2025年8月2日(日本時間3日朝7時~)、米国ネバダ州ラスベガスのUFC APEXで開催される『UFC Fight Night: Taira vs. Park』(U-NEXT配信)に、日本から平良達郎(THE BLACK BELT JAPAN)と中村倫也(American Top Team)が出場する。試合を前にU-NEXTが中村にインタビューを行った。
中村はプレリミナリーのメインで、英国のMMA9勝2敗・ネイサン・フレッチャーと対戦する。
フリースタイルレスリング61kg級で2017年U-23世界選手権優勝などの実績を残し、2021年にプロMMAデビューを果たした中村。2022年の『ROAD TO UFC』優勝を経てUFCと契約し、RTU決勝での風間敏臣戦を含め、ファーニー・ガルシア、カルロス・ヴェラを相手に3連勝。MMA9連勝をマークしたが、2025年1月の前戦『UFC 311』でムイン・ガフロフに判定負け。キャリア初黒星を喫した。
恭司さんから『セコンドどうするの?』と声をかけていただいて──
再起戦に向け、今春に渡米し、初めて試合まで日本に戻らず名門アメリカントップチーム(ATT)で調整し、そのままラスベガス入りした。当日のセコンドには同門の堀口恭司と実弟の剛士、そしてマイク・ブラウンがセコンドにつくという。
「4月からATTでトレーニングをさせてもらっていて、その中で試合が決まりました。ATTには色々なコーチがいるのですが、自分の強みを生かせる一番のコーチはマイク・ブラウンだと感じたので、マイクにお願いしました。ATTにたくさんいるコーチの中で、自分からリクエストして、コーチのスケジュールが合えばついてもらえる状況です」と中村は語る。
ATTの2階の寮には、1番から13番までの部屋があり、中村は「5番部屋」に入って、“ホリグチホール”の住人となっている。
ATTのメインコーチのマイク・ブラウンがセコンドにつく、それは普段の練習から、ブラウンが中村を見ていることにほかならない。そして、UFC復帰戦を控える堀口恭司も同じ時間を過ごすことが多く、中村からセコンドを打診した。
「お願いしました。快く引き受けていただいて。ただ、恭司さんも現役の選手なので、少し気を遣ってしまった部分があって、逆に恭司さんの方から『セコンドどうするの?』と声をかけていただいて、『いいっスか!?』みたいな感じでした(笑)」
本格的にATTの一員となったことで、試合への取り組みにも変化があったという。
「“ああ、北米というか世界最先端のジムは、こういう風に準備してるんだ”と感じました。日本ではある程度、自分で考えて組み立てる部分が多かったのですが、ATTでは“このシチュエーションではこれをやっちゃダメ”といった具体的なアドバイスがありましたし、それさえ守れば、あとは自由にやっていいというやりやすさもあって。相手が得意なシチュエーションやミスしやすい状況を分析してファイトキャンプを組み立ててくれるので、すごく楽しかったですし、心強く前向きに取り組めました」と、コーチとファイターの役割分担のなかで、練習に集中できたという。
自身の変化を聞くと、「本格的に練習を積んだのは3カ月くらいなので、そこまで大きく変わったという部分は正直まだありません。まだまだ改善したいことがたくさん見つかってきている段階です。ただ、特に恭司さんとは毎日練習後にご飯に行ったり、一緒に過ごさせてもらう中で、戦いに向けての準備や、どうやって最高のパフォーマンスを出すかというコンディションの持っていき方など、気持ちの部分も含めて色々と吸収させていただいているなと思います。
練習中に自分のミスや甘い部分が出た時にはその都度、毎日注意やアドバイスをもらっていました。試合に向けては、とにかく『自分を信じること、楽しむこと』だと。ここまでやってきたんだから、もうどうなってもいいでしょ、みたいな(笑)。そういうところを学びました」と、すべきことが明確になったことで、ポジティブなメンタルで取り組んで来たことを明かした。
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自分を信じきれなかった部分を、アメリカのポジティブなエネルギーを浴びながら作って来た
前戦ムイン・ガフロフ戦では、直前で構えが定まらないなど、迷いを抱えながら戦った。
「あの負けから学んだことはすごく多いです。技術的な部分で言えば、自分のMMAの土台として育ててきたレスリングを、まさか信じないで試合に上がってしまった。そこがまず大きな、根本的なミスでした。なので、まずはそこをしっかり作り直すというか、世界のトップジムでたくさん練習して、また自信を取り戻してきたので、もう大丈夫です。メンタル的な部分でも、本当にそこに繋がってくるんですけど、自分を信じきれなかった部分を、アメリカのポジティブなエネルギーを浴びながら学んできたかなと思います」と、今回はたしかな手ごたえを得ているようだ。
