外掛けでテイクダウン! 背中を見せて立つガオールの背中に飛びつきリアネイキドチョーク狙い引き込む。
2R、蹴りの間合いはガオールだが、詰めるアントニア。ガオールは右ハイをブロックの上から当てる。ワンツーの左フックはアントニア。サイドキックはガオールも単発。しかし、アントニアの入り際に左ミドルを当てる。
3R、スイッチしての右ローはガオール。さらに左ミドルもアントニアはブロック。圧力をかけてきたアントニアにカウンターのダブルレッグテイクダウンはガオール! 下からギロチン狙いのアントニアだが、ガオールが頭を抜くと地元のガオールに大歓声。クローズドガードのアントニアにインサイドからガオールはパウンド! しかしアントニアは抱き着いて凌ぐ。
判定を待つアントニアの額の中央にはガオールの反則のサッカーキックで腫れ上がった跡がくっきりと残る。20パーセントの減点もあったガオールだが、ホームでの後半の攻勢は観客の後押しも受け、好印象を残した。3Rトータルジャッジの判定は3-0でガオールが勝利。アントニアにとっては厳しい裁定となった。