ゲームプランは重要だが、試合は常に変わる。ビデオテープでは見えないものがケージの中に入って初めて見える。だから適応し続ける
──今回、あなたはアンダードッグという見立てもあります。気になりますか?
「全然気にならない。タイトル絡みの試合は、俺はだいたいアンダードッグだった気がするし、自分の試合に賭けることもない。オッズがどうだろうと、俺のやることは変わらない。強いて言えば、家族や友人は“アンダードッグの方が配当がいい”って喜ぶかもな」
──あなたがタイトルマッチを戦ってからの成長は目を見張るものがあります。もしデビュー戦の自分に声をかけられるとしたら、どんな励ましの言葉を送りますか?
「全部、今と同じようにやれ。何も変えるな」
──シカゴの街も満喫しているようですね。ここまでの感想は?
「もう3週間いるよ。南アフリカとの時差が7時間あって、睡眠のリズムを完璧に戻すのに1週間は欲しい。試合が近づくと、睡眠、食事、サプリ、部屋、スケジュール、練習場所――すべてを完璧に揃えたいタイプなんだ。だから開催地にはできるだけ早く入る。シカゴは最高だ。文化もいいし、減量でまだ我慢しているけど飯も美味そうだ。みんな温かく迎えてくれる。カブス、ベアーズ、ブラックホークスの試合も見に行ったし、ブルズの本拠地ユナイテッド・センターも歩いた。建築も美しくて、今まで行った街の中でも屈指に好きだね。試合後は少し残って、しっかり堪能するつもりだ」
──シカゴの名物はまだ試せていないと言っていましたが、試合後に一番楽しみにしている食べ物は?
「まずはマヨネーズを一本くれりゃそれでいい(笑)。なんでも食うよ。ディープディッシュ(=シカゴ発祥の分厚いピザ)は賛否両論だな。ある人は“クソみたいなラザニア”って言ってたし、別の人は“絶対食べろ、最高だ”って。自分で確かめるさ。見た目は最高だし、腹いっぱい食うつもりだ。シカゴのビール? まだ分からないけど、試合後に確かめる。手羽先は限界まで食う。あとアメリカに言いたい。お前らが作った最高のスナックは『チーズイット』だ。箱でいくぞ(笑)」
──ファンはあなたのスタイルを“型破り”だと言います。直感とゲームプラン、どっちの比重が大きいでしょうか?
「いい質問だ。トップレベルではゲームプランが超重要だ。みんな強くて、打たれ強くて、打撃が上手い。テイクダウンもサブミッションも、攻撃も防御もどっちもできるやつがゴロゴロいる。だから競技は“エデュケーテッド・ブロウラー(教養ある殴り合い)”に回帰してる感じがある。テクニカルなテイクダウンをさばけて、極めも狙えて、打撃もやれる──その上で“どれだけ受けて、どれだけ返せるか”。俺のスタイルはそこで進化した。相手に圧をかけて、その瞬間に必要な技を出す。もちろんゲームプランは持って出るけど、試合中は常に変わる。相手の動きは読み切れないし、ビデオテープでは見えないものがケージの中に入って初めて見える。だから適応し続ける。……“型破り”でも、有効なんだ」
──次の言葉を完成させてください。“Don’t blink because…”(瞬きするな、なぜなら…)
「PPV代を無駄にするからだ(笑)。どんなフィニッシュになるかの予想は出せないけど、みんなが想像してる通り、ヒリヒリした試合になると思う。グラウンドに持ち込んで極める? それが決まったら最高だし、誰かさんは大金を手にするだろうな。もっと言えば、グラップラー同士の試合って、逆にスタンドでやり合うことも多い。どこで勝負が決まるか、そこが面白い。寝技オンリーでもいい、組みの攻防だけでもいい、オクタゴンど真ん中で殴り合いでもいい。どんな形でも、なんの準備でもできてる」
──あなたのファイトスタイルについて、いろんな表現がありますが、これまで聞いた中で一番好きなのは?
「“ワールド・チャンピオン”さ」