対戦相手のネイサン・フレッチャーはパディ・ピンブレット率いるNext Generation MMA Liverpool所属で、キャリア初期は桜庭スパッツを愛用していた極め技師だ。身長は170cmで中村と同じながら、リーチが178cmと4cm中村を上回る。9勝中、1KOと7つの一本勝ちをマークするグラップラーで、4つのリアネイキドチョーク、2つの肩固め、1つの三角絞めが決まり手でトップ、バック、ボトムからも極めを持つ。
Cage Warriorsで活躍後、24年3月のTUFに階級上のフェザー級で出場したが初戦でカーン・ オフリに判定負け。24年9月のUFC APEX大会でリトアニアのジギマンタス・ラマスカとフェザー級で対戦し、2Rにボディロックテイクダウンからサイド、マウント、肩固めで一本勝ち。25年3月のUFCロンドン大会で本来のバンタム級に落として9勝2敗のケイラン・ロクランと対戦し、スプリット判定で惜敗している。
中村が練習するATTの強みのひとつは、世界各国のトップ選手が集まっていること。仮想フレッチャーとして、「寝技でのフィニッシュが多いので、そこに長けている選手を想定していました。そういう展開が得意な選手としっかり対策をして、危ないシチュエーションになった時の最悪のケースも想定して準備してきました。
相手がやりたいことは、おそらくバックを取って首を絞めてくることだと思うので、特にそのポジションに入られた時の準備をしてきました。ただ、ATTの寝技が強い選手といっても、みんな打撃もレスリングもできた上で寝技が強いので、当然ストライキングも磨いてきましたし、そこもバッチリ出せるかなと思っています」と、準備万端であることをうかがわせる。
「ハリー・ポッターみたい」と評した英国のフレッチャーを「もちろんUFCで戦っている選手なので全体的にバランスが良くて、諦めが悪いというか、やり抜く力を持っている選手だなと思っています。でも、自分としても、彼が感じたことのないようなスピード感やレスリング力を体感させる準備はしてきました。そして、それを見ている皆さんにもお伝えできればなと思っています」という。
今回試合が行われるUFC APEXのオクタゴンはフルサイズのケージより少し小さいが、「サイズのことを考えると、彼は相手を捕まえたいタイプの選手なので、どちらかと言えば狭い方が好きなのかなとは思います。でも、自分も同じで、どんどんコンタクトして制していくスタイルが大好きなので。お互い好きなんじゃないですかね。だから結局、広くても狭くてもあまり変わらないのかなと思っています。彼も攻撃的な選手なので、結構噛み合って面白い試合になるんじゃないかなと期待しています」と、コントクトが多い、動きのある試合になるとした。
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平良くんとは『ここから逆襲を始めようぜ』と話した
(C)@ufc_jp
同日のメインイベントでは、中村より1階級下のフライ級で平良達郎と、以前から中村とも交流のあるパク・ヒャンソンが急遽、対戦することになった。
「ちょっと複雑な思いはありつつも、『ROAD TO UFC シーズン1』からメインに抜擢されたヒャンソン選手に対して“おめでとう”という気持ちもありますし、もちろん日本人として平良くんに頑張ってほしい気持ちもあります。自分の心は日本にあるので、日本勢に頑張ってもらって、一緒に勝ちたいなという想いの方が強いですね」といい、チームジャパンとして、平良とは「『ここから逆襲を始めようぜ』みたいな、そんな感じの話はしました」とエールをかわしたという。
「日本でもUFCがすごく注目されるイベントになってきたなと、だんだん感じることが多くなりました。日本でもう一度UFCが開催されてほしいですし、そこでパフォーマンスをすることが僕の夢なので、その機は熟してきているなという嬉しさもあります。何より、僕個人としては、こうやって改めて恭司さんに面倒を見てもらうようになったことで、恭司さんと一緒に同じ舞台で戦える喜びがすごく大きいです。一緒に日本を背負って戦いたいという気持ちがあります」と、母国凱旋を思い描いている。
そのためにも、ラスベガスでの勝利が必要だ。2日の中村倫也、平良達郎。翌週9日(日本時間10日)の風間敏臣vs.エライジャ・スミス、16日(日本時間17日)の朝倉海vs.ティム・エリオット、22日の鶴屋怜vs.ニャムジャルガル・トゥメンデムベレルに続く、UFC日本人ファイター5連戦の最初の試合となる。
中村は、ファンに向けて「いつも応援ありがとうございます。前回はうまくパフォーマンスすることができずにがっかりさせてしまった方も多いかと思いますが、その敗戦からしっかり学び、今回はいい準備を積み重ねてきました。皆さんを興奮させられるような試合ができると思っています。試合当日は少し朝早いですが、皆さんの目がバチっと覚めて、いい日曜日が過ごせるような試合にしたいと思っていますので、U-NEXTで応援のほどよろしくお願いします」と語った。
約半年ぶりにオクタゴンに戻って来る 中村倫也。日本人UFCファイターの逆襲は、この男から始まる。