まずは変えてみるということ
「僕の時代は格闘技ブームだったので、結果を出せばテレビに映ることができたし、有名になる手段も明確にありました。そして、この10何年かは一時期に暗黒時代があったものの、盛り返すことができた。ボトムアップ型として正しいビジネスモデルだったと思います。でも今は逆にボトムアップ型に限界がきて、外にあまり広がらないという弊害が出ている印象があります」
──反面、選手層は厚くなりました。
「でも見方を変えれば、一般層、いわゆる格闘技に興味がない層に届いていない現状があるように思います。一般層に届かないと有名になれないし、それこそ試合数を増やしてチケットを手売りする選手を確保する傾向がより顕著になるのだと思います」
──おっしゃる通りです。
「ちょうど昨日、会議があったのでそのことを話したところです」
──変革するための計画ですか?
「まずは変えてみるということです。11月のK-1から、試合数を減らします」
──すでに70㎏世界決勝トーナメントに加え、ターザンvsリュウ・ツァー、ロエル・マナートvsアリエル・マチャドのダブルタイトル戦、レオナ・ぺタスvs横山朋哉の試合が決まっています。
「まだ決定ではありませんが、試合を何部制かに分けようと考えています」
「戦略的なポジションを取るためには、別のポジションをトレードオフしなければいけませんから、そのための改革です。僕も選手だったので、いい試合順で試合を組んでほしいという気持ちは分かります。ですが、やらなければいけないことなんです」
──具体的には。
「例えばプレリミナリーファイトが1部だとしたら、2部はワンマッチとタイトル戦でまとめ、3部に70㎏世界トーナメントを行うとか。それぞれの開始時間を明記することで、その時間に来れば見れるように工夫するだけで、長く滞在することは回避できるかなと思います」
──これまでも3部制とか同じイベント内で分けていましたが、より明確にすると。
「その方が、目的をもって会場へ来ることができると思います。すべて見たい方は、プレリミナリーファイトから見ることができるし、入れ替え制ではなく通しでも観戦を可能したら、好きな方はずっと席に座っていられるようにするとか。それぞれのニーズに合った観戦のやり方を提案するのが、必要かなと思っています。我慢して何時間も待つことなく、自分で選んで2部から見るとか、そうした多様性を提案していけば長いとか試合数が多いといった不満は少しずつ解消していけるのかなと思います」
──チケット料金の設定をどうするのかという問題はありますが、観客に選択肢を与えるのは新しいやり方ですね。
「頭からダメとか、無理とか、そうした考えを持つ前にまずはやってみること。一番大切なのは、ここだと僕は思っています。そうすることで見えてくることはたくさんありますし、失敗してもいいんですよ。また改善してトライすればいい。人間ですからつい変化を恐れてしまう気持ちも分かりますが、それだと何も変わりません」
──変化を恐れて何も変わらない、変えられない、ホメオスタシス(恒常性)と言われるものですね。でも、意外とやってみたら成功なんてことも実際にありますよね。
「そうなんです。失敗のリスクを恐れてやらないだけで、僕はやればいいのにと思ってしまいます。そうやって現役時代からトライアンドエラーでやってきました」
(次回に続く)






